艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督- 作:7seven
なお本文中の数字に間違いはありません。(私の着任当時の数字を利用)
特徴がないことが特徴とまで言われた俺。
何事もほどほど、高校卒業して進学する大学も並。
選んだ学部も、珍しいとは到底言えない。
友達の数も並、仲のよさも並。並しかない。
俺を5段階評定で表すなら、完全なオール3。
さて、オール3な俺はたまに話す程度の友人から、艦隊これくしょんというブラウザゲームを勧められた。今年で3年目を迎えるゲームで、美少女達を戦わせるゲーム……なんだそうだ。こういう言い方はあれだが、男は何してるんだ。
美少女達ってことは、成人女性だけじゃなくて、中学生とかも戦わせてるんだろう? 可哀想に。言ってしまえばキモヲタの範疇に入るであろう佐伯が見せてくれたその美少女達、艦娘は年の頃はせいぜい18、19の俺達と変わらないぐらいだったが……あれは美少女というよりも美女にあたるだろう。
DMMに登録して、そして空いている鎮守府を探す。
友人曰く人気が高いおかげで着任にも一苦労するそうなのだが、運がよかったのか、いくつかの泊地は着任枠が空いている。それでも鎮守府には着任できないあたりに俺のオール3みを感じる。
勧めてくれた友人、佐伯と同じ名の泊地に空きを確認した俺は、特に希望のサーバがあるわけでもなく、佐伯湾泊地をクリックした。
……さて、これで提督着任か。初期艦5人からどの娘を選んだか報告しろって言われてたが……俺は軍艦について全然知らないんだよなあ。
月並みに、戦艦大和とか、そういうのを知っている程度。戦艦と軍艦って何か違うのか?
読み込み中画面をぼーっと見ていると……
カッ
結婚式の記念写真撮影とかよりも眩しいフラッシュみたいなのに網膜が焼かれて、一瞬で世界が暗転した。
***
目を開けると、一番最初に目に入ったのは白いスラックス。触ってみると間違いなく俺の足だ。さっきまで黒のジャージだったのに。なんでこんな、ぱりっと糊のきいたスラックスなんかを。
視線を上げると、硝子戸の書棚。難しげで、そして古い本が収められている。その硝子に映る俺は、白い軍服のようなものを着ていた。肩になんか飾りもついてるし、すごく本格的だ。
というかここはどこだ。見渡しても書棚がたくさんあって、あとは扉があるだけなんだが。
その時、がちゃ、と扉についているドアノブが回った。
扉が開いて、そこから出てきたのは……じゃないな、入ってきたのは女二人だ。
片方は俺の今着ている服と同じ服を着た、黒髪と赤い口紅が目を引く背の高い女。もう片方は、赤いスカートを履いた、もうひとりの女と変わらないくらいの背丈の女だ。
「やあ、待たせたようだな。君が来月から私の鎮守府で勉強するという修習生かな」
見た目に反して男勝りな話し方をする赤い口紅の女性。
もう一人の女性は後ろに控えていて、まさに
「
「大和、やめなさい」
……提督? ……大和?
「すみません、あの、おふたりはどちらさまですか?」
「呉鎮の提督を知らないか……成績に難ありと聞いていたが……まあいい。私は日本海軍所属呉鎮守府の提督、
「はい、
「うむ。君が私の鎮守府で後期修習を行うことになっている提督候補生だな。呉へは……そうだな、広島駅まで新幹線で来たまえ。そこまで迎えを出す。修習は2か月、その間必要な着替え等は呉鎮宛に海軍本部から送ってくれ。まあ何、修習後に何事もなければ呉の傘下の鎮守府に配属になるだろう。仲良くしていこう」
……ん? 修習? 配属?
「あの、人違いじゃありませんか?」
「そんなわけないだろう。顔写真とも一致するし、何よりその軍服が何よりの証拠じゃないか」
突き出された履歴書の顔写真は、確かに俺だ。俺のオール3な顔だ。
ただ、履歴書の……学歴欄がおかしい。
中学までは合っている。でも、中学卒業後に、海軍提督候補養成学校に入学して、そして今春卒業したことになっている。なんだその学校。聞いたことがないぞ。
そして、何より気になるのが。
佐伯と名乗った女性の後ろに控える、赤いスカートに黒髪をポニーテールにした女性。大和と呼ばれた彼女の容姿が、先日佐伯に見せられた艦娘の顔と完全に一致すること。
あいつの嫁艦とやらも、確か戦艦大和だったなあ。
「あの、言いにくいんですが、俺こんな高校出てないですし、気付いたらここにいたというか……」
「……はぁ。こりゃ確かに問題児だな」
問題児とは失礼な。今まで可もなく不可もなくすごしてきた俺のどこに問題があるんだ。オール3すぎて問題だとでも言うのか? 悪かったな!
「ここはどこだかわかるか?」
「わかりません」
「はぁ」
溜息ばっかり吐かれると俺が申し訳なくなるな。俺は何もしてないのに。
っていうかあれ?
「すみません、あなたは日本海軍の提督とおっしゃいましたか?」
「ああ、日本海軍所属呉鎮守府の提督、佐伯だ」
「よし、夢だな。寝よう」
「寝るな。何がおかしい」
「日本に海軍なんてないですよ。性質の悪い冗談か、夢かに決まっています」
「それはもう何年も前の話だ。お前が海軍提督候補養成学校を受験した志望動機も、深海棲艦に、結婚記念日で客船に乗っていた両親を殺されたから、となっているぞ」
「ないない、何ですかそのシンカイセーカンって。確かに実の両親は結婚記念日の旅行で客船に乗っていたら船が沈んで亡くなりましたけど」
佐伯さんが黙ったので、俺は白い軍服が汚れるのも気にせずその場に横になる。
そうだ、寝れば夢も覚めるだろ。
「……そうか、お前も、なのだな」
突然声のトーンが変わったのに驚いて、俺は体を起こす。佐伯さんは少しばかり切なそうな、嬉しそうな、微妙な顔をしていた。
「すまない。だが内海、お前の
「いいですよ、夢だからそのうち覚めます」
「いや、覚めることはない。何度寝て起きてもこれは夢じゃない。●●●高校卒業のお前はもう、存在しないだろう」
●●●高校? なんでこの人が俺の出身高校知ってるんだ?
ついでに存在しないってなんだ。
「お前はこの世界にトリップ……って言い方じゃわからんか。この世界のお前として生きていくしかなくなったんだ」
「は、はぁ」
「……お前が私の鎮守府で修習することになってよかった。じっくりと、時間をかけてこの世界での生き方を教えられる」
まったくよくわからんのだが……表情といい、口ぶりといい、佐伯さんの言うことが本当なら、佐伯さんは俺と同じ立場……とかなんだろうか。
「提督、お時間です」
「ああ、今日は顔合わせだけだったからな……。内海、私の方から修習開始時期を早めてもらうように志願しておく。周りの話にはうまく話を合わせておけ。あとこのような服を着ているのは大半が上官だ。このように敬礼をしておけ」
よく見る警官とかのとは全然違う敬礼。俺も真似をすると、佐伯さんは満足げに笑って、部屋を出ていった。
……ってちょっと待て、俺はここからどうすればいいんだよ!?
○内海 伊織
Iori UTSUMI
オリ主。オール3の男。18歳。
○佐伯 梓
Azusa SAIKI
オリ主がこれからお世話になる呉鎮守府の女性提督。階級は中将。
年齢は秘密。化粧でわかりにくいがかなり若そう。初期艦は吹雪。
口紅は赤以外を使わない。