艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督-   作:7seven

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第1章はイベントでいうならE1丙掘りなので流し読みでいいと思います。
そんな感じで11話目、始まります。


01-10 『最初の艦娘』

-数年前。

どこからか現れた、人ならざる者。

奴らは各国の海上通商を破壊し、七つの海を占拠した。

海上通商なしには立ち行かぬ島国である日本を始めとし、中東から石油を輸入していた国々は立ち上がる。

 

しかし、彼らの攻撃は、奴らには届かない。

砲弾を弾き、ミサイルを物ともしない、圧倒的防御力。

そして、奴らの攻撃は、彼らをまるで赤子の手を捻るが如し。

放つ砲弾が、魚雷が、艦載機が、各国政府の海軍や自衛隊を残らず沈めた。

 

海を滑るように移動し、軍艦のような戦闘方式を持つことから、国連は奴らのことを「深海棲艦」と呼ぶことを決めた。

 

 

人智を超えた力を持つ深海棲艦に、人類は成す術を持たない。

自国内でも食料自給率の安定している某大国などは、深海棲艦の討伐にかける燃料も弾薬も鉄も惜しいとし、早々に討伐を諦めた。

しかし我が日本国は、海に浮かぶ島でしかない。輸出入なくしては人々は暮らしていけず、またそうでなくても、国土が細いため「内陸部に逃げれば大丈夫」とはいかないのである。

 

そんな日本は、深海棲艦と戦い続けるために、緊急法令を発し、海軍を再び結成した。

これは重大な憲法違反であると某大国からブーイングが入ったものの、その国は共通の脅威と戦うことを放棄したのだ。彼らに口出しをする権利はなかった。

 

しかし、日本とて海軍を再興したところで、勿論勝ち星など挙がるわけがない。

相手は人ですらないのだから。

 

次第に、軍の出撃するための食糧や燃料が、底をつきはじめた。

日本の海軍も、政府も、国民も。

皆が諦めかけた、その日の朝。

 

「第一次攻撃隊、発艦してください!」

「よし! 艦隊、この長門に続け!!」

「お願い、当たってください!!」

 

3人の黒髪の少女たちが、横須賀の海にいた。

背には砲身のある機械を背負い、水面に何気なく立つ姿。

 

1人は、右腕に木板をくくりつけ、弓を構え、矢を放つ。

1人は、腰に機械を付け、その機械にある火砲から弾丸を放つ。

そして1人は、足にくくりつけた機械から、何かを撃ち出す。

 

矢は飛行機となり、弾丸と共に深海棲艦の装甲を貫いていく。

あの、最新護衛艦ですら傷ひとつ付けられなかった深海棲艦の装甲に。

 

そして最も小さな少女から放たれた何かは海中を白い筋を見せながら直進し……。

 

深海棲艦を()()()のである。

 

 

***

 

 

本を閉じた。海軍本部から一般向けに出版されている本、『最初の艦娘』だ。

深海棲艦とはこういうもので危険だ、討伐しないといけない。艦娘とはこれこれこういう存在だ、だから危険ではない。だから艦娘たちを応援しよう云々が書かれた、まあ一種の思想本だな。

 

 

長門、赤城、そして吹雪。

『最初の艦娘』として有名な艦娘たちだ。

その名の通り、日本で最初に発見された艦娘であり、彼女らの協力によって艦娘の研究は進み、日本は稀に見る一大艦娘所属国家となった。

 

海軍の再編にあたって、海での戦い方を知る海軍将校たちは日本各地の鎮守府に、艦娘と共に送られ、それが日本最初の鎮守府群である。

そして、日本最初の鎮守府群というのが、横須賀鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府、舞鶴鎮守府の4鎮守府であり、現在日本各地にある泊地のボスである。

 

 

いいか? 気付いたか?

つまり佐伯さんはそんな栄えある偉い鎮守府の提督、つまり責任者なんだ。

普通提督候補の修習は泊地で行うものらしいんだよ。まあ働くところも泊地だろうしそりゃそうだ。

 

ただ、佐伯さんも呉鎮の最初の提督じゃないそうだ。

ということは、前任提督を押しのけてこの椅子に座れるくらい優秀な人。すごいよなあ……。オール3の俺には真似できっこない。

 

呉鎮で長門さんや赤城さんとお話する機会があったので、この本の内容のことって覚えがあるのかと聞いてみたところ、知識として、本能としては知っているが、例の本の3人は横須賀所属の長門や赤城であり、自分の記憶にはないとのことだ。

……艦娘として、人間を深海棲艦の脅威から守るために戦うのが使命だ、と。

 

それは本当に、本能なのか? 使命なのか?

 

 

***

 

 

呉鎮から卒業するまで、あと1週間。

俺が着任する予定の新造泊地の執務室の視察に行ったりしている間に、佐伯さんは恐ろしいほどの形相で慌ただしく駆けずり回っている。

 

「佐伯さん、どうかしたんですか?」

「ああ、内海、叢雲。どうもこうも、2か月後に超大規模作戦が実施されるからな、その前準備で忙しいんだ。過去にはない規模で、多分内海にも一番最初の前段掃討には参加してもらうことになる」

 

前段掃討とは、と聞こうとする前に走り出してしまった。

佐伯さんはたいへんヒールが細長いピンヒールを履いているんだが、なぜあの靴であの速さで走れるんだろうか。

 

「……なんであのヒールであんなに速く走れるのよ」

 

同じ女の叢雲から見ても異常だそうだ。

 

「叢雲は前段掃討って何やるかわかるか?」

 

叢雲に訪ねてみると、参加したことがないから詳細は知らないけど、と前置きして話し出した。

 

「そもそも大規模作戦は1年に4回、深海棲艦の中でもかなり強力な敵を倒すために実施されるのよ。たとえば、そうね……。成功すると、修学旅行で引率の先生がいきなり死んだ時みたいな感じになるわ」

「生徒の統率が乱れて、何が起こるかわかったもんじゃないな……」

「でも、その生徒が予め先生を守ってるの。この生徒をどけることが、前段掃討のはずよ」

 

なるほど。叢雲もこんなわかりやすい説明するのか。

佐伯さんのが移ったんだろうか? まあいいわかりやすい。

 

「最終的に、大規模作戦が成功したらその後で深海棲艦の中でも中間管理職を倒しやすくなるってことだな」

「そういうことよ」

「そうか……。作戦の成功のためにも、俺も勉強を頑張って、前段掃討で力になれるようにしないとな」

「あら、いい心意気じゃない。期待してるわ」

 

叢雲がにやっと笑う顔に、ズキン、上半身の中央が、刺されたような痛みを一瞬だけ感じる。

まさか、そんな、まさか、な。




吹雪はアニメ主人公なので。長門は図鑑001なので。赤城は……なんとなく、黒髪で揃えたかったので。
そんな適当な理由で最初の3人は決めました。
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