艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督-   作:7seven

4 / 15
そろそろ書き溜めがないので毎日更新は難しくなりそうです。


01-03 呉鎮探検隊

開いた扉の向こうには叢雲と近い年頃の少女を先頭に、何人かの艦娘がいた。

けれどその全ての艦娘が、みな小学校高学年とか、それぐらいの少女達。見るからに駆逐艦の艦娘、といった印象を受けた。

 

「こらこら、ちゃんと名乗ってから開けなさい」

「あっ、つい。すみません、司令官……」

 

先頭の黒髪の女の子はしょんぼりとして肩を落とした。

その少女を見て叢雲は、驚きの表情を見せている。

 

「挨拶しなさい」

「はいっ! 吹雪型駆逐艦、ネームシップの吹雪です! どうかよろしくお願いします!」

「ご丁寧にどうも。初めまして、今日からここで勉強することになった、提督候補生の内海伊織といいます。こっちは俺の秘書艦の叢雲、きっと君の妹分にあたると思います」

「叢雲よ。……久し振りね、吹雪」

「叢雲ちゃん……本当に叢雲ちゃんだ!」

 

吹雪ちゃんは叢雲をぎゅうっと抱き締める。後ろにいた少女達も叢雲と吹雪ちゃんを囲む。

ほのぼのとした光景だ。

 

「すまんな内海。ウチにも駆逐艦叢雲は所属していたんだが、色々あって解体されてしまっていてな。……そこにいるのは同じく吹雪型の子たちだよ」

 

解体って……壊すことか? なんでなんだろう。

聞きたい。だけど、佐伯さんの顔には聞くなとはっきり書かれてしまっている。

 

「吹雪、感動の再会もいいがメインは内海に鎮守府を案内することだからな。ヒトハチマルマルに食堂集合で、鎮守府の決まりを教えてやっておいてくれ。部屋は客室棟203と204だ」

「はい、お任せください! 行きましょう内海さん、叢雲ちゃん!」

 

こうして吹雪ちゃんを始めとする吹雪型駆逐艦による、呉鎮守府案内ツアーが幕を開けた。

 

 

***

 

 

「ここが工廠で、こっちが艦娘用の風呂場だ」

「艦娘用?」

「司令官は女だけど、今の司令官がこの鎮守府に着任する前は男性司令官がいたらしいから、その時の名残だと思うよ」

「ああ、なるほど。俺が艦娘と一緒にお風呂に入るのはよくないからなあ……」

「この先は資源貯蓄倉庫なので、今度はあっちに行きましょうか」

 

吹雪ちゃんはずっと叢雲の手を握ったまま。案内は深雪ちゃんや白雪ちゃんが積極的にしてくれている。初雪ちゃんと磯波ちゃんは自己紹介をしたきり、一緒についてくるばかり。あまり話すのが得意じゃないのかもしれない。

しかし大きな鎮守府だ。100を超える艦娘の所属する鎮守府に相応しい規模。

 

「ここの先は艦娘寮です。こっちを真っ直ぐに進めば食堂で、食堂に行く途中に酒保もあります」

「あれ? 白雪やん。後ろのは……お客さんかいな」

 

どこか胡散臭い関西弁の少女の声が飛んでくる。白雪ちゃんはりゅうじょうさん、と呼んだ。

りゅうじょう、りゅうじょう……ああ、軽空母の龍驤か。こっちに来てから本で読んだことある。軽空母の中でも飛び抜けて参加作戦数が多かったと言われてる空母だ。

 

「初めまして、今日からこの鎮守府で勉強をする、提督候補生の内海です」

「こらどうも。ウチは軽空母、龍驤や。よろしゅうなー、内海はん」

「こちらこそよろしくお願いします。こっちは俺の秘書艦の叢雲です」

「駆逐艦、叢雲よ」

「ふうん、叢雲なあ……」

 

龍驤さんはもの珍しげに叢雲を見ている。そんなに珍しい艦娘なのか……?

 

「龍驤さんはこの鎮守府に来たのが遅かったほうなので、以前この鎮守府にいた叢雲ちゃんとは会ってないんです」

「せやなぁ。艦娘になってから会うんはこの叢雲が初めてや」

「ここの私は一体何をしたの? 解体処分を受けたって聞いたけれど」

 

そこにいた駆逐艦達はみな、貝のようになってしまった。

俺と龍驤と叢雲はただ、首を傾げるばかり。

解体処分ってつまりあの、あれだろう。かなり重い罰、人間でいうところの死刑とかになるんじゃないのか。……何をしたんだ。殺人? それとも放火?

 

「あっれー? もう夕飯の時間だよ、みんな食堂に集合ーっ!」

 

頭におだんごをふたつ作った茶髪の少女がそういって拳を突き上げたまま、食堂のほうへと歩いて行った。……元気のいい娘だな。

 

「そうね、そろそろヒトハチマルマルよ。夕飯の時間なのよね?」

「はい、席は自由で、食事は各自の食べる量を盛ってもらうんですよ」

「おかわりも、勿論できるし……」

「おかわり自由! いいですね」

 

鎮守府運営のあれこれはわからんが、それでも食費を十二分に賄えているっていうのは、流石大鎮守府だなあって感じだ。

飯を食べさせるのがどれぐらい大変かなんて、親戚にたらい回しにされた時に痛いほど感じたしな。

 

「……ねぇ吹雪、さっきからちょっと歩きにくいわ」

「……ごめんなさい、叢雲ちゃん」

 

口だけは謝っていてもしっかりと抱きしめた叢雲の右腕を離すことはなくて、叢雲もやれやれと溜息を吐いている。それでも振り払わないあたり、姉妹なんだろうなあ。

……佐伯さんはとても優秀な提督に見えたけど、佐伯さんですら解決できていない問題ってあるんだな。ばちりと叢雲と目が合った。




活動報告にて、小説の文字数についてアンケートを行っています。
回答よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。