艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督- 作:7seven
小鳥もさえずるマルロクサンマル。眠いが、顔も洗って歯も磨いて、着替えた状態で玄関に立っている。叢雲は眠気をまったく感じさせない、いつも通りの凛々しい顔だ。
「くぁ……」
「何よ、だらしないわね」
「ほんまや。おっきいあくびやなぁ」
のびをしていると、聞いたことのある声が後ろから飛んできた。龍驤さんの声だ。
「あれ、龍驤さん」
「龍驤でええよ。おはよう」
「おはようございます」
「内海はんと叢雲はここで何してるん?」
龍驤さんへ佐伯さんから言われたことを素直に伝えると、ほなウチについてきてと歩きだしてしまった。歩いていく先には……鎮守府に入る時にくぐった門の、隣の建物。そういえば門の外のこのあたりには郵便ポストがあったかもしれない。
ああ、もしかしてここは。
「ここは外部からの郵便や本部からの通信を受けて、不審物を排除する仕事をしてるのか」
「せやで。あとはー……これ。本部からの電文で、毎日きちんと片付けなアカンらしくて。これを完成さしたやつとか、出撃報告書とか、そんなんはまた夕方にここに出しにくるんや」
「夕方?」
「夕飯の前や。取りにくるのも持ってくるのも、うちの鎮守府では当番制なんよ。で、今日はウチの番ってわけ」
「なるほど」
玄関からここまで結構な距離があったし、この時間に毎日起きるのは確かにちょっとつらいかもしれない。まあこの時間に取りに来させるってことは佐伯さんはこんな時間から書類仕事をしているのかもしれないけど。
「龍驤さん、おはようございます。これが今日の分です」
「おっちゃんおはよう! こっちは昨日から鎮守府で勉強しとる、内海はんやで」
「内海伊織です。2か月の間よろしくお願いします」
「文書管理の井沢です。内海君、よろしくお願いします」
井沢さんというおじさんは人当りのよさそうな笑みを浮かべていて、朝一番には到底見えない。慣れってすごい。
というか提督である佐伯さんも女性だし、こういうところの職員も全員女性かと思ってたから意外だなあ。やっぱりそこは軍事組織ってことなんだろうか。
「内海はん、ウチはこれを提督の部屋に届けたら終わりやけど、どうする?」
「俺も様子を見てこいとしか言われてないから、ご一緒してもいいですか?」
「叢雲もそれでええ?」
「ええ、構わないわ」
「ほな、提督執務室へしゅっぱーつ!」
***
提督執務室では既に佐伯さんが難しい顔をしてペンを走らせていた。龍驤は気軽におはよー、ここに置いとくでーって声をかけて、受け取った書類を机の上に載せていく。
「ああ、おはよう。私は朝食に遅れそうだから、呉一水戦と呉五駆に朝食後ここへ来るよう伝えておいてくれ」
「はーい。ちゃんと朝ご飯食べるんやで?」
「善処する」
ペン先から目を離すことなく、龍驤におつかいも頼む佐伯さん。どれだけ仕事が忙しいんだろう。しかも龍驤のお小言も聞く気はなし。
「ああ、内海と叢雲も一緒に来るように」
「わかりました」
「わかったわ」
しかし「くれいっすいせん」とか「くれごく」ってなんだ?
邪魔してはいけないと龍驤と一緒に執務室を出ると、龍驤がこの鎮守府ならではのシステムなのだと語った。
通常一水戦と言うと阿武隈という軽巡洋艦をきかん? に、複数駆逐隊が所属して、主力艦の護衛や輸送艦の護衛をしている部隊のことらしい。
だが呉一水戦、つまり呉鎮守府限定での第一水雷戦隊は旗艦も那珂という軽巡であれば、所属駆逐隊は呉一駆から呉三駆までの3つであるとのこと。
「んーとな、つまり第二次世界大戦中とかの部隊編成とは関係なく、提督がええと思うオリジナルの編成で出撃するんや」
「そうなのか……何か考えのことがあってなんだろうがよくわからんな」
「噂では鎮守府にやってきた順とか言われとるけど」
前言撤回。適当だ。
「でもまあ、もし考えてそれぞれの相性を考えて組まれた艦隊なら強いわね。強い艦を集めれば強いってわけじゃないもの」
「うーん、他はどうか知らないけど、ウチはいいと思うよ。ウチの所属してる呉三航戦。どっちみち、まだ艦娘としては見つかってへん軍艦も多いし、変に昔と同じ編成よりも現状に合わせて詰めてった艦隊のが使い勝手いいと思う」
「そんな軍艦がいるのか?」
「いくらでもおるで。あと……たとえばここは叢雲がいないから、第十一駆逐隊とかも組めないし」
「なるほど」
その穴を開けっ放しにするよりは、適当に着任順にでも詰める必要があったってことか。
朝の食堂に行くと、夕飯時よりかはすこしまばらに、艦娘たちが食事をとっていた。
「おーい! 朝ごはん食べ終わったら、呉一水戦と呉五駆は執務室集合やでー!」
ぱらぱらとはーいと返事が返ってくる。今朝の呉鎮も、平和だ。
井沢さんは特に大事ではないと思います。
鎮守府に届くものに金属反応がないか調べたりとか、鎮守府から他に送る郵便物の手配とかをしてくれる仕事の人。