艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督- 作:7seven
更新はゆっくりゆっくりになっていくことが申し訳ない……。ご容赦ください……。
朝食を終えて、再び佐伯さんの執務室へと向かう。
早い艦娘もちらほらいて、応接ソファで座っておしゃべりに興じている。
呉一水戦、呉五駆が呼ばれているそうだが、水戦……水雷戦隊と、駆……駆逐隊、前者は軽巡洋艦数名と駆逐艦多数名、後者は駆逐艦だけで構成される部隊の単位だそうだ。
つまりまあ、何が言いたいかというとあれだ。執務室が小学生ぐらいの少女で溢れている。
しかし悲しきかな、俺は別にロリコンでもない。
「あっ、内海さんと叢雲よ! 私は雷、かみなりって書いていかずちって読むのよ。そこんとこ、よろしくねっ」
「あっ雷ちゃん……! えっと、その、電です……」
何をしようときょろきょろしていたら、ソファーに座っていた茶髪の女の子ふたりが声をかけてくれた。似たような名前、似たような服装。もしかしなくても彼女たちも姉妹なんだろうか。
「もうっ、提督候補の邪魔しちゃだめじゃない!」
ふたりによく似た服装に、帽子をかぶった黒髪の女の子が頬を膨らませている。その隣に座る銀髪に帽子をかぶった娘は静かにお茶を飲んでいた。
「いえ、大丈夫ですよ。よろしくお願いします、雷ちゃん、電ちゃん。それと……?」
「あっ、暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね」
「はい、よろしくお願いします、暁さん」
「こっちは響よ。私達、暁型4姉妹は呉五駆の構成員なの。ほんとは六駆って呼んでもいいんだけど、呉六駆と紛らわしいから、呉五駆って呼んでちょうだい!」
なるほど、やっぱり姉妹だったのか。服装が似てるのは艤装が似てるってことなんだろうか。ならわかりやすくって何よりだ。
「改めまして、内海伊織です。よろしくお願いします、呉五駆のみなさん」
「あ、もう呉五駆は揃ってたか。すまないな、気付かなくて」
「司令官! 無理はだめなのです」
「無理はしてないよ、電は優しい子だね」
佐伯さんは優しく微笑んで、電ちゃんの頭を撫でる。
電ちゃんもとても嬉しそうで、指令系統がきっちりしてるだけじゃなく、信頼し合えている素敵な鎮守府だなあ。俺ももし鎮守府を運営するのなら、こういう鎮守府がいい。
「……さて、呉五駆の4人は、今日はボーキサイトを輸送している輸送船の護衛任務にあたってもらうよ。先方は、輸送を成功させたら、5%をうちに譲ってくれると言っている。頼めるね?」
「当然よ! 司令官、絶対に成功させて見せるわ。だから、安心して待っててよね!」
「うん、信じてるぞ。抜錨時刻はマルキューマルマル、航路は2-3だ。それじゃあ行ってこい」
いってきまーす、と言って4人は部屋から出ていった。これは……遠征か。
なら呉一水戦のほうが、今日の出撃になるのか。出撃ってどんななんだろ……
「しっつれいしまーす! 那珂ちゃん登場ー!! きゃはっ!」
……うか。
……昨晩、食堂前で見た元気のいい子が現れた。そうか、彼女が那珂という軽巡洋艦なのか。……とんでもなく元気がいいな。
「あっ、昨日の。那珂ちゃんはー、川内型軽巡洋艦、3番艦。みんなのアイドル、那珂ちゃんだよ! よろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願いします、那珂さん」
「那珂、今日は出撃だからその元気は取っておきなさい」
「はーい!」
佐伯さんの鶴の一声で、那珂さんは座って鼻歌を歌い始めた。元歌はわからんが、違和感はないから音程に間違いはなさそうだ。
「那珂はアイドルとしてステージに立つことを夢見ているんだ。……この戦いが終わるまで叶えてやれない夢だが、たまに鎮守府内でステージを作ってやったりもしている」
「那珂ちゃんは、ステージに立てるようになるまで、一生懸命戦うよ!」
「……ふふっ、那珂さん、頑張ってください」
「うんっ!」
なんだ、ただの空気を読まない子かと思ったけど、全然そんなことはないじゃないか。俺とは違って明確に夢があって、それに向かって尽力している。立派だ。
「いいわね。私もこの戦いが終わったら、ぱりこれっていうのを見に行きたいわ」
「あっ、那珂ちゃんパリコレ知ってる! 海を越えた先の遠くの遠くのフランクって国にある、パリスってところのファッションショーだよね」
「あら、よく知ってるじゃない。そうよ、昔は流行の最先端って言われてたみたいよ」
叢雲も那珂さんと意気投合してるみたいだ。っていうかフランクとかパリスってなんだ。フランスとパリじゃないのか。
「内海のいた世界とは、海外の地名が多少異なっているかもしれないが、似たような名前だから察してくれ」
「あ、はい」
じゃあなんで日本だけ俺の記憶ときちんと合致するんだろうな。
しばらく経ってから、執務室の扉がノックされた。吹雪ちゃんの声で、呉一、二、三駆参りました、と扉の向こうから聞こえる。
佐伯さんがどうぞと言うと、扉が開いて総勢11名の駆逐艦と思しき娘達が入室してきた。
「よし、揃っているな。それでは呉一水戦にはマルキューサンマルからキス島へと向かってもらう」
「キス島? キス島って一度敵勢力を殲滅しましたよね?」
「貿易国から貿易船が同地域に漂流したとの連絡をもらった。漂流の原因は嵐だが、双眼鏡で何やら艦影が見えたそうだ」
かんえい、かんえい……。艦の影で艦影か。敵か味方かわからないってことか。
「その貿易船を保護、曳航し、曳航不可能な場合には乗員と載せられるだけの資源を搭載し、呉に帰港しろ。呉からの輸送は別の部隊が引き継ぐ」
「那珂ちゃんが旗艦だよね? 曳航可能かどうかの判断はどうするの?」
「それは那珂、お前に任せる。私よりも船であった記憶のあるお前らのほうが正しい判断を下せるだろう」
「那珂ちゃん了解!」
「了解しました、司令官!」
「よろしい。それでは頼んだぞ」
11人の駆逐艦と那珂さんはさっと執務室を出ていった。出撃の準備をするためだろう。
それにしても、呉駆逐隊は4人で1隊と聞いていたのに、なんであの場には駆逐艦は11人しかいなかったんだろうか。
「さっきの11人の資料はこれだ。……呉一駆のリーダーになっている吹雪は、内海で言うところの叢雲にあたる」
「叢雲……初期艦ですか?」
「ああ。その流れで、うちの最前線の駆逐隊である呉一駆のリーダーを任せ続けているんだ。真面目な子で、うちの鎮守府の駆逐艦を統括するようなこともしてくれているよ」
「そうなんですか……」
佐伯さんから手渡された資料に目を通して、あの場にいた駆逐艦娘の顔と名前を一致させていく。
吹雪、綾波、皐月が呉一駆。三日月、敷波、夕立、雪風が呉二駆。時雨、村雨、大潮、不知火が呉三駆。……呉一駆が、3人編成なのか。
「……呉一駆だけが3人編成でおかしいと思うだろう? ……そこが、うちの叢雲の席だったんだよ」
曳航ってえいこうって読むんですね。この話書く時はろうこうだと思っていました。洩航で検索しても曳航を出してくれるぐぐる先生大好きです。