Pとアイドルの奇妙な冒険(仮):更新停止   作:妖怪1足りない

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第7話 天才科学者の家に行こう

「では、その時間で予約をお願いします」

 

カメラスタジオとの電話を切る。

 

「・・・これで文香の宣材写真の撮影予約は良しと」

 

ドガアーンッ!

 

凄い勢いで部屋のドアが開き、拓海が入ってきた。

特攻服に木刀を持ち、顔が鬼の形相である。

 

「利益の馬鹿はここに来てるか!」

「落ち着け。利益がどうかしたのか?」

「アイツ、新商品のお茶の試飲キャンペーンの仕事を持ってきたんだ!

飲み物を配る簡単なお仕事だと言ってやがったのに、

現場に行ってみたら、水着で配ることになってたんだ!

現場の担当者に聞いたら、

『そういう契約で、そちらのプロデューサーと合意しました』だ!

アイツ、一言もそんなこと言ってねえぞ!」

「ああ、なるほど。利益のやつ、わかってて拓海に黙ってたか。

利益なら、有休を取って京都へ行ったぞ。うまいお茶を飲みに行くとか言ってたな」

「畜生! 逃げやがったか!」

 

そう言うと、拓海は部屋を出て行った。

利益・・・ケガはクレイジー・(ダイヤモンド)で直してやるからな。

・・・・・・死なない限りは。

さてと、今日はこの後、池袋晶葉(いけぶくろあきは)と会う約束だったな。

池袋晶葉。346プロ所属アイドルであり、天才科学者でもある女の子だ。

今日、会うことになったのは、吸血鬼・屍生人(ゾンビ)対策の為に、ある物を作ってもらう為だ。

俺は、池袋さんに会うために、車で池袋さんの家へ向かった。

 

「ここか・・・」

 

俺は、池袋さんの家の前に着いた。

池袋さんの家は、研究所も兼ねている為か、敷地も家も普通の家より大きかった。

まあ、発明の特許収入を考えれば、小さい気もするな。

そう思いつつ、インターホンを押す。

 

「はいウサ」

 

ウサ? 池袋さんの声じゃないみたいだし、お手伝いさんか?

 

「面会の予約をした、美城定守ですが」

「玄関のドアは開いてるウサ。どうぞウサ」

 

さっきから相手の語尾にウサが付いてるが、何なのだろう?

とりあえず、作ってもらいたい物の参考資料の入った、段ボール箱を抱え、

玄関のドアを開けた。すると・・・

 

「ウサ!」

 

そこにはウサギ型ロボがいた。全体の色はピンクで、顔の部分は昔懐かしいテレビデオ。

ウサ耳を付け、二足の足で立っている。

・・・・・・なんだこれは?

 

「池袋邸に、ようこそお越し下さいましたウサ!」

 

しゃべった!? いや、落ち着け。犬のお父さんのCMでお馴染みの会社も、

しゃべるロボ売ってるじゃないか。これもそれに近いのだろう。

 

「こんにちは。池袋晶葉さんの所へ、案内してもらえますか?」

「わかったウサ。その荷物も持っていくウサか?」

「ええ」

「わかったウサ。その荷物は3号が持つウサ」

「3号?」

 

俺が疑問に思っていると、廊下の奥から目の前のロボと同じ形のロボが、

こちらに向かってきた。

 

「ウサ!」

「この3号に荷物を預けるウサ」

「あ、ああ」

 

ロボに言われるまま、3号と呼ばれたロボに荷物を預ける。

 

「それじゃあ、案内するウサ。2号の後に続くウサ」

 

そう言うと、そのロボ(2号)は廊下を進んで行く。

俺はその後に続き、後ろに3号がついてくる。

廊下を進むと、廊下の突き当りにエレベーターがあった。

 

「博士は地下10Fにいるウサ。エレベーターに乗るウサ」

 

・・・ここ、個人の家だよな? 何かおかしくないか?

ロボに言われるままに、ロボ達と一緒にエレベーターに乗り、

地下へと降りていく。

そう思っていると、エレベーターは最深部の地下10Fに着いた。

エレベーターの扉が開き、そこに広がる光景に絶句した。

そこには様々な機械が置いてあり、そのフロアの中を武装したロボ達が歩いている。

ハリウッドのSF映画に出てくる様な、非現実的な光景だ。

 

「こっちウサ」

 

ロボがその中を進んでいくので、俺も慌てて後をついていく。

しかし、見た限りこのフロアは、明らかに地上部分より広い。

なるほど。地下深くなら、より広いスペースがとれるということか。

しばらく歩いて行くと、ドアの前にたどり着いた。

ロボは、ドアの横のインターホンを押した。

 

「博士。お客様を連れてきましたウサ」

「ああ。部屋に入れてくれ」

 

ロボが部屋のドアを開けると、様々な機械や部品が雑然と置かれた部屋の中に、

白衣を着た池袋さんが、何かの機械の前で作業をしていた。

そして、池袋さんは工具を置いてこちらを向いた。

 

「ようこそ、私の家兼研究所へ。私が池袋晶葉だ」

「美城定守です。よろしくお願いします」

「とりあえず、そこのイスに座りたまえ」

 

俺は勧められるままに、空いていたイスに座った。

そして、目の前の机にお茶の入った湯呑が置かれた

 

「ありがとうござ・・・」

 

お茶を出してきた相手を見て、固まる。

そこには、お盆を持ったウサギ型ロボがいた。

もしかして、このロボがお茶を淹れたのか?

ここのロボは、明らかに世間一般のロボを超えてないか?

池袋さんに、ここに来てからの疑問をぶつけた。

 

「池袋さん、このウサギ型ロボは一体?」

「ウサちゃんロボだ。人工知能を備えていてな。

自我も持っているぞ」

 

なん・・・・・・だと・・・・・・

つまり、未来の世界から来た青狸型ロボットや、

百万馬力のパワーを持つ、面白い髪形をしたロボットと同じということか?

 

「それで、私に頼みたいこととは、なんだ?」

 

と、いけないいけない。本来の目的を忘れるところだった。

俺は、ウサちゃんロボ3号から、段ボール箱を受け取り、中身を取り出す。

 

「これを小型化したものを、作れないでしょうか?」

「何だこれは?」

「紫外線照射装置です」

 

俺が持って来たのは、原作第2部に出てきた紫外線照射装置だ。

原作では、これで吸血鬼達を倒している。

これを、カバンの中で持ち運び出来る位に、小型化してもらい、

文香達に、護身用に持たせようと思っているのだ。

 

「ふむ・・・ところで、何のために作るのだ?」

「それは・・・」

 

俺は池袋さんに、吸血鬼と屍生人について説明した。

 

「それは、ずいぶんと非科学的な話だな」

 

池袋さんは、にわかには信じがたいという表情で答えた。

 

「ですが、事実です。それで出来ますか?」

「可能だとも。形としては懐中電灯型にしよう。

懐中電灯としても使えるようにしておこう」

「お願いします。ところで、ここでは何を研究しているのですか?」

 

ピーピー!

 

いきなり机のパソコンから、電子音が鳴った。

 

「むっ? プロデューサーからだ。もしもし、こちら晶葉」

「晶葉、パワードスーツの性能試験は終了した。これより帰投する」

「了解した。データの受信を確認完了。研究所に戻ってきてくれ」

 

池袋さんは、通信を終了すると、こちらに身体を向き直した。

 

「すまん。私のプロデューサーからの連絡だった」

「いえ、構いません。ところで、パワードスーツというのは?」

「ああ。私が作った物でな。こんな物だ」

 

そう言って、池袋さんはパソコンの画面を操作し、パワードスーツの画像を表示した。

・・・・・・某アメコミヒーローの、戦う社長が身に着けるパワードスーツじゃないか!

 

「・・・ちなみに、どんな装備が?」

「ボディの素材は金とチタン合金。武装は胸の熱可塑性レンズから発射するユニ・ビーム、

両肩にホーミング式マイクロミサイル、腕部に小型ミサイル、ガントレットの掌に光線兵器だ。

空も飛べるぞ」

 

凄い装備だな。どこぞのテロリストとでも戦うつもりか?

 

「そうそう。ここで何を研究しているかだが、

他にはそうだな・・・今は、多次元世界移動装置を作っているところだ。

簡単に言えば、並行世界に移動することが出来る装置だな」

 

スタンドも月までぶっ飛ぶ、衝撃の回答!

本当に池袋さんの頭脳は、どうなってるんだ?

 

「並行世界ですか? そんな装置出来るんですか?」

「可能だ。君は、並行世界の存在を信じるか?」

「ええ」

 

信じるも何も、『D4C』で並行世界を自由に移動できるしな。

 

「そうか。作っている理由は、並行世界の存在を証明する為だ。

並行世界へ行って、並行世界の自分に会ったりするのも、面白いと思ってな」

 

池袋さんは笑顔を見せる。

おいおい。並行世界の自分に触れたら対消滅が起きるぞ。

 

「池袋さん、移動装置が出来たら教えて下さい」

「お? 君も興味があるのか?」

「ええ、まあ」

 

今、『D4C』のことを教える必要はないだろう。

まだ、装置は完成もしてないしな。

 

「わかった。完成したら教えよう。

紫外線照射装置の方は、完成次第連絡する」

 

池袋さんと話していると、部屋のドアが開き、

パワードスーツを身に着けた男が、部屋に入ってきた。

 

「晶葉、戻ったぞ」

「ご苦労。紹介しよう。私の担当プロデューサーだ」

 

池袋さんの担当プロデューサーは、黙ったままこちらに少し頭を下げて挨拶した。

謹厳実直な印象を受けるな。

 

「同じ事務所のプロデューサーの、美城定守です。

しかし、池袋さんの作ったパワードスーツは、強そうですね」

 

すると、池袋さんのプロデューサーは表情を変え、大きな声で叫びだした。

 

「ブァカ者がァアアアア!! 晶葉の科学力は世界一イイイイ!!

当たり前のことォオオオオ!! 抜かすなァアアアア!!」

「うるさい! 助手よ、黙れ!」

「あ、すいません。ハイ・・・」

 

あれ? 池袋さんのプロデューサー、もしかして結構ヤバい人じゃないか?

しかも、完全に池袋さんの尻に敷かれているし。

 

「美城さん、すまん。助手は普段はまともなのだが、

私が絡むと性格が変わるのでな」

「いえ、大丈夫です。それではそろそろ失礼します」

「ああ、ウサちゃんロボ2号に、地上まで送らせよう。

地下エリアの警備システムに、引っかかるといけないからな」

「ありがとうございます」

 

俺はその後、ウサちゃんロボに地上まで案内され、

池袋さんの家を後にした。

 

数日後、346プロの敷地内の木に、

利益が簀巻き(すま)にされて、吊るされていたのは余談である。

 

 


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