しばらく…と言っても1、2分だけど、ゆっくりと目を開けると、そこに広がっていたのは先ほど目の前にあった機械ではなく、キラキラとした世界だった。
ビックリするくらい輝いて見える。
都心相応のたっかいビルに、若い子が好きそうなカフェやショップ、そして女の子。
“男”という概念がまるでない。
ここは女の子のためだけに作られた世界。
「何…ここ…。」
一歩一歩、地に足つけて歩く。
そして目線が痛い。
すごい見られてる気がする。
そりゃそうですよね、女の子の中にぽつんと1人男が混ざってたら気持ち悪いですよね…。
「あの女の子、可愛い…。」
それ、可愛いって言われてんぞ。
……?女の子?
いやいや、聞き間違いだ。僕が可愛いなんてそんなことあり得るわけがない。
確かに、昔から「可愛いね」とは言われてきたけどそんな女に間違えるほどではない。
―と信じたい。
なんて考えながら歩いていると、何かにつまづいてこけそうになった。
「な、何!」
「ヘブッ、ご、ごめんなさい!」
「えっ、あ、人形?」
ひょいと片腕で抱え、近くのベンチに座る。
「大丈夫?ごめん。」というと、ふるふる首を振った。
どうやら、訳ありの人形らしい。
これはさっさとどうにかしなければ。
しゃべる人形なんか聴いたことない。きみがわるい。
「気味が悪いってどういうことナノ。」
「あれ、聞こえてた…?」
「踏んだ人に向かって気味が悪いって、それはないナノ。」
「あー、ごめん。何でもするから許して。」
「ん?今なんでもするって言ったナノ?」
「ならちょっと来て欲しいナノ!!!」と言われ、腕を引っ張られた。
見た目からは予想もつかない力で、僕はいつの間にか立たされ、引きずられていた。
着いた先はここで一番でっかいと思われるビル。
プリパラTVというらしい。
そんなところに僕を連れてきて何をするんだよ…。
「ーーにお願いナノ!」
「はい、確認しました!それでは行ってらっしゃい!」
「ほーらさっさと歩くナノ!ライブが始まっちゃうナノ。」
「へ?ら、ライブ?ちょ、意味わかんな」
「おしゃべりはあとナノ!よく服はこれ!さ!曲はこれナノ!これなら歌えるでしょ!?」
なんで知ってんだよこのナノナノうるせぇ人形は。
ぐいっ、ぐいっと奥に押し込まれ、カーテンの中に放り込まれた。一体何をすればいいんだ…。
まず、僕ライブなんかしたことないし、歌は好きだけど、人前でなんか…。
「緊張してる…」
「誰!」
後ろから声がして勢いよく振り返ると、そこには真っ黒い髪の女の子がたっていた。