目の前に広がるのは吹雪
「え?なにこれ?」
彼は考えた。
なぜ草原にいたのに雪山らしき場所にいるのか?
そしてなぜ時間を過ぎてもログアウトしないのか。
思考の渦に囚われる。
そもそも吹雪が体に当たる感覚と言うのがおかしい。
それにコンソールも出ない。
「ん?体に当たる感覚?」
自分の手を見てみる。
透明に近い透き通った青に5本の指。
握ったり広げたりしてみる。
何かが違う。
可能性があるとすればバグで別のエリアに転移してしばらくコンソールも出ない状態になっているという事。
それだと吹雪が体に当たる感覚が説明出来ない。
これまでのYGGDRASILでは『触る』事は出来たのたが感触なんて無かったはずだ。
ならYGGDRASIL2なのか?
しかし告知無しのアップデートなど日本の電脳法に反しているし、コンソールが出ないのは監禁では無いのか。
「考えても無駄か…」
彼がとった行動は待つ。
時間が経てば“ある程度”の事は解決してくれる。
その為に雪の上を歩き出した。
足が雪に沈んでいく感覚が心地いい。
しばらく歩くと洞穴を見つける。
穴の大きさは2mほどだろうか?
身体の大きさを考えると少し小さいが、少々無理をしてかがめば入れるだろう。
薄暗いと言うよりはほぼ真っ暗だろう。
天気が吹雪でも無ければ明るいのかなぁなんて思うが、常時異常天候のエリアもあったしその考えは投げ捨てる。
3mほど進むと、視界が広くなった。
どうやら行き止まりだが広間のようになっている。
ふと視線を下にやると小さめの岩に横たわるように骨が落ちている。
骨といっても何かしらの装備はしているようだが…
「スケルトンウォーリアー?」
YGGDRASILの時に似たようなモンスターはいたのだが、かなり弱い。
そうなると今いる場所に強い敵はいないのだろうか?
しかしもう動かないということは殺されたのだろうか?
そもそもYGGDRASILでモンスターを倒すと、アイテムのドロップと同時にモンスターは消滅するのだ。
(勿論アイテムはドロップしない事の方が多いのだが)
そう考えると今までのYGGDRASILではないようだ。
色々考えながら眺めていると風化した紙のような物が落ちている。
不釣り合いな大きさの手で拾ってみるが、何が書いているのかはわからない。
それは決して風化しているからではなく、字が読めないのだ…
そもそもなんで字が読めないのだろうか?
記憶を辿るがこんな訳の分からない文字は見た事が無い。
昔小学校の教科書で見た象形文字というのが近いのだろうか?
紙にはびっしりと書いてるのだが読めなければ意味が無い。
しかしながら、ゲームであれば意味の無いようなものでも後々重要になってくる物である。
こういう考えのせいでか、アイテムボックスの上限はギリギリまで課金で増やしていた。
そしてその紙もアイテムボックスに入れるのだが…
「今どうやってアイテムボックスに入れた?」
さも当然のようにしていたが、YGGDRASIL時代にはコンソールのメニューを開いて出し入れしていた。
それがどうだろう、今では肩辺りの空間に手を入れているではないか。
ちなみに入れた手は消えてアイテムボックスの中に入っているらしい。
正確に言うと意識として全て伝わってきている。
ここまで異常なことが起こっているのだが、不思議なことにそこまでパニックになったりなどはない。
「自分自身結構オーバーな所があったのになんでここまで冷静なんだろう?」
その謎に辿り着くまで一世紀も経つとは知る由もない。
再び骨に目をやると、剣が落ちている。
ブロードソードのような細身の剣だ。
かなりの時間が経っているだろうに錆一つ無いということは結構いい物なのだろう。
拾って見ると見る見る内に大きくなっていく。
1.5mほどだろうが、どうやら魔法の剣らしい。
別に珍しいとは思わないが実際に大きくなるのは初めてでじっくりと眺めていた。
魔法の剣と言わず武器や防具なんかはかなりの数を保有していた。
これは貧乏性、そういうものだろうと考えていた。
「それはそうとゴーレムなのになんで意思があるんだろうか」
YGGDRASILのみならずゲームや創作物に出てきたゴーレムは命令に従うだけの存在だったはずだ。
「プレイヤーなんだから意思があって当然か」
考えることを放棄した。悪い癖だ。
ここまで見て頂きありがとうございました。