石の意思   作:与那国蚕

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アゼルリシアにドラゴンなんていなかった。
いいね?

5話です。


初めての戦闘

“竜牙”の族長、ゼンベル・ググーに案内されるがまま中央の広場に入っていく。

それに連れて周りの蜥蜴人達が周りを囲んでゆく。

蜥蜴人達によって作られた簡易闘技場と言う表現が正しいだろうか。

 

「俺らが信じるのは強者のみ。話は狩猟班のヤツに聞いてる。」

 

「そうか、なら話が早いな。」

 

「さて、お前は何で戦うんだ?」

 

「お前が槍を持ってるんだ、俺は剣でやらせてもらおうか。」

 

そう言いながらアゼルリシアの洞穴で拾った剣を取り出す。

 

「ほう、魔法の剣か。えらく珍しい物を持ってやがる。しかしお前みたいな“デカブツ”に剣が扱えるのか?」

 

周りを囲む蜥蜴人達が笑い出す。

 

「おいおいお前に言われたくないぞ、右腕だけ異常に鍛えやがって。」

 

「ん?知らないのか?片腕だけ鍛えるってのはろまん?らしいぞ、昔、山小人が言ってた。」

 

「そりゃすまなかったな。」

 

「なら無駄口はこの辺にしようじゃないか」

 

ゼンベル・ググー、ゼンベルがゴーレムに向かって突っ込む、そして槍を“無造作に”振り回す。

 

かわってゴーレムは全く動かない。

 

そして轟音と共に凄まじい音が鳴り響く。

それはゴーレムが傷ついた音。

蜥蜴人達がそう確信して咆哮を上げる。

 

しかし、何事にも例外はある。

弱小プレイヤーと言えどもLv100。

そんな(この世界では異常とも言えるゴーレムに)生半可な攻撃では擦り傷も付かないだろう。

 

「!?」

 

ゼンベルは槍を捨て、大きく飛び退く。

 

「どうした?槍はブラフか?」

 

「どうやら本気でやらねぇと不味いらしい」

 

辺りが響めく。

族長が本気を出さないと不味い相手。

そんな相手はまだ攻撃すらしていないのだから。

 

「素手って事は修行僧か?」

 

「お前は・・・凄いな・・・」

 

たまたまの正解だったとは知る由もなく、距離を詰めていく。

そして修行僧のスキル

〈アイアン・ナチュラル・ウェポン〉を発動し、硬質化した爪を振り下ろす。

 

それをゴーレムは左手(剣を持っていない方の手)で受け流す。

 

(ちょっとはメンツがあるだろうからなぁ、かと言ってこれでダメージは入らないだろうし…)

 

もう1度硬質化した爪が振り下ろされる。

今度は防げない振りをして喰らう。

 

(ダメだ、どうしよう。)

 

「お前何で出来てるんだ?まさかアダマンタイトか?」

 

どうしてそんな柔らかい金属を出してくるんだ…

もしかしてこの世界にはそれ以上の金属は無い…?

声色を変える。

 

「次は本気で来い、殺すぞ。」

 

「どうやら次が最後のようだな。」

 

大きくゼンベルが飛び上がる。

そして頭に爪を振り下ろす・・・

蜥蜴人の誰もがそう思った。

しかし実際は左手で攻撃すると思わせて右手(凄い太い方)で下からアッパーのような形で胸から顎にあけて爪を振り上げる。

 

その瞬間ゴーレムは本気の力で自分自身を切りつける。

当然そんなスピードに蜥蜴人達(ゼンベル含む)は追い付けるわけもなく、ゼンベルの攻撃が通ったと思う。

 

「「ウォォオオ!!!」」

 

歓声が沸き立つ。

 

それと同時にゴーレムもかなり力を弱めてゼンベルを切りつける。

例えるならばナイフでティッシュを切り裂くように。

 

「グゥゥ……」

 

蜥蜴人達が見る限り両者は互角。

しかしゼンベルは違った。

 

手加減をしている。

そもそもなぜ今の攻撃が通ったのかも不明だ。

自分の爪ではあそこまでの傷はつけられないだろう。

 

修行僧のスキル

〈アイアン・ナチュラル・ウェポン〉

では自身の牙や爪を強化、つまり硬く出来る。

極限まで上り詰めれば、最高硬度のアダマンタイトですらひしゃげさせる事が出来るらしい。

しかし自分がそこまで到達しているかと言われれば否、良くて鋼鉄レベルだろう。

そして、今まで攻撃が通らなかったのを見ると、オリハルコン、又はアダマンタイト、その辺の硬質金属で出来ているのだろう。

それが最後の攻撃で、通った。

それはつまり、何らかの方法で自身を弱体化したと見るのが筋だ。

 

そして、さっきの攻撃。

速すぎて見えなかった。

恐らく致命傷だろう、このまま何もしていなくても失血死。

戦いを続けられる状況ではない。

 

「俺の負けだ。」

 

自身の欲望1つで部族を潰すわけにはいかない。

 

「なかなか強かったぞ。」

 

ゴーレムが近づいていくにつれ周りの蜥蜴人達が前に立ちふさがる。

トドメをさすと思ったのだろう。

 

「なんだ?治癒魔法はいらないのか?」

 

蜥蜴人は顔を見合わせる。

戦士であろう“物”が魔法なんて使えるはずがないだろうと。

 

「どいてくれないか?死んでしまっては面倒くさくなる。」

 

その言葉で蜥蜴人達は横に退いていく。

 

「お前本当に魔法が使えるのか?」

 

「あぁ、安心しろ。」

 

「〈ヒール(大治癒)〉」

 

ゼンベルの受けた傷が見る見るうちに塞がっていく。

 

「これほどまでとはな…」

 

ゼンベルが苦笑いで礼を言ってくる。

 

「まぁ大したことは無い、もう違和感は無いか?」

 

「あぁ、全くない。戦闘前より元気になった。今ならお前を倒せそうだ。」

 

「おいおい、また俺に治癒させるのか?」

 

「冗談だ。それよりお前さんの傷はいいのか?」

 

胸に受けた傷を指差し心配しているようだ。

脳筋の癖になかなかいいヤツじゃないか。

 

「これなら問題ない、自動回復でなんとかなるからな。」

 

「お、おう。それならいいんだが、兎も角決着はつけたんだ。お前は…酒を飲めるか?」

 

「飲めない事は無いだろうが…」

 

ユグドラシル時代に手に入れた“高性能オイル”なんて全性能アップの効果がある飲み物?を飲んでた記憶が蘇る。

 

「よっしゃ!酒盛りすんぞ!準備を始めろ!」

 

ゼンベルの一声で蜥蜴人達が動き出す。

 

 

 

 

「これで飲めなかったら笑いものだな…」

ゴーレムは新しい不安と葛藤していた。




ここまで読んで頂きありがとうございました。
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