それでは6話です。
「これは…」
呆気に取られるゴーレム。
それはニメートル近い焚き火台の近くにドンと置かれた、高さ一メートル以上、口の直径は八十センチほどある壺。
「驚いたか?」
ゼンベルが自慢げにこちらを見る。
「これは四至宝と言われててだな、他にも武器やら鎧やらがあるんだ」
「四至宝?これが?」
そう言うとゴーレムが壺を出していく。
「酒の大壺なら6つあるな、これで十至宝か?」
笑いながら話すゴーレム。
「全くお前さんには敵わねぇよ」
ゼンベルが呆れて話す。
「それにしてもそれはどこで手に入れたんだ?」
「この壺は代々受け継がれている物だ、何処で手に入れたかはわからねぇ」
「そうか、しかしユグドラシルのアイテムがその辺にあるんだな」
「ユグドラシルってのはお前が来たとこだよな?
しかし名前はなんて言うんだ?一々お前って言うのもめんどくせぇ」
「あぁ、すまない名前はおみず・ウォーターだ」
ユグドラシル時代の名前を伝える。
初めて会う人にはおみずもウォーターも一緒じゃねぇかと毎回突っ込まれていた。
「オミズ ウォーターか」
「呼び方は何でもいいぞゼンベル」
「ならオミズと呼ばせてもらおうか」
「オミズか、それもそうだな」
「それよりこの壺は仕舞わなくていいのか?」
乱雑に置かれた六つの壺を指差す。
「これ別にいらないんだよね」
こんなマジックアイテムなら他にもかなりの数がある。
「と言っても邪魔だから仕舞うか。」
蜥蜴人が大人数で運んで来た大壺を片手で摘んで空間に入れていく。
「そろそろ飲もうぜオミズ」
飲みたくてたまらないゼンベルである
「俺はいつでもいいぜ」
飲めるか内心ハラハラしているオミズ
蜥蜴人達が壺から酒を汲んで行く。
ゼンベルも慣れた手つきで酒を汲むと木で出来たお椀いっぱいに入った酒を飲み干す。
「くぅ〜!」
この蜥蜴人おっさんくせぇな。
オミズもお椀を貰って酒を入れようとしたがここで問題が起きた。
腕が太すぎて壺に手が入らない。
するとゼンベルが気を利かして入れてくれた。
脳筋は優しい。
「ありがとう」
「どうって事はねぇよ」
お椀を貰って一口飲んでみる。
水…?
酒ではあるのだろうが酒本来の味はしない。
現実世界でも酒は飲んだことがある。
値段は高いし頭は痛くなるしで飲まない方がマシだったが。
兎に角何も問題が起きなければいい。
「うまいぞ」
味はしないが褒める。
こういうお世辞のようなものは大事だ。
「そうかそうか、そりゃあ良かった」
ゼンベルも笑いながら飲んでいる。
「それにしてもこの辺に人間は居ないのか?」
ここに来た理由を忘れるところだった。
情報収集をしなくては。
「この辺りにはいねぇな、ただ国はあるらしいぞ」
「そうなのか、何処にあるかはわかるか?」
出来れば国まで行って情報が欲しいところだ。
同胞もいるかもしれない。
「ここから近いなら王国?じゃねぇかな、山小人達は帝国の人間に武器を卸したりしてるらしいが」
「王国か帝国には行ったことがあるのか?」
「いや、行ったことはないな
行こうと思ったんだが、山小人が言うには人間の国には人間しかいないらしいしな
それに帝国なんかはエルフを奴隷にしてるらしいぞ」
思ってたより世紀末だ。
奴隷なんて漫画の世界かよ。
「うーん、それならこの姿じゃちょっとまずいかな」
改めて自分の姿を見直す。
「そう言えばゼンベルは強い方なんだよな?」
「あぁ、言っちゃなんだがこの辺の奴には負けねぇぞ」
お前を除いてな、と付け足しながら話す。
「なら王国はもう少し強いか?」
「わかんねぇな、基本ここから出ねぇし」
「そうか」
強さの基準がわからないのは辛い。
王国が全員カンストプレイヤーで構成されているかもしれない。
逆にレベル1ばかりかもしれない。
「どっちにしろこの姿は不味いな」
アイテムボックスを探り始める。
「これはいけるんじゃないか?」
“誰でもお手軽変身キット”
サービス終了日の数日前に高値で買ったプレイヤー製のアイテムだ。
使い方は至って簡単で自分のなりたい姿を選択するだけだ。
天使や悪魔、勿論人間にもなれるしドラゴンにだってなれる。
しかしこのアイテムにはペナルティがある。
変身後にはレベル制限がかかりレベル制限を解除するには“誰でもお手軽レベル制限解除キット”が必要なのだ。
サービス終了日も目前と言うこともあり、そんな物はいらないと買ってなかった。
これは大問題だ。
なぜならそのレベル制限は1なのだ。
上位悪魔であろうが伝説のドラゴンであろうが勇者であろうがLv1、これではただのハリボテだ。
あの時ドラゴンになって飛んでただけの自分を恨む。
「却下だな。」
大人しくサイズ変更の指輪を使う。
「なんだ小さくなれるんじゃねぇか」
「なれるんだがレベルは半分だぞ?」
「半分でも俺よりは強いんだろ?」
「まぁな」
指輪は基本2つしか装備出来ない。
その他は課金して付けるしかない。
しかし課金すればいいと言うことでもない。
課金時に選んだ指輪しか付けれない。
変えるには再課金だ。
という訳で自由に指輪を変更出来るのは2本分しか無い。
その一本分を使ったのだ。
ガチ勢で無くても耐性は埋めておきたい。
そういう物なのだ。
それにLv50になった。
カンストプレイヤーと敵対すればワンパンだろう。
なるべく目立たないようにしなくては。
ちなみに今のサイズは130センチ程度しかない。
確実になめられる。
「そう言えばゼンベルは欲しい物とかないか?」
「ねぇな」
「ほんとか?」
「あぁ、自分で強くなりたいしな」
「そういう事か、頑固な奴め」
「あいつらの性格が移ったのかもな」
「あいつら?」
「ほら、俺が山小人んとこ行ったって言ったろ?
そこにしばらくいたからよ」
「山小人って頑固そうだもんな」
「腕はいいがな、そろそろお開きにするか
寝てる奴もいるし」
「あぁ」
ゼンベルと協力して寝転がってる蜥蜴人達を1ヶ所に集める。
「ならまた明日なオミズ」
「また明日ゼンベル」
とは言ったもののゴーレムなので眠れはしない。
実質機能停止っぽくはなれるのだろうが。
大人しく村の外を眺めている事にした。
小鳥のさえずりやら虫の鳴き声やらが聞こえてくる。
ユグドラシルではこんなに風情は無かったから感慨深いものだ。
100年もひきこもらずにもう少し動いても良かったと考え直すおみず・ウォーターであった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。