デート・リ・メイク ~再度奏でしは、精霊との恋歌~   作:角に足当て

1 / 5
第一話 独奏《ソロ》

「ここは……」

 

 俺は確か……駄目だ、思い出そうとしても、記憶に靄がかかっているかの様な感じで思い出せない。

 

 すると、俺の鼓膜がミンミンと、今ではあり得ない音をとらえた。

 

「蝉?いやでも今の季節的に蝉はいないはず……」

 

 たまたま近くにあったデジタル時計が目に入る。そこには驚くべきことが記されていた。

 

「…、六年前?……」

 

 以前狂三の【十二の弾(ユッド・ベート)】により飛ばされた時とほぼ同じ状況に困惑する。

 

 しかし、あの時は道路の真ん中に寝ていたはずだ。だが今回は壊れる前の家に寝ていた。

 

 一体、どういうことだ、まさか夢?と思い壁を殴ってみても、返ってくるのは鈍い痛みのみ。

 

 そして俺は、一つの違和感に気付いた。

 

 天井が高い、床が近い、まさか……

 

「まさか俺の身長、縮んでいる?」

 

 〈贋造魔女(ハニエル)〉を使ったわけでもないのに、だ。

 〈贋造魔女〉を使えば見た目を変えることが出来る。以前狂三に飛ばされたときはいろいろお世話になった。

 

「まさか、タイムスリップってやつか?」

 

 数年前までなら、あり得ない、と笑って返せたかもしれないが、いろいろなあり得ない事象を見てきた、非現実的で、夢の中にいるかのような……

 

 もしかして、今までの記憶がすべて夢で、これが現実なのでは?という考えにも耽ってしまう。

 

 突如、門の方から声がかかってきた。

 

「五河さーん、隣の鈴本ですけどもー」

 

 その声は狂三の【十二の弾】で飛ばされた時にも聞いた声。やっぱりあれは現実?かと思ったが。

 

「うーん、いないのかしら?せっかく田舎から送ってきたんだけど、いないんじゃしょうがないわね」

 

「……え?」

 

 あの時は鈴本さんは門を開けて入ってきたのに、今回は入ってこなかった。

 

 ツー、と目から水が出てきた。泣いているのか、俺は?

 

 きっと願っていたのだろう、あの日々が確かであったことを。

 

 不意に、空が赤く輝いた。

 

 離れた場所だろう、だがはっきり見えた、巨大な火柱が、それは空中で弾け、辺り一帯を炎熱の波で覆いつくした。

 

 街全体が瞬く間に燃えていく、木も、家も。辺りからは無数の悲鳴、絶叫が聞こえた。そして俺は何かに弾かれるように家から飛び出た。

 

 俺の記憶と寸分違わぬ街を走り抜ける、目指すは例の公園、俺の妹の琴理が精霊〈イフリート〉にさせられた場所へ。

 

 俺が公園に着いたとき、そこには二人の先客がいた。

 

 泣きじゃくている幼い琴理と、ノイズのような『何か』。

 

「ファントム……」

 

 俺が名を呼ぶと同時に、こちらを向いてくるが、空から一筋の閃光が降ってきたと思うと、ファントムの姿が掻き消える。

 

「まさか、折紙もこっちの世界に……」

 

 あり得ない話ではない、恐る恐る顔を上げ、真っ赤に染まった空を仰ぎ見る。

 

「折……、紙」

 

 上空には、白のドレスに身を包み、いくつもの【羽】のようなものを見つけた。

 

 それと同時にファントムの姿も確認できた。ファントムはこの場から逃げるように空を飛んで行った。

 

 折紙もそれを追いかけるように空を飛んでいく。

 

 今すぐに追いかけなければ、と思うが、目の前の少女が目に入った。否、入ってしまった。

 

「おにーちゃん、寂しかったよぉ」

 

 霊装を展開させた琴理は、いまだに泣きじゃくっている。

 

「悪かったな、琴理、お誕生日なのに一人にさせちゃって」

 

 俺は琴理に抱き着いた。今はこのままずっと抱きしめていたいが、時間がない。

 

「だから、俺からの誕生日プレゼントだ」

 

 本当だったら黒のリボンをあげたいところだが、今の俺はそんなものは持っていない。

なんとも恥ずかしい、とりあえず琴理の霊力を封印しなければ。

 

 琴理の唇に、自分の唇を押し当てた。するとやはりというべきか、琴理の纏っていた白い和装が一瞬淡く輝き、溶けるように空気に消えていった。

 

「悪い、琴理」

 

 上半身裸になってしまった琴理に自分の着ていたパーカーを着せる。

 

「兄ちゃん、また行かなくちゃいけないとこがあるんだ」

 

「そんな、待って、一人にしないで‼」

 

 泣きながら言ってくる琴理の頭に右手を乗せ、そうしたら琴理は弱弱しいが、確かに笑みを見せてくれた。

 

 それを見ると、俺もついつい笑みを浮かべてしまった。

 

「やっぱり俺は、笑っている琴理が一番好きだぞ」

 

「……本当?」

 

「ああ、本当だ、だから約束してくれるか?琴理は強い子になるって。別に今すぐじゃなくていい、ゆっくりでいいから、強くなってくれるか?」

 

「うん、わかった。お兄ちゃんが言ってくれるなら私、強い子になる」

 

 ごしごしとまだ涙のたまった目を擦った。花が真っ赤なので不格好だが、先ほどより強く、笑顔を作ってくれた。

 

 よし、と俺は立ち上がる、折紙のいる場所へ行き、折紙に、折紙の両親を阻止する。

 

 最後に俺は座ったままの琴理に言った。

 

「安心して、兄ちゃんすぐに戻ってくる、だからここで待っててくれるか?」

 

 琴理は首を強く縦に振った。俺はそれを見たあと、折紙の両親が殺された場所に急いだ。

 

 しかし、そのせいで俺はは気付かなかった、後ろで琴理が自分の唇に指をあて、顔をまた真っ赤にしているのを。

 

 

 

 




初めまして、角に足当てと申します。
痛いですよね、あれ、特に小指
感想、アドバイスよろしくお願いします。

原作との相違点~
①鈴本さん門の中に入らず。
②琴理ちゃんリボンもらえず。
③キスをしたのは士道君から

の三点です、さあ、これが一体物語にどのような影響を与えるのか、作者にもわからないで
す。
ちなみにサブタイに深い意味はございません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。