白猫プロジェクト~賢者と黒竜を従えし者~   作:片倉政実

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政実「どうも、片倉政実です」
リオス「どうも、リオスです」
政実「今回からイスタルカ島Normal編が始まります」
リオス「イスタルカ島Normal編って事はいずれはHardもやるのか?」
政実「うん、そのつもり。といってもまだまだ先の話ではあるけどね」
リオス「ん、了解。さて、そろそろ始めてくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは第4話をどうぞ」


第2章 イスタルカ島Normal編
第4話 エルフの住む村と冒険家ギルド


 

降下を始めてから数分後、飛行島は無事に目的の島のすぐ傍へと着陸した。

 

「ここに、大いなるルーンが……?」

 

島の様子を見ながらキャトラが不思議そうに呟いたかと思うと、今度はナギアの方へと体を向けてこう言った。

 

「ねぇねぇ、ルーンドライバーを見せてよ!」

「ん? あぁ、良いぜ」

 

そう言ってナギアがルーンドライバーを見せようとしたその時、俺達はルーンドライバーの変化に気付いた。

 

「―光が、消えてる?」

「なんと―これは、どうしたことだ?」

 

さっきまで光を放っていたルーンドライバーから光が消えていた。

これはもしかして……

俺はルーンドライバーを見ながらバロンさんにこう言った。

 

「もしかしたらルーンドライバーが示してくれるのは、大いなるルーンがある島の場所だけなのかもしれませんね」

「ふむ……そうかもしれんな。……いたし方ない。ここから先は、己の力で探し出すしかあるまい」

 

バロンさんがそう言うと、それを聞いていた大工星たぬき達が少しだけ体を震わせて鳴き声を上げた。

 

「ああ、わかっているとも」

 

大工星たぬき達に優しくそう言うと、バロンさんは俺達の方を向きこう言った。

 

「リオス、ナギア。我々は、この飛行島の留守を預かろう。白の巫女殿のこと、頼むぞ」

「はい」

「はい!」

 

俺達が返事を返すと、バロンさんは満足そうに頷き、そのままアジトの中へと入っていった。

 

「よし、それじゃあそろそろ探索開始と行くか。ネロ、お前も一緒に来てくれるか?」

「(おう! もちろんだぜ!)」

「ん、ありがとうな。ナギア達も準備は良いか?」

「おう、バッチリだぜ!」

「私も大丈夫よ」

「アタシも問題無いわ!」

「分かった。それじゃあ、ヘレナさん、行ってきます」

「はいはい。皆、気をつけて行ってらっしゃい」

「「「はい!」」」 「はーい!」 「(あいよ!)」

 

ヘレナさんにそう返事をし、俺達は目的の島への上陸を始めた。

 

 

 

 

「<大いなるルーン>かぁ……! 考えるだけでもワクワクするぜ!」

「そうだな」

 

無事上陸を果たした俺達は、目の前に広がっていた草原を話をしたりしながら進んでいた。

……っと、そうだ。この島についてワイズに訊いておくか。

そう思った俺はワイズを取り出し、質問を始めた。

 

「ワイズ、この島について教えてくれるか?」

『かしこまりました。この島の名前は【イスタルカ島】と言いまして、この島にはエルフ達が暮らす村やアストラ島のようにあったような遺跡などもあるようです』

「エルフ達の村に遺跡か……」

「えっと……大いなるルーンがある場所とかは分かるのか?」

『……申し訳ありません、ナギア様。大いなるルーンのありかについては封印がなされているようです』

「大いなるルーンについてもか……でもそういうことなら仕方ないよな」

「そうだな。こうなったらバロンさんが言ってたように自分達の力で探し出すしか無いな。ワイズ、ありがとうな」

『いえいえ、また何かありましたら遠慮無くお呼びください』

「ん、了解」

 

そう言って俺はワイズを懐にしまった。

……そろそろワイズと横笛を入れるバッグみたいなのが欲しいかな。

俺がそう思っていると、

 

「にゃにゃっ!?」

 

突然キャトラが大きな声を上げた。そして何かの匂いを嗅ぐように鼻を動かすとこう続けた。

 

「ねぇねぇ、この香り……」

「どうしたの?」

 

アイリスがキャトラにそう訊いたが、キャトラはそれに答えずそのまま目の前の道を駆け出した。

 

「こっちよ! 早く、早くぅ~!」

 

その様子を見てアイリスが慌てたようにキャトラに声を掛けた。

 

「キャ、キャトラ! どこに行くの!?」

「あっちから良い香りがしてるの! 人が住んでるんじゃない!?」

 

そう答えるとキャトラはそのまま走って行ってしまった。

 

「もう、キャトラったら……」

 

アイリスは呆れたような声でそう言ったが、すぐに微笑むと俺達にこう言った。

 

「私達も行ってみましょう。もしかしたらルーンのお話が聞けるかもしれません」

「そうだな。このまま当てもなく探すよりもその方が良い気がする」

「リオスの言う通りだな。それに早く行かないとキャトラを見失うかもしれないしな」

「ふふっ、そうですね。さぁ、行きましょう」

「ああ」 「おう!」「(あいよ!)」

 

アイリスにそう返事を返し、俺達はキャトラの後を追うために草原を走り出した。

 

「あっ、来たきた! おーい、こっちよこっち!」

 

走り始めてから数分後、座りながら俺達を呼んでいるキャトラの姿が見えた。そしてその後ろには村のような物が見えていた。

 

「はぁっ、はぁっ……やっと見つけた……」

 

そう言いながらアイリスはキャトラに近づき、キャトラの事を抱き抱えるとこう言った。

 

「もう、キャトラ? いきなり走り出したらダメでしょ?」

「えへへ、ゴメンゴメン。次からは気を付けるわ」

 

そう話しているアイリス達の横を通り、俺達は前方の村について話を始めた。

 

「あれがワイズの言ってたエルフ達の村なのかな?」

「んー、どうだろうな。とりあえず行って確かめてみるか」

「そうだな……って、そういえばネロはどうするんだ?」

「へ? あ、そうか……」

「(そういえばそうだな……)」

 

ナギアの言葉を聞き、俺とネロは顔を見合わせながらそう言った。

しまった、その事をすっかり忘れてたな……ネロはドラゴンなわけだから、このまま村に入ろうとすると、いきなり取り囲まれる可能性があるな。さて、どうしたもんかな……

そう考えていると、

 

「あれ? どうかしたの?」

「何か悩んでるみたいだけど……?」

 

アイリスとキャトラが歩きながら俺にそう訊いてきた。

 

「ああ、実は……」

 

そう言って俺はアイリス達にナギアからの質問の内容を伝えた。

 

「むむむ、確かにそうね……」

「私達はネロが危ないドラゴンじゃないって知っているけれど、他の人から見たらドラゴンが襲ってきたように見えてしまうかも……」

 

ネロを見ながらキャトラとアイリスが心配そうな声でそう言う。それを見て俺達も心配そうな顔を見合わせる。

さて、本当にどうしようかな……

そうしてしばらく悩んでいると、

 

「うー……こうやって悩んでてもしょうが無いわよね……」

 

突然キャトラがそう言い始めたかと思うと、俺達の事を見回してこう続けた。

 

「もうこうなったら当たって砕けるしか無いわ! このまま村に行きましょう!」

「でもキャトラ……」

「ネロの事は、私達がしっかり説明すればきっと分かってくれるわ!」

「キャトラ……」

 

……そうだ、ネロは俺達の仲間なんだ。同じ仲間である俺達がコイツの事をしっかりと守ってやらないとな。

そう思いながら周りを見ると、ナギア達も決心をしたような顔で頷いた。それを確認し、俺は前を向きこう言った。

 

「よし。行こう、皆!」

「おう!」 「うん!」 「ええ!」 「(おうよ!)」

 

そして俺達は草原を再び歩き出した。

 

 

 

 

歩き出してから数分後、俺達は村の入り口にたどり着いた。そしてそのまま村の中へと足を踏み入れると、俺達の目の前に長い耳を持った1人の男性が通りがかった。

長い耳……てことは、この人はエルフか。

 

「……おや?」

 

エルフの男性は俺達に気付くと、俺達の方へと近付いてきた。

 

「わわっ、もしかして……エルフ!?」

 

キャトラが驚いたような声を上げると、エルフの男性は少しだけ笑いながらこう言った。

 

「エルフがそんなに珍しいのかい? 私に言わせれば、人の言葉を操る君の方が珍しく見えるけれど。そして……」

 

エルフの男性は俺の後ろにいるネロの事を興味深そうに見ると、俺達にこう訊いた。

 

「君の後ろにいるのは、もしかしてドラゴン……かな?」

 

その言葉を聞いた瞬間に、俺達の間に緊張が走った。そしてそれに対して俺が答えようと口を開いたその時、エルフの男性がネロに近づき、じっくりとネロの事を見始めた。

 

「(な、何だよ……!)」

 

ネロが少し後ずさりをしながらそう言うと、エルフの男性は笑いながらこう言った。

 

「あははっ、ごめんごめん。君がどういうドラゴンかを知りたいと思ってね。でもその様子だと、君は村を襲ったりするようなドラゴンでは無いようだね」

「(ああ、もちろんだ。村とかを襲ったところでお互いに損をするだけだしな)」

「ははっ、そうだね。疑って悪かったよ、ドラゴン君。君達もそんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。私はもう彼を疑ってはいないからね」

 

その言葉を聞き、俺達は肩の力を抜いた。そしてそれを確認すると、エルフの男性は微笑みながら自己紹介を始めた。

 

「私の名はエレサール。君たちは―」

 

エレサールさんがそう言った時、

 

「あら、珍しいわね。ウチのギルド支部へ冒険家さんだなんて」

 

そう言いながらエルフの女性が俺達の所へと歩いてきた。

ギルド支部……って何だ?

 

「あの……ギルド支部って何ですか?」

 

そう訊くと、エルフの女性はとても驚いたような顔になった。

 

「へ……ギルド支部って何か、って? まさか、野良の冒険家……じゃないわよね。あなたたち、どうしてこんな田舎の島に?」

「それは……」

 

俺は大いなるルーンを求めてこの島にたどり着いた事を説明した。すると、

 

「ははっ、また大きな獲物を狙ったね。冒険家ギルドの存在も知らずに大いなるルーンとは」

 

エレサールさんが笑いながら俺達にそう言った。

エレサールさんの言い様から察するに、冒険家ギルドっていうのは冒険家にとって初歩中の初歩って事になるみたいだな……

俺がそう考えていると、キャトラがアイリスの腕の中でジタバタしながらエレサールさんに怒り出した。

 

「ちょっと、なによ~っ! こうみえてもアイリスたちは―」

 

キャトラがそう言った時、エルフの女性がエレサールさんの事をたしなめた。

 

「こーら、言い過ぎよエレサール。あなたたち、ごめんなさいね。私の名前はラーレッタ。冒険家ギルドっていうのは、その名の通り冒険家を支援するために作られた協会なの。よほど小さな島でない限り、世界各地に支部があって―正式なライセンスを持つ冒険家ならいつでもサポートを受けられるのよ」

「なるほど……」

 

冒険家ギルドか……大いなるルーンを探すにあたって、これから力を借りないといけない時が来るかもしれないな……

そう考えていると、ラーレッタさんが微笑みながら俺達にこう訊いた。

 

「それでどうかしら。あなたたち、正式にギルドへ登録してみる?」

 

ラーレッタさんの言葉を聞き、俺達は1度顔を見合わせたそして同時に頷づくと、俺が代表してラーレッタさんにこう言った。

 

「はい、お願いします」

「OK、わかったわ」

「それじゃあ……!」

「でも……エレサールの言う通り、今のままじゃ、ちょっと心もとないわね」

 

そう言うとラーレッタさんは考え事を始めた。そして何かを思いついたような顔になると俺達にこう言った。

 

「いくつか試験をさせてくれない? クリアできたらライセンスを発行してあげる。それで良いかしら?」

「「「はい!」」」

 

俺達が声を合わせてそう言うと、ラーレッタさんは微笑みながらこう言った。

 

「無理はしちゃダメよ? それじゃあ、行ってらっしゃい!」

「よし。皆、やるぞ!」

「おう!」 「ええ!」 「もちろんよ」 「(おう!)」

 

こうして俺達はライセンスを発行して貰うために試験の場へと向かった。

 

 

 

 

「これで……最後だ!」

 

俺はネロに乗りながら、手に持っている【グラントスピア】をグンタイバチへと振るった。攻撃を受けたグンタイバチは地面へと落下するとそのまま跡形も無く消滅した。

……よし、これで試験は全部終わったな。

肩で息をしながらそう思っていると、

 

「リオス、お疲れ!」

「お疲れさま、リオス」

「お疲れさま!」

 

そう言いながらナギア達がネロの周囲に集まってきた。

 

「ああ、お疲れさま。ネロもお疲れさまだな」

「(おう、サンキューな。んで、試験は今ので全部だったよな?)」

「ああ、そうだ。後はラーレッタさんに報告しに行くだけだな」

「(そうか。そんなら全員俺に乗ってくか? 空から行った方が早く着くと思うぜ?)」

「いや、気持ちだけ受け取っておくよ。ネロだって疲れてるだろ?」

「(んー……別にこんなのは疲れた内に入らねぇけどな)」

「そうかもしれないけど、無理をするのは良いとは言えないからさ」

「(まあ……確かにそうかもしんねぇな)」

「わかってくれたようで何よりだよ。よし、それじゃあ、ベルン村に帰るぞ」

「おう!」 「うん!」 「了解!」 「(あいよ!)」

 

俺達は試験を行った果樹園を後にし、ベルン村へと戻った。

 

 

 

 

ベルン村に戻ってくると、ラーレッタさんが笑顔で俺達にこう言った。

 

「おめでとう! 見事クリア出来たみたいね」

「ありがとうございます、ラーレッタさん」

 

俺がそう返事を返すと、キャトラがラーレッタさんに向かって得意気にこう言った。

 

「これで私たちの力を認めてくれたでしょ?」

 

すると、

 

「ああ、そうだな―君たちは思っていたよりずっと優秀な冒険家だったようだ。非礼をお詫びするよ」

 

エレサールさんがそう言いながら俺達に頭を下げた。

 

「私もよ。だから、ちょっと早いけれどライセンスを発行するわね」

 

そう言ってラーレッタさんは銀色をした腕輪のような物を俺達に渡してくれた。

これで大いなるルーン探しの旅もだいぶ楽になるな。

ライセンスを見ながらそう思っていると、

 

「えへへ……やったね! リオス、ナギア!」

 

アイリスの腕の中からキャトラが笑いながら俺達に明るくそう言った。俺がそれに返事を返そうとした時、

 

「それじゃ、お支払いをお願いできる?」

 

ラーレッタさんの口から耳を疑うような言葉が聞こえた。俺達が驚いたような顔をしていると、ラーレッタさんは微笑みながらこう言った。

 

「あら、この世に、タダなんてものはないのよ。ライセンスの発行費用、事務手数料、それと試験費用で―」

 

そう言いながらラーレッタさんは幾つかの数字を紙に書き出していく。

えっと……今書いてある数字だけでも俺達には払えない金額なんですが……

そう思いながら紙を見ていると、ラーレッタさんが俺達に合計の金額を見せてくれた。

うん、一生かかっても払いきれない金額になってるな、これ。

 

「すいません……払えません……」

 

俺はとても小さな声でそう言った。

 

「払えないようなら……仕方ないわね」

 

そう言うと、ラーレッタさんは北の方角を指差しながら俺達にこう言った。

 

「かわりに、村の北の<聖なる森>にすむフォレストクイーンを討伐してもらおうかしら」

「フォレストクイーン……ですか?」

「ええ。フォレストクイーンの果実は万病に効く薬になるのだけれど、ちょうど、切らしてしまったのよ」

 

ラーレッタさんはちょうどの部分を強調するようにそう言う。

この言い方だと絶対にちょうどでは無い気がするな……

 

「な~んか、いいように使われてる気がするんだけど……」

 

似たような事を思ったのか、キャトラがラーレッタさんにそう言うが、

 

「気のせいよ。き・の・せ・い」

 

当のラーレッタさんはキャトラの言葉を明るく否定した。

何か納得できないけど、これでライセンスの発行費用がチャラになるなら、やるしか無いよな。

そう思った俺はナギア達を見回しながらこう言った。

 

「皆、ライセンスの発行費用のために頑張るぞ!」

「「おー!」」 「ええ!」 「(おうよ!)」

 

こうして俺達はフォレストクイーン討伐のために、<聖なる森>へと向かった。

 

 

 

 

「……っと、どうやらここが件の<聖なる森>みたいだな」

 

ベルン村を出発し、魔物達を退けながら道中にある洞窟を抜けて、俺達は無事<聖なる森>へと辿り着いた。

 

「ここにいるっていうフォレストクイーンを討伐すれば良いんだよな?」

「ああ、そうだ」

 

そんな事を話しながら森の中を進んでいると、

 

「少しはたくましくなったようだな、リオス、ナギア」

 

そう言いながらエレサールさんが俺達の前に姿を現した。

 

「エ、エレサール!?」

「どうしてここに……?」

 

アイリス達が驚きながらそう訊くと、俺達の方へと歩きながらエレサールさんがわけを話してくれた。

 

「ここから先はエリアC―危険度は低いとはいえれっきとした立ち入り制限区域だ。念のため、私も同行しようと思ってね」

「心配……してくれてるんですか?」

「まあ……そんなところだ。それに少し、気になることもある」

「気になる……こと?」

 

キャトラがそう訊くと、エレサールさんは頷いてこう言った。

 

「このところ、島の魔獣たちが凶暴化しているような感じがあってね。この森がエリアCに指定されたのもそのためだ。今回はその調査も兼ねて、といったところさ」

「ふ~ん。アンタも結構、忙しいのね」

「ははっ、まあね」

「わかったわ。それじゃ、一緒に行きましょ!」

「ああ。皆、よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします、エレサールさん」

 

そう言いながら俺とエレサールさんは握手を交わすと、フォレストクイーンのいる場所による向かって再び歩き出した。

 

 

 

 

「ほぅ……そんなルーンもあるんだね」

「はい」

 

エレサールさんにワイズの事を話しつつ、俺達はフォレストクイーンのいる場所へと向かっていた。すると、

 

「あっ、そういえば……」

 

ナギアが何かを思い出したような顔でそう声を上げた。

 

「どうかしたのか?」

「俺達ってさ、フォレストクイーンがどんなのか知らないまま来てたと思ってさ」

「そういえば……そうだったな」

 

そう言って俺は手の中にあるワイズに声を掛けた。

 

「ワイズ、フォレストクイーンってどんな奴なんだ?」

『そうですね……簡単に説明しますと、赤い頭をした植物ですね』

「赤い頭をした植物か……」

 

そう言いながら森の中を歩いていたその時、俺達の目の前に突然赤い頭の巨大な植物が姿を現した。

……え? まさかこれがフォレストクイーンなのか?

 

「にゃにゃっ!? で、ででで、でっかい花が暴れてる!?」

「バカな!? フォレストクイーンがあそこまで巨大なはずが―それに、このまがまがしい闇の気配は―!?」

 

エレサールさんがそう言った時、フォレストクイーンが俺達に向かって咆哮する。

こうなったら……やるしかないな。

 

「皆、行くぞ!」

「おう!」 「ええ!」「ああ!」 「(あいよ!)」

 

俺の呼びかけに答えつつ、ナギア達が手持ちの武器を構える。そして俺もネロに乗り、背中に差していた【グラントスピア】を構える。

さぁ……勝負だ!

心の中でそう声を上げ、俺はネロと共にフォレストクイーンに突進した。

 

 

 

 

「食らえ、【バスターブレード】!」

「行くぞ、ネロ!」 「(あいよぉ!)」

 

ナギアの雷を纏った一撃と俺の槍とネロのブレスの同時攻撃がフォレストクイーンにヒットする。だがフォレストクイーンは1度怯んだものの、すぐに体勢を直し、両方の蔓を鞭のようにして俺達に振るう。

 

「ぐっ……!」

「ぐあっ……!」 「(ちいっ……!)」

 

その攻撃をもろに受け、俺達は後方へと吹き飛ばされる。

 

「2人とも大丈夫!?」

「くっ……! これでどうだ!」

 

エレサールさんが数発の矢を放って、フォレストクイーンを牽制している間に、アイリスが俺達のそばまで走り、瞬時に治癒魔法を詠唱してくれた。

ふぅ……これで少しは楽になったな。

 

「ありがとうな、アイリス」

「アイリス、ありがとう」

「ううん、気にしないで、2人とも。それよりも……」

 

そう言いながらアイリスはエレサールさんの方を見る。エレサールさんはフォレストクイーンの蔓や浴びせてくる毒を躱しつつ、ひたすら矢を放ち続けていた。

さて……どうやって闘えば良いんだ……? 近くにいると毒を浴びせてきたり、捕食しようと噛み付いてくる。逆に遠くにいるとあの蔓を鞭のようにしならせてきたり、地中を伝って蔓で突き上げてくる。そうなると今エレサールさんがやってるみたいに、攻撃を食らわないようにしつつ攻撃するのが良いかもしれないな。

俺は再びネロの背中に乗ると、【グラントスピア】の魔力を解き放った。

 

「まずは……『ボルティックソウル』!」

 

【グラントスピア】に埋め込まれているオーブが黄色く染まると同時に、穂の先から黄色い光が放たれ、俺達の体と武器を包み込む。

 

「おぉ……? 何だかさっきよりも体が軽い……?」

 

エレサールさんがさっきよりも早くフォレストクイーンの攻撃を躱しつつ矢を放っていく。

よし、今度は……!

 

「次はこれだ! 『ブレイジングソウル』!」

 

オーブが今度は赤く染まると同時に穂の先から赤い光が放たれ、再び俺達と武器を包み込む。

これで皆の武器は炎の魔力を纏った上に、皆の攻撃力と速さが高まったはずだ。

そう思いながら横を見ると、『ブレイジングソウル』の効力で赤いオーラを纏ったナギアが剣を握りしめて立っていた。そして俺達はアイコンタクトを交わすと、再びフォレストクイーンに向かって走りだした。

さぁ……こっから巻き返していくぞ!

 

 

 

 

「今度こそ終わりだ! 『ダブルスラッシュ』!」

「ネロ! 合わせていくぞ!」「(おうよ!)」

「「ブレイジングソニック!」(ブレイジングソニック!)」

 

ナギアの渾身の斬撃とネロのブレスを載せた【グラントスピア】から放つ衝撃波がフォレストクイーンを襲う。

 

「グオォォ……」

 

フォレストクイーンは呻き声を上げながら徐々に萎んでいき、やがて消滅した。

 

「はあっ、はあっ……勝った、のね……」

「な、なんなのよもう~。こんな植物がいるなんて聞いてないし!」

 

息を切らしているアイリスの横で、涙目のキャトラがフォレストクイーンがいたところを見ながらそう言う。

 

「本来、フォレストクイーンはもっと手軽に討伐できる種のはずなんだが―」

 

エレサールさんはフォレストクイーンのいたところを見ながらそう言うと、俺達の方を振り返りこう続けた。

 

「私はこのまま残って調査を続ける。君たちは村に戻って、ラーレッタたちにこの事を伝えてくれないか? 何か嫌な予感がする」

「分かりました」

「エレサールさん、どうか、お気を付けて―」

そう言って俺達はベルン村に向かって来た道を戻っていった。

 

 

 

 

ベルン村に戻り村の中に入ると、村の入り口近くにいたラーレッタさんが俺達に声を掛けてきた。

 

「あら、お帰りなさい。フォレストクイーンは……って、その顔は……向こうで何かあったみたいね」

「はい。実は……」

 

俺はさっきあったことをラーレッタさんに話した。

 

「森の中で、そんな事が―!?」

 

俺の話を聞き、ラーレッタさんは1度驚いたものの、すぐに真剣な顔に戻りこう言った。

 

「ありがとう。村のみんなにも、森の中に入るときは気をつけるように伝えておくわね。あなたたちは、これからどうするの?」

「俺達は改めてこの島にある大いなるルーンを探したいと思います。元々そのためにこの島に来たわけですから」

「<大いなるルーン>……本気なのね」

 

ラーレッタさんがそう言うと、キャトラが強めの口調でこう言った。

 

「ウソなんてついたってしょうがないじゃない!」

「そうね、悪かったわ。それじゃあ、私の知っていることを全て教えてあげる」

 

そう言うと、ラーレッタさんは大いなるルーンとおぼしき物のありかについて話してくれた。

 

「この島には昔から、エルフの秘宝が眠っている、という伝説があるの。そんなに広くもない島だから、秘宝が眠っているだろう場所もわかっているわ。島の北端の遺跡よ。この島に、あなたたちのいう<大いなるルーン>が眠っているとすればそこ以外には考えられないわ」

「ふーん……なんだか簡単に手に入っちゃいそうじゃない?」

 

キャトラがそう言うと、ラーレッタさんは少しだけ笑いながらこう続けた。

 

「その分、既に発掘も進んでいるわ。最近ではわざわざ寄り付く人もいないし―もしかしたら骨折り損になるかもね」

「それでも構いません。色々と教えてくれてありがとうございます」

アイリスの言葉を聞き、ラーレッタさんは微笑みながら俺達にこう言った。

 

「どういたしまして。気をつけていってらっしゃい」

「「「はい!」」」 「わかったわ!」 「(了解!)」

 

声を揃えてそう返事を返した後、俺はナギア達を見回しこう言った。

 

「よし。皆、絶対に<大いなるルーン>を見つけるぞ!」

「「「おー!」」」 「(おうよ!)」

 

そして俺達はエルフの秘宝が眠っているという島の北端の遺跡を目指して出発した。




政実「第4話いかがでしたでしょうか」
リオス「この感じだと……イスタルカ島編は俺はドラライでの戦闘がメインになるのか?」
政実「一応そのつもりではあるけど、もしかしたら変えてくかもしれない」
リオス「なるほどな。さて、次回はいつ頃投稿出来そうなんだ?」
政実「正直なところまだ未定。近い内に投稿したいとは思ってるけどね」
リオス「了解した。さて、そろそろ締めてくか」
政実「だね」
政実・リオス「それではまた次回」

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