リオス「どうも、リオスです」
政実「今回の話はイスタルカ島Normalシナリオの中盤辺りである、エレサール戦のところです」
リオス「今回で中盤辺りって事は、次でイスタルカ島Normalシナリオは終わりになるのか?」
政実「そうなるかな」
リオス「分かった。
さて……それじゃあ、そろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、第5話をどうぞ」
北端にある遺跡を目指して、ベルン村を出発した俺達は、その途中にある樹海へと足を踏み入れていた。
「ここは樹海か……
皆、足元もちょっと悪いみたいだし、ここを抜けるまでは慎重に進むことにしよう」
「おう!」
「うん!」
「オッケーよ!」
「(了解だ!)」
そして足下に気を付けながら、ゆっくりと樹海の中を進んでいると、先の方に見覚えのある姿が見え始めた。
「……あれ? あそこにいるのって、エレサールじゃない?」
「あ、本当だ。
せっかくだし、何か分かったことがあるか訊いてみようぜ!」
「そうね。
お~い、エレサール~!」
キャトラがエレサールさんに大きな声で呼びかけると、エレサールさんはゆっくりと俺達の方へと体を向けたが、そのまま微動だにする事なく、俺達の事をジッと見始めた。
(……なんだ、この違和感……?)
俺がその違和感について考え始めたその時、突然ワイズが大きな声を上げた。
『……っ! みなさん、気をつけてください! エレサール様から不穏な気配を感じます!』
「不穏な……気配……?」
「それって……?」
ワイズの言葉にナギアとキャトラが疑問の声を上げたその時、エレサールさんが背負っていた弓を降ろし、そのまま矢をつがえると、俺達に向かって構えた。
「え、エレサール……?」
キャトラが不安そうな様子で言ったその瞬間、エレサールさんはアイリスに向けて矢を放った。
「え……!?」
咄嗟のことだったためアイリスはもちろんのこと、俺達もすぐに反応する事が出来ず、信じられないといった表情を浮かべ、そのまま立ちすくんでしまった。
しかし……
「はあぁーーっ!!!」
アイリスの隣に立っていたナギアだけが反応し、瞬時にアイリスの目の前に立つと、剣を勢い良く振り抜き矢を遠くへと弾き飛ばした。そしてナギアはアイリスの方へ振り向くと、真剣な表情を浮かべながら優しく声を掛けた。
「アイリス、大丈夫か?」
「う、うん……」
アイリスはまだ少しだけ状況を受け入れられていない様子で返事をしたが、一度深呼吸をして心を落ち着けると、ニコッと微笑みながらナギアにお礼を言った。
「ありがとう、ナギア」
「どういたしまして」
ナギアはアイリスの言葉を聞き、小さく笑いながら返事をした後、アイリスを庇うように反対側の腕を広げながらエレサールさんがいる方へ向き直った。それを見ながら俺はナギアに声を掛けた。
「ナギア、お前もケガとかは無いよな?」
「ああ、もちろんだ。でも……!」
ナギアがとても警戒した様子で言うのに頷いて反応を返した後、俺は背中に差していた【ソードオブマギア】を構えつつ、声を荒げないように気を付けながら、エレサールさんに声を掛けた。
「……エレサールさん、何でこんな事をしたのか、説明をして貰えませんか?」
「そうよ! 何でいきなり私達に攻撃を仕掛けてきたのよ!」
しかしエレサールさんは俺達の声に答えることなく、再び矢を弓につがえそのままゆっくりと引き絞ると、今度はナギアを狙って矢を放った。
(さっきは突然だったけど、今度は問題ない!)
俺は瞬時に【ソードオブマギア】に填められているオーブに水の魔力を強く籠め、向かってくる矢を見ながら剣を構えた。
「させるか!【フリージングスラッシュ】!!」
俺が勢い良く【ソードオブマギア】を横に振り抜くと、冷気を纏った水色の斬撃が矢に向かって飛んだ。そして矢を切り裂きながら凍てつかせると、そのままエレサールさんに向けて飛んでいった。しかしエレサールさんはそれを軽々と跳ぶことで避け、そのまま近くにあった木の枝に着地すると、凄い速さで辺りの木の上を跳び回った。
(マズいな……早くエレサールさんの位置を特定しないと……!)
エレサールさんが移動しながら出しているガサガサッという音、そして風が木の葉を揺らすことで起きるサァーッという音を聞きながら、エレサールさんの位置を探っていたその時、再びワイズが大きな声を上げた。
『皆さん! 真上に注意して下さい!』
「真上……!」
俺達が真上に注意を向けた瞬間、エレサールさんが片手に小型のナイフを振り上げながら勢い良く降りてきた。
(弓だけじゃなく、ナイフまで持ってたのか……!)
「皆! 離れてくれ!」
俺は皆に大きな声で呼び掛けると、ナギア達はコクンと頷いた後、瞬時に俺から離れた。それを見てから俺は【ソードオブマギア】の刃でエレサールさんの持つナイフを受け止めた。そして刃同士がぶつかった瞬間、キンッという甲高い音と共に小さな火花が散った。
「く……はあぁっ!!」
俺は地面を強く踏みしめながら、【ソードオブマギア】に更に力を籠め、勢い良く振り抜くと同時にエレサールさんが持つナイフを弾き飛ばした。弾き飛ばされたナイフは近くの木に突き刺さったが、エレサールさんはそれを見るや否やすぐにナイフに近付いた。そして木からナイフを引き抜き、ナイフの切っ先を俺達に向けると、静かに俺達の様子を窺い始めた。
「エレサールさん、一旦落ち着いて下さい!」
「アイリスの言う通りです! 何があったんですか!?」
アイリス達が警戒と不安、そして心配が入り混じった表情を浮かべながら訊いたが、エレサールさんはそれに答えることなく、向けていたナイフを下ろし、そのままそれを懐にしまうと、ゆっくりと樹海の奥の方へと消えていった。
(エレサールさん……いったい何があったっていうんだ……?)
「どどどど、どういう事なの!? 何でエレサールはアタシ達を襲ってきたのよ!?」
「分からない……でも」
アイリスはエレサールさんが消えていった方を見ながら、静かな声で言葉を続けた。
「エレサールさんから感じた恐ろしくて、ゾッとするようなあの感じ――
カイルさんと一緒に戦った、あのドラゴンのようだった……」
「それって……や、【闇】って事……?」
『はい、断言は出来ませんが……
私もエレサール様からあのドラゴンとから感じたモノと同様のモノを感じました……』
「やっぱり……そうなのね……」
アイリスは呟くように言った後、俺とナギアの事を交互に見ながら言葉を続けた。
「ナギア、リオス、この島、何か変よ――ここからは一層慎重に進みましょう」
「ああ」
「分かった」
そして俺達は、周りの様子に注意を払いながら、再び樹海の中を進み始めた。
エレサールさんとの戦闘の後、俺達は途中で休憩を挟んだり、現れた魔物達との戦闘を繰り広げたりしながら樹海の中にある獣道を進んでいた。そしてしばらくの間歩き続けていたその時、俺達の目の前にゴツゴツした岩などが転がっている山道が見えてきた。
(獣道の次は山道か……道の様子を見るに、必ずしも進みやすいわけじゃないみたいだし、さっきのエレサールさんのこともある。まだまだ気をつけて進まないとな)
俺は道を進みながら皆の方へ顔を向けた。
「皆、もうわかりきってることだけど、足元や魔物に注意しながら進もう」
「ああ」
「うん」
「分かったわ」
「(おう)」
皆の返事を聞いた後、俺は顔を前へと戻し、皆と一緒に樹海を抜け、山道へと入っていった。そして周りの様子に注意を払いながら山道を進み続けていると、徐々に広場のようなものが見えてきた。
(広場……あそこなら休憩を挟んでも問題は無いかもしれないな)
進みながら考え事をしていると、ナギアが少し明るい調子で声を上げた。
「あっ、あそこにあるのって……広場だよな?」
「あら、そうみたいね。
ここまでそれなりに歩き続けてきた事だし、あそこで少し休憩を挟みましょうか」
「そうだな」
「うん」
「(俺も賛成だぜ)」
「よし……それじゃあ、早く広場に……」
その時、突然ワイズが大きな声を上げた。
『皆さん! 背後から不穏な気配を感じます!』
「背後……!?」
俺が振り向いた瞬間、顔の横を一本の矢が通りすぎっていった。
(矢……って事は、まさか……!)
俺達はすぐに矢が飛んできた方へ顔を向けた。すると大きな岩の影からエレサールさんが殺気を放ちながら姿を現した。
(やっぱりか……!)
その姿を見て俺達が戦闘をする体勢を取ろうとしたその時、突然エレサールさんが片手で頭を抑えながら苦しそうに呻き声を上げ始めた。
「ううぅッ……!! ぐうううッ!!」
「え、エレサール……」
エレサールさんの様子を見てキャトラが心配そうな声を上げたが、エレサールさんは苦しそうに呻き声を上げ続けるだけだった。そしてその内に、エレサールさんの体から暗い紫色の【闇】が現れ、エレサールさんの体に纏わり付き始めた。
(アレがエレサールさんに取り憑いてる【闇】か……!)
「エレサールさん! 負けないで下さい!」
「エレサールさんは【闇】なんかに負けない人だって信じてます!」
「エレサールさん! 自分を取り戻して!」
「エレサール! 頑張って!」
「(エレサール! 【闇】なんてお前の力で追い出しちまえ!)」
俺達が必死にエレサールさんへ声を掛けると、エレサールさんに纏わり付いていた【闇】が更にその濃さを増した。するとエレサールさんの目が赤く輝き、俺達の事を見ながら途切れ途切れに言葉を発し始めた。
「シロノ……ミコ!…………キエ……ロ……!」
「エレサールさん……」
ナギアが呟くような声で言うのを聞きながら、俺は背中から【ソードオブマギア】を下ろした。
(こうなったら一度エレサールさんを落ち着かせて、その後にアイリスに【闇】を払ってもらうしかない……!)
「ナギア、ネロ……アイリス達を守りながら急いで広場に向かってくれ」
「向かってくれって……」
「(お前、まさか……!)」
「大丈夫だよ。あくまでもお前達が広場に着くまでの足止めをするだけだからな」
「リオス……」
「(リオス……)」
ナギアとネロは呟くような声で言った後、静かにコクンと頷いた。
「よし……行こう、皆! ネロ、アイリス達を背中に乗せてやってくれ!」
「(おうよ!)」
ネロは大きな声で返事をすると、アイリス達が乗りやすいようにゆっくりとしゃがみ込んだ。
「(ほら、アイリス、キャトラ、早く乗れ)」
「ネロ……でも……」
「足止めだけと言っても、やっぱりリオスを置いていくのは……」
アイリス達が俺の事を見ながら躊躇をしていたその時、エレサールさんが弓に矢をつがえ始めた。
(マズい……!)
俺はすぐに【ソードオブマギア】に炎の魔力を籠め、オーブが赤色に染まったことを確認した後、剣を構えた。
「【フレイムスラッシュ】!」
そして剣を勢い良く振り抜き、エレサールさんに向けて炎の魔力を纏った斬撃を飛ばした。エレサールさんは自分に向かって真っ直ぐ飛んでくる斬撃を見ると、急いで矢をつがえるのを中断し、横っ跳びで斬撃を躱した。
(よし……今の内に皆を向こうに行かせないと……!)
俺は後ろを振り向くと、大きな声でアイリス達に呼び掛けた。
「アイリス! キャトラ! 俺の事は心配しなくて良い! だから、早くナギア達と一緒に広場に向かってくれ!」
「「リオス……」」
アイリス達は呟くように声を揃えて言った後、覚悟を決めたような表情を浮かべ、そのままネロの背中に乗った。ネロはそれを確認すると、ナギアと一緒に広場の方へと走っていった。
(よし……後は足止めをしながら、エレサールさんから目を離さないようにしつつ、徐々に後退していけば……)
俺がエレサールさんの様子を窺いながら、【ソードオブマギア】を握り直していると、ワイズが静かな声で話し掛けてきた。
『リオス様……周囲から幾つもの気配を感じます』
「幾つもの気配……それって……」
『いえ、エレサール様から感じる物とは別ではありますが……徐々にその気配の数が増えている気が致します……』
「【闇】じゃない気配……か」
(何だか嫌な予感がする……早くエレサールさんを広場に誘導して、アイリスに【闇】を払ってもらった方が良いかもしれないな)
俺は【ソードオブマギア】に雷の魔力を籠め、オーブが黄色に染まったことを確認した後、切っ先を天へ向けた。
「【ライトニングボルト】!」
切っ先から放たれた雷はエレサールさんに向かって飛んでいったが、エレサールさんはそれを軽々と前に跳んで避けると、滞空をしながら矢筒から矢を数本取り、瞬時に矢をつがえると俺に向かって矢を放ってきた。
(そう来るか……それなら!)
俺は炎の魔力を高め、オーブの色を確認した後、迫る矢へと切っ先を向けた。
「【バーニングウォール】!」
その瞬間、俺の目の前に大きく燃え盛る炎の壁が出現した。壁は飛んできていた矢を受け止めると、一瞬のうちに焼き尽くし、そのまま細かい灰に変えると、跡形も無く姿を消した。そしてそれを見た瞬間、俺は軽い脱力感に襲われた。
(はぁっ、はぁっ……魔力を考えてたよりも使いすぎたかな……でも、そろそろナギア達も広場に着いたはずだし、エレサールさんを誘導しつつ、俺も早く行かないと……)
少しだけ息を切らせながら、エレサールさんの姿を探すために周りを見回していると、突如背後から鋭い殺気を感じた。弾かれたように後ろを振り向くと、そこには無表情でナイフを振り上げているエレサールさんの姿があった。
(しまっ……!?)
そしてナイフが俺に振り下ろされようとしたその時、エレサールさんの体が突然黒い何かによって横の方へと吹き飛ばされ、近くにあった岩に激突した。
(……え?)
俺が正面に向き直ると、そこにいたのは、相棒の黒竜であるネロの姿だった。
「ネロ……? お前、どうしてここに……?」
「(どうしてって……そりゃあ、アイツらが無事に広場に着いたってのに、お前が中々来ねぇからだろ?)」
ネロがやれやれといった様子で言うのを聞きながら、俺は胸を撫で下ろしていた。
「そっか……無事に着いてたのか」
「(あぁ。
さて……あそこで寝てるエレサールを拾って、俺達もそろそろ行こうぜ?)」
「寝てるって……まあ、そうだな。早くアイリスに【闇】を払ってもらうためにもさっさと行くか」
「(おうよ!)」
俺はネロに手伝ってもらいながらネロの背中にエレサールさんを乗せた後、俺自身もネロの背中に乗った。
(ふぅ……さて、これでなんとか……)
その時、近くからエレサールさんから感じる物とは別の【闇】の気配を感じた。
「……ネロ」
「(……ああ、急ぐぞ!)」
そして俺達は、ナギア達が待つ広場へ向かって走りだした。
走り出してから数分後、俺達が広場の入り口に近付くと、音を聞きつけたナギア達が駆けつけてきた。
「リオス! ネロ! ワイズ! 無事だったんだな!」
「ああ、ネロのおかげでな」
「(それに、ちっと手荒なやり方になっちまったが、エレサールもしっかりと連れて来たぜ)」
「良かった……」
「これでとりあえずは一安心ね」
「そうだな。
さて……」
俺はネロの背中からエレサールさんをゆっくりと降ろした後、アイリスに話し掛けた。
「アイリス、頼んで良いか?」
「うん、任せて」
アイリスはコクンと頷きながら答えると、あの遺跡でも聴いた呪文を静かに唱え始めた。
「*×○■!&%$…………」
その瞬間、エレサールさんの体に纏わり付いていた【闇】が徐々に消えていき、程なくして【闇】は全てその姿を消した。
(良かった……これでとりあえず大丈夫だな)
その様子を見ながらホッとしていると、
「う……ん……」
エレサールさんが声を上げながら、ゆっくりと目を開けた。そして体を起こしながら周りを見回そうとしたその時、エレサールさんの顔が小さく歪んだ。
「い……痛たっ!! くっ……体のいたる所に、強烈な痛みがぁっ……!!」
「あ、すいません! 今、治しますね!」
俺はすぐさま【ソードオブマギア】に水の魔力を籠め、切っ先をエレサールさんに向けた。
「【ブルーヒーリング】!」
すると、【ソードオブマギア】からエレサールさんに向けて青い光が放たれ、徐々にエレサールさんの傷を癒やしていくと同時にエレサールさんの顔が安らぎの色が浮かび始めた。
「これは……治癒魔法か……
リオス、君は治癒魔法も使えたんだね」
「あ、はい、一応は」
そしてエレサールさんの傷が完全に癒えた事を確認した後、俺は【ソードオブマギア】を下ろし、ネロと一緒にエレサールさんに頭を下げた。
「エレサールさん……すいませんでした!」
「(お前を止めるためとはいえ、尾で岩に叩きつけたのは流石にやりすぎた……本当にすまなかった!)」
「岩……に、か。どうりで体全体に痛みがあると思ったよ……」
エレサールさんは苦笑いを浮かべながら立ち上がった後、ニッと笑いながら俺達に手を差し伸べた。
「リオス、ネロ。私の事を止めてくれてありがとう」
「エレサールさん……」
「(エレサール……)」
「はい!」
「(おう!)」
俺達が返事をしながら手を取り、エレサールさんと握手を交わした後、エレサールさんは次にアイリスへ視線を移した。
「そしてアイリス……私をあの【闇】から救い出してくれたのは、君なんだね?」
「は、はい」
「君のおかげで、私はまた君達とこうして話をすることが出来る。本当にありがとう」
「はい、どういたしまして」
エレサールさんの言葉を聞き、アイリスは小さく微笑みながら返事をした。すると、キャトラが首を傾げながらエレサールさんに話し掛けた。
「でも……何で、【闇】なんかに取り憑かれてたのよ?」
「それは……」
エレサールさんが答えようとしたその時、周囲から魔物達の唸り声や鳴き声が聞こえてきた。
(魔物……! そういえば、ワイズが【闇】とは別の気配がするって……!)
「どどどど、どうしよう、みんな! すっかり魔物に囲まれてるみたいだよ……!」
「……リオスはさっきの戦いでかなり消耗してるし、エレサールさんも回復したとはいえ、まだ本調子じゃないはず……」
「ここはひとまず、安全な場所まで行きましょう……!」
「ああ!」
ナギアは返事をした後、ネロの方へ視線を向けた。
「ネロ! リオスとエレサールさんを頼む!」
「(おう! 任せとけ!)」
ネロは大きく返事をした後、俺達が乗りやすいようにゆっくりとしゃがみ込んだ。
「(ほら、早く乗れ!)」
「ああ、ありがとうな、ネロ」
「ネロ、感謝するよ」
「(礼なんざ良いって! それよりも早く!)」
「ああ!」
「分かった!」
そして俺達が背中に乗ったことを確認し、ナギア達はコクンと頷いた後、先の方へ向かって一目散に走りだした。
走り出してから十数分後、俺達は魔物達から逃げ切り、さっきと似たような広場に辿り着いた。
「はぁっ、はぁっ……ここまで来れば……大丈夫かも、しれないな……」
「はぁっ、はぁっ……そうね……」
「はぁっ、はぁっ……つ、疲れたぁ……」
ナギア達が息を切らしながら座り込む中、ネロは俺達が降りやすいようにゆっくりとしゃがみ込んだ。
「(ほれ、気を付けて降りろよ?)」
「ああ、ありがとうな、ネロ」
「ネロ、本当にありがとう」
「(へへっ、どういたしましてってな!)」
そして俺達がネロから降りると、キャトラが息を整えながらエレサールさんに話し掛けた。
「はぁっ、はぁっ……それでさっきの話の続きだけど、何で【闇】なんかに取り憑かれてたのよ?」
「それが……まったく分からないんだ……
君達と別れた後、森の奥で奇妙な格好をした男と出会ったのだが――
……次の瞬間、私の意識は深い闇の底にいた」
「闇を操る者が、この島に……?」
「まっ暗に染まった意識の中で――何度も何度も叫び声を聴いていた。
白の巫女に、死を。白の巫女にルーンを渡してはならない、とね」
そしてエレサールさんはアイリスに視線を移した後、静かに言葉を続けた。
「白の巫女とは――アイリス、君の事で間違いないね?」
「はい……おそらくは」
「な、なんなのよ、それ……!」
キャトラが泣き出しそうな顔で言う中、エレサールさんは俺達の事を見回しながら話し掛けてきた。
「……北の遺跡の事は、ラーレッタから聞いているか?」
「はい」
「あの遺跡に眠るエルフの秘宝が、君達の探す〈大いなるルーン〉だとするなら――
きっと、私を闇の中へと陥れたあの男も、再び姿を見せることだろう」
「そうですね」
(さっき感じたもう一つの【闇】の気配……たぶん、アレがその男の気配だったんだろうしな……)
俺がさっき感じた気配について考えていると、ナギアが不思議そうな様子で話し掛けてきた。
「リオス……? どうかしたのか……?」
「ん……いや、何でもない」
ナギアに返事をした後、俺は皆の事を見回しながら、静かに話し掛けた。
「とりあえず、今は北の遺跡に向かおう。エルフの秘宝が本当に〈大いなるルーン〉なのかどうか、確認しないといけないからな」
「ああ。それにエレサールさんの言う奇妙な格好の男もエルフの秘宝を狙ってるかもしれないしな」
「その通りだ」
俺達が頷き合っていると、その様子を見ていたエレサールさんが静かな声で話し掛けてきた。
「皆、私も君達に同行させてもらうよ。私もやられてばかりではいられないからね」
「ありがとうございます、エレサールさん」
「エレサールが来てくれるなら、とっても心強いわ!」
「ふふ、ありがとう。君達の期待に応えられるよう、わたしもせいいっぱい頑張らせてもらうよ」
エレサールさんがニッと笑いながら言った後、俺は皆の事を見回しながら大きな声で言った。
「よし……それじゃあ、行こう、皆!」
「おう!」
「ええ!」
「うんっ!」
「ああ!」
「(おうよ!)」
そして俺達は、北の遺跡に向けて再び歩き始めた。
政実「第5話、いかがでしたでしょうか」
リオス「今回は剣士としての戦いがメインになる話だったな」
政実「うん。リオスの戦い方は、その時のパーティ内容次第で変える予定だから、イスタルカ島編の間は剣士とドラゴンライダーがメインになるかな」
リオス「分かった。
さてと、次回の投稿はいつ頃になるんだ?」
政実「それはまだ未定かな。出来る限り近い内に投稿したいとは思ってるけどね」
リオス「了解した。
そして最後に、この作品に対して感想や意見もお待ちしています」
政実「さてと……それじゃあ、そろそろ締めようか」
リオス「ああ」
政実・リオス「それでは、また次回」