白猫プロジェクト~賢者と黒竜を従えし者~   作:片倉政実

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政実「どうも、片倉政実です」
リオス「どうも、リオスです」
政実「今回は番外第3章として、正月イベントの1つ、『大願成就! お正月を取り戻せ! inワイハの島』
のストーリーを元にして書いていきます」
リオス「このイベントって、たしかHardのシナリオもあったけど、そっちの方も書いてくのか?」
政実「うん。一応Normalシナリオを3話までにして、4話目からおまけみたいな形でHardシナリオを書いていくつもりだよ」
リオス「分かった。
さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、第1話をどうぞ」


番外第3章 大願成就! お正月を取り戻せ! inワイハの島
第1話 南国の島と正月魔神


 

「ふぅ……やっぱりお正月はゆっくり出来て良いわねぇ……」

 

元旦、俺達が飛行島にあるアジトでゆっくりしていると、キャトラが炬燵に体を半分埋めた状態でのんびりとした口調でそう言う。

(何だろう……このキャトラの姿、何かに似てる気がするな……)

キャトラの様子を見ながらそれについて思い出そうとしていると、炬燵の上に置いていたワイズが静かな声でこう言った。

 

『キャトラ様のそのお姿……いわゆる【こたつむり】といったところですね』

 

(あ、そうだそうだ。何に似てるかと思ったら、かたつむりだ。それにしても【こたつむり】って……何か凄くしっくりくる呼び方だな……)

キャトラの様子を指したワイズの言葉に感心していると、同じく炬燵に入っていたナギアが静かな声でこう言った。

 

「そういえば……今、エクセリア達は南国の島にいるんだっけ?」

「うん。確か【ワイハの島】っていう島に行くって言ってたよね」

「【ワイハの島】か……今の季節に行ったら凄く快適かもしれないな」

「ふふ、そうかもね」

 

ナギアとアイリスが【ワイハの島】について話をしていると、

 

「みんな、ちょっと良いかしら?」

 

手に1通の手紙を持ったヘレナさんが俺達にそう訊いてきた。

 

「はい、大丈夫ですけど……」

「どうかしたんですか?」

 

俺とナギアが不思議そうに訊くと、ヘレナさんは返事をしながら、手に持っていた手紙を俺達に渡してくれた。

 

「お正月早々悪いんだけど、皆に依頼が来てるわよ」

「え~……お正月に依頼って、一体何なのよ~……」

 

ヘレナさんの言葉を聞いて、キャトラが凄く嫌そうな声を上げた。

(まあ、気持ちは分からなくは無いけど……とりあえずその依頼内容を見てみるか)

俺はペーパーナイフを使って、手紙の封を切った後、中に入っていた便箋を取り出し、その内容を読み始めた。

 

「えっと、何々……

 

現在、【ワイハの島】にて正月魔神が出没しております。この正月魔神はとても厄介な存在ですので、是非冒険家の皆様のお力をお借りしたいです。正月魔神の詳細については、手配書を同付致しましたので、そちらでご確認ください。報酬などについては後程、ご連絡を差し上げます。どうぞ、よろしくお願い致します。

それでは……

 

……か」

「【ワイハの島】って……今、エクセリア達がいる所よね……」

「うん……」

「これは、ちょっと心配だな……」

「ああ……」

 

(エクセリア達は強いから、本当なら心配は無いけど、その正月魔神とやらがどんな奴なのか明確には分からない……ここは依頼もかねて、念の為様子を見に行かないとな)

そう考えた後、俺は皆の顔を見回した。すると、皆はやる気に満ちた目で一斉に頷いた。それを見て俺はニッと笑った後、立ち上がりながら皆に声を掛けた。

 

「よし……皆、行こう! 【ワイハの島】へ!」

「おう!」

「ええ!」

「うん!」

『はい』

 

こうして俺達は、エクセリア達の安否の確認と正月魔神の退治のために【ワイハの島】へと向かった。

 

 

 

 

飛行島の進路を【ワイハの島】に向けてから数十分後、俺達は【ワイハの島】にある浜辺に上陸した。

(ここが【ワイハの島】か。南国の島だけあって、気候がすごく暖かいな……)

俺が上に体を伸ばしながらそう思っていると、キャトラが周りの様子を見ながら明るい調子でこう言った。

 

「いやー、中々トロピカルで良い感じの島ねぇ」

「(ははっ、だなぁ。まあ……これが依頼とかじゃなきゃ、もっと良かったんだけどなぁ)」

「ほんとよね……」

 

キャトラと俺の相棒である黒竜のネロが話をしていると、アイリスが静かに笑いながらキャトラ達にこう言った。

 

「ふふっ、それならお仕事の後はエクセリアさん達と一緒にバカンスでもしましょうか」

「バカンス……! 良いわねっ!」

「(へへっ、だな!)」

 

キャトラとネロはアイリスの言葉を聞いた途端、顔をパアッと輝かせた。

(まったくコイツらは……まあ、あの調子のままよりはこの方がずっと良いか)

キャトラ達の事を見ながらそう思っていると、ナギアが明るい調子で声を掛けてきた。

 

「そういえば……退治しなきゃないのはどんな奴なんだっけ?」

「えーと……コイツだな」

 

俺は手配書を取り出した後、ナギア達に広げて見せた。手配書にはレイを首に掛けた、獅子のような被り物をした男らしき物の写真が載っていた。

(名前は、正月魔神ガショウか……一体どんな奴なんだ……?)

 

「この変な奴を倒せば良いの? どこにいるのかしら?」

「さぁ……でもこんな派手な格好をしてるんだし、すぐに見つかるんじゃ……」

 

件の正月魔神について話をしながら、俺達が手配書から顔を上げたその時、俺達の目の前にレイを首に掛けた獅子のような何かがいた。

(……あれ、さっきまでこんなのあったっけ?)

俺がそう考えていると、アイリスがそれと手配書を交互に見比べ、少し驚いた様子で俺達にこう言った。

 

「手配書にソックリね……」

「ああ……でも、見間違えって事も……」

 

アイリスとナギアが話をしながら、何度もそれと手配書とを見比べていたその時。

 

「ガショーン!!」

 

突然、その謎の物が大きな声を上げた。

(今、コイツ……ガショーンって言ったよな……まさか本当にコイツが、正月魔神ガショウなのか……?)

俺達が後退りをしながら、その正月魔神らしき物に対して警戒をつよめていると、それは再び大きな声で喋り始めた。

 

「皆サンオメデトウゴザイマス! 当方正月魔神ガショウ! ガショウデゴザイマス!

ネンガネンガ! オメデトウゴザイマス! オメデトウゴザイマス!!」

 

(う、うるさい……年明けて、おめでたいのは確かだけど、そんな大声で言う必要も無いだろ……!)

ガショウを見ながら俺がそう思っていると、ガショウに対して警戒をしながらキャトラがこう言った。

 

「……しっ、静かにしなさい!」

「……」

 

ガショウは騒ぐのを止めると、俺達の事をジッと見始めた。

(……コイツは今まであった奴の中でも、ヤバい方の奴かもしれない……)

ガショウの事を見ながらそう考えていると、キャトラが真剣な顔で俺達に声を掛けてきた。

 

「皆! さっさとエクセリアを探して帰りましょう! 完全にヤバい奴よ! 1秒でも関わっちゃダメ!」

「あ、ああ……そうだな」

「(こうなりゃさっさとエクセリア達を探しちまねぇとな……!)」

 

俺達がガショウの様子に注意を払いながら、エクセリア達を探すために周りを見回していると、遠くの浜辺を見ていたネロが大きな声を上げた。

 

「(おい、皆! いたぞ!)」

「え? 本当か!?」

 

ネロの視線の先では、水着姿のエクセリアが、白竜のラピュセルとフィーユと一緒に楽しそうにバカンスを楽しんでいた。

(くっ……思ったより距離が離れてる……! それなら……!)

そう思った後、俺は急いでネロに声を掛けた。

 

「ネロ! 急ぐぞ!」

「(おう!)」

 

ネロの返事を聞いた後、俺は急いでネロの背中に乗った。

(よし……後は走りながらあの技を使えば……!)

俺が【グラントスピア】を構えながら走り始めようとしていたその時、ガショウがエクセリア達の方へ視線を移し、そのままエクセリア達へ向けて走りだした。

 

「なっ!? 行くぞ、ネロ!」

「(おう! しっかり捕まってろよ!)」

 

ネロは背中に乗っている俺に声を掛けると、いつもよりも速く走り始めた。しかし、スタートが遅れた事で、俺達とガショウの間の距離は多少離れてしまっていた。その様子を見て、キャトラがエクセリア達に向けて大声で呼び掛けた。

 

「エクセリア! ラピュセル! フィーユ! 逃げて!」

「え……?」

 

キャトラの声を聞くと、エクセリアは不思議そうな顔で俺達の方へと顔を向けた。そして自分達に迫ってきているガショウの姿を見た瞬間、

 

「い、いやぁーー!」

 

エクセリアは大きな悲鳴を上げた。そしてその悲鳴を聞いた時、俺の中で何かが切れた音がした。

 

「『ブレイブソウル』……!!」

 

【グラントスピア】を折れそうな程の力で握りながら籠められている魔力を開放すると、【グラントスピア】に埋め込まれているオーブが虹色に変わり、穂先から虹色の光が俺達へと放たれた。それと同時に俺の力が高まり、ネロの走る速さが上がった。そして俺達は、進路をエクセリア達からガショウへと変えた後、更に走る速さを上げた。

 

「それ以上……!」

「(エクセリア達に……!)」

「「(近付くんじゃねぇ!!)」」

 

そう言った後、俺は【グラントスピア】を更に強く握りながらオーブに宿る炎の魔力を高め、ネロは口にブレスを溜め始めた。そしてガショウとの距離がほぼ無くなった時、

 

「「(『クロスブレイズ!!』)」」

 

炎の魔力を纏った【グラントスピア】の一撃と、溜めに溜めたネロのブレスによる同時攻撃をガショウへとぶつけた。

 

「ガショーーン!!」

 

俺達の攻撃を受けると、ガショウはそんな声を上げながら別の方向へと吹き飛び、その先にあったヤシの木へと激突した。

(よし……この隙に……!)

その隙に俺達はエクセリア達の元に急いで駆け寄った。

 

「エクセリア! ラピュセル! フィーユ!」

「(全員大丈夫か!?)」

「は……はい、あの方がこちらに走ってくるのを見て、ちょっとビックリしただけですので、私達にケガなどは一切ありませんよ。ね、ラピュセル、フィーユ」

 

エクセリアが微笑みながら声を掛けると、ラピュセルとフィーユは頷きながら小さく鳴き声を上げた。その様子を見て、俺達はホッと胸を撫で下ろした。

 

「そっか……それなら良かったよ。な、ネロ」

「(ああ、お前らに何かあったらいけねぇからなぁ……)」

「ふふっ、ありがとうございます。リオスさん、ネロさん」

 

エクセリアがニコッと笑いながらそう言うのを聴いた瞬間、俺達の中にあった怒りの感情などが静まっていくのを感じた。

(うん、やっぱりエクセリア達は笑ってる方が良いな)

エクセリア達の事を見ながらそう思っていると、

 

「おーい、皆-!」

 

そう大きな声で言いながら、キャトラ達が俺達のところへと走ってきた。そしてエクセリア達の様子を見ると、キャトラ達もホッとした様子を見せた。

 

「良かったぁ……エクセリア達はどうやら無事みたいね……」

「ああ、何とかな。ただ……もう少し遅かったら、どうなってたかは分からないけどな」

 

俺がガショウへと視線を移しながらそう言うと、他の皆もガショウへと視線を移した。

 

「確かにそうかもしれないわね。それにしても……さっき凄い勢いでヤシの木にぶつかってたけど、大丈夫なのかしら?」

「まあ、大丈夫だろ。それに俺達はアイツの退治を請け負ってここに来たわけだから、一切問題は無いだろうしな」

「それはそうなんだけど……さっきから全然動いてないわよ、アイツ」

 

キャトラの言う通り、ガショウは俺達が話している間も、ヤシの木の根元に座り込んだ形で俯いたまま、微動だにしていなかった。

(何か不気味だな……ここは1回様子を見にいってみた方が良いか)

そう思い俺が武器を構えながらガショウへと近付こうとしたその時だった。

 

「……ガッショーーン!!」

 

突然ガショウが大きな声を上げながら勢い良く立ち上がった。そして良く見てみると、ガショウの体には傷1つついていなかった。

(おいおい、嘘だろ……)

 

「(『ブレイブソウル』で威力が上がってる状態での『クロスブレイズ』を受けて無傷って……一体何がどうなってんだよ……)」

 

ネロが驚きながらそう言うと、アイリスがハッとした様子で手配書に目を通し始めた。

 

「……あった! 正月魔神は<おめでたい正月の行事>以外の攻撃を無効にするらしいわ!」

「なるほど……だから俺達の攻撃を受けても無傷だったわけか……」

「でも、<おめでたい正月の行事>って一体どうしたら……」

 

俺達は<おめでたい正月の行事>を探すため周りを見回した。

(正月の行事……正月の行事……この近くに何かないのか……!?)

少しだけ焦りを感じながら周りを見回していると、 エクセリアが突然大きな声を上げた。

 

「あっ、皆さん! そこに臼と杵ともち米があります!」

「えっ、本当に?」

 

エクセリアの視線の先に目をやると、そこにはエクセリアの言う通り、臼と杵ともち米がポツンと置かれていた。

 

「ここ、お餅つき大会の会場だったのね」

「あいつが来たせいで、みんな逃げちゃったんだわ」

 

アイリスとキャトラがそれらを見ながら話をしていると、エクセリアが呟くような声でこう言った。

 

「餅つき……確かお正月の大切な行事だと聞いたことがあります!」

「え、そうなの?」

 

キャトラが疑問の声を上げると、鞄の中からワイズが静かな声でキャトラの疑問に答え始めた。

 

『はい、詳細な説明はここでは省かせて頂きますが、エクセリア様の言う通り餅つきはおめでたい正月の行事の1つです』

「じゃ、じゃあお餅をつきましょ! 急いでお餅をつくのよ!」

「ああ!」

「おう!」

「ええ!」

「はい!」

 

俺達が餅つきの準備を始めようとしていると、突然ガショウが大声を上げた。

 

「餅などつかせはしないでガショウ!! 出でよ、魔物っぽい奴ら!」

 

すると、ガショウの周りに様々な種類の魔物達が姿を現し始めた。

(やっぱり邪魔してくるか……それなら……!)

俺は背中に差していた【ソードオブマギア】を手に取りながらナギア達にこう言った。

 

「ガショウと魔物達は俺とネロが引き受ける。だから皆は、餅つきの方に専念してくれ」

「リオス……でも、本当に大丈夫なのか?」

「ああ、問題無いぜ。な、ネロ」

「(おうよ! 俺だってドラゴンだ、魔物なんかにそう簡単に負けたりしねぇよ!)」

「……分かった。それじゃあ……」

 

ナギアがそう言おうとしたその時、エクセリアが1歩前に進み出てこう言った。

 

「リオスさん、ネロさん。私達も一緒に戦います」

「エクセリア…… 」

「(そりゃあ助かるけど……本当に良いのか?) 」

「はい、私も竜の国の王女でありドラグナーの1人ですから。それに……」

 

そう言いながらエクセリアは一本の杖を取り出し、ニコッと笑ってから言葉を続けた。

 

「助けて頂くばかりではなく、皆さんの力になりたいですから」

「エクセリア……」

 

俺は呟くような声でそう言った後、コクンと頷いてから言葉を続けた。

 

「分かった。だけど、無理だけはしないでくれよ?」

「はい、もちろんです!」

 

エクセリアの言葉に頷いた後、俺はナギア達の方へ顔を向けた。

 

「それじゃあそっちの方は任せたぞ、2人とも!」

「おう!」

「うん!」

「リオス達も無茶はしないでよ?」

「ああ」

「はい!」

「(おうよ!)」

 

ナギア達に言葉に返事をした後、俺は再びガショウ達の方へと顔を向け、一度深呼吸をしてからエクセリア達に声を掛けた。

 

「よし……行くぞ、皆!」

「はい!」

「(承知したぜ!)」

 

こうして俺達とガショウ達のバトル、そしてナギア達による餅つきが幕を開けた。

 

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

ガショウ達とのバトルを始めてから十数分後、俺達の攻撃によってガショウが出現させた魔物達は既に姿を消していた。

(ふぅ……さて、ナギア達の方はどうかな?)

そう思いながら振り返ると、満足そうな表情でつき上がった餅を持ち上げているナギア達の姿が見えた。

(よし……これなら……!)

そしてガショウの方へ視線を戻すと、

 

「ぐ、グエエエ! お前達許すまじでガショウ!」

 

ガショウは蹲りながら苦しそうな声を上げていた。そしてその様子を見て、キャトラが真剣な表情でこう言った。

 

「どうやらダメージは与えたみたいね……!

リオス! エクセリア! 今の内に応援を呼んできてちょうだい!」

「分かった!

よし……行くぞ、エクセリア! ネロ! ラピュセル! フィーユ!」

「はい!」

「(おう!)」

 

エクセリア達の返事を聞いた後、俺とエクセリアは急いで自分の竜の背に乗った。

(……っと、出発する前にやる事があったな)

俺は鞄の中からワイズを取り出した後、ナギアに声を掛けた。

 

「ナギア! しっかり受け取れよ!」

「え? しっかり受け取れって……?」

 

ナギアの疑問には返事をせずに、俺はナギア達の方へワイズを投げ上げた。

 

「はっ……!?」

 

俺のその行動にナギアは驚きの声を上げたが、自分の元にワイズが近付いてくるのを見ると、すぐにワイズを両手で受け止める準備を始めた。そして落ちてきたワイズの事をしっかりキャッチすると、手の中のワイズを見ながらホッとした表情を浮かべた。

(よし……無事にワイズがナギア達に渡ったな)

俺はその様子を見て、少しホッとした後、ナギア達に声を掛けた。

 

「<めでたい正月の行事>を探すなら、ワイズの知識がきっと役に立つはずだ! だからガショウをどうにか出来るまでは、お前達がワイズを持っていてくれ!」

「分かった! ありがとうな、リオス!」

「ああ、どういたしまして!」

 

ナギアの言葉に返事をした後、俺はナギアの手の中にあるワイズに声を掛けた。

 

「ワイズ! ナギア達のサポートは頼んだぞ!」

『はい、お任せ下さい、リオス様』

 

ワイズの返事に頷いた後、俺はエクセリア達の方に顔を戻し、一度深呼吸をしてから声を掛けた。

 

「よし……行こう、皆!」

「はい!」

「(おうよ!)」

 

そして俺達は応援を呼びにいくため、ナギア達のいる浜辺を出発した。

 

 

 

 

「さてと、アタシ達は……どうしよう?」

 

リオス達が飛んでいくのをぼうっと見ていると、キャトラが呟くような声で俺達に話し掛けてきた。

(そうだな……せっかくリオスから預かったわけだから、ここはワイズに訊いてみようかな?)

そう考えていたその時。

 

「ざっざーん! どうすれば良いのか、湖の精霊ディーネがお答えしますわ!」

 

海の中からディーネさんが勢い良く飛びだしてきた。

(いや……ここは海なんだけど……?)

 

「海からじゃん! 青い海からじゃん!」

 

どうやら俺と同じ事を考えていたらしく、キャトラがディーネさんにツッコミを入れたが、ディーネさんはそれには返事をせずに、俺達の目の前にある餅を見ながら言葉を続けた。

 

「皆さんの前にある、つきたてのお餅……」

「お餅? お餅がどうしたのよ?」

「そのお餅を食べるのです!」

 

ディーネさんが明るくそう言った瞬間、

 

「ギクーン!」

 

ガショウがとても分かりやすい反応を見せた。

(え……餅を食べることが、<めでたい正月の行事>……なのか?)

俺がその事を疑問に思っていると、アイリスが驚きながらディーネさんにこう訊いた。

 

「お餅をですか!?」

「はい! お餅を食べる事も、大切なお正月の行事の一つですから!」

「そうなの!? それで良いの、ワイズ!?」

 

キャトラが信じられないといった様子でワイズに訊くと、ワイズは静かな声でキャトラの疑問に答えてくれた。

 

『はい。お正月にお餅を食べる事で、神様からパワーを頂くなどの意味があるため、お餅を食べる事は<おめでたい正月の行事>の一つと言えます』

「へー、そうだったのね。

……てことは、このお餅を全部食べちゃえば、アイツにかなりダメージを与えられるって事よね?」

『はい、その通りです』

 

ワイズの返事を聞いた後、俺達がガショウに視線を移すと、ガショウはびくっとしながらも俺達にこう言った。

 

「も、餅を食べたくらいデ、このガショウが……」

 

その時、ディーネさんが臼の中に手を伸ばし、中にある餅を少し千切ると、

 

「はむっはむっ……つきたてのお餅、美味ですわ!」

 

とても美味しそうに食べ始めた。すると、

 

「グギャー!? ダメージッ!」

 

ガショウが身を捩らせながら大声で叫び始めた。

(本当にこんなのだけでダメージを与えられるんだな……)

その様子を見て、俺は少し茫然としてしまっていたが、すぐに頭を振って気持ちを切り替えた後、アイリス達に声を掛けた。

 

「よし……俺達も食べようぜ、2人とも!」

「そ、そうね……何だかまだよく分からないけど、いけそうなわけだしね!」

「ええ、そうね……!」

「それじゃあ……」

「「「頂きます!」」」

 

こうして俺達は自分達がついた餅を食べ始めた。

 

「むぐむぐ」

「はむはむ」

「はふはふ」

 

俺達は用意されていた餡子などを使って、自分達がついた餅をひたすら食べ進めた。

(うん……! さっきまで頑張ってた分、スゴく美味い……!)

 

「グエエエ!! 正月の餅! メデタイィ!!」

 

俺達が餅を食べ続けていると、ガショウが更に苦しみ始めた。

(よし、この調子ならいけるはずだ……!)

俺が心の中でガッツポーズをしていると、ディーネさんが少し先の方を指差しながら俺達に話し掛けてきた。

 

「皆さん、向こうに餅つき大会でついたお餅があるはずですわ!」

「向こうの方ね……!

2人とも!このお餅を食べながら、そっちの方に向かうわよ!」

「おう!」

「うん!」

 

こうして俺達は手に持った餅を食べながら、更なる餅を目指して歩き始めた。




政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
リオス「番外第3章も交互で視点変更をしていく感じなんだな」
政実「うん、その方が面白そうかなと思ってね」
リオス「なるほどな。
さてと……次回の更新予定はいつ頃になりそうなんだ?」
政実「1週間くらいから2週間くらいで更新するつもりだよ。ただ、変わることも大いにあり得るけどね」
リオス「分かった」
政実「この作品の感想や意見などもお待ちしています」
リオス「よし……それじゃあそろそろ締めていくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、また次回」

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