□ボタンで話しかける我が人生 作:カードクイーンストーキングマン
何故自分はこんな真夜中に女子中等部の校舎を歩いているのか。
目の前を歩く何故か刀を携えた女教師の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、
真後ろにはとてもカタギには見えない、黒のスーツで身を固めたサングラスの男。
「……
「学園長室があるからです」
普段と変わりない担任の教師ににべもなく返され、溜息を吐きそうになる縁だったが、今の葛葉の言葉にまた別の意味で溜息を吐きそうになる。
(学園長室って……。
学園長室という事は、恐らくはその部屋の主に会わされるのだろう。
しかし、そうなると今の自分のこの格好で会うのはまずいのではないかと縁は考える。
「あの、こんな格好で学園長にお会いになるのは失礼では――」
「問題無い、気にするな」
「はあ……」
サングラスの男の言葉にマジで? と内心で縁は小さく驚く。今の縁の格好は就寝直前のパジャマ姿で左手には空の虫籠、そして右手に園芸用のスコップ。こんな格好で本当に大丈夫なのかと縁は不安でならない。
美女と
事の始まりは1時間ほど前、インターネッツで入手したとある情報が発端だ。
その情報とは、ここ麻帆良にしか存在しないカブトムシが余所では高額で取引されているというもの。
そんな馬鹿なと笑いながらポチポチと検索をかけてみる事数分、その額を見て縁は叫んだ。
ネットオークションを見てみればウン万円で競られているのはざらで、立派なものになれば額は一気に跳ね上がっている。
これを見て縁は「行くしかあるまい!」と一人叫びながら勢い良く寮の部屋を飛び出した。今の季節は冬。成虫はいないだろうが幼虫はいる筈だと、ろくに準備も整えず。幼虫に関しての情報も調べないまま勢いに身を任せて森へと足を運び――其処で縁は出会った。この“世界”の異形に。
(まさかこっちの世界にもモンスターが存在してただなんて。カブトムシの幼虫を捕まえに森に行ったらモンスターと出くわすってのもなぁ)
縁がモンスターだと思っている異形は数十体で徒党を組んである場所を目指していた。
そこに運悪く縁がかち合ってしまい、なんだかんだと戦闘に突入してしまったのだ。
数が数だけに、一体一体を相手にするのを面倒に感じた縁はG.F.を呼び出して対処したのだが、その直後を前後の二人に見られてしまったらしい。
「――学園長」
「うむ、入りなさい」
気がつけば件の学園長室の前まで来ていたようで、ノックをした葛葉の言葉に老人の声が返る。
通された先には一目見ただけで高いと判る書斎机に座る、長い後頭部が特徴の仙人のような容姿の老人。麻帆良学園理事長である
「ふむ……。君が報告にあった雨守くんかのう」
「……男子中等部三年、雨守縁です」
学園長の正面に立たされた縁は姿勢を正すと硬い表情で名乗る。麻帆良学園に通う一生徒としては、学園の顔である近衛学園長を前にするとどうしても緊張してしまう。
「フォフォ、そう緊張せんでもよろしい。ちと話を聞きたいだけじゃ」
縁の思っていたよりも学園長の口調は柔らかい。つい気を抜きそうになるが、それは駄目だと心中で自分に言い聞かす。
言われ、素直に気を抜くという事は相手に呑まれていると同義なのだ。仮にもSeeDである以上、よく知りもしない、不明瞭な相手の前で腑抜けた姿を見せるわけにはいかなかった。
「……自分に答えられる事であれば」
腑抜けた姿は見せられない(キリッ
と構えていた縁だったが、学園長の横に控えるサングラスの男にビビり日和ってしまう。
(SeeD云々とか向こうでの話だし。こっちじゃただの学生だからノーカンノーカン。まっ、あんな偽タークスがおらんかったらこっちでもSeeDらしく振舞ってもよかったけど?)
「まず……雨守くんもこちら側という事で相違ないかの?」
「こちら側、というのはよく判りませんが……。この世界にモンスターが存在している事は知っています」
先程の邂逅が、この世界での初めての出会いだったが。
しかし今にして思えば、あのモンスター達は向こうでは見た事もないモンスターだった。それこそ、日本人なら知らぬ者はいない、鬼のような――
(いやいや、世界が変われば出てくるモンスターも違うだろう。今まで出くわさなかったって事は、こっちの世界では存在すれど数は少ないって事か。じゃなきゃとっくの昔に出くわしてただろうし)
「んん? 数十体の鬼と出会って無傷でこれを撃退できたのじゃ。雨守くんも魔法使いなのじゃろう?」
「へ? 魔法使い? 鬼?」
「フォ?」
お互いに「お前は何を言っているんだ」と思いながら首を傾げあう学園長と縁。首を傾げる縁に、表に出してはいないもののサングラスの男と葛葉も困惑する。
「雨守くんは森で鬼に襲われ、氷の魔法を用いてこれを撃退。二人はそれを目撃し、話をする為雨守くんにここまで同行してもらった。そうじゃな?
「間違いありません」
「周囲一帯ごと鬼達は氷漬けで、殲滅級の魔法を使ったかのような有様でした。あれを魔法を用いずにというのは考えられません」
「魔法使いの存在を知らずして魔法だけは使える、というのも考えにくいしのう……。ならば雨守くんは、どうやって鬼達を氷漬けにしたんじゃ?」
「それはG.F.を呼び出して、としか」
「む……G.F.……?」
学園長の反応を見て縁は察した。こっちの世界にはG.F.は存在していないのだと。葛葉と神多羅木の反応も学園長と変わらない。この世界には魔法があって、G.F.は存在しない。そうなると……。
(こっちの世界には『魔女』はいない……? 詳しい事を聞かなきゃまだ判断はできないけど)
なんとなくではあるがここまでの話から、こちらとあちらでは魔法の在り方が違うのだろうと縁は考えていた。モンスター――鬼を魔法で撃退したと思われていたみたいだが、縁に『魔法』は使えない。
「呼び出した、と雨守くんは言うたが……ならばそのG.F.とやらは、召喚魔法の類なのかのう?」
「そう考えていただければ」
「ふーむ。ではG.F.について教えてはもらえんか? ちと聞いた事がないのでのう」
「……G.F.――ガーディアン・フォースとはそれぞれが持つ特性に応じて獣や妖精といった姿で現れる、生体と同様に意識を有する強大な自律エネルギー体です。特定の場所に存在している場合と物や生体に宿っている場合とがあり、更に恒常的なジャンク――……」
ここまで説明して縁ははたと思う。彼らはG.F.の存在を知らなかった。そんな彼らにジャンクションの説明をするのはよろしくないのでは? と。
G.F.から与えられるメリットとデメリット。
それを考えると彼らが善人だろうが悪人だろうが関係なく教えるべきではない。
これらを説明した上でG.F.をジャンクションしている事を伝えたとして、間違いなく面倒事になる筈だ。
悪人であればデメリットを無視してG.F.を求めるだろうし、善人であればメリットを無視して縁のジャンクションをやめさせるだろう。
「ジャンク……? どうしたんじゃ? 雨守くん」
「申し訳ありません。あなた方魔法使いの実態が判らない以上、お話し出来るのはここまでになります」
(まぁあんた方の実態を知ったとしても話せんけどな)
「おお、そういえば雨守くんには儂らの事を話しとらんかったのう。儂らも説明せねばならんな」
少し長くなるがと前置いて学園長は語りだす。自分達魔法使いという存在について。
「――――と、魔法使いに関しての説明はこんなもんかの。長くなったが、儂らの事を理解してはもらえたかな?」
学園長の説明が終わり、縁は聞いた事を頭の中で反芻していた。
(
「一つお聞きしたいのですが、魔法使いは誰かにその力を継承しない限り死ぬ事が出来ない、なんて事は……ないですよね?」
「フォ? 質問の意味がよく分からんが……。魔法使いも一人の人間である事に変わりはない、だから誰であろうと死ぬ時は死ぬぞい」
学園長の言葉を聞いて縁はほっと息を吐く。
質問と安堵の吐息の意味が分からない三人だったが、今はそれに構う事はしない。学園長は
「では縁くん、先程の続きを話してはもらえんか?」
「……申し訳ありません、やはりお話しする事はできません」
縁がそう言った途端、部屋の空気が幾ばくか重くなる。
表面上は学園長の様子は変わらず、神多羅木も同様だ。一方で葛葉も冷静に見えるがその眼は「続きを話せ」と強く縁に訴えかけている。
「……雨守くんや。何故話せないのか、そこは聞いてもよいか?」
「……まず学園長が大きな組織の長であるからというのが一つ、魔法使いとしてのあなた方を信用できないというのが二つ。三つ目にG.F.の詳細をお話ししたとして、今度はどこで発見したのか、どのようにして運用出来るに至ったのかを話さなくてはならなくなります。……この三つ目は、とても信じられるような内容ではありませんから」
信じられる内容ではないという部分を疑問に思う三人。確かにG.F.など聞いた事もない存在だが、しかし信じられないような事とは一体どんな内容なのだろうか。
話したと思ったら再び口を閉ざした縁だが、学園長としてはここで話を終わらせるわけにはいかなかった。
縁の言う大きな組織の長だからこそ、正体不明の存在をしっかりと見極める必要があった。
「困ったのう。儂も長として、きみを野放しにしておく事は出来んのじゃ。どうしても話す事は出来ぬか?」
問う学園長だが、しかし縁は反応しない。何事かを考えているらしいが、今の学園長の言葉は届いているのかいないのか。
聞いているのかと葛葉が口を開こうとしたところで、顔を上げた縁が質問をぶつけた。
「一つお聞きしたいのですが、相手の記憶を見る魔法というのは存在するのでしょうか?」
「む? あるにはあるが……それがどうかしたかのう?」
「それなら俺に記憶を見る魔法を使って下さい。その方が色々と手っ取り早い筈です」
話が膠着している中でのこの縁の提案は渡りに船だった。確かに口で説明されるよりも、嘘の混じっていないであろう記憶を覗く方が早い。
「ふむ。それならば雨守くんの厚意に――」
「ただし、学園長が俺に『これ』で勝てたらの話です」
学園長の言葉を遮ってまで出した縁の条件。それは――
「カード――『トリプルトライアド』。もちろんご存じですよね? こいつで俺に勝てばどうぞご自由に」
一枚のカードを見せながら縁は言う。トリプルトライアドを知っているかという縁の質問は愚問だった。
トリプルトライアドとは世界中で大流行している、知らぬ者は居ないと言われているカードゲームなのだ。老若男女問わずを魅了したこのカードゲーム。当然学園長も、神多羅木も、葛葉もプレイヤーとして数多くの対戦をこなしてきた。
トリプルトライアドを提案してきた縁にほう、と学園長は唸る。
一プレイヤーとして
つまり、縁はこの勝負に負ければ必ず記憶を見せなければならないのだ!
(面白い……。自分から提案してきたという事はよほど腕に自信があるみたいじゃの。フォフォフォ。儂も一人のプレイヤーとして、売られた
縁の記憶を見る為だ。当然学園長はこれを了承。
学園長と縁は同時に懐から五枚のカードを取り出すと、熱の籠められた視線をぶつけ合う。
――長い夜が、始まった。
Q:FFⅧ?
A:Ⅷです。
Q:確かネギまの世界ってFFなかった?どっかでパルがケ○ルとか言ってたし、ティファのコスプレしてる人いたし。
A:この世界じゃⅧだけ出てないだけだから(震え声)
Q:投稿ペースは?
A:知らん、そんな事は俺の管轄外だ。