ハンター世界の転生者   作:慧春

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2話――転生者の日常

 

 

 転生してから十六年――

 彼こと『ユウヤ・ウエキ』はこの世界での新たな家族達と日本に良く似た文化の国『ジャポン』で平穏な毎日を過ごしていた。

 

 そんな、彼のもとに突如として現れたのは、彼と同じく日本人の前世を持つ謎の美少女『アーニャ』……町を歩いているときにふとしたきっかけで知り合った彼女だが、彼女には何か秘密があるらしく、不思議な力を持った黒服の集団に狙われていた。

 

「ユウヤ! アイツらは『念能力者』――貴方じゃ勝てないわ!!」

 

 ネン? ネン能力者ってなんだ?

 彼は、背中にかばう彼女から伝えられる言葉に疑問を覚えるも、内心の同様を見せないように努めながら、安心させるように微笑む。

 

「大丈夫……君も転生者なら知ってるだろ? 俺には『切り札』がある!!」

 

「え?」

 

 そう言うと、ユウヤは手に持った『紙屑』を握り締めながら、能力の発動を念じた――

 

「ゴミを――」

 

 ユウヤが何かをしようとしていると悟ったのか、奴等は銃を俺に向けて構える――しかし、遅い!

 

「――木に変える力!!」

 

 次の瞬間、ユウヤの手から無数の枝が生えた木が、黒服の集団に向けて突き進む――

 

「ぐわぁ!」

 

 その様子を見て彼は――

 

「よし! 逃げるぞ!」

 

 後ろに庇っていた少女の手を握り、一目散にその場から離れるべく、足を動かす。

 

「え!? やっつけるんじゃないの!?」

 

「勝てないって言ったの君だろッ!?」

 

 

 

 そして、彼女の手を引いて逃げるも――瞬く間に彼等は追い詰められていった。

 

 

 

「もう……良いわ。ユウヤ……」

 

「バカ野郎! お前が俺に言ったんだろ……もう、アイツらに従うのは嫌だって――自由に生きたいって!!」

 

「ユ、ユウヤァ……」

 

 その美貌を歪めて、彼女は自らの決意を彼に告げた――

 

「私、生きたい!! そして……今度こそ幸せに――幸せになりたい!!」

 

「そんだけ聞けりゃ充分だよ」

 

 彼女の叫びを聞き、彼は決意を固めた。

 

「女の子を幸せにする――男が命を懸ける理由としては上等すぎる!」

 

「ユウヤ……」

 

 その時、彼の中にある強い意志は、見る者に未熟ながらも物語の主人公達のような『黄金の精神』を感じさせた。

 

 

 いま、少年は――大切な物を、そして後ろに居る少女のために男として命を懸けて戦う――

 

「――行くぜ!」

 

 そう、この物語は【ゴミを木に変える力】を持つ少年――ユウヤ・ウエキが大切な物を護るために命を懸けて、巨大な組織の念能力者や転生者と戦う王道物語――

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、最近景気わりぃな……面白そうな仕事が全然無ぇ」

 

「たまには、協会からの依頼でも受けるか?」

 

「やだよ。アイツら注文が細かい上に報酬も大したことねぇし……」

 

 

 

 ――ではない。

 

 

 

「何より、内容が詰まんねぇしな……堅苦しい思いしてまで仕事をこなしても、得る物が安い報酬と協会からの評価と名誉……やってらんねぇよ」

 

「とてもプロハンターの言葉とは思えないな」

 

「プロハンターが全員、清廉潔白で協会に殉じる覚悟があると思ったら大間違いだぜ? 少なくともオレは、みみっちいプライドや、糞の役にも立たねぇ名誉よりも形のある金を取るね」

 

 金髪の美少女は、その外見からは中々想像できない汚い言葉遣いで、やけに現実的な事を言う。

 

「名誉よりも金か……まぁ、確かにな」

 

「だろ?」

 

「だが『ケイト』――お前は現実的な思考と言動をするくせに、何故内容も良く解らない変な依頼を受けるんだ?」

 

 金髪の少女――『ケイト』に対して、彼女の相棒である長身の男性は折角なので、前から不思議に思っていたことを尋ねる。

 

「はぁ? そんなの面白そうだからに決まってんだろ……どうせ命懸けるなら――」

 

 彼女は勢い良く立ち上がりながら続ける。

 

「――自分の好きな事に……だろ?」

 

 これまた同感だ……と、どちらかと言うと。中性的な外見をした黒髪の青年は内心で思った。

 

 己の好きな事の為に動き、それ以外には興味を示さない――まともな社会人としてははっきり言って駄目だが、自分達は『ハンター』……未知に飢え、それを追い続ける。

 その為ならば、自分の全てを懸け、他人も平気で巻き込めるロクデナシ共――それがハンターだ。

 ましてや、自分達はプロハンターだ。

 ライセンスと言う特権を振りかざし、己の道に立ちはだかる障害をあらゆる手段で粉砕し、必要であるなら暴力を行使してでも欲しいものを手に入れる。

 

「それがオレ達ハンターだろ?」

 

「違いないな……それじゃ当分は今まで通りか?」

 

「おう!『ジン・フリークス』に会うまでこっち側の世界を楽しみながら放浪だな……」

 

「一応聞くが、会ったらどうするんだ?」

 

 青年は、既に解りきっている質問を、少女に問い掛ける――その顔には若干の呆れと諦めが見てとれる。

 

「決まってんだろ――、一緒に『暗黒大陸』に行くんだよ!」

 

 

 

 この物語は、決して王道ではない。

 ただ、かつて『神』であった『人』の怒りによって生を終えた者達が、別の世界で好き勝手に生きるだけの物語――

 

 ただ、意味もなく、己の中の飢えを満たす為だけに、人類への被害も構わずにタブーである暗黒大陸を目指すだけの『転生者』の物語だ――

 

 

 

 少女の言葉にやっぱりか――と、青年は天を仰ぐように顔を上げた。その背中には哀愁が漂っている。

 

「何度も言うが、あそこに行くのは止めておけ……本当に命が幾つ有っても足りんぞ」

 

 青年は、本当に止めたいのか、真剣な表情で少女に言った……だが、その言葉も目の前の少女には届かない――

 

「解ってるよ。全部覚悟の上だ――」

 

 この世界において、人間が新世界を目指す度に、人類に厄災が降り掛かって来た。そして、新世界を目指したもの達もその大半が、悲惨な最期を迎えた。

 しかし、彼女はそれらの代償(リスク)を背負っても、暗黒大陸を目指すことを諦めるつもりなど毛頭無い。

 何故なら、そこに彼女の求める物が在るからだ――

 

「はぁ……そこまで言うなら止めないが、俺は暗黒大陸にまで付き合うつもりはないぞ?」

 

「おう! 暗黒大陸に行きたいってのは、完全にオレの我儘だ。流石にソレにお前を付き合わせる訳にはいかねぇからな」

 

「そう思うなら、普段から気分で行動するのを止めてくれ……俺は常に戦々恐々としてるんだぞ?」  

 

 『オレが居ないとコイツ死ぬんじゃね?』とは、青年が少女と腐れ縁でコンビを組んでからというもの、良く思うことである。

 青年としても、何だかんだで付き合いの長い少女――ケイトには死んで欲しくないと思う程度には情が湧いている。

 

 それ故に、出来ることなら『暗黒大陸(じごく)』に行くのを止めようと忠告を繰り返しているのだが、未だになんの成果も得られないまま、現在に至っている。

 

 むしろ、暗黒大陸について諫める度に、どこか意地になっている気すらする。

 

「お前…本当にいつか死ぬぞ?」

 

「あん? 人間なんだから『いつか』死ぬのは当たり前じゃねぇか……ようはそれが、早いか遅いかの違いだろ?」

 

「まぁ、確かにその通りなんだがな……やっぱりお前は『どこか』おかしいよ――」

 

「おうよ――でも、転生者やハンターに一般人と同じ感性を当て嵌めるのは色々間違ってると思うぞ? そういう意味で言うなら、お前も立派な『破綻者』だぜ」

 

「……否定できないのが我ながら悲しいよ……」

 

 青年……火上(ヒカミ)京也(キョウヤ)は、最近の自分の言動や心境を思い返して見て、客観的には自分も『圭斗(ケイト)』とドッコイドッコイだと思い至り、げんなりする……

 

「ま、まぁ~~オレは最近のお前も悪くないと思うぜ?」

 

「やめろ! 俺に同情的な態度を取るな!!」

 

 余程情けない表情を晒したのか、気不味そうな雰囲気でおずおずとイタチの行動を肯定するケイト……そして、その態度を見て更に傷つくキョウヤだった。

 その様を見て『コイツ面倒くせぇな……』と内心で溜め息を吐くケイト……情けないキョウヤを見て『コイツにはオレが居ないと駄目だな』と思う彼女だった……何だかんだでお互いに自分が居ないと相手は駄目だなと思っている辺り、この二人は相性が良いと言えるだろう。

 

 

 

「原作のハンター試験ってあと何年後だっけ?」

 

「およそ5年だ……多分、その試験日は原作以上に人数が多いんだろうな……」

 

 試験内容の解らない時期よりも、試験の内容が全て原作で描かれている5年後の試験の方が確実に受かると勘違いした転生者(バカ)共がこぞって参加するだろうし、或いは原作の登場人物となる面子に粉かけようとする奴等も居るだろうとキョウヤは脳裏で想像する――

 

「うわぁ……試験官の『ヒゲ野郎(サトツ)』と『美食馬鹿(メンチ)』には同情するぜ――アホ共の相手しなきゃならねぇなんて、オレなら耐えなれねぇ……」

 

 そう、彼らの言う通り、未だに転生者の中には自分こそ特別な存在であると勘違いするような輩が多い……当初のそういった者達は、自殺願望でもあるのか、それとも無駄な正義感でも拗らせたのか……『幻影旅団』や『ゾルディック家』に近づいて殺されたり、パリストンやヒソカ等の危険人物を排斥しようとして逆に人知れず消されたり、【念】を使えない癖に天空闘技場に行って、200階に辿り着く前に試合で再起不能になったりで碌な最期は迎えなかった……

 それらの悲惨すぎる転生者の末路を見たり、聞いたりして、大半の転生者は特別意識を無くし、前世と同じく平凡な生き方を選ぶ。

 

 その他にも、転生者は曲がりなりにも義務教育を受けて育った元日本人が大半なので、幼い頃は勉強などで困ることは無いと言って良い。

 なので幼い頃は周りから天才扱いされるのは仕方の無いことなのだ。そして、自分は天才なのだと思い込むようになる……と言っても、成長を重ねるごとに周りとの学力や知識の差が無くなっていき、平凡に埋もれるのだが、自分は特別なのだと言う意識を持ったまま成長してしまう転生者も居る。

 そして、転生者は何故か、基本的に【念能力】を取得するのに失敗することがない(・・・・・・・・・・・・・・)……つまりは、恵まれた環境の中で育ち、己を特別なのだと言う意識を持つ転生者は、堅実に原作にならって【念能力】の修行をし、身に付けてしまう……それがより、転生者を増長させてしまうのだ。

 

 そういう輩は、逸って死亡フラグに突撃した馬鹿な転生者とは違い、原作開始前に必要以上に原作の登場人物に絡もうとはせず、原作の開始であるハンター試験こそが、自分のステージであると勘違いするのだ。

 

「なんかの間違いで主人公達が落ちたらどうすんだか……馬鹿じゃねぇの?」

 

「ああ、原作が狂うということは原作知識が当てにならんようになるという事を理解してないんだろう……それか、それらを踏まえて自分なら上手くやれると認識してるかだな」

 

「それならもっと救いようがねぇな――あ~馬鹿って怖ぇわ」

 

「それに、今となっては『原作知識(そんなもの)』は何れ程の役に立つのやら……」

 

 彼の言うことは正しい……この世界は確かに『HUNTER×HUNTER』という漫画を軸とした世界ではあるが、同時に彼らを含めて大量の転生者(イレギュラー)が存在する世界でも在るのだ。

 

 たとえば、今の段階では【念能力】が使えない非力な主人公勢を転生者(イレギュラー)が誰か一人でも殺してしまった場合――まず間違いなく【冨樫義博】が描いた物語(ストーリー)は破綻し、本来であるなら救われるはずの人間が救われず、成されるべき事が成されないままに、ただ時が過ぎていく……

 

「――それが何だって話しな訳だけど……」

 

「まぁな……今更『当て嵌められた筋書き』通りに進むのは――面白くないな」

 

「そうそう……解ってきたじゃねーか! それでこそだぜ」

 

 彼等は、原作知識を過信しない――あくまでも自分の頭に留めておくべき文字通りの『知識』としてしか考えていない。何故なら、原作が変わろうと、どうでも良いからだ……

 原作では救済される人間が救済されず、悲劇は悲劇のままに終わる――だが、それがどうした?

 

 

「悲劇なんて、世界中の何処にでもありふれてるじゃねーか……道端歩いてりゃ遭遇するようなもんが、今更一つや二つ……何だったら百やニ百増えても、誤差の範囲内だろ?」

 

「そうだな……俺も他人の面倒事(ひげき)に関わっているほど暇じゃない――俺には俺の目的がある」

 

 彼――火上(ヒカミ)京也(キョウヤ)には、この世界においての確かな目的があった……それは、彼にとっては何に替えても叶えたい願いであり、祈りでもあった――

 

「……まだ諦めてねぇのかよ?」

 

 ――それ故に、ケイトのこの言葉は、彼の琴線に触れるものであった。

 彼がこの言葉の意味を理解した同時に、ケイトには、冷たい殺意が向けられた――

 

「わ、ちょッ!! 【オーラ】消せ馬鹿!! 獲物が逃げるだろうが!?」

 

 その言葉を聞き、彼はハッと自分の前面に目を向ける――すると、水面から底が見えるぐらいの透明度を誇る水の中を複数の魚がこちらから素早い速度こちらから離れていくのが見えた――

 

「む、すまん……つい」

 

 そう、彼ら二人はとある国の領土内に在る『禁止指定区域』の中をプロハンターの権限を使って国から許可を得てまで押し入り、何をしているか――二人の転生者は肩を並べ、その辺の木の枝と糸で適当に作った釣竿を持って『釣り』をしているのだ……

 

 因みに、釣りを始めるに至った経歴も『暇だな~』『なら釣りでもするか?』『良いね! だったら人が入れないような場所でやるか!!』という様な軽いノリである。

 そんな暇潰しにライセンスを活用する辺り、彼等が売れば余裕で十桁になるプロハンターの証を便利な道具としか思っていない事が解る。

 

「つい――じゃねーだろ。『つい』で一般人なら死ぬような凶悪なオーラ向けんじゃねーよ。オレにも魚にも悪いだろうが……まぁ、今のはオレも言い方が悪かったかもだけどよ……」

 

 彼の巨大な【オーラ】は、それだけで念を使えない生身の人間ならば恐怖で気絶する程なのだが、それにプラスして先程の『殺気』……彼女の言うことは間違ってはいない。彼の本気のオーラに殺意が乗せられれば、まず間違いなく、一般人ならば死ぬだろう。

 

「俺は諦めるつもりはない……必ず俺は……!」

 

「解ってるよ。でも……お前の願いはオレの願い以上に困難かもしれないぜ?」

 

 『火上(ヒカミ)京也(キョウヤ)』には、この世界で果たさなければいけない目的がある。

 彼には、少なくともケイトに比べれば、幾らかの良識が残っては居るが、その僅かな良識も自らの願いと秤にかけた場合は呆気なく傾く程度にしか残ってはいないのだ。

 

 相棒である圭斗(ケイト)はその願いを知っている……その困難さも……それ故に彼女は自らのとなりに居る相方を憐れむ……『いっそのこと、諦めてしまえれば幾らか楽だろうに』と……

 

「まぁ、そろそろ釣りも飽きたしな……どっか行くかねぇ……」

 

「はぁ……一応聞くが何処にだ?」

 

「目的地なんて最初に決めちまったら、面白くねぇだろ……テキトーにそこらを歩いて、気ままにブラブラするのが良いんじゃねぇか……」

 

「はぁ~~…………まぁ、お前はそういう奴だったな」

 

 そろそろ止めるかなと、二人が手に持った竿を離そうとしたところで、なんとキョウヤの手に持った竿から垂らされる糸に括り付けた浮き絵が急激に引かれるのを感じた――キョウヤとケイトはお互いに顔を見合わせる……そして、結論が出たのか、キョウヤは適当に作った釣竿が壊れないように、竿と糸を自身の【オーラ】で強化し、全力で竿を引いた!

 

「よっしゃ! 引け引け!!」

 

 そして、隣に居るケイトは自分の竿を捨てて、キョウヤの応援に回る――

 

「うぉおお!! 意外と強いぞ!?」

 

 キョウヤは男にしては線の細い体つきではあるが、外見からは想像が付かないぐらいに鍛えている……そして、この世界は彼等が元々いた地球とは比べ物にならない程に生き物の潜在能力(スペック)が高いので、鍛えれば鍛えるほど面白いぐらいに強くなっていくのだ……最も本人達の素質もある程度は関わってはくるのだが……

 

「キョウヤ! 本気で引きやがれ!!」

 

 思った以上に強い手応えに、キョウヤが手間取っていると、焦れてきたのかケイトは本気で引けと悪態を吐く。

 それを聞いたキョウヤの方は、勝手なことを言いやがって……! と思いつつも、本当に引いてくる力が強いので口を開く余裕が無い。

 

「ああ…焦れったい! 貸せ!」

 

 ついに我慢できなくなった彼女は、キョウヤの竿を引ったくるように奪うと、今度は彼女が渾身の力を籠めて竿を引っ張る。

 

 そして、キョウヤ以上に華奢な外見からは欠片も想像出来ないほどの大怪力を発揮し、彼が散々手こずった相手を一気に引っ張りあげた――

 

「よっしゃ――えぇえ!!」

 

「ちょっ!?」

 

 そして、舞い上がる水飛沫と共に現れたのは――巨大な『(ワニ)』だった――

 精々が巨大な魚程度であろうと、高を括っていた二人は現れたそれに驚愕の悲鳴をあげ――同時に脱兎の如くその場を離れた。

 

「何でワニがあんな適当な釣り餌に引っ掛かるんだよ!」

 

「知るか!」

 

「しかも、なんだあのバカみたいなサイズ――どう見ても10m位あったぞ!?」

 

「もっと知らん!」

 

「お前、猛獣(ビースト)ハンターだよなッ!?」

 

「名乗ってるだけだ! 別にそれほど詳しい訳じゃない。それに、あんな恐竜みたいな鰐が居て堪るか! 似てるだけの別種だろ!!」

 

 そう、この世界には魔物や魔獣も含めて、多種多様な生物が存在しており、その数は優に地球のそれを越えているだろ……中には、色々物理法則を超越したようなとんでも生物も居るのだ。

 それらの種類に興味を持ったキョウヤはライセンスを取得した際に、猛獣ハンターになりたいと、今にして思えば血迷っていたとしか思えないことを言ってしまったので、ハンターサイトのプロフィール上はそういう風に登録されているのだ。

 最も、登録されているだけで、キョウヤはそれのプロフェッショナルという自覚など皆無である。それに危険指定されている場所に入るのにこの称号は中々に便利なのも相まって、面倒だから訂正しないのだ。

 

「ウォッ!?」

 

「クッ!」

 

 このエリアの出口に向かって駆けていた二人の背後から、野生の猛獣特有の純度の高い『殺気』が向けられる。

 それと同時に飛んでくる『何か』の気配を探知した二人はそれぞれ左右に跳ぶ――次の瞬間には、ほんの少し前まで彼等が居た空間が、その辺りに生えていた木々ごと吹き飛んだ――

 

「おいおい……なんつー威力だよ……何だ? ありゃ?」

 

 ケイトは、先程まで自分達が居た場所が纏めて吹き飛んだことに驚き、疑問を漏らす。

 対してキョウヤは、その場を詳細に観察し、それをやったであろう巨大鰐が何をしたのかを9割方把握していた……

 

「水……か――」

 

「は? 水?」 

 

 キョウヤの言葉に、なんのこっちゃ? と首を傾げるケイトだが、よく辺りを見渡せば、自分達の周囲が不自然に濡れていることに気付き、改めてと巨大鰐の方を観察した――

 

「なるほどねぇ……『水のブレス』って……ますます化け物じゃねぇか」

 

「同感だ……一体どんな進化の過程を辿ったらあんな体の構造になるんだ?」

 

 二人の正面では、巨大鰐はその巨大な尻尾を水の中に浸し、グングンその体積を膨張させていた。

 そして、その大きな口を開き、彼ら二人の方向に向けて体の中に溜め込んでいた水を勢いよく吐き出した――その明確な攻撃を避けながら、二人は思考を逃走から戦闘に切り替えた。

 

 恐らくは、あの水に浸している尻尾がチューブのような役割を担い、水を体内に溜めて、それを口から放っているんだろうとキョウヤは推測する。

 そして、それは間違っていない。

 

 

「はぁ……あそこまで敵意ビンビンに誘われちゃ――」

 

「……しょうがないか……」

 

 巨大鰐の放つ強烈な野生の敵意と殺意を前に、二人のハンターは、意識を『逃走』から、『戦闘』――或いは『狩り』に切り替えた――

 

「悪く思うなよ。鰐野郎――お前が悪いんだぜ?」

 

 そう言いながら、指の骨を鳴らすケイト――彼女の顔には野生の獣を連想させる獰猛な笑みが浮かんでいた。

 まるで、この状況が愉しくて仕方がない――そう、言わんばかりの相方のようすを、これまた疲れたような表情で、本日数度目の溜め息を漏らすキョウヤ――

 

「手ぇ出すなよ?」

 

「解ってるよ……」

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

「」「」「」「」「」「」「」「」

 

 

 

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