君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 下心ですがかまいませんか? 】

季節は冬、時間は夜

この時期の体の芯から冷える寒さとしん、と張り詰めた空気が雪那は好きだった

こんな日にはこれでもかと言うほど暑い湯に浸かってゆっくりと考え事をしたりするのがいつもの風呂時の過ごし方……

 

だったのだが

 

「いやー熱すぎますよこれ 玉の肌が火傷しちゃいます」

 

今日はセリカが一緒だった

 

「どうしてこうなった……」

 

「どうしてってそりゃあ」

 

時間は少し巻き戻る

 

夕食を食べた後、2人で洗い物をしていた時だった

 

「雪那」

 

「なんだ?」

 

「今日は一緒にお風呂に入りましょう」

 

唐突な一言だった

まぁ恋人同士ならこれくらい普通だろう

何もおかしいことは無い

 

だが問題はセリカがある事情を抱えていたことだ

 

「お前……あんまり人前で肌を見せたくないって言っていただろう」

 

そうなのだ

セリカは基本的に人に肌を見せたがらない

理由は過去に『家』でセリカに対して行われた生々しい虐待痕を見られたくないから……というものだった

なので基本的にセリカと雪那は風呂は今までは別々に入っていた、のだが

 

「ほら、今度悠里ちゃん達と温泉宿に行く予定じゃないですか」

 

悠里というのはセリカたちが良く行く和風甘味『白玉庵(しらたまあん)』の看板娘深海悠里(ふかみ ゆうり)という少女のことである

 

そうセリカ達はせっかくだから年末は温泉宿に泊まってゆっくりしようではないかと悠里達と旅行の計画を立てていたのだ

 

だがそこで問題に行き当たる

温泉宿に行くということは皆で温泉に入るということだ

当然セリカは虐待痕を人に晒すことになってしまう

幸いにも今ではほとんどの傷が消えかけているが背中に付けられた鞭の痕などはなかなか消えてはくれなかった

 

そこでセリカが思いついたのが

 

「ならいっそ見せてしまえばいいと思いまして それでまずは雪那で予行演習を」

 

「私は練習台か」

 

「やっぱり近しい人から見せていけば慣れると思いまして」

 

その時僅かにセリカの頬が緩むのを雪那は見逃さなかった

 

「お前、よからぬことも考えているだろう」

 

「まぁ7割方下心からですけど構いませんよね?」

 

ヘラヘラと言ってのけるセリカ

まぁセリカのことだからそんな所か……と思いがちだが、それはセリカなりの強がりだと言う事も雪那は見抜いていた

 

セリカはセリカなりに自分の過去と向き合おうと考えているのだ

今言った言葉はさ気を使わせないためだろう

何年経っても、それこそ『子供の頃から』セリカはそういう所だけは変わらないままだ

 

なので雪那は『いつも通り』気づかないふりをして応えた

 

「仕方ない……付き合ってやる」

 

「やった♪じゃあ僕お風呂の用意してきますね」

 

―――そうして今に至る

今はお互いに1通り髪と体を洗い終え2人でゆっくりと湯船に浸かっているところだった

 

「それで、どうなんだ」

 

「見られること、ですか?まぁ思っていたよりもあんまり怖くはないですね」

 

それは良かった、と雪那は言うと同時に少し気が楽になったのを感じた

実際傷は鞭の痕などが若干遺る背中以外はほとんど気にならないレベルだった

 

というより雪那はすこしどぎまぎしていた

普段は『事』の時でさえはっきりと見ることの出来ないセリカの柔肌

白く白く上絹のような色をした肌は湯に浸かってほんのり桜色に染まっている

スラリと伸びた女らしい柔らかそうな手足

剣を振るうために力を付けた雪那にはない美しさを持った手足だ

 

普段見慣れていないだけにこういう時に見てしまうと予想以上に破壊力がある……と考え頭を振ってその考えを払褥する

これでは下心があるのは自分の方ではないか

そうもやもやしているとセリカがふと自分を覗き込んでくる

 

「雪那?顔、赤いですよ?」

 

「いや、なんでも……」

 

覗き込んでくるセリカを見てふと視点が三寸ばかり下に行く

そこに映る桜色の肌の中でもひときわ映える桃色の……

 

「―――セリカ」

 

「なんです?」

 

何も分かっていないセリカに対して雪那は少し罪悪感を感じながら

 

「私は、先に上がるぞ……」

 

「あ、のぼせちゃいました?こんなに熱いお湯ですもんねぇ」

 

「あ、あぁ……」

 

我ながら苦しい言い訳だ……と思いつつもセリカが気付いていないことに神に感謝した

 

「じゃあ僕はもう少し浸かってから上がりますね」

 

そうするといい、と雪那は言うと先に湯船を出て脱衣所に向かっていった

 

「……いくじなし」

 

セリカが誰にいうでなく、ぼそっと呟いた

 

End

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