東京喰種 《high school student》 作:Mr Muu
今回は少し短いです。
『ガキン!』
鈍い金属音が響く。
そこには大振りの薙を繰り出す武田とそれをガードする佳未の姿があった。
「なんでこんなことを!」
「ハァ?忘れたとは言わせねぇ、あの夜のことをな!」
「あの夜のこと?」
佳未が聞き返す。
「俺に重傷を負わせたあの夜だ!」
そう言いながら武田が鱗赫での猛攻を仕掛ける。
(っ!数ヶ月前のあの喰種か?)
「悪かった!このことは謝る。だから、こんな無駄な戦いはやめよう」
そう佳未が言うものの武田は逆上しており聞く耳を持たない。
「シャオラッ!」
武田は息切れすることなく連撃を繰り出している。佳未は防戦一方だ。
その時、
『ピキ…ピキピキピキ』
佳未の赫子が限界を超えたのかひび割れ始める。
「クソッ まだ死ぬわけにはいかないんだ」
そう佳未は言い、赫子を振り回すも武田には当たらない。
「あの時の攻撃はまぐれかぁ?」
と、武田が挑発する。
佳未はまんまと挑発に乗ってしまい武田に斬りかかる。
「このバカが」
武田はそう言うと赫子を束ねて佳未の腹に突き刺す。
『がはっ』
佳未の口から血が噴き出す。
「つまんねぇな、もっと手強いと思ってたのに」
武田は壁にもたれかかる佳未にとどめを刺そうとする。
しかし、
『ズォン!』
と、紅くうねる四本の赫子が武田を吹き飛ばす。
そこには髪の白い青年の姿があった。
「大丈夫?佳未くん」
「カ…ネキさん?」
佳未はその優しく悲しい声と眼帯のマスクを見てそう問いかけた。
「遅くなったね。ゆっくり休んでて。あとは僕が」
そのやり取りを聞いていた武田が、
「なんだよお前、ヤモリの野郎に殺されたんじゃなかったのかよ」
と、言う。
「君もアオギリかい?」
カネキがそう聞くと武田は「ああ、そうだ」と、頷く。
それを確認するとカネキは武田を薙ぎはらう。
『パキッ』
カネキは指を鳴らして
「
と言った。
そこからは一方的な攻撃が続いた。あのカネキの面影はない。
穴だらけの武田は床に倒れ込む。
「……れる、弱いものは喰われるんだよ!俺は喰う側だ!」
虫の息で言う武田の身体を赫子が覆う。
「俺は弱くない、俺は強い、俺は弱くない、俺は強い、
俺は弱くない、俺は強い、俺は弱くない、俺は強い、
俺は弱くない、弱くない、俺はッ弱くナい!」
武田は叫びながらカネキに突進する。
これを跳んで躱すカネキを巨大なペンチの様な赫子が捕らえる。
「がんたいはんぱややろぅ〜りいいいいいぜのかぁぁぁぐねぇを返せえええ」
武田は逆上してカネキを壁に叩きつける。
『ガハッ』
カネキは既に血だらけだった。
しかし、カネキは赫子を用いてペンチから脱出する。
そして、
「ヤモリよりはマシだな」
と、呟き武田の赫子を削いでいく。
「おま、?痛い痛い痛いいあぢごぢ痛ぁいいいいいい」
あまりの激痛に武田は絶叫し、外へ飛び出ていった。
「逃げられたか、それよりも佳未くん、怪我ない?」
カネキがマスクを外し佳未に尋ねる。
「大丈夫ですけどアレは?」
「共喰いの結果だよ」
「怖いですね」
「ボロボロじゃないか、みんなの所まで送るよ」
そう言うとカネキは歩き出した。佳未はその後をついて行く。
「あの、その髪どうするんです?店で目立ちますよ」
佳未が何気に尋ねると、
「僕は…あんていくには戻らない、やりたい事があるんだ」
カネキは断言する。それを聞いた佳未は、
「え、じゃあ、店は?僕たちはどうなるんですか!」
「ごめんね。でも、みんなを守る為なんだ」
「それなら僕も力になります!」
「ありがとう。でも君はまだ高校生だ、危険すぎる。
それに、君までいなくなったら誰にトーカちゃんやヒナミちゃんを
任せられる人がいなくなるじゃないか」
それからは無言の時間が続いた。
そして数分後、カネキが
「着いたよ」
と、言うとそこにはあんていくのメンバーたちが集まっていた。
「おせーよ、いい歳こいて、なに迷子になってんだ」
ニシキが毒づく。
それに付け加える様に、
「カネキ君と二人っきりだなんてずるいじゃないか。jealousy」
と、月山が話し出すが誰も聞いていない。
「さあ、帰るか、カネキも達者でな」
ニシキがそう言うとあんていく組とは逆方向にカネキ達は歩いて行った。
「西尾さん、店長たちは?」
「さあな、まあ先に帰ってんじゃねえの。それより、寂しくなるな」
「そうですね、最初は気弱そうな人だと思ってたけど変わっちゃいましたね」
「そうだな、それよりもクソトーカ追いかけるぞ 走れるか?」
そう言うニシキはもう走っている。
「なんとか」
佳未もそう答えると走り出す。
(悲しむよりも前向きに生きよう。カネキさんにもいつか逢える)
そう自分に言い聞かせて佳未は進む。
どんな形であれ、別れは辛い。
走る佳未の視界は徐々に霞んでいった。
*
ーーーー12月25日 あんていくーーーー
芳村たちは早朝からあんていく再開に向けての準備をしていた。
「古間くんこれ、コーヒー」
入見は古間の前にコーヒーを置き、そう言った。
古間たちが一息ついてコーヒーを啜っていると、
『ドタドタドタドタ』
大きな足音を立てながらヒナミが階段を降りてきて、
「おはようございます!」
と、明るい声で挨拶する。
「うん、おはよう」
芳村は落ち着いた様子で挨拶を返す。
「あれ、よしみお兄ちゃんとお姉ちゃんは?」
ヒナミが不思議そうに尋ねると、
「メリークリスマス!!」
と、サンタコスの佳未とトーカが奥から出てきた。
「ヒナミ!これプレゼント」
トーカが綺麗にラッピングされた箱を渡す。
「ありがとう!」
とても嬉しそうな表情を浮かべ、ヒナミは箱を開ける。
そこには、この時期にぴったりな白いマフラーとニット帽が入っていた。
「わぁ!」
ヒナミから歓喜の声が漏れる。
「気に入ってくれて嬉しいよ。帽子はトーカちゃんから、マフラーは僕の手編みだよ」
と、佳未が半ば自慢げに言う。
「へぇ、佳未くんが編み物ねぇ」
古間は感心した様子でマフラーを見る。
「ヒナミちゃん、ちょっと見せて」
と、入見がマフラーを手に取る。
「よくできてるじゃない」
「昔からこういうことは得意なんです。
最初はトーカさんと一緒に作る予定だったんですけど、あまりにも下手で」
と、佳未はトーカに目線を送る。
するとトーカは、
「こういうのやった事ないから仕方ないだろ」
と佳未を睨む。
その時、
『バン!』
と、勢いよく店の扉が開いた。
「merry Christmas!!」
そこには、大きな花束を抱え赤と緑のスーツを着た男が立っていた。
「どうしたんだい?みんな僕を見つめて」
皆の視線はその男に集められていた。
「誰が見つめるかよ お前のファッションがおかしいだけだ、クソ山」
「おや、レディー "クソ山"はひどいんじゃないかい」
月山はトーカの罵倒も気にせず店に入ってきた。
そして数分後、
「こんにちは〜」
と、ウタやイトリ、四方がやって来た。
「
とイトリがボトルを掲げる。少し酔っているみたいだ。
「そうだ!芳村氏、肉を持ってきてはくれまいか」
と月山が頼む。
「どうしてだい」
と芳村が月山に聞く。
「せっかくミス,イトリがワインを持ってきてくれたんでね、
オードブルでも作ろうと」
「へぇ〜月山さん料理できるんですか」
と佳未が尋ねる。
「
月山は誇らしげに答える。
芳村が貯蔵庫から肉を取ってくると、慣れた手つきで焼き始める。
「いい匂いだね」
ウタは呑気にヘタレと戯れながら言う。
「流石にカーテン閉めた方が良いわね」
と入見がカーテンを閉めると
「奥で食べようか」
と芳村がみんなを奥に案内する。
「ヒナミ焼いたお肉食べるの初めて」
「私もだよ」
そうこうしていると月山が大皿を手にして奥にやって来た。
「さあ、月山家特製オードブルだよ」
大皿には焼いた人肉、スライスされた目玉や指などの様々な部位が
綺麗に盛り付けてあった。
「んじゃ飲むよ〜!」
イトリがワインの入ったグラスを配る。
「ヒナちゃんは、新鮮なやつね」
「では乾杯は私がやろうか」
と、芳村がグラスを掲げ、
「乾杯」
と言うと、後に続くように
『乾杯〜!』
とワインを飲む。
四方は相当弱いのか一口飲んだだけでベロベロになっていた。
「うまっ!」
月山のオードブルの味にトーカでさえも感嘆の声を上げる。
そこからは夜遅くまでわいわいと騒いでいた。
「では、僕はお先に」
佳未は明日も学校がある為、先に席を立った。
真冬の東京はとても冷え込んでいた。
クリスマスでも人は、喰種は殺されてるのだろうか。
佳未はそんなことを考えながら夜道を歩く。
「今日はもう寝よう」
それをカネキは遠目で見ていたが佳未が知るよしもなかった。
次回はCCG大忘年会です。
意外な人が出てくるのでお楽しみに