「帰りたいな……」
僕がいったい何をしたのだろうか?
「ハッ」
笑みがこぼれる。
「もう死ねよ」
この状況に不満しか持てず、いない存在にできない願望をぶつける。
「はぁ」
溜め息。
「まったく」
周りを見渡してから疑問を口に出す。
「ここ、どこ?」
白い、白い、真っ白な空間だった。
「中二で死亡か?」
天国? 地獄? 夢? 妄想? 危ない人?
「まったくもう」
文句しか出ない。
「中二病が卒業できないじゃないか」
先程まで中二病に入学した覚えはない。ただ少しこの状況に怖くなってしまい、僕が昔読んだ漫画のセリフを言ってみただけである。
そして先程のハッ、と、もう死ねよ発言が僕の頭をよぎった。
「恥ずかしい! すっげー恥ずかしい!! なに僕どっかの漫画みたくハッとか言って笑ってんの! 笑えねえよ!!! なに僕もう死ねよとか言ってんの!? 誰もいないのに!! 誰もいないからってちょっとやってみたかったけど恥ずかしくてできなかったことやっちゃったよ! 黒歴史作っちゃったよ!!」
ひとしきり叫ぶと息が荒くなり、一度落ち着こうと考える。
「まあ誰もいなかったのが不幸中の幸いってことかな?」
心の中でそう自分を慰め、息を落ち着けながらもう一度周りを見渡してみる。
「もうここ何所だよー、僕を苦しめてそんなに楽しいか、僕を恥ずかしくさせてそんなに嬉しいかちくしょー」
誰からも返事は返ってこない。代わりに後ろから肩を叩かれる。
「…………」
「ん?」
後ろを振り向くと少女が一人。
「……何時からいた?」
「……『ハッ』から」
初めに周りは見渡していた。だが後ろは見てなかった。
「……フッ」
「……?」
まったくまったく。そうきたか。まさかAパターンじゃなくてΩパターンだったとは思いもしなかったよ。うん。う~。
恥ずかしい!! 誰もいないかと思って! ハッとか言って笑っちゃったよ!!! もう死ねよとか言っちゃったよ誰もいないと思って!!! あー、みんなが僕を笑ってる気がする。
「…………僕、死んだんだね?」
「……うん」
忘れよう、あの頃の僕は忘れよう。黒歴史なんてみんなそうしてる。一度は通るよ人間だもの。死ねよとか敵キャラに簡単に言うのを少し憧れちゃったりするよ少年だもの。そうだ忘れた。忘れた。忘れて。忘れろ。
「で、僕どうすればいいの?」
ここは天国で今日からここで暮らしてもらうとか? それとも今から天国か地獄かを決めるとか? だけど地獄なら味わったよついさっき。
「転生してもらう」
「てんせい?」
天性? 天声? 天成? あ、ここが天国みたいなもんなだけに天をかけたのか?
「……生まれ変わってもらう」
生まれ変わり…………、あ、転生か。
「えー」
もうあんな人生こりごりだよ。
そして思い出す。自分がどういう人生を歩んでたかを。
「知ってるかもしれないけど僕いじめられてたじゃん。だからあんまり生まれ変わったりしたくないんだけど」
本当ならば思い出したくもない。
「だからって虫とか犬とか人間以外にも生まれ変わりたくないし、記憶も失いたくない」
嫌な事でも記憶はなくしたくない。それを失くしてしまったら僕じゃなくなってしまうから。
「ということなんだけど、どうすればいいかな?」
「…………」
わがままを言った罰として地獄行きとか? そしたら訴えてやる!
「転生してもらう」
「え?」
ループ? どこのドラクエだ。とツッコミたくなるのを抑え、どういう事? と口に出す。
「この中から選んで。人間だし記憶も失わない」
僕の前の少女の後ろに真っ白なパネルがでてきて、うっすらと文字が浮かび始める。
1、めだかボックス
2、GANTZ
3、バトル・ロワイヤル
4、バイオハザード
わーい4個もあってお得だー。僕が選べるの1つしかないけど。
「1でお願いします」
「わかった」
1話しか見てないけど面白そうだったなー、こうなるならしばらく漫画で見てからが良かったけど別にいっか。
「性別は?」
「男のままで」
「記憶は?」
「ありのままで」
「……能力、才能は?」
そこまで選べちゃうの?
「いりません」
行ける世界まで選べたんだ、もういいだろう。例えこれを貰わなかったせいで僕が死んでも別にいい。あの世界で、好きと思えた世界で死ねるならばそれもいいだろう。
「……それは無理」
「は?」
なぜ? と言葉を続ける前に神様が口を先に開く。
「何かは絶対に必要」
「はあ」
何でか疑問に思ったが仕方が無い事なのだろうと自分で勝手に結論付け、才能と能力を何にするかについて少し考える。
「じゃあ」
もう一度それで良いかを自分の中で確認してからその内容を言う。
「あなたの能力を無効化できる能力をください」
これならば日常生活に支障はでないし才能も能力も結果的にもらわない事と一緒だから平等だ。それにちゃんと何かの能力を持ったことになるだろう。
「……わかった。だけど今は与えない。生まれ変わってから」
「はーい」
こうして僕は一つの能力を得る事となった。
「じゃあ」
「はい」
そして、非常にあっけなく、簡単に、恥ずかしく、僕の人生のプロローグは終わりを迎えた。