とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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物語シリーズ風のあらすじ(笑)


“なんのつもりだ?”

生まれて始まり、死んでまた始まった、守原(かみはら)(あき)
後悔は終わらず、彼はまた、中学二年の春休みと同じ(あやま)ちを犯す。

日常(・・)()にあるから日常(・・)だ。


15箱

「さあ、行け! 行くんだ僕!」

 

 (あき)以外は誰もいない生徒会室前の廊下で、彼は自分の頬を両手で叩き、気合を入れようとしていた。ヒリヒリと頬が痛むのを感じながら、扉の引き戸に手を掛けようとしては、深呼吸を繰り返す。

 

「あー、でもどうしようかな本当、僕がいなくても大丈夫だろうしなー。春休み(・・・)だってそうだったじゃん」

 

 中学二年生の春休みのことである。そのころは黄金期と称されていためだかに、ピンチが訪れた。その時に空は運良く、それとも運悪くと言うのか、丁度めだかから離れるといった、遅すぎる案を実行していた。最後にはその案を捨てて、めだかを守ろうとした空だったが、すでにめだかが敵を退けていたというオチだと、空は記憶していた。

 

「お腹痛くなってきた気がする……赤さんに治してもらおうかなー」

 

 呟いて、右手で腹を押さえる空。あまりにも生徒会室に入りたくないからか、ストレス性胃腸炎というものになったのかもしれない。もしくは誰に言うわけも無く、自分がこの場を離れるための言い訳をしているということもある。

 

「落ち着け。ここで逃げたら僕は後悔するぞ、それでもいいのか!」

 

 空は自分を奮い立たせるように自分に聞いて、自分で答える。

 

「……それでもいいなー」

 

 ぼやくように言う。だがそれはフェイントに過ぎない。

 

「なんちゃって!」

 

 そう声に出して、勢い良く生徒会室の扉を開こうとする。しかし動かなかった。どうやらキチンと鍵の役割を果たしているらしい。

 

「…………」

 

 羞恥心が彼を襲って、彼の顔を真っ赤に染める。空は今すぐ保健室に行って、奥にあるベッドに飛び込み、熱くなった顔を枕に沈めたくなるが、我慢した。

 とりあえず、この熱い顔を少しでも涼ませようと、自分の後ろにあった窓を開けて、風を当てる。それで少しは頭が冷えたのか、どうなっているのか調べたほうが良いと思うぐらいには頭が働いた。

 

 もしかしたら他のみんなは帰ったのかもしれないと、窓から離れ、生徒会室の扉の上部にあるガラスから、中を覗こうとしてみたが、ガラスの内側に貼ってあった『ゴミはゴミ箱に。悩みは目安箱に』と書いてあるプリントによって、それは叶わなかった。

 それでもなんとかして見えないか、顎に手を当て考え、そのまましばらく考えたが、妙案は浮かばず、このプリントの事を忘れて、この閉じられた扉をなんとかして開けることにする。

 

「くっ! 開かない!」

 

 全体重を掛けて扉を開けようとしたり、両手で開こうとなど色々試しては見るが、扉は文字通りビクともしない。

 

「これは神様もさっさと帰れって僕に言いたいのかな?」

 

 と、自分に都合の良い神様のお告げを作ったが、すぐに空は、今日に限って出された、めんどくさい量の宿題が入っている鞄を置いたままだと思い出し、この生徒会室になんとか入ることにする。

 

――生徒会室に入るにはどうする、どうしよう。

 

「こうしよう!」

 

 彼はテレレテッテッテーという効果音が付きそうなぐらいに、右手に持っている鍵を高く掲げ、生徒会室の鍵ーと、持っているものの名称を言った。別に空が四次元ポケットから出したわけでも、青狸に頼んで出してもらったわけでもなく、ただ、扉が開かないことを再確認した後、職員室に行って鍵を借りてきただけだ。幸い、生徒会の仕事を手伝っている生徒と覚えられていたので、理由も聞かれず楽に借りる事ができた。

 

「ふー、ガチャリ……と」

 

 自分で鍵が開く時の音をたてながら、扉の鍵が開く感触を手に味わう。そしてそのまま、面白いことでも言って入ろうか、そう悩んで扉を開いた空に、

 

 

「――へ?」

 

 

 光。

 轟音。

 爆発。

 

 科学で求められた速さ通り、順番にそれらが襲い掛かった。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 七分前、生徒会室にて。

 

 

「お見事、お見事。見抜いたのはテメーが初めてだぜ、黒神」

 

 冥利はめだかの他にもいた、善吉や高貴、もがなの面々を無視して、自分の武器を見抜いためだかに、賞賛と拍手をささげる。

 

「テメーの言ったとおり、そのスーパーボール(・・・・・・・)がオレの武器だ。もちろん、素材とかには気を使ってるけどな」

 

 対人兵器、『超躍弾(スーパーボール)』。

 1個当たり120万円掛かるだけあって、その攻撃力は折り紙つきで、頑丈な楽器も人も壊せる。

 しかもスーパーボールならではの特性を利用して、正面の攻撃はもちろん、跳弾を利用して、上からも下からも後ろからも、全方位から相手に攻撃をすることができるという優れもの。

 

「ま、でも正体が割れたらそれでお仕舞の遊び兵器だよ」

 

 言いながら冥利は、袖口に隠してあったいくつものボールを、武器を捨てるかのように生徒会室の床にばら撒く。

 

「あーあ、それにしても本当に無事なんだな、そいつら」

 

 めだか以外の生徒会メンバーである3人の生徒が無事であるのを見ながら、冥利はさりげなく、後ろの扉の鍵を閉める。これで逃げ道の一つが無くなった。

 

「……ああ、なんとかな。で、貴様はここまで来て、今度は何をしに来た?」

 

 めだかは持っていた扇子を口元に持っていき、一度善吉たちが標的にされたためか、どこか疑い深い目つきで冥利を見る。それが冥利をなんとなく嬉しく思わせ、口を三日月の形に変える。少しはめだかの人間らしいところを、見れたからかもしれない。

 

「何をしに来た、なんてよー、そんなこと聞くなよ。オレたちは同じ十三組で、異常者同士で、怪物同士な化物同士の似た物同士なんだからよ」

 

 十三組。特別特別科。学年は違えど、同じ番号の組。異常者だけが入れる、特別な組。

 

「仲良くしようぜ」

「…………」

 

 その提案はめだかにとってやぶさかではないと、冥利は思った。敵になった風紀委員を傷つけないところから、まだ、自分たちと仲良くなりたいということは簡単に分かる。

 それでもやはり、風紀委員が自分たちを襲ったと分かっていた善吉は違うようで、声を少し荒げながら、口を開いた。

 

「……雲仙先輩。あんた一体、何が狙いなんだよ。いきなり俺たちを襲ったり、めだかちゃんに仲良くしよう、なんて言ってきたり、何がしたいんですか?」

「ケケケ。だから言ってんだろー人吉。仲良くしたいんだってよー。仲良しこよしで、この箱庭学園を良くしていこうぜ? ま、せいぜい話し合いから始めとくとするか」

 

 寄りかかっていた扉から、冥利は少しの反動をつけて離れる。

 

「黒神? テメーは人間が大好きなんだろ?」

 

 聞くまでもなく、黒神めだかは人間が大好きなはずだ。それでも冥利は一度聞く。聞いて、話し合いに関心を持たせる。

 

「それでテメーは人を救う、と」

 

 敵意を向けず、冥利はめだかたちの向こうにある窓を目指す。誰も止めるものはいない。

 

「テメーは人間が大好きだから、人を変える、か」

 

 窓の鍵も、閉める。

 

「なあ黒神。聖者なら人を救うだけで留めとけよ、自分の正義を他人に押し付けるなよ。オレは裁くだけだが、テメーのは単なるお節介だ。だけどお節介を無理やり焼いたら、それはただの強要だぜ? 上から目線性善説とか、上から人を救ってんじゃねえよ。あの守原っていう(おとこ)(おんな)もテメーの正義に賛成のようだが、賛同ってわけじゃねえだろ?」

 

 逃げ道となるものは全て、閉めた。

 

「……どうやら三つの誤解があるようだな雲仙二年生。第一に――」

 

 冥利が話に入る前にばら撒いたボールが、コロコロと転がって、めだかのつま先に当たる。先ほど持ったスーパーボールとは、違う(・・)重みを持ったボールが、当たった。

 

「――! 貴様たち離れろ! これはスーパーボールではない火薬球だ!」

「!?」

 

 めだかの言うとおり、焦ったとおり、冥利がめだかを褒めた後にばら撒いたものは『超躍弾』という改造したスーパーボールではない。火薬玉、言い変えるならば、爆弾(・・)だ。

 

「おっとバレたかい? ダメだなー、オレって本当にダメだ。だが残念。仕込みはギリギリ終わってる。

 炸裂弾、『灰かぶり(シンデレラ)』。実は『超躍弾(スーパーボール)』より『灰かぶり(こっち)』のほうが本筋でな、一個ありゃあ老朽化した壁なんざ簡単に壊れるって代物だ」

「……密閉状態の部屋でそんなもの爆発させたらキミもタダじゃあ済まないよ」

「そうだ! 悪ふざけにしても度が過ぎてるぞ!」

 

 予想通りの反応に冥利はほくそ笑み、そのままポケットに入っていた、いくつものマッチ箱を取り出し、『灰かぶり』を爆発させる、最後の準備をする。

 

「どーするよ、黒神。いつもならオレを改心させて止めるんだろう? それともやめてくださいって、お願いしてみっか?」

「やめてくだ――」

「遅えよ、ボケが」

 

 火をつけた十数本のマッチをバラバラに放り投げ、『灰かぶり』に着火させた。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「やめてくだ――」

 

 めだかの行動は早かった。

 冥利がマッチを持っていた手を放したのを見たのと同時に、めだかは傍にあった花瓶に入っている水をばら撒き、『灰かぶり』を濡らすことによって、不発弾に変える。

 次に、足元にある『灰かぶり』を蹴り飛ばして窓のガラスごと飛ばす。これで爆発の威力は減った。しかしまだ問題はある。

 

 爆風。熱風が爆発的な勢いで人を襲う。

 それは、けっして人体を無事では済ませない。

 

 だから爆風を受けない場所に、自分以外の生徒会メンバーを近くのロッカーに全員閉じ込めた。

 閉じ込めるためには、閉めるためには人の力が必要だ。

 

 そのためには、めだかが外にいるしかなかった。

 しかし、ロッカーを閉めて時間がなくなったといってもまだ、自分の被害を抑える方法、もしくは外に脱出するだけの時間はあった。

 でも、だめだ。

 

 爆発。爆風のほうが爆発よりも恐ろしい、とは言ったものの、爆発も大変恐ろしいものに変わりはない。爆発によってこのロッカーが無事にいられる可能性は考えにくい。だからめだかはロッカーを庇うためにも、動けなかった。

 

 それでもまだできることはないか。

 そうやってめだかは視線をさまよわせた後、一人の人間を見た。

 

 守原(かみはら)(あき)

 

「――へ?」

 

 最愛の幼なじみの姿が、爆発の光によって、めだかの目からかき消された。

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