とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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主人公の原作知識ほぼ0です。


生徒会の日常編
注文の多い料理店


《世界は平凡か?》

 

 生徒会長である黒神めだかが問う。

 

《未来は退屈か?》

 

 何百人もいる人数の前で緊張する様子をだす訳でも無く続ける。

 

《現実は適当か?》

 

 その問いに答えを求める訳でもなく続けて言う。

 

《安心しろ、それでも》

 

 少し間を置き、言い放つ。

 

《生きることは劇的だ!》

 

 

 

――――そりゃ安心できないね。

 

 

 ここは箱庭学園。

 普通と特別と異常、そして、守原 空(かみはら あき)が通う学校。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 僕こと守原空。どうやら生きることっていうのはとても劇的らしい。

 今まで、僕はそんなことを考えもしなかった。だけど今それは真実だと、僕は高校一年生にしてやっと分かった。

 

「ふぅ」

 

 僕は監禁されている。

 ついさっき、目を覚ましたばかりでまだ、現状を把握しきれてはいないが縄で椅子ごとがんじがらめにされている。部屋から出れず、動くのが困難な状況。人はこういうことを監禁、もしくはそれに似た言葉で表すのだろう。

 といっても僕はただ、学校のとある部屋に閉じ込められいるだけだ。……そのほうが余計、危険な香りがするか。

 言い直そう、襲われて気絶したら知らない部屋にいた!

 

 …………。

 ツッコミがほしいよぅ。

 言うのを忘れていたが、僕にはツッコミをしてくれなくもない友達を持っている。

 一人は……、

 

「ぐえっ!」

 

 たった今、とある部屋――生徒会室に転がり込んできた、金髪の不良のような男性が僕の幼なじみ、人吉善吉。

 そして、もう一人が……、

 

「待たせたな、空」

 

 僕の幼なじみ兼、生徒会長。黒神めだか。僕を監禁した犯人は十中百九この女性だ。

 

「待ってない。待たされた記憶がない」

「そうか、それはよかった」

「よくない!」

「……お前ら、俺のことは無視か?」

 

 善吉がかすれた声で僕らに尋ねた。

 

「うん!」

 

 われながら良い返事だったと思う。だけど善吉は僕の返事に、暴力で返してきた。

 今の僕は椅子ごと縄で縛られているため反撃もできなかった。しかし、いつかこの仮は返してやろう。

 

「で、黒神ちゃん。今日はなに? 何をすればいいの僕ら?」

「おい! あきらめるな空、あきらめたらそこで、試合終了だぞ!」

「試合終了だよ。ダブルスコアどころかトリプル超えて、ディカプルスコアなんて聞いた事ないようなものを言われちゃうぐらいの終わり方だよ」

「まだだ、まだ終わっちゃいねえ!」

 

 えー、僕は手首も縄で縛られちゃってるし、足しか動かないよ。それに善吉はもうボロボロだし、どうすればいいの。

 黒神ちゃんから逃げるにしてもまわりこまれて終わるだろうに。僕はもう、逃げるほかに解決策が浮かばない。

 

「あいつを二人がかりで倒す」

「…………」

 

 盲点だった。

 そう、僕らは男、対する黒神ちゃんは女性。

 やれやれ。善吉ときたら、あの青いサラサラの髪をしていて、美形な顔立ちで、頭も良くって、運動も大得意。性格も良くてさらにはカリスマ性を持っているから、正に生徒会長になるために生まれてきたようなあのモテモテな女性に、ケンカを売るなんて正気かい?

 

「行くぞお!」

「おお!」

 

 

Q,男2人がかりで黒神めだかにケンカを売ったらどうなりますか?

A,死にます。

 

 

「――――ぐああああああ!」

「善吉!」

「…………」

 

 だ、だめだ。僕らは、黒神ちゃんに勝てない。なんてやつだ黒神めだか。化物か!?

 縛られたまま襲い掛かった僕と善吉の捨て身タックル。それを黒神ちゃんは僕の攻撃をかわしてから善吉にカウンター攻撃。さらに僕が起き上がって追撃しようとしたときには、足首もタオルで縛られていた。

 体と足首、どちらも縛られてしまった僕はイモムシみたく、ジタバタとその場で動くことしかできず、ただ、善吉が黒神ちゃんにやられていく様を見ているしかなくなっていた。

 

「くそぅ、黒神めだかめ! きさま、それでも人間か!」

「……貴様たちはそれでも私の幼なじみか?」

 

 好きでなったわけじゃないしー。

 

「ところで空よ。あまりひどい事を考えていると貴様の女装写真を学校中にばらまいてしまいそうだ」

 

 この子が幼なじみでよかった! まったく今日も生徒会長さんは可愛いな。そのうえ学力優秀、運動神経抜群! 才色兼備とはこのことだね、こんな人が僕らの生徒会長で良かったよ。箱庭学園史上最高の生徒会長だ!!

 

「うむ。よろしい」

 

 女装なんてするんじゃなかった……。

 軽く後悔。

 

「そういえば、なんで僕たちをここに呼んだの?」

 

 倒れている善吉を尻目に、僕は黒神ちゃんに聞いた。……善吉、さっきから動いてないけど大丈夫だよね?

 

「うむ。この目安箱なんだが、先ほど開いてみたところ早速第一号の投書があった」

「目安箱? あー、あれか」

 

 思い出した、思い出した。

 目安箱。簡単にいってしまえば悩みを箱に入れて、生徒会に相談するというただのお悩み相談箱だ。

 例えば文字を代筆してくれ、や学校を綺麗にするのを手伝ってくれ、など。他にも、ゴジラを退治してくれ、なんて願いも叶えてくれる、と思う。僕らの黒神ちゃんに常識は通用しねえ。

 ……僕もなんか頼んでみようかな。

 

「僕らにそれを手伝えってこと?」

「ああ」

「いやだと言ったら?」

「言わせないさ」

「…………」

 

 黙ってボロボロになっている善吉を見た。

 

「仕方がないなー、黒神ちゃんは甘えん坊さんなんだから。まったくもー」

「……おい」

「善吉も手伝えば? おとなしく従っとこうよ。絶対そのほうがいいって」

「カッ! 俺はなんと言われようが、手伝わねーよ」

「はいはい。ツンデレツンデレ」

「ツンデレじゃねェ!」

 

 善吉がツンデレなのはいつものことだ。

 黒神ちゃんのためなら善吉はいつだって走るし、手をだす。僕はいつだってそれをみていた。

 

「で、黒神ちゃん、その目安箱に入っていた依頼はなんでしょーか?」

 

 何でも手伝ってくれる善吉と違って僕が手伝うのはお願い次第だ。手伝うっていうか見学をするだけなんだけどね。

 ……巻き添えをくらうことはあるけど。

 

「ふむ、読んでやろう」

 

 すると、どこからともなく黒神ちゃんは手紙を取り出し、その内容を音読する。

 

「『剣道場の近くにいる不良に財布をとられてしまいました。どうか取り返してください。あと、先生や他の人たちには内密に、それと、財布は守原空くんと人吉善吉くんに届けさせてください』――だそうだ」

 

 へー、僕と善吉が届けるのかー。

 

「えー、僕と善吉がー?」

「ふーん。どうも細かいな、依頼の内容。俺たちに届けさせろ、って書いてあったり」

「まあ初めての依頼なのだから、仕方のないことだろう」

 

 先生たちには内密で、取り返した財布は黒神ちゃんが直接、じゃなくて僕らが届ける。……たしかに細かいな。注文の多い料理店かってんだ。ちくしょーめ!

 

 昔に見た絵本の内容を思い出したりしながら、手伝うことになってしまったことに対しての文句を心の中で叫んでいると、善吉が僕の肩に手を乗せてきて言った。

 

「じゃ、まあ、仕方ないし。やるか?」

 

 やっぱり善吉はツンデレだった。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 さて、まずは財布を不良から取り戻すことだが、実はそんなに難しいことではない。

 

「よし。取り返したぞ」

「取り返した? そうだね。献上してきたね」

 

 不良を見てて、こんなにもかわいそうに思わせることができる黒神ちゃんはすごいな。財布も取り返したし、ついでに不良も改心したし、あとは僕らの役目か。

 

 そうやって僕が黙考している間に、黒神ちゃんが不良から取り返した財布を、頼んだぞ、と一声かけてから善吉に財布を手に渡し、そして、そのまま黒神ちゃんは剣道所の中へ入っていった。

 

「……黒神ちゃんはなんで剣道場に?」

「ああ。不良がタムロってた」

 

――なんだテメーは!?

 

――箱庭学園生徒会長、一年十三組黒神めだかだ。みすみす、タバコを吸って健康を害しているところを見逃すわけにもいかんのでな、急きょ、生徒会を執行する!

 

 

 そんな会話から数分、不良たちの大きな悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「いこっか」

「ああ」

 

 二人ともいい笑顔だったと思う。

 

「あ」

 

 善吉がいきなり声をあげた。

 ? どうしたんだ善吉は? 財布でも落としたのかな。

 

「そういやこれ、どこに持ってけばいいんだ?」

 

 そう言いながら、僕に財布を見せてくる善吉。縞々の財布って珍しいな、たいていは皮財布でほとんど黒だったり白なのに。

 で、どこにその財布を持ってけって?

 

「……依頼書には?」

「時間しか書いてないな」

「…………」

 

 一応、僕も依頼書に目を通してみたが、確かに、いつ渡すかの時間しか書いていなかった。

 

「はぁ」

 

 こういう困ったときは……

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「しーらぬーいちゃーん」

「なーにー♪」

 

 ノリノリなこの子。なにを隠そうこの子が僕に突っ込みをしてくれなくもない最後の人物。僕の友達であって同じクラス。不知火半袖ちゃんだ。

 本当に高校生? と言いたくなるぐらいの幼い顔立ちに幼い体形。だがしかし、その体に隠されている胃袋は幼い雰囲気とは裏腹にとても凶悪だ。どれぐらいかというと、2000円だせば制限時間まで食べ放題、というのが売り文句の店に行ったら一度で出禁になってしまうぐらい。

 

 まあ、今その説明はどうでもいいか。さて、なぜ僕がこの子を尋ねたかといえば、やっぱりあの財布についてのことで質問があるからである。

 僕は懐から、善吉に預かった財布を取り出して、不知火ちゃんに見せた。

 

「この財布の持ち主さー、今どこにいるか分かったりする?」

「ああ。これは五十土(いかづち)くんのだね。さっき校舎裏にいたよ」

「おお。さすが不知火ちゃん、よく知ってるね」

 

 いつもと同じような僕の言葉に、不知火ちゃんはいつもどおり答えた。

 

「あたしは不知火(しらぬい)。この世に不知(しらない)ことはないよ♪」

 

 僕と不知火ちゃんが友達になってからの、いつも通りのやり取り。

 

「おー。よし、善吉に連絡をして――と。まだ時間はあるから、雑談でもしてよっか?」

「ヤダ」

「イヤなの!?」

「あひゃひゃ♪ 嘘だよ嘘」

「……そりゃ良かった。――それじゃあ、絵本の話でもしよう」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「不知火ちゃんによるとここらしいけど……」

「見当たらないな……」

 

 不知火ちゃんと雑談が終わり、五十土君がいたという校舎裏に書いてあった時間通りきてみたが、周りには僕ら以外、人っ子一人いなかった。

 校舎裏、と言えばラブレターを渡す場所で、実は善吉にラブレターを渡すためにわざわざ依頼書に書いたのではないだろうか、とも考えたがそれでは僕を呼ぶ意味がないのですぐに違うと分かった。だけど校舎裏というのは太陽が出ているときでも暗く、人がなかなか来ないような場所なのでそういったことが多いのは事実だ。まあ、僕には縁がない場所だけど。

 

「善吉をこの手で殺めずにすんで良かったよ」

「なにを考えてたんだお前!?」

 

 ふぅ、僕が殺人犯にならずに良かった。

 

「それにしても来ないね。ちょっとあっち見てくる」

「おう」

 

 いないなー。

 僕は待ち合わせ場所であるはずの校舎裏を離れてから、別の場所を色々さがしてみたが、どこにも誰かを待っているような人は見受けられなかった。

 実はこっちの校舎裏じゃないのかな。とりあえず善吉の所に戻ってみるか、それでいなかったら善吉と相談しよう。

 

「やっぱり見つから……善吉?」

 

 そうして戻ってきた僕の視界には、依頼者である五十土君――どころか、善吉の姿さえなかった。

 

「あれ?」

 

 置いてかれた? でもそれなら連絡ぐらいはしてくれると思うけど? もしかしてここで実はみんな僕のことが嫌い、という設定でもでるのだろうか。だとしたら今すぐ泣きた――

 

「ガッ!」

 

 泣こうか真剣に考えていたときだった。

 後ろから襲われた。

 黒神ちゃんが僕を監禁するためにまた襲ってきた、というわけではない。

 男の人だった。

 

「…………」

「あーあー。たくよー。いつ一人ずつになるか待ってたのに、遅すぎだろ」

 

 理不尽な物言い。

 一人ずつ校舎裏に来て、財布を渡せ、ということは依頼書には書かれていなかった。そんな細かくはないはずなのに、血塗れた鉄パイプを持った依頼者――五十土君はそう言った。

 

「な、なんで……?」

「なんで? そりゃ気になるか。いきなり襲われたんだもんな」

 

 頭も舌も、まだ思い通りに回らない僕に五十土君は一方的に、説明を始めた。

 

「ムカつくからだよ」

 

 単純明快。単純すぎるほどに単純だった。

 

「お前らみたいな何もできないヤツが、なんでもできる生徒会長に一目置かれてるのがムカつく。

 ただ幼なじみなだけで、そうやって傍にいられるお前らを見てるのがムカつく。

 ムカつく、ムカつく。見てるだけでイライラしてくる」

 

 ああ、そっか。

 

「めだかと楽しそうにしてるのを見てるのがスッゲームカつく」

 

 

 この人も黒神ちゃんが好きなんだ。

 

 

 黒神めだか。彼女は最初に説明したとおり、才色兼備。その一言で済ませられる女性だ。

 頭が良くて。

 運動ができて。

 性格も良くって。

 モテないほうがおかしいぐらいの女性だ。

 

 だから、こうやって嫉妬をしてくる生徒も、いないはずがないのだ。

 なんでもできる黒神ちゃんと、なんにもできない僕。

 そんな僕が、なんにもできない僕が、自分の好きな人と一緒にいて、腹が立たないわけがない。

 

「おっと、告げ口なんてつまんない事は考えるなよ? 黒神めだかのお手伝いをした男二人は、別の不良に襲われて依頼を果たせなかったところを、ある男性によって助けられる――なんて、良い筋書きだろう? そして俺は、これがきっかけで生徒会長とハッピーエンド!」

 

 筋書き。

 筋書き、か。

 

「ん? 立ちあがっちゃって、どうしたんだ?」

 

 この世界は漫画の世界。

 所詮は、筋書きの世界。

 

「……なァに笑ってんだ?」

 

 筋書きの中の筋書き。

 笑っちゃうよ。

 おかしくて、笑っちゃうよ。

 

「ああ、ムカつく。やっぱりムカつくなあ。――もっかい死ねや!」

 

 もう一回死ぬのはイヤだな。

 だけど、黒神ちゃんが(・・・・・・)この人と付き合うっ(・・・・・・・・・)ていうのはもっとイヤだなあ(・・・・・・・・・・・・・)

 

 ガギン!

 

 五十土君が僕に向かって鉄パイプを振り落とそうとしたとき、鉄パイプを弾く(・・)、鈍い音が、校舎裏に響いた。

 

「……遅いよ善吉。死ぬかと思った」

「注文が多いぞ、助かっただけでもありがたく思いやがれ」 

 

 頭から血を流した善吉が、仏頂面で憎まれ口を僕にたたいた。

 善吉はそう言うけど、結構怖かったんだぞ。せっかく勇気をだして立ち上がったのに、本当に死ぬかと思ったよ。

 

「な、なんでお前が……!」

「なんで? そりゃ気になるか、いきなり鉄パイプを蹴り飛ばされたんだからな(笑)」

「……善吉、起きてただろ」

「俺たちは、お前の好きなめだかちゃんと何年も一緒にいた幼なじみなんだぜ。あれぐらいでやられるわけねェだろ」

 

 手加減してたのかはしらないけど僕も耐えれたぐらいだし、善吉の言ったとおり僕らは何年もずーっと黒神ちゃんと一緒にいたんだ。なんでもできる黒神ちゃんの傍らにいられる僕らが、そこら辺にいる不良なんぞにやられるわけもなかったのだ。

 

「それじゃあ、覚えとけ」

 

 そう言って、善吉は五十土君に一歩踏みだす。

 

「俺たち幼なじみに手を出すときには」

 

 五十土君は気圧されてか、一歩下がり、その顔には焦りの色が浮かんでいる。

 その五十土君に善吉は、一歩ずつ、間合いを詰めていった。

 

「例え殺されても、化けて出てくる番犬(おさななじみ)が二人でるってな!」

 

 

 その言葉と同時に善吉は五十土君の顔面に右ストレートを突き刺した。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「くそ! なんにもできねェくせに、調子に乗りやがって!」

 

 善吉が校舎裏から離れた後、五十土君は目を覚ましてから、乱暴な口調で叫んでいた。……やっぱり、僕らじゃあ改心させることなんてできないか。

 茂みに隠れて、五十土君を見張っていた僕は、そんなことを考えていた。

 

「そんなことはないぞ」

「!?」

 

 五十土君の独り言に答えたのは、いつのまにか五十土君の後ろで同じポーズをとっていた黒神ちゃんだった。……僕に言ったのかと思ったよ。

 

「善吉や空はいつだって私を助けてくれるし、なにより、なんでもできるという私を心配してくれる(・・・・・・・)

「あ、ああ?」

「さて、それでは不知火の依頼に基づいて、生徒会を執行する!」

「え、あ、え?」

 

 黒神ちゃんがここに来たのは不知火ちゃんの仕業か……。分かってくれたんだ(・・・・・・・・・)

 

「貴様も、かつては正々堂々と誰かを傷つけずに人を思う、純粋で優しい少年だったに決まっている。何百日も夜を泣き明かすようなことがあって、道を踏み外してしまったとしか考えられん」

 

 ……一応説明しておこう。黒神めだかの『上から目線性善説』。

 黒神ちゃんは、自分が普通だと思っている節がある。だから、人を意味なく傷つけるようなことなどはありえないものだと思い込んでいる。だから、失敗をした者には上から(・・・)分からせる。

 

「友に騙されたか?

 恋人に裏切られたか?

 家族に見捨てられたか?

 安心しろ。私が貴様を更正させてやる。昔のことなど思い出せないぐらいに新しい記憶を作って作り変えてやる。作ってやる、造ってやる、創ってやる!

 まずは剣道部と共に、素振り十万回からの練習だ! 今日は帰れると思うなよ!」

 

 

 本日、2回目の悲鳴が聞こえた。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「まったく甘いねー。空は♪」

「そう?」

「そうだよ。本当は相手が不良だったってことも分かってたんでしょ?」

「素行がそんなに正しくない生徒だってことは……」

「それを知ってたならさっさとあのお嬢様に相談すれば良かったのに」

「……それは、不知火ちゃんが代わりにやってくれたんでしょ?」

 

 本当に五十土君が悪い人だという確証はなかった。だからそこは不知火ちゃんに任せようと考えてたんだけど、どうやらそれで正解だったみたいだな。善吉にも借りは返せたし、まさに最高の終わり方だ。

 

「まあね♪ わざとらしく『注文の多い料理店』の話をそれっぽく変えて、伝えてきたからさ☆」

「……伝わるとはあんまり思わなかったよ。今回の話がちょっと似てたから、本当に少しだけ変えただけだし。――――不知火ちゃんもよく分かったね?」

 

 その言葉に対して、不知火ちゃんはやっぱりこう答えた。 

 

「私は不知火。この世に不知ことはないよ♪」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 今回のエピローグ。

 あの後、再び黒神ちゃんに呼ばれて生徒会室に行った僕らを待っていたのは黒神ちゃんと、三輪の花だった。

 

 一つは、財布の依頼。

 二つは、剣道場の不良。

 三つは、不知火ちゃんの気遣い。

 

 どうやら黒神ちゃんは、一つの依頼を解決するたびに一輪、花を飾ることにしたらしい。

 

 あの後の五十土君だが、黒神めだかの創造計画で見事、新しい五十土君に生まれ変わった。今では、日向君という人と共に、剣道部を全国大会に導けるよう頑張っているらしい。五十土君は、別にあの生徒会長に頑張れって言われたからじゃあ……。などと言っていたが、本当のところはどうなのだろうか、僕には分からない。

 

 二つ目の依頼についてだが、どうやら、僕らが知らなかっただけで、剣道場にタムロしていた不良たちをなんとかしてくれ、という依頼もあったみたいだ。まあ、それについては僕も知らないことなので、もしも知りたいのなら、不知火ちゃんにでも聞いてみてくれ。

 

 

「……で、僕は生徒会に入る気はないけど、善吉はどうする?」

「そうか……、それは残念だ。まあ、強制はしないさ」

 

 そう言って、本当に残念そうに顔を暗くする黒神ちゃん。

 

「俺か? 俺は……」

「…………」

 

 善吉は、僕と黒神ちゃんを視線だけ動かして交互に見たあと、小さく溜め息を吐いた。

 

「入るよ。メンドクセーけど、お前らだけじゃあほっとけないからな」

 

 ツンデレだ。と言おうとしたが、これで善吉の入る気を削ぐのも止めといたほうがいいと思い、心の中で思うだけに留めておいた。

 

「そうか。空が入らないのは残念だが……」

「贅沢は言わない。注文が多いよ」

「――しかしまあ、一応は礼を言っておこう」

 

 

 箱庭学園。

 普通も特別も異常も一緒に通う漫画みたいな漫画な学校。この学校に通う、そんな彼らにも、実は共通点が一つある。

 まったく違うような彼らの共通点。それは――

 

 

「ありがとぉっ!!」

 

 

 

 所詮はみんな、素直にお礼を言うのも恥ずかしい高校生だという事。

 

 

 

「ツンデレ……、か」

 

 

 

 

 

 箱庭学園。

 現在、一年十三組黒神めだかが生徒会長を務めている学校。

 何か悩みごとがあったら誰かに相談してみてください。もしかしたらツンデレで素敵な生徒会長を紹介してくれるかもしれませんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは次の案件だ。『守原空君を捕まえて、メイド服に着替えさせてください。あ、脱がせた制服は隠して、あと、写真を数十枚ほど撮ってくれると嬉しいです』――だそうだ」

「「注文が多いな!?」」

 




どうでしょうか? 感想をくれるとありがたいです。


タイトルを見てライトウイングを思い浮かべたあなたは相当なジャンプ通。
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