とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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主人公のキャラがいまだに掴めない。




 眠い。

 その二文字が僕の脳内でグルグルと回っていた。

 

 僕は目を擦りながら今では、もう慣れ始めている学校への道をたどっいた。昨日、あまり眠れなかったせいか足が重く感じる。いや眠い確かに眠い昨日眠い遅くまで眠いゲームを眠いやっちゃった眠い僕も悪いよ眠い。だけどさあ、

 

「眠すぎる」

 

 自己責任とはいえ眠すぎる、ラリホーを掛けられた気分だ。掛けられたことないから、どんなもんか分からないけど。

 まったく、こんな早起きをするなんて僕もえらくなってしまったもんだ。だけどもし二度寝なんかしてしまって遅刻をしたら、それは気まずい。

 昔、といっても中学生の時だが一度だけ遅刻してしまったことがある。その時のみんなの視線といったらもう……。あれをまた受けるくらいなら早起きぐらい。

 それに早起きは三文の徳って言うし、なにか良いことがあるかもしれないしね?

 

 そんな感じで、早起きは二度寝よりも素晴らしいと自分に思い込ませている間に学校に着いた様だ。案の定、校庭や体育館にもまだ部活をしている生徒は見当たらない。

 いや一人居た。

 部室の前に一人、立ち止まっている。

 

 その姿に、僕は疑問を覚えた。いくらなんでも早すぎるだろう。どれだけ良い子なんだ? 早寝早起きにも程がある。

 その人、いや女性はどうも挙動不審というやつで、周りに誰かいないかをキョロキョロと、擬音が付きそうな程に周りを確認している。だが僕はその女性よりもだいぶ後方にいるため、僕には気づけなかったようだ。

 次にその女性は遠くからでも確認できるほどの勢いで深呼吸をし、それから意を決するように部室へと入った。

 

「……ハッ!」

 

 わかった。わかってしまった。

 

「そういうことか」

 

 眠気が吹き飛ぶ。

 

「なるほどなるほど」

 

 この前、不知火ちゃんに実力派揃いの三年生を抜いて二年生のなんとか先輩がなんとか部のレギュラー入りをしたと聞いたことがある。

 誰もいないぐらいの朝早く。挙動不審。緊張。部室。ここには運動神経抜群な一、二年生もいるし、レギュラーになれる者もいる。

 そう。つまり、

 

「ラブレターか」

 

 この学校にもリア充生活をしている生徒がいるんだね、うらやましい。ねたましい。きっとその二年生のなんとかって人の運動神経抜群の所とか見て惚れちゃったんだな。

 せっかくの告白大作戦を邪魔するのもあれなので、ラブレターを渡した彼女が部室からでてきてもバレないように隠れながら移動する。

 

 そして僕は部室のすぐ近くに到着すると、このまま教室に向かおうとも思ったが、こんな機会めったにないとも思い、悪いとは思いつつその人の顔だけでも見ようとそこらへんにある壁に隠れて、その女性が出てくるのを待つ。……もしかしてこれが早起きの三文?

 

「…………」

 

 僕が隠れて、しばらく経つと、そーっと部室の扉が開き、女性が急いで走り去ってゆく。顔は見えなかったが少なくともスタイルは僕から見てだが、良かった。余計にラブレターをもらった人が妬ましい。

 

「ふぅ、青春だねー」

 

 全く、うらやま……、待て。

 

「…………」

 

 おかしい。

 

「…………」

 

 ありえない。

 

「あの人は女性」

 

 その女性が入った部室は陸上部の女子専用。

 

「あの人も女性。相手も女性」

 

 ?

 

 ……?

 

 …………?

 

 ………………!?

 

「忘れよう」

 

 趣味は人それぞれだ。ここは忘れてあげるのが優しさってものだろう。

 早起きは三文の徳。

 その三文は捨てよう。僕はそう、決意した。 

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「さようならー」

 

 帰りのホームルームが終わって、みんな先生に向かってあいさつをしてから、また椅子に座り直すや、部活に向かう、などさまざまな行動を取る。

 

「じゃあね善吉」

 

 これまで、僕と善吉と不知火ちゃんで、帰りに買い食いするなり、おしゃべりするなりと、いろいろしていたが善吉はつい先週に生徒会入りを果たしたので、僕らとは帰りの時間が異なるようになった。

 時々、善吉を待ってたりもするが、今日は早く帰ってゆっくり眠らせてもらおう。僕は眠いんだ。

 

「……お前は本当に来ないのか?」

「HAHAHAHA! 善吉もジョークがお好きだねー! お寿司も好きなのかな?」

「……ヤベェ、ムカつく」

 

 僕が黒神ちゃんのお手伝いを好き好んでやるわけないじゃん。それに黒神ちゃんも強制はしないって言ってたし、せっかく僕は自由の身になったんだ。好きにやらせてもらうとしよう。

 

「善吉ー、まだか?」

「やあ、黒神ちゃん。今日もお仕事おつかれさま。僕は手伝わなくてもいいんだよね?」

「……ああ」

 

 どうだ。この黒神ちゃんの返事! 自由だ! フリーダムだ! パラダイスだー!!

 

「じゃあね。僕は不知火ちゃんと二人で焼肉屋でも行くよ」

「……不知火と?」

「ん? うん」

 

 お礼も兼ねて不知火ちゃんにおごらなきゃ、五十土君のときの借りがあるんだ。それにしても黒神ちゃんはわざわざ確認して、なんのつもりだろ?

 

「二人っきりで?」

「はい」

「焼肉屋に?」

「YES」

 

 黒神ちゃんは強制しないって言ってるし。僕は自由人なのだ。もう僕のことなんて気にしないでもいいのに……。

 

「…………」

「あれれ。その縄はなんなの黒神ちゃん? まるで、これから僕を縛るために用意したみたいだよ? 強制はしないんだよね?」

 

 

 生徒会長の嘘つき。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「あの……ごめんなさい」

 

 陸上部所属の有明先輩、二年生で僕たちの一つ上。本日の相談者。

 

「本当はこんなこと下級生のあなた達に相談するようなことじゃないかもしれないんだけど、剣道場の事とか友達から色々聞いて……」

「遠慮はいらん構えるな。私は誰の相談でも受けつける」

 

 生徒会室、そこには僕の姿もあった。

 ……僕はいつまで縄で縛られてるんだろう?

 いまだに縄で縛られたまま放置されている僕を無視して、紅茶を飲んで落ち着いている黒神ちゃん。鬼畜だ。

 だがしかし、その内にこの縛られることにより体を痛めることが、快感に変わるかもしれない。そうすれば僕は大人の仲間入りとなれる。

 ……そんな大人にはなりたくないものだ。

 

「それで相談っていうのは、このことなんだけど……」

 

 言葉と共に出されたのは……、見えないよう。

 縛られて上体も起こせない状態で、立つこともできない僕は、机の上に出されたものを見ることができなかった。

 なので僕は軽く体を揺らして、黒神ちゃんに見せてもらうように頼んだ。

 

「黒神ちゃん、見して見して」

「む? ああ。ほれ」

 

 黒神ちゃんが有明先輩から出されたものを、僕の前に差し出す。

 

「お、おお」

 

 僕の前に出されたものに、思わず感嘆のような声をあげる。

 出されたものは二足のスパイクと一通の手紙。

 スパイクはハサミやカッターのような刃物でボロボロにされており、手紙には『リクジょう部ヤめロ』と新聞にある文字を利用して作られた脅迫文だった。

 

「私、今度の大会で短距離走の代表に選ばれて。二年生で代表に選ばれるなんて滅多にないことだからすごく嬉しかったんだけど」

「それでこれ、か」

 

 有明先輩が縦に傾く。

 

「この箱庭学園の部活動は伝統的にレギュラー争いが激しくてさ、レギュラーに選ばれた途端みんなからシカトされるなんて通過儀礼なんだよ? でも、ここまでなんて……」

 

 僕が部活に入らない理由もここにある。レギュラー争いが激しいだけあって練習がめちゃくちゃキツそうなんだ。

 僕を入れさせたいなら、年に3回ぐらいの部活動じゃないと……。

 

「あたし、こんなことしたかもしれない人達といっしょに練習なんかできないよ!」

 

 有明先輩がわっと泣き出した。

 

「みんな怪しくて! 誰も信じられなくて! 不安で不安で夜も眠れないんだよ!?」

 

 言い終わった後、嗚咽をしばらく漏らす。

 

「……わかった」

 

 黒神ちゃん、善吉、有明先輩が僕のほうを向く。

 

 

 

「その相談、僕が引き受けた」

 

 

 

 さて、まずは……。

 

 

 

 

「だから縄から開放して」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「……あんなこと言ったけど、犯人のことちゃんと分かってんのか?」

 

 ふぅ。やれやれ善吉は、僕があんなことを言ったのに分からないのかって?

 

「わからないんだなあこれが」

「……じゃあ犯人はどうすんだ? 別のやつを捕まえて安心させたりでもすんのか?」

 

 うーむ。そういう解決策もあったか。

 だけど、僕はそれじゃあ駄目だと思うしなあ。

 

「それじゃあ意味ないでしょ。ちゃんと真犯人を捕まえて解決するよ、じっちゃんの名にかけて」

「お前のじいさんは何者だ!」

「犯人はこの中にいる!」

「まさかの展開!?」

 

 よし、それじゃあ、読者を飽きさせないためにも頑張るとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

「しらぬいちゃーーん」

 

 頑張った結果だった。

 

「なになにー? 有明先輩がレギュラー入りしたせいで、レギュラーから外れちゃった諫早先輩のことでも知りたいの? それとも証拠を知りたいの? それともそれとも安くて量のあるお店でも知りたいのかなー?」

「……まだ何も言ってないのに、僕が知りたいことをよく知ってるねー」

 

 その決まったやり取りに、不知火ちゃんはやっぱり、こう返した。

 

「私は不知火。この世に不知ことはないよ♪」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「さーてーと」

 

 現在陸上部が活動中の校庭。

 校庭には運動している男性女性がそれぞれ。どこも活気溢れてここに立っているだけでそれぞれの生徒の熱意が伝わってくる。

 そして僕は髪は黒くて髪型は短かい、それでいて目的のスタイルを持つ人物を探すために周りを見渡す。

 

「お、いた」

 

 思ったよりもだいぶ早く発見。現在、容疑者は水分補給中。髪型は短く黒髪でスタイルも思ったとおりほとんど同じ。

 

「えーと、諫早先輩?」

 

 確実にその人とは限らないのでとりあえず聞いてみる。

 

「? そうだけど」

 

 その答えに一安心してから後ろに隠していた左手にあるボロボロのスパイクを見せてみる。

 普通の人ならこんな見覚えのないスパイクになんとも思わないし、疑問を抱くだけだろう。だがこれが犯人ならばどうなるだろうか?

 

「このこと、知ってますか?」

「!? しっ、知らない」

 

 逃げ出します。

 

「はい、ストップです」

 

 僕が捕まえます。

 逃げることも一応予想できていたことなので簡単に捕まえられた。

 

「もう一度聞きます。このこと、知ってますか?」

 

 諫早先輩は暴れて抵抗しているが、僕は構わず見せ付けた。

 ボロボロのスパイクと。

 脅迫文。

 

――今日の朝、僕が見た女性は、多分この人だったのだろう。

 ラブレター、ではなく、脅迫文だったんだ。

 愛、じゃなくて。

 嫉妬、だった。

 

「し、知らない、そんなの知らない! 有明さんのスパイクにハサミなんて入れてないし! 『陸上部やめろ』なんて手紙も出してない……」

 

 自分で言った直後に諫早先輩はしまったという顔をするが、僕には関係ない。もう、今ので犯人は分かった。

 少しずつ、少しずつ、諫早先輩の顔に近づく。

 

「本当に、本当に知らないの?」

「あ、あわわ」

 

 知らないわけがない。

 だけど僕は、

 

「わかった」

「え?」

 

 いまだに怯えた様子の諫早先輩。

 

「先輩はもうこんなことしない、二度としない。絶対にしない」

「え? え?」

 

 いまだに状況がわかっていない諫早先輩。

 

「僕は先輩を信じる」

 

 その言葉を聞いて、僕の言った意味が分かったのだろう。今度は信じられないといったような目で僕を見る。

 

「じゃあ、失礼しました」

 

 諫早先輩を掴んでいた手を離す。

 

「ま、待って!」

 

 諫早先輩が僕を呼び止め、少し迷った後に僕に聞いた。

 

「なんで、なんで信じられるの?」

 

 信じる。

 信じない。

 

「なんで、って」

 

 信じられる。

 信じられない。

 

「……人っていうのは」

 

 人を信じるだけで何個もある。

 人を疑うだけで何個もある。

 

 

 だけど。

 

 

人って言うのは信じるものだからですよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。――――――諫早先輩」

 

 

 人の言うことを信じるのが人なのだ。

 

 

「…………」

「それと練習見てましたけど、足、速いですね。……これからも頑張ってください」

 

 そして僕は座り込んだままの諫早先輩に背を向け、じゃあと一言かけ、帰る準備をするために教室へと向かった。

 

「ごめん、なさい」

 

 そんな僕の背から涙声のそんな言葉が聴こえた。

 

 

 

 

 

「と、漫画ならここでそのまま去りたいところですが諫早先輩」

「!?」

「実は脅迫文がもう一枚ありましてね。このこと、知ってたりしますか?」

 

 そう言って、諫早先輩にその、もう一枚の脅迫文を手渡した。

 内容は『やめなきゃ何度でもスパイクを捨ててやる。』といったものだ。

 

「……知らない、これは、本当(・・)に知らない」

「マジですか。そりゃ参りましたね。やっぱり真犯人は別にいたりするものですね」

 

 僕は腕を組み、困ったようなしぐさを取った。

 

「…………」

「じゃあ、僕はもう一度調べたりします。ああ、その紙は好きにしちゃってください」

 

 僕はそうして、今度こそ、その場を去っていった。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 翌日。

 

「シクシク」

 

 今日こそ逃げだそうと考えていた僕だが数秒で黒神ちゃんに捕まり、今日もまた縄で巻かれ生徒会室に監禁された僕。

 次回こそは逃げきるために頭の中で想像や妄想をするが結局捕まってしまう結果しか予想できず、悲しみに浸っている。

 

「あの、空くん。ちょっといいかな……?」

 

 いつから居たか知らない有明先輩が大丈夫と一言付け加え僕に話しかけてきた。

 

「はい、どうしましたか」

 

 言葉はいつも通りだがグルグル巻きの状態なので全然格好よくない。善吉に言わせれば、でびるかっこういい僕だ。

 

 デビルかっこういい

=デビル=マイナス的な何か

=マイナスかっこういい

=かっこわるい

 

 僕は善吉のデビルかっこういいをそうやって解釈したが、きっと間違えてはいないだろう。

 

 

「実はね、あの後――――」

 

 

 

――最後に僕が諫早先輩に見せたあの脅迫文、実はあれ、僕のお手製だったりする。

 

 あれを見て、諫早先輩がどう思って、どう感じたのかは知らない。だけど有明先輩が言うには、自分のロッカーの中に入っている物が心配で、朝早くに来たらしい。しかし、自分が一番ではなく、先に居たのは椅子に座って眠っている、諫早先輩だったとか。

 どうやら、あの偽物の脅迫文を『信じて』、見張っていたらしい。

 

 有明先輩がレギュラー入りを果たしたことで、風当たりも強かったらしいが、頼れる先輩ができたということできっと、これからも頑張れるだろう。

 ちなみに言うと、有明先輩のロッカーの中にはボロボロのスパイク、ではなく、新品のスパイクが入っていたのだが、そんなお金で買えるような物のことを言うのは野暮ってものだろう。

 

 早起きは三文の徳。

 諫早先輩、有明先輩。

 早起きをした彼女たちを待っていたのは、三文なんかでは計り知れないような得だったのだから。

 

 




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