とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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 風紀委員との闘いで巻き込まれたという爆発にも無傷で生き延び。

 他人の異常な能力を無効化することにも成功し。

 斬ったはずの左腕を生やして。

 

 彼は今日も普通にここに立っている。(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 名瀬――包帯で顔を隠している女性、実は黒神めだかの姉である。

 古賀――最初は普通だったのに、名瀬に自分を改造してくれと頼んだ、元普通人間である。

 宗形――おびただしい数の暗器を隠し持っている青年。殺したがりの無殺人者である。

 行橋――電磁波を受信できる異常を持ち、他人の心さえ見通せる少女である。

 王土――自分は生まれついての王だと自覚して、何年も自分の異常を支配しようとしてきた王である。

 

 まあ。

 そんな設定も、関係ないんだけども。

 

「あれあれー」

 

 と、この異常な空間で、お気楽な声が聞こえた。

 王土以外の全員が、軽く視線をその方向に近づける。

 

「今どんな状況? ひょっとして俺TUEEE状態ってやつ!? うわっテンション上がるなー!」

 

――裏の六人(プラスシックス)

 

 十三組の内の十三人の内の六人。何を嗅ぎつけたのか、ここにやってきていた。

 

 六人の中でもリーダー格に見える、糸島軍規。

 フーセンガムを膨らましている女性の湯前音眼。

 前髪で片目を隠している、参謀的なポジションである百町破魔矢。

 後ろも前も、長い髪で顔を碌に拝めない筑前優鳥。

 顔の半分に手術跡がある、サイボーグに改造された鶴御崎山海。

 黒髪を三網みにしていて、小さな眼鏡を掛けている上峰書庫。

 

「俺たちも仲良くなろうついでに、入れてく――」

 

――跪け。 

 

 守原空――黒神めだかや、人吉善吉など、さまざまな友好関係を築いている、男の娘である。

 

 そんな女の子みたいな男の子の一思いで、裏の六人を含めた十三組の内の十人、王土以外のこの場に居る全員が空に跪いた。

 跪いた十人の、まるで王の道のように開いた間を縫って、空はツカツカと足音を立てながら、尻餅をついて空を見上げている王土の前に立つ。そして、手のひらを地面に見せた――犬に伏せと命ずるように。

 

――平伏せ。

 

 王土は地面に頭を擦り付けた。見えない重力が働くように。何かが圧し掛かっているように。空の言っていない命令どおりに、平伏した。

 

 そして空は。

 呻いて動けないでいる王土に。

 自分の念じたとおりにいる王土の頭に右足を乗せ――

 

「空!」

 

 片足を上げたままの姿勢で、ゆっくり、自分の名前を呼んだ方向に顔を向ける。叫んで止めたのは、いつのまにかここに来ていた黒神めだかだった。

 凛としていた彼女の顔も、今は悲痛な表情で染まっている。

 

「止めろ……もう良い。それ以上は――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒神……ちゃん?」

 

 揺り籠に入っていた時代のことを空は思い出していた。体が心地よく揺れている。どうやら黒神めだかにおぶられているみたいだ。十年以上一緒に居ためだかの体温と良い香りが空の心を安心させた。そのまま寝てしまおうと本能が訴えていたが、周りに他の人間もいるのに気づいて今すぐ彼女の背中から離れようと訴える。

 

「……空」

 

 彼女には似合わない声色だった。

 凛としていたはずだった声は、元気が無くなって張りが無い。いつもとは余りに違う彼女の様子に、背中から離れるタイミングを失った。

 

「えと……ああ」

 

 仕方が無く、そのままおぶられて、周りに誰がいるのだろうと見渡してみると、いつもの生徒会メンバーと十三組の十三人たち全員。それになぜだか黒神真黒がいた。これでなんとなく今はどんな状況か空には理解できた。

 きっと自分は負けてしまったのだと、そして傷ついた自分を心配してくれて、めだかは元気を失っているのだと、まるで違う答えに辿り着いた。

 

また(・・)、黒神ちゃんに助けられたのか……」

 

 驚きと似た感情から目を見開いて、めだかは悔しそうに唇を噛み、答えた。

 

「…………そうだ」

 

――私がお前を救ったんだ。

 

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