今もだけど昔の自分も文才ないなぁ……見直して何回も書き直したくなった。
《世界は平凡か?》
生徒会長である黒神めだかが問う。
《未来は退屈か?》
何百人もいる人数の前で緊張する様子をだす訳でも無く続ける。
《現実は適当か?》
その問いに答えを求める訳でもなく続けて言う。
《安心しろ、それでも》
少し間を置き、言い放つ。
《生きることは劇的だ!》
――――そりゃ安心できないね。
ここは箱庭学園。
普通と特別と異常、そして、
□ □
■ ■
「うー、疲れた」
「何でお前が疲れるんだよ?」
何でだと! …………なんでだろう?
そのツッコミにしばらく腕を組み、考えてみる。そして、思い浮かぶのは先程の演説と、生徒会長である黒神ちゃんの顔。青いサラサラの髪をしていて、美形な顔立ちで、頭も良く、運動も大得意。性格も良くてさらにはカリスマ性を持っているから、正に生徒会長になるために生まれてきたような女性だと思う。
世界は平凡で、未来は退屈で、現実は適当。それでも生きることは劇的らしい。
言う人の顔によっては意味も変わるだろう。へらへら笑っていたら嘘のようになるだろうし、どうでもよさそうな顔で言ったらどうでもよくなる。
けど、黒神ちゃんの場合は真面目も真面目、大真面目なんだ。
不真面目に聞いてたけど。
「聞いてるだけでなんか疲れるんだよ、あの人の演説は」
いいながらため息を吐く。
あの子の演説は力強く説得力がありさらに真面目に言ってくれる。だけど僕は、それを聞けば聞くほど疲れてしまうのだ。
ドレインの呪文でも唱えてるのかな?
ふと、某最終空想のゲームを思い浮かべるが、すぐにそんなわけがない、と。その考えを頭の片隅に追いやる。
いくら黒神ちゃんでも、魔法は使えない。使えない……よね?
「なんであの子の話はああなんだろう。
先程の演説で、だいたいの生徒が黒神めだかがどういう人なのかについて話す。かくいう僕と、この人吉善吉もその内の生徒の一人だ。
「なぜわざわざフルネームで呼んで、容姿を説明したのかを俺は気になる」
なぜだって! ……なぜだろう? あれなんかデジャブ。
などと思っていると、僕らの前に少女が一人現われ、呑気な口調で僕等に話しかけてきた。
「しっかしあのお嬢様。全校生徒を前によくあんな啖呵が切れるもんだよ。人前に立つのに慣れてるっつーかさー♪」
この少女の名前は
「カッ、ありゃあ人の前に立つのに慣れてんじゃねーよ。
「いやまったくそうだよね。不知火 半袖。性別は女子で幼い体型をしているが、それとは裏腹に、軽く平均の成年男子以上食べる君はどう思う?」
「なんでそんな説明口調なのかを疑問に思うー♪」
第一、人の前に同等の位置に立った所自体ほとんど見たこと無いし。
例え初めはそれでも、1日もあれば歳も身長も体重も性別も性格も関係なしに上に行く。そういう人なのだ、そのお嬢様は。
僕が少し昔のお嬢様を思い出していると、善吉と不知火ちゃんで、二人同時に口を開いた。
「「で、支持率98%を取ったけど、2%っていう反対してる奴もいるって事に守原 空。身長、体重どちらも一般の高校生の平均よりも軽く下回っており、容姿は女のような顔立ちをしているお前(空)はちゃんと気づいた(か)?」」
「女のような顔立ちをしてるって所に傷ついた!」
こんな、人を罵倒するところだけ息ピッタリなんて……、ちくそう。
「まあ、2%なんて人は置いといて、善吉は生徒会に入るの? 僕はあんまり入りたくないんだけど」
なぜなら面倒くさいから!!
最低だって? 好きに言え!! 黒神ちゃんと関わったらタダじゃあすまないぞ!
昔を振り返ると黒神ちゃんの恐ろしさが、よく分かる。
あ、ちょっと寒気が。
少し身体を震わせ、やっぱり自分が入りたくないと確認してから、善吉に視線を送り、答えを求める。
善吉は入っちゃいそうだなー、苗字が人吉だけに人が良いもん。不良みたいな容姿のおかげでツンデレっぽく感じちゃうんだよね。
だがそれが良い。
「カッ! なわけねーだろ! これ以上あいつに振り回されてたまるかっての」
そう言いながら善吉は、席を立ち、僕らに向けて指を指しながら宣言した。
「俺は絶対! 生徒会には入らない!!」
僕等はその宣言に何も言えない。言葉をかけることができない。
それは別に呆れてるとか、いつもの手伝わないという、善吉のセリフに飽きているわけでもない。だが僕らはやっぱり何も言えない。
だって善吉の後ろにいるんだもの。我らが生徒会長、一年十三組黒神めだか様が。
「……うん、そうなんだ。で、それに対して生徒会長さんはどう思う?」
「!?」
善吉が後ろを振り返ろうとするが、もう遅い。頭を鷲掴みにされ捕獲。
「まあ、そうつれないことを言うものではないぞ善吉、そして
!? まさか僕の入りたくない発言まで聴かれていたというのか!
「ぐえ」
もはや考えてもしかたのない事を考えていると、すでに捕獲された善吉に続き、僕もおかしな声を出して捕まってしまった。
その日、箱庭学園一年一組の教室に2つの悲鳴が轟いたとかなんとか。
僕らのだけど。
□ □
■ ■
「ったく、普通に連れてくることができねーのかよ。生徒会長さん」
「そうだそうだ、何十メートルもズルズルと引きずって……、おかげで首と周りの視線が痛かったよ!」
「ふん、私の誘いをすげなくし続ける貴様等が悪い」
今をときめく噂の生徒会長黒神めだか。
その圧倒的な存在感と、カリスマには僕も頭が上がらない。ていうか首が痛くて上げられない。
僕らの抗議に箱庭学園史上最恐の悪魔、生徒会長黒神めだかは、僕らの意義を無下にして、あまつさえ僕らのせいにしてくる。いくら支持率98%の生徒会長だからって、こんな事が許されてもいいのだろうか?
「ところで空よ。あまり酷い事を考えていると貴様の女装写真を学校中にばらまいてしまいそうだ」
許されるに決まってる! まったく今日も生徒会長さんは可愛いな。そのうえ学力優秀、運動神経抜群! 才色兼備とはこのことだね、こんな人が僕らの生徒会長で良かったよ。箱庭学園史上最高の生徒会長だ!!
「うむ。よろしい」
そう言って、黒神ちゃんは開いていた扇子をピシャリと閉める。
助かったか……。
いくらお金がピンチだからって女装なんてするんじゃなかったよ……。
「ところでどうするの善吉。ていうかどうなるの僕達(小声)」
「カッ、俺はなんといわれようが手伝わねえぞ。いくら何でも、もう付き合いきれねー、例えそれでどうなろうと俺は入らない、お前を囮にしてでも入らない(小声)」
「何、貴様。僕を何だと思ってるんだ。人を囮にするなんて最低だぞ。僕が生徒会に入ってみろ、普通にめんどうくさいです(小声)」
「お前は入っとけ馬鹿野郎(小声)」
くっ、例え味方がいなくても僕は負けない。それで善吉がどうなろうとも僕は入らないぞ。善吉を囮にしてでも入らない!
「黒神ちゃん! 善吉君がぜひとも生徒会に入りスポポポーン!!」
ったたいへんだ、てえへんだ。めだかちゃが上なくてしただけきてていつのまにく下着すがたでて、うしろにたててさいしょからいてあれ?れのれ???!?!?!?!
「空ーッ! おっ、お前は当たり前みてェに人の後ろで着替えてんじゃねェよ!!」
「? 私と貴様等の間に、恥じらいなど何の意味がある」
「僕等が焦らないで済むという意味がある!!」
どんなことにも少しの礼儀と恥じらいは必要である。それが生徒会長だろうと女子高生だろうと、ぜーったいに必要だ!!!
「まぁ、そんなことよりも」
そんなことよりもだと! 健全な男子高校生の前で下着姿をさらすことが、この人にとってはそんな事なのか!? 僕が気絶しそうになったぞ!
あれ、普通逆じゃね?
「この目安箱なんだが。先ほど開いてみたところ、早速第一号の投書があった」
「目安箱? あー、あれか」
思い出した、思い出した。
目安箱。簡単にいってしまえば悩みを箱に入れて生徒会に相談するという只のお悩み相談箱だ。
例えば文字を代筆してくれ、や学校を綺麗にするのを手伝ってくれ。など他にもゴジラを退治してくれなんて願いを叶えてくれる、と思う。僕らの黒神ちゃんに常識は通用しねえ。
……僕もなんか頼んでみようかな。
「で、どんな内容なの?」
「ふむ、読んでやろう」
すると、どこからともなく手紙を取り出し、その内容を音読する。
「『三年の不良達が剣道場を溜まり場にしていて困っています。どうか彼らを追い出してください』――――だそうだ」
「剣道場?」
このでかい箱庭学園には、ありとあらゆるスポーツ面積が完備されている。だけど、この剣道場については僕も知らなかった。むしろあったのか? というぐらいだ。
「……そう思ってたけど、こういう理由だったのね」
現在。黒神ちゃんに案内されて剣道場へ、そこには大会に勝つために頑張って練習に励む生徒達の姿が……。のはずが目の前には煙、ゴミ、不良。つまり剣道場だった物が不良たちのアジトになっていたのだ。
今時こんな悪いことを貫いているっていうのも逆にめずらしい。
「あ? 誰だァお前ら」
ただの巻き込まれた生徒です。
「一年十三組、生徒会執行部会長職、黒神めだかだ。目安箱への投書に基づき、生徒会を執行する!」
何人もいる不良達の目の前で、この女の子は臆することなく話す。黒神ちゃんマジイケメン!! 黒神ちゃんが女だったら惚れてたよ! あ、女か。
そのイケメン生徒会長をものともせず、不良の一人が立ち上がり、言う。
「あー、聞いてんぜ、今をときめくイカれた新会長って奴だろ?」
リーダー格であろう不良が、すぐ脇にある竹刀を持ち、黒神ちゃんの眼前に指す。不良ちゃんマジ怖い!!
「こんなところにお出でになるとは驚きだな! 支持率98%だか何だか知らねーが、生憎俺らは残り2%の方だぜ!」
ここで問題。8人もの武器を持った不良。性別は男子、タバコは吸っているがほぼ健康体。これに対して3人の不良ではない生徒、その内一人は女性。さぁ僕等は勝てるでしょうか。
「貴様がリーダーの門司三年生だな。剣道か懐かしいぞ、私も昔少しだけかじったよ」
答えは簡単。
「この木刀もよく手入れされておる、黒檀とは随分と張り込んだものだ」
「!?」
圧勝。
黒神ちゃんに何時の間にか取られたのか気づかなかった。否、気づけなかったのだろう。『無刀取り』。剣道の技といったらギリギリそうなるのかもしれないが、かじった程度じゃ普通はできない。
つまるところ、こんな事を嫌味や謙遜でもなく、かじった程度と言える黒神ちゃんに、剣道で誰かが勝つ事なんてのは不可能なんだよね。
「かっ、囲めおめーらッ!!」
「おっ、おうっ!!」
だから無理なんだってば。
「……制服改造に染髪、装飾。校則違反のオンパレードだな。まあ私もあまり人の事は言えんが――」
その言葉の後、黒神ちゃんは不良達へと走り、文字通り
「なッ、何ィィッ!?」
驚くのも当然だ。なにせ人が増えるように見えるなど、普通は体験したことがないだろう。
「――それでも煙草だけは控えておけ。貴様達の健全な成長を阻害するし、何より将来の楽しみがなくなるぞ!」
「え、オレのタバコ!?」
「何だ今の!?」
「忍法か!?」
もちろん忍法でも魔法でもない。あの技はただの運足。ステップといったほうが分かりやすいか、まあ忍法とか魔法って言われたほうが納得のレベルだけどね。
そんな黒神ちゃんに勝つのはほぼ確実に無理だ。
「しかしまあ、荒れ放題だな。よくもここまで学園施設を荒廃させたものだ」
「なっ、なんだよセッキョーかよ! お呼びじゃねーんだよ会長さんよぉ! いい気になってんじゃねーぞコラァ!!」
不良達が口々に叫ぶ。
確かに普通の教師ならばここで軽く説教でもして、自己満足に浸るため、もしくは自分や他者に対する言い訳を作るために行うだろう。
だが生憎、黒神めだかは教師でも普通でもない。異常だ。
そして、黒神めだかは怒る訳も説教するわけでもなく、黒神めだかの真骨頂である一つを発揮する。
「哀れなことだ」
迷惑な黒神めだかの真骨頂。『上から目線性善説』
「貴様達もかつては真っ直ぐな剣道少年だったに決まっている。何か重大な理由があって挫折を経験し道を踏み外してしまったとしか考えられん」
ただのタムロってるだけのヤンキーだと思うけど……。
「親に見捨てられたか? よき師に出会えなかったか? 友に裏切られたか?」
「君はいったい普通の不良達にどんなドラマを求めているんだ?」
普通に考えればそんな漫画のような出来事などありはしないだろう。あってたまるか。あ、ここ漫画か。どうも最近忘れっぽいなあ。
「安心しろ、私が貴様達を構成させてやる。剣のこと以外何も考えられないようにしてやる。矯正してやる。強制してやる。改善してやる。改造してやる」
ヤンキーさーん、逃げてー、人体改造されるぞー。
「二度とだらけようなどと思えぬよう泣いたり笑ったりできなくしてやる」
ばいばい。不良達を囮にして僕だけでも生き残ることにしたよ。
「まずは素振り1000回からだ! 貴様たち、今日は歩いて帰れると思うなよ!!」
僕の後ろから不良達の悲鳴が聞こえた。
□ □
■ ■
翌日の食堂。
あの後不良達が勝てる訳もなく黒神ちゃんに制裁、は受けず更正させられた。
僕は逃げた。つかまった。素振り1000回から始まった練習を体調が悪いという理由でなんとか見学することで許してもらいはしたが危なかった。あ、このそばおいしい。
「善吉はあの練習を最後まで受けるなんて、やっぱり人が良いねえ(人吉だけに)」
「毎回毎回、よくお嬢様のシゴキに付き合うよー」
「うるせえ」
まったく不機嫌そうにしちゃって、やっぱりツンデレか。ツンデレなのか。
「お前も今日は一緒にしないか。っていうかやれ」
「丁重にお断りさせていただきます。どうも今日は低調で」
「嘘こけ」
だって嫌なんだもん。
「それにしてもその不良達はまた来るのかな?」
あの黒神めだかのお仕置きを受けたからにはもう来ないと思うけど。……来ないよね?
「さすがに近寄らねェだろ」
「……どーだろうね?」
不知火ちゃんが意味深な事を言う。
これで終わりかと思ったが残念ながら終わらないようだ。僕の原作知識も役に立たないな。
「人吉と空って付き合い長い割りに案外わかってないよね~♪」
ぐほっ。
傷ついた。実は僕だけが友達って思ってたという事に気づいた時みたく傷ついた。
「『ワルい奴やっつけてめでたしめでたし』あれがそんなカンタンな女だったら、あんた達もそんなに苦労しなくて済んでるでしょ?」
確かに。
黒神ちゃんがそんな簡単に終わりにするならば、僕や善吉だってここまで嫌になるほどにはならないだろう。
いや簡単だとしてもその内嫌になると思うけどさ。
――――――冗談じゃない。
ふいに誰かの声が聞こえた。
「んん? 今、後ろの席に誰かいなかったか?」
「え?」
どうやら善吉も同じらしく不知火ちゃんに聞いている。残念ながら僕の気のせいなんかではなかったようだ。
そして、善吉の疑問に不知火ちゃんがいつもと変わらない様子で答える。
「うん、同じクラスの日向がうどん食べてたよ~♪」
「日向?」
「点穴を突くというあの!?」
「透視能力はないよ。それに眼鏡だしー」
あー、そっちか。そういえば居たな、同じ一年一組でそんな名前のそんな人。
黒髪で眼鏡をかけてて大人しそうな子だったな。という事は日向君じゃなくて別の人かなー、あんな事を言ったのは?
まあそんなことはどうでもいいだろう。今、大変なのは善吉だ。
「それにしても善吉も大変だね、これからも手伝うんでしょ?」
「カッ! 今回だけだ」
うーむ、やっぱり善吉はツンデレで大変そうだ。だからって僕は手伝う気もデレに萌える気もないけどね。
誰かが合図をする訳でもなく、僕が食べ終わったのを見て、昼食の後片付けをするために席を一緒に立つ。
周りのだいたいも片づけを始めており、僕達が片付けの順番待ちをしている途中、不知火ちゃんが僕らにある事を話す。
「ま、いーんじゃない? もうすぐ、あんたらもお役御免なんだし」
「あ?」
「え?」
「知らないの? 今日の放課後、学園部主催の役員募集会があるんだよ。二年三年の特待生集めてね」
知らなかった。じゃあ、僕は生徒会にならないで済むのか。
安堵、というよりも別の何かが僕の胸にチクチクとつきささる。
「生徒会メンバーさえ決まっちゃえばもう人吉と空も振り回されることはなくなるし、よかったじゃんさ!」
……何か寂しい。
イヤイヤまて僕、何を考えている。あの子に関わっても疲れるだけだ。それなのに何で入りたいとか思っちゃったんだ僕!
心の中で自分がどれだけ生徒会に入りたくないかを再確認してから口に出す。
「僕は絶対生徒会には入らない!!」
「あ、お嬢様」
「からの逃走!」
走れ走るんだ僕! 風になれ!!
「ウソだけどね♪」
ウソかよ!? 思わず本気で走っちゃったよ。
ウソだとばらされたが実はそれもウソという可能性もあるので念のため周りをよく見て黒神ちゃんが本当にいない事を確認してから不知火ちゃんの下へと戻る。
少しの恥ずかしさのため苦笑いしながら不知火ちゃんに話しかける。
「まったく、今日はエイプリルフールじゃないよ。不知火ちゃん」
「けど現実では」
「メタ発言はよしなさい」
昼食が終わった後、善吉は外にでていき、僕はそのまま不知火ちゃんと一緒にいる。けっして寂しいわけではない。別に友達が少ないわけではない。本当に。多分。きっと。おそらく。
「善吉は剣道場かな?」
「本当に善吉はすごいっていうか馬鹿だねー」
本当に不知火ちゃんは酷いなー。
「どっちかっていうと酷いのは黒神ちゃんじゃない? やっぱり僕は生徒会には入りたくないね」
「あ、お嬢様だ」
「はっはっはー、僕を騙そうったってそうはいかないぞ。もう君のその手は朝とさっきのを合わせて4回目だ。さすがにもう引っかからないよ」
まったく、いくら反応が面白いからって何回もやるなんて、やっぱり酷いよね。こういう所からイジメが始まるんだ。
イジメ。虐め……か。
虐められていた記憶なんて思い出したくもない。
はい忘れたー。もう僕は思い出せないー、封印抹消廃棄で万歳。むしろ虐め自体がそうなってしまえばいいのに。
あれ? 本当に何されたっけ?
まあいい、今を楽しめ僕。イジメを始まらせないためにも頑張るんだ!
不知火ちゃんがどれほど策を講じようが、黒神ちゃんのいない僕に死角はない! 3回引っかかっても4回目は僕の勝利で終わりだ!
「…………つまり貴様は4回もそういう事をいったわけだな」
「甘いなー、また黒神ちゃんの声を作った機械? そんな手は2回もやればもう引っかからないよ」
「………………」
ん?
~暫らくお待ちください~
「はい、ごめんなさい。生徒会には入りませんが積極的に手伝うよう努力します。なのでどうか許してください」
正座って痛い。けど女装写真なんてばら撒かれたら人に痛い子として見られる。頑張れ僕。
自分で自分を慰める状況になったことを軽く後悔しながら下を向き正座の態勢を保つ。
「うむ、手伝い、期待してるぞ」
わーいこれで寂しくなんてないぞー、すっげーうれしくねー。
「では、私は南校舎の第四会議室へ行って役員募集会で演説を打たねばならんので行くぞ」
よし早く行って。正座痛い。
自分の足に乗っているコンクリートブロックを見るとミシミシと音を立てて足が壊れるよう気がしてたまらない。
少しの不安と痛みと後悔を胸に今も僕は頑張る。反省はしない。
「得意の演説あたしも聞きたいなぁ~♪」
不知火ちゃーん、君わざと話のばそうとしてないよね?
「私としてはそんな方法で人員を増やす気はないのだがな、期を遣ってくれた先生方の顔は立てねばならん」
「黒神様、もう行ったほうがいいんじゃないでしょうか?」
「む? そうだな」
よし行け、行ってー!
僕の心からの悲痛の叫びを無視して不知火ちゃんは黒神ちゃんを止める。
「じゃあ最後に一つ。善吉は生徒会に入る気なんて満々なさそうですけど? いいんですか?」
「……なんだ不知火、私のことが心配なのか?」
「まさか! 完璧超人の黒神めだかを心配する無礼者なんてこの世にいるわけないじゃないですか!」
みんなー、僕の事を忘れちゃーいけないよー、数分の正座ならともかく。コンクリートブロック3段重ねなんて物が乗ってる正座ってとっても痛いんだよー。
「だろうな、
「ふーん♪」
正座=痛み
「では行くぞ」
やっと……、この地獄から…………。
「あ、最後にもう一つ」
不知火ちゃーん! そんなどこかの特命係さんみたいなの今は要らないよー!!
「投書の差出人って一体誰だったんでしょうね?」
「そんな疑問いらないよ! だれもそんな人、気にしてないよー!」
僕の地獄からの叫びを無視して不知火ちゃんは言葉を続けた。
「確かに迷惑ちゃ迷惑でしたけど、つあってない剣道場に不良が溜まってたトコで、実際困る生徒なんていないはずなのにねぇ」
「知らん。知る気も無い。匿名性が無ければ目安箱の意味がないし、私は誰からの相談でも受け付ける」
だから犯人探しみたいなのはもうよしてー、限界だよー。
2人の会話が早く終わるよう心の中で念じながら2人の会話に耳を傾ける。
「じゃあ、たとえば。あたしのクラスメイトで、剣道の腕前は全国クラスだけど、性格に問題があって、中学時代、暴力事件ばっか起こしてた。――って過去を持つ日向君が差出人でも?」
「知ってたんじゃん! 教えてもらう必要なかったじゃん!!!」
僕の言葉を女性たち2人は無視して、会話を続ける。
くそう、なんで僕の周りには人の話を聞かない人ばっかりなんだ! 少しぐらい僕の身を案じてくれてもいいんじゃないか!?
しかしやはり僕の身を案じる訳もなく、黒神ちゃんはいつもと変わらぬまま答える。
「一向に構わん」
その言葉に不知火ちゃんが笑う。僕もあまりの痛さに笑った。
「だったらぁ……、あたしからの投書でも、受け付けてはくれるんですよね♪」
□ □
■ ■
ここは、南校舎の第四会議室。
「えーっと、それでは最初に質問させてください」
黒神ちゃんが、演説を打つ
「あなた達は一体誰ですか?」
「……大統領です!(精一杯のギャグ)」
「……秘書です!(精一杯のギャグ)」
黒神ちゃんは不知火ちゃんの『クラスメイトの日向君の性格が悪そうなので直してあげて』――――という願いを叶えに行った。
その結果、代理として僕達が演説に出ることとなった。
「ハァ……」
思わずため息を吐く。
やっぱり、生徒会を手伝うのは大変そうだ。けど、今回本当に可哀想なのは僕等じゃない。日向君だ。
『性格に問題があって暴力事件ばっか起こした』――――。そう不知火ちゃんは言った。
では、生徒会が不良達を追い出さず改心させ剣道部に残したら日向君は満足するか? 答えは否。
第一、性格に問題があるなら、改心させて満足できるそんな人物ならば。わざわざ投書に、『どうか彼らを追い出してください』――――。などと書かず、『彼らを何とかしてください』――――。とでも書くはずだ。
確かに、剣道場をたまり場にしている不良達にも非はあるだろうし日向君は正しいだろう。
――――だけどそれでも、黒神ちゃんはもっと正しい。
たとえ、剣道の腕が全国クラスだろうと、性格に問題があったおかげでケンカ慣れしていようと、今回の件は君が正しいというところがあっても。たとえそれでも、黒神めだかは君よりも上に、正しさの上に立つ。それが、黒神めだかだからだ。
そんな黒神めだかに対抗できる訳も、自分が改心しないまま利用して終われる訳もないんだよね。
どこかで日向君の悲鳴が聞こえた気がした。
□ □
■ ■
性格に問題がある日向君。団体行動や上下関係が苦手な彼は目安箱を使い、生徒会を利用して、不良達を追い出そうとしたが失敗。
失敗した八つ当たりかは知らないが、善吉は日向君の襲撃を受け、1度は倒される。
その後、日向君自ら力ずくで不良達を追い出そうとするが、不良達は黒神ちゃんにより改心しており、剣道部を抜けも逃げもしなかった。
そして、元不良達が逃げ出さない所をみた善吉は立ち上がり、日向君を倒す。あの黒神めだかの傍にずっといられる人が剣道の腕が全国クラスの人物なんてものに、簡単に負ける訳もなかったのだ。
もちろん日向君も、最初はそれで復讐に燃えたわけだが、不運にも僕と不知火ちゃんに役員募集会の代理を頼み、不知火ちゃんの願いを執行するために来た、黒神ちゃんにより、すぐに性格に問題がある復讐に燃えた日向君は、更正された。
そして、今では剣道部(仮)ということで、日向君自らが指導を務めいてるそうだ。
会長就任後、1通の願いから始まった、ほんの数日の、そんな結末。
「あれ? なんだこの花」
「ほんとだ、何これ?」
そこには昨日までなかったはずの花が二輪。
「うむ、これから生徒会業務を行う上での指針としてな。案件をひとつ解決するごとに花を一輪飾ろうと考えた」
「ハッ、女の子らしいこともあるじゃねーかよ、失敗したときはどうすんだ?」
「誰かにあげたりでもするのかな?」
その質問に何事でもないように答える。
「失敗などしない、しても数えない」
そして笑う。
「いつか見渡す限り一面に花を咲かせるのが、私の夢だ!」
その顔は可愛い、というよりも美しかった。見惚れてしまうほど、思わず言葉を失ってしまうほど。
「……で、どうするの善吉は?」
「…………」
間
「……俺なんか、ただの幼馴染で言っちまえば、ほどんどただの他人じゃねーか」
「やっぱり馬鹿だね」
善吉がムッとした顔になる。
「2歳の頃からどんなことがあっても心配してあげられる。そんな君が他人?」
「うむ、貴様がいるからこそ私は安心して他人のために動けるのだ」
顔が好調。恐らく嬉しさ半分照れ半分。
「……どれでもいーや、その腕に巻いてるヤツ一個よこせ」
黒神めだかの腕には生徒会役員の証である腕章が五つ。
「……どういう意味だ?」
わかっているであろう意味を。それでも言わせる。
「……っ、振り回されてやるっつってんだ!!」
恥ずかしさからか自然と声が大きくなっている。
「気が気でなくてみてらんねーんだよ。やりゃーいーんだろーがやりゃー! 俺がこの
「ツンデレだね」
「うるせえ!! よこすのか、よこさねえのかどっちなんだよ!!」
箱庭学園現生徒会長黒神めだかは、先程まで開いていた扇子を閉める。
「ふん、随分と気を持たせてくれたではないか。しかしまあ、一応は礼を言っておこう」
箱庭学園。
普通も特別も異常も一緒に通う学校。この学校に通うそんな彼らにも共通点がある。
まったく違うような彼らの共通点。それは
「ありがとぉっ!!」
所詮はみんな、素直にお礼を言うのも恥ずかしい高校生だという事。
「ツンデレ……、か」
箱庭学園。
現在、一年十三組黒神めだかが生徒会長を務めている学校。
何か悩みごとがあったら誰かに相談してみてください。もしかしたら失敗とは無縁の、素敵な生徒会長を紹介してくれるかもしれませんよ。
「『生徒会長さんが持っている男の女装写真を全て抹消してください』――――だってよ」
「無理だな」
「失敗した!?」
黒神くじらのあの犬をプレゼント、というのはマイナス編でトラウマを開かれたときに犬が死んでるのを呆然として見ているシーンがあったので、もしかしたら犬を可愛がってたのかと思って書いてみました。
伏線って……時間経ってからやっても意味あったのか、そもそもあれやこれは伏線と言って良いもので良かったのか、それが疑問です、すみません。
まだ回収してないのが有ります。ごめんなさい。
ですがとりあえず書きたいところは書いたので、完結にさせていただきます。
見てくださって、ありがとうございましたm(_ _)m