とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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ブラデレ

「……………………」

「ん? なんで空は死んでんだ?」

 

 死んでねぇ・・・。と声を出そうとしたがショックのあまり声が出ない。

 そもそも僕がなぜ死んでいるかというと(死んでないけど)全部黒神ちゃんが悪い。誰が何と言おうと黒神ちゃんが悪い。

 

 前に着替えるならちゃんと鍵を掛けろと言ったにも関わらずこの子は下着姿でカーテンを閉めずに鍵も掛けず柔道着に着替えていた。不運にもそこに僕が入ってしまった。

 最近はそんなことが無かった事ので完全に油断してしまったこともあり今回の様な事件が起きたという訳だ。

 以上で復習終了!

 死体の状態から立ち上がり既に柔道着に着替え終わっている黒神ちゃんに向かって言う。

 

「鍵を掛けろ! 恥じらいを持て! 僕がもたなくなる!!」

「? この肉体を持って何を恥ずかしがる?」

「じょ」

 

 女性だという事をだ! と言おうとするがこのままでは女性差別のようになり僕が悪い空気になると思うので言葉を無理やり飲み込む。

 あれ? これじゃあ差別? じゃあ、えっと……、だめだ思いつけない。

 

「っ~~~~~!!」

 

 僕は悪くないはずなのに反論できないもどかしさが僕の体を駆け巡った。

 

「……で、それに着替えたって事は柔道部か?」

「うむ」

 

 僕を哀れだと思ったのか善吉が話題を変える。

 先程の復習で言ったように今、黒神ちゃんは柔道着に着替えてある。理由はまだ聞いてない。なぜなら理由を聞く前に倒れちゃったからだ。僕が!

 

「柔道部部長の鍋島三年生は知っているな? 彼女から目安箱に投書があったのだ」

 

 鍋島 猫美(なべしま ねこみ)先輩。別名『反則王』。三年生で柔道部の部長。

 反則王。少し怖い異名だな。でも反則の王様って反則してちゃあ試合で勝てないんじゃないのかな?

 つまり。試合の勝ち負けなんて関係ないとか思っている感じの怖い人物だと言う事がわかる。

 

「あ~、お腹痛くなってきちゃったー」

「嘘吐け」

「それならうってつけの投書があるぞ」

「え?」

 

 うそん。黒神ちゃんが先輩って付ける上に反則王って言われてるから怖そうな先輩だなーって思って仮病を使って逃げちゃおう大作戦が敗れた。

 でもお腹が痛いからこそのお願い? なんだろ?

 

「へー、なに?」

 

 嘘の上に嘘を吐くという手もあったが興味本位が勝った。

 ……本当は痛くないのに大丈夫かな?

 

「ああ、『保健室まで来てください』だそうだ」

「………………」

 

 シンプルさが逆に怪しい!

 なんだろうこのダイジョーブ博士みたいな怖さ。『科学ノ進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース』なんて言われそうで恐い。

 

「まあ、いいや行くよ。あっちにはあの人(・・・)もいるし行きにくいんだ」

「? なぜそれで行きたくなくなるのか、よくわからんが行くぞ善吉」

「おお」

 

 この鈍感娘。

 

「ああ、それと空」

「んー」

 

 まだ何かあるのか鈍感女。あの柔道部の王子が可哀想だよ、本当に。

 

「一時間で終わらせて柔道場に来るのだぞ」

「What!?」

 

 正気か!? 意味ないじゃん! ぶっちゃけ反則王さんよりもあのセンパイがいるからいやだったのに! 結局行くんじゃあ保健室に行き損じゃん!! 嘘まで吐いたのに!!

 

「来るのだぞ」

「え……」

「来るのだぞ」

「あの……」

「来るのだぞ」

 

 ……………………。

 

「はい」

 

 大事な事そうなので三回言われた。

 

「ハァ」

 

 まったく、なぜこうも僕と一緒にいたがるのか僕には甚だ理解できそうにないな。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 場所は変わって保健室。箱庭学園には飼育委員会の他に保険委員というものもある。

 投書をもう一度見てみると手紙には保険委員からのお便りだと書かれてあり、また文から女性の筆跡だということも分かった。

 

「また委員会か」

 

 箱庭学園委員長。いや、箱庭学園委員超といいかえた方がいいかもしれない。

 先週にあった上無津呂先輩も飼育委員長を務めていた。そして、今回も恐らくは……。

 

「あら、良く来たわね♡」

 

 保健室のドアを開けた先にいたのは学校にも関わらずナース服の姿をしている先輩。赤 青黄(あか あおき)先輩。

 

「どうも」

 

 ここ箱庭学園は並みの学校よりも大きくまたクラスの数も豊富だ。

 この箱庭学園には全部で13個のクラスがあり、それぞれに合ったクラスに分けられている。

 一~四組までは普通。僕や善吉や不知火ちゃんのような普通の人が所属するクラス。

 六と八組は芸術科。芸術に関わりたいと思っているような人が入るクラスだ。

 五と七と九組。これは体育科。まあ説明しなくてもわかるだろう。

 だがここからが重要だ。

 

 十組。特別普通科。特別とついてるのに普通なのか? という疑問を感じるがまあ単に普通よりも特別な人物が集まるようなクラス。

 次に十一組。特別体育科。ここに入る人も特別すごい。特別な運動神経や身体をしているような人間だ。

 次は十二組。特別芸術科。芸術に関心がない僕には入れそうにないな。

 そして最後に十三組。

 特別特別科。特別の中の特別が入れるクラス。黒神めだかのような普通とは絶対に言えない異常な人間だけが入れるクラス。ここに入れる人間はほとんどいない。

 そして赤青黄さんは異常だ。

 だが十三組ではなく、彼女はなぜか十一組特別体育科。

 

「相変わらずすごい爪(・・・・)ですね」

 

 僕の視線の先には黒くて異常に長い爪がある。だがそれこそが治療のためのスキル。

 彼女の異常。

 彼女の特別。

 五本の病爪(ファイブフォーカス)。病気を操るスキルだ。もちろん病気を操るのだから罹ったばかりのインフルエンザでも治せるし、逆に病気にさせることもできる。

 現代では説明できないような特別な特技。

 魔法と言ってもいい。

 超能力とも言える。

 

 でもやっぱり注目すべきはこれ! ナース服!!

 ナース服良いね! ナースさん!

 だけど残念。僕には一時間の猶予しか残されていないので萌える暇がない。

 

「さてハートマークでのお出迎えありがとうございます先輩。で、僕はどうすればいいんですかなるべく早くしてください。僕の命が惜しかったらな!」

「じゃあ遅くしますね♡」

「ハートじゃない! 全然愛がこもってない!!」

「気のせいですよ♥」

 

 ブラックだ! ハートがブラックだ!!

 

「声じゃわからないことに突っ込まないでほしいわね」

「心を読まないでほしいよ! そしてなんでハートがブラックなんだ!」

「これが今、噂のブラックデレ。略してブラデレね」

「聞いた事ないよそんなの!」

「殺したい人の事を想ってるって事よ♥」

「デレが入ってない! ていうか只の殺意じゃないですか!?」

「ちゃんと殺した後は私が嬉しくなるわ♡」

「相手に対してのデレがない!」

「そうとも言えるかもしれないわね」

「そうとしか言えないんだよ!!」

 

 てか僕殺されんの!? 何時死亡フラグを立てたんだ。嘘を吐いた時からか?

 

「ふぅ」

 

 一息。

 落ち着け僕。遊ばれてるぞ。

 

「……で、僕は何をすればいいんですか?」

 

 委員長が手伝いを求めることなどほぼない。ある時は緊急か単にめんどうくさいだけか、だ。

 

「そうですね、ただの暇つぶしですかね♡」

「全然緊急じゃなかった!」

 

 めんどうくさい事でもなかったし!

 

「というのは冗談で、あなたの写真を撮らせてもらいたいんですよ」

「写真? 僕の?」

 

 赤先輩は手に持っているカメラを僕に見せながら傾くと、カメラを持っていないもう片方の手でポケットからトランプを取り出す。

 

「なんですかそれ?」

「トランプよ」

「それはわかりますけど」

 

 なんでトランプ?

 

「もしもこれで私が勝った場合はナース服にコスプレしてから撮らせてもらうわ♥」

 

これはゲームであってゲームではない。繰り返す。これはゲームであってゲームではない。死のゲームだ!

 

「殺意だ! まごうことなき殺意だ、ブラデレだ!!」

「殺意なんてないわよ♡」

「ていうか何でコスプレ? 普通に撮ればいいじゃん!」

「それだと高く売れ……ゲホゲホ! 普通じゃない♡」

「その前になんて言おうとした!」

「ごめんなさい風邪気味で間違えて」

「だったら自分のスキルで治せ!」

 

 売るって、しかもナース服って…………社会的に殺す気か!!

 

「で、受けてくれるのかしら?」

「受けるわけが……」

「そういえば偶然生徒会室を通りかかったんだけど、腹痛なんですって? でも全然痛そうじゃないわね♡」

「受けさせていただきます」

 

 嘘なんて吐くんじゃなかった。

 

「……でも、それじゃあ割に合わない」

「?」

 

 僕が社会的に死ぬかもしれないのに彼女に何の被害もないなんて割りに合わなすぎる。

 

「まず一つ、僕にゲーム内容を決めさせること」

「ふぅん、まあいいですよ」

「次に、いや最後に」

 

 彼女をもう一度見る。

 

「先輩が負けたら、先輩の笑っている写真を撮らせること」

「……は?」

「いや、とは言いませんよね?」

 

 僕はこの箱庭学園に入学してから一度も、といってもまだそれほど月日は経っていないが、彼女の笑っている顔を一度も見たことがない。

 鉄仮面。

 その単語が頭に浮かぶ。

 笑顔を見たことないだけだが。

 見たことが無いのは僕だけかもしれないが。

 ……そうであってほしくない。

 もちろんそれだけではなく僕と同じぐらい恥ずかしくさせてやりたいという気持ちもある。

 

「まあ、いいですけど……」

「約束ですよ」

 

 そして微笑む、手本を見せるように。

 

「では始めましょうか? 大富豪とスピードを混合させたゲーム。

 

 

 

――――――――機会提出(チャンスピード)を」

 




ルール説明。
①カードはジョーカーを抜いた52枚
②一人26枚ずつ持つ。
③26枚のカードで山を作るがそのさい山札は見てはいけない。
④始めに5枚カードを出す。その5枚のカードは見ても良い。
⑤同じ数の場合は重ねても良い。
⑥5枚のカードを出したら次に山札の一番上のカードをお互い机の真ん中に左右に分けて出す。
⑦ターン形式。
⑧机の左右のカードどちらでも良いので5枚の内のカードからカードの上か下か同じ数の1枚を出す。また、カードは基本一つずつしか出せない(重ねた場合はそのまま出しても良い)
 例:5が出た場合は4か6か5しか出せない。
 例:1が出た場合は13か2か1。
 例:2を3枚重ねていたので2を3枚出す。
⑨大富豪と同じように特定のカードには特殊効果がある。
 8を出した場合その後のカードは何でも良い。
 9を出せば一回休み。重ねた場合も1回だけ。
 11を出した場合は10しか出せない。
 1を出せばもう一度カードを出せる。重ねた場合も1度だけしか増えない。
⑩先に26枚のカードが無くなった方の勝利。
⑪負けたほうはナース姿で写真撮影。
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