とある箱庭学園の生徒物語   作:じょーく

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ニート

 何と将来ニート王を目指して頑張る僕らニート会に元柔道部の阿久根先輩が仲間に入った! それにより総勢4人となったニート会一味。果たしてこれから僕らニート会一味にはどんな困難が待ち構えているのだろうか……。

 

「――っていう話を考えたんだけど、どうかな?」

「まずニート王目指してる奴等が将来語ってる時点でアウトだ馬鹿野郎」

「ニートが将来語って何が悪い!」

「将来語るならニートという過去を作るな!」

「あひゃひゃ! 私は結構好きだよ♪」

 

 さすが不知火ちゃん! 分かってるー!

 それに対して善吉は全くもって駄目だなあ。これじゃあ現実しか分かってないよ。

 ……あれ、どっちが正しいか分からないや。

 

「まったく、人がせっかく紙芝居まで作ったっていうのに。善吉は馬鹿野郎で済ませちゃうんだね馬鹿野郎」

「カッ! そんな、子供も悪い夢しか持てなくなりそうな紙芝居こっちから願い下げだ。少し期待して損したわ!」

「だけど逆に漫画としては邪道な王道としてアリな気もするね♪」

「まあね、一応この先の話も考えてるんだ」

 

 そう言ってから自分の鞄を漁り、昨日頑張って描いたもう一つの紙芝居を手に取る。

 この紙芝居。題して、『ニート王を目指す僕らの受難』。

 

「ニート王目指してる時点で受難になるに決まってんだろ!」

「ニートやって苦労するならやらなきゃいいのに♪」

「ふっ、残念ながら君達の想像している話とこの本の話は違うな」

 

 そして鼻で笑ってやってからさっきまでやっていた様に紙芝居を机に置く。

 恐らく善吉や不知火ちゃんはニート王になる道まで大変な事を描いていると思っているんだろうけど残念ながらその予想はハズレだ。

 

 昔々――。

 あるところにニート王を目指すニート会がおりました。

 しかし、ある日何時も通りニート会はニート王を目指して頑張っていると、ある事に気づいたのです。それは――――

 ニート王目指してるのに、頑張るっておかしくね――と。

 

「………………」

「………………♪」

 

 一人ドヤ顔をしている僕と、おでこに手をやっている善吉と、変わらずニコニコと笑っている不知火ちゃんの姿がそこにあった。

 そして、その状態のまま数十秒経って善吉はやっと口を弱々しくながらも開いた。

 

「…………そだな」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 雑談終えて生徒会室。

 ニート会室じゃあ無いよ!

 

「どうもこんにちは阿久根先輩」

 

 僕は生徒会室にすでに居た阿久根先輩に向かってできる限りの敬意を払って挨拶をした。

 紙芝居にも描いたとおり阿久根先輩も生徒会入りを果たした。僕は生徒会のメンバーですらないけど阿久根先輩は僕や善吉の立場よりも上の書記を務める事になっている。

 

 不良だったのに阿久根先輩は頭も良いし字も綺麗。運動神経も特別体育科だけあってすごい、なんでもできるという点では黒神ちゃんにそっくりだし、本当に心の底からすごいと思っているし尊敬だってしている。

 だから僕は最低限どころか最高の敬意を払って阿久根先輩に挨拶をした。

 そしてみんなの憧れ阿久根先輩はこう返す。

 

「やあ、こんにちは雑草君」

 

 僕はこの人を尊敬するのを止めた。

 

「……それは二酸化炭素を少なからず酸素にしている生産者の事ですか」

「いいや、邪魔な草」

「…………」

 

 植物は二酸化炭素をまた消費できる酸素に変えてくれるから生産者で人はその逆だから消費者ね。

 但し、雑草は一応植物だけど酸素に変えられないような排除されるべき草、つまりあっても邪魔な草みたいな事を言うよ! 以上、空君の豆知識コーナーでした。

 

「ああ、こんにちはミミズ君」

「人間にすこーーーーーーーしだけ近づいたかもしれないですけどそれは分解者です!」

 

 阿久根先輩が深い溜め息を吐く。

 だけどそうしたいのは僕だという事をここに記しておきたい。

 

「じゃあ君は何て言われるのが望みなんだい?」

「人間って言われることが望みです」

「人間」

 

 言われちゃった。

 でも、言っても思われて無いだろこの顔は。

 

「まあどうでもいっか、じゃあね人間クン。俺はめだかさんから任された依頼があるから一刻も早く依頼者の願いを叶えなければいけないんだ」

「へー、依頼ですか」

「ああ。内容はそこで寝ている人吉クンにでも聞いてくれ」

 

 あれ、善吉と仲良くなってる?

 僕、もしかして置いてかれた?

 だれか! 友達の評価が分かる道具か友達を持ってこい!

 

 阿久根先輩は鈍感娘こと黒神ちゃんを好きで好きでたまらない人なのだ。だから僕ら幼馴染という立場を妬んでいた面がある。

 

 理不尽だ。

 

 そして阿久根先輩は少しショックを受けている僕を置いて生徒会室(ニート会室じゃあ無いよ!)を出た。

 

「……で、善吉。阿久根先輩は何の依頼を頼まれたの?」

 

 さっきの阿久根先輩の助言通り、善吉に依頼を聞いてみる。

 阿久根先輩が生徒会に入って目安箱の依頼をやるのはこれが初めてなのでどんな内容か少しは気になっていた。

 

 初めてのお〇かいみたく。

 初めての依頼、みたいな。

 そんな感じでちょっと気になったのだ。

 

「ん、ああ。代筆だよ代筆」

 

 代筆か。書記の仕事にピッタリだね。もちろん阿久根先輩なら書記とか役割に関係なくやり遂げちゃうんだろうけど。

 

「ふーん、黒神ちゃんは?」

「生徒会執行中だよ」

「…………」

 

 あれ、チャンス? 逃げちゃう?

 どうしよう。今なら黒神ちゃんから逃げ切れるかもしれない。『自分から生徒会室に行って油断させようだーいさーくせーん』を再開してここまで続けてた甲斐があったぜ。

 遂に僕の頑張りが神様なるぬ黒神様に認められる時が来たんだね。

 

「ちなみにお前が逃げたら捕まえてめだかちゃんに差し出すから、よろしくなー」

「裏切られた!」

「だけど、一人で見張るのも面倒だから依頼は残しておいたぞ」

「余計なお世話だ!」

 

 今、善吉は生徒会室にあるソファーで寝ている。善吉はその寝たままの姿勢を崩さず依頼書である紙をヒラヒラと動かしてその依頼書の存在を僕に知らしている。

 一度溜め息を吐いて寝ながら僕を待っている善吉の近くまで依頼書の紙を取りに行く。

 仮に僕がこのまま逃げても善吉に簡単に捕まるだろうし、あの依頼書を取らなくてもヒラヒラとうるさい音が僕をイライラさせるだろうから僕は依頼書である紙を半ば嫌がりながら受け取り、依頼の内容を見る。

 

「げっ」

 

 え、やだ、何これ。

 

「善吉やってよ」

「やだよ、俺はお前の監視で忙しい」

「失敬な、僕が逃げるとでも思うのか!」

「思う!」

「思われてた!」

「想ってる!」

「気持ち悪い!」

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

 善吉の監視下の下、僕は今日も生徒会のために歩く。

 歩きたくないけど歩く。

 ……逃げたいなー。

 

「逃げちゃ駄目?」

「めだかちゃんに何されても良いなら――」

「さて頑張るぞー!」

 

 何をされてもと言われると嫌だなあ。ええ、すっごく。

 

「でも今回の依頼の人――あれだよ?」

「今回って言うか今回も、だな」

「確かに」

 

 今回の依頼者も以前、僕が依頼を受けた人と同じ役職、というか同じ種類だった。

 委員長。

 上無津路杖先輩という飼育委員長のように。

 赤青黄先輩という保険委員長のように。

 今回は、今回も同じだった。

 

 選挙管理委員会。

 その名の通り選挙を公平に管理する委員会だ。

 そして僕は今までの経験上、委員会の人、特に委員長と関わると碌な目に会わないという事を知っている。

 

「しかも今度はあの人が依頼者だよ、しかも激レアの手書きで」

「……代筆だろこれ。あの人っぽくない字だし」

「そりゃ残念」

 

 口ではそう言うがあまり残念な気持ちは無い。

 もらうなら依頼書よりラブレター、かな。

 もう一つもらってみたいのは果たし状。絶対に受けないけど。

 後はファンレターとか?

 実は黒神ちゃん、結構もらってるんだよねファンレター。

 僕の場合はファンレターというか、それとは違う匿名希望の手紙が届くことがあるんだよね。羨ましい? 仕方が無いなー、何枚か例を見してあげるよ。

 

 『デュフフフ、お兄ちゃんといい事してみない?』とか。

 『もっと黒神めだかさんに従いなさい』とか。

 『頑張ってください』とか。

 

 ……ごめん、一枚だけ嘘ついた。

 

「おい、着いたぞ」

 

 どうやら僕が偽物の手紙を一枚、妄想している間に依頼者との待ち合わせ場所に着いたようだ。

 どちらかというと着いてしまったと言う方が正しい。

 

「……善吉が先に入って良いよ」

「遠慮しよう」

「遠慮されちゃった」

「天慮しよう」

「あなた様は天皇だったのですか!?」

「計慮しよう」

「そこまで考えて頂かなくても!」

 

 結局、善吉様に入らせる訳にはいかず、僕が前になり扉を開く。

 

「すーー、すーー」

 

 しかしそこに、選挙管理委員の活動場所で眠っている不届き者がいた。

 いや、不届き者でもないか。

 この人が委員長(・・・)だもんね。

 

 太刀洗斬子(たちあらいきるこ)先輩。別名は眠れる怠惰。

 

 寝る子は育つと言うがこの先輩は寝ながら育つ。ツインテールの髪型で目には『はたらかない』と書かれている文字入りのアイマスクをしているこの人、委員長でありながら何と僕らと同じ一組所属。

 一組だからと言ってもちろん普通なわけが無いんだが。

 僕はまだ、この子が働いたところどころか立つところ(・・・・・)さえ見たことが無い。そんな彼女をこの目で見るのでさえ本来は激レアを超えたウルトラスーパーレア。

 

 『はたらかない』ほとんどニートな彼女が、箱庭学園での授業もまともに受けていない太刀洗先輩が留年や停学にもならないのはどうも太刀洗先輩が特別だかららしい。

 黒神ちゃんが所属している十三組には登校義務の免除という物がある。それを本来受けられない一組の太刀洗先輩も受けている。どうやら『はたらかない』だけでとても有能で特別にその登校義務の免除を受けているらしい。

 

 まあこの情報はニート王の話をした時に全部不知火ちゃんから聞いた事だから確実とは言えないしドヤ顔もできないんだけど。

 

「善吉、起こしてくるんだ」

 

 太刀洗先輩を起こすと何か怖い気がしたので僕は善吉様を犠牲にする事にした。

 このニート王を前にした今の僕なら悪魔でさえ犠牲にできる!

 犠牲にする前に返り討ちになるかもしれないけど。

 

「んー、実は起きてんじゃねえの?」

「そんな馬鹿な」

 

 もう一度、眠っているこの人を。選挙管理委員長であるこの太刀洗先輩を見てみる。

 ………………。

 寝ている。

 思いっきり寝ている。

 ガン寝である。

 

「すーー、すーー」

「ほら寝てるよ」

「ぐーー、ぐーー」

「おい、いびきが変わったぞ」

 

 気のせい気のせい。

 すーからぐーになんて変わってないって。

 

「Zzz……」

「文字ではあってんのかもしんないけど現実じゃあ普通にズズズだからな!」

「ひっひっふー」

「妊婦か!」

 

 それからしばらくしてやっと太刀洗先輩が唸ってから顔を上げた。

 

「ん~~~、あ~~~、生徒会の人~~~」

 

 どうやら無理に起こしても別に怒るわけでも無いようで、起きてもアイマスクは外さないまま太刀洗先輩はそう言った。

 

「おそいよ~~、思わず二十度寝しちゃったじゃ~~ん」

「二十度寝!? 二度寝じゃなくて二十度寝!?」 

 

 思わず突っ込まずにはいられなかった。

 やばいこの人普通じゃねえ! ニート王だ!

 

「委員長だよ~」

「心を読まれた!?」

 

 何度目だ僕!

 

「顔にでやすいみたいだね~~」

 

 え? そなの?

 僕がそう疑問に思うとまた僕の顔に出てそれを読んだのか太刀洗先輩はそうだよ~~と語尾を延ばして言った。

 

 ……そういえば確かにババ抜きとか負けっぱなしだな。

 赤さんとやった機会提出とかは顔に出すことがあまり無かったから引き分けに持ち込めたのかもしれないし。そう考えるともしかしたら本当に僕は顔に出やすいのかもしれない。

 

 ……これ知ってれば僕は小学生時代に『黒神お姉ちゃん』などと呼んだり、『黒神ちゃんだーいすき(はーと 』 などとやらずに済んだのかもなあ。もしかして、ていうか絶対、顔に出やすい事知ってて僕にトランプゲームを挑んたな! 次は見てろ、もう僕の心が顔に出ることなんてないからな!

 

「あれ~~?」

「?」

 

 また僕の顔に何か出てしまったのか太刀洗先輩が不思議がったような声を出す。

 不思議がってはいても目はアイマスクで隠しているし顔で相手が何を考えているか判断するスキルなんて僕には無いから本当に不思議がっているのか分からないけど。

 

「そういえば~~」

「ん~~?」

 

 太刀洗先輩ののんび~~りした口調につられて僕もそうなってしまう。

 

「私、なんで君達よんだんだっけ~~?」

「……さあ?」

「おい」

 

 元も子も無いような事を言われて善吉がたまらず口を出した。

 しかし依頼書には只単に『ここの場所まで来てください』――としか書かれていなかったので僕らにも分からない。

 

「じゃあどうすんだよ? これでもう俺達の依頼は終了って事で良いのか?」

「ん~~、あ~~、思い出した~~~~」

「へ~~」

「最近流行らしいから私も呼んでみたんだった~~~~」

「ほ~~」

「そんな理由で!?」

 

 善吉が突っ込みを入れる。だが今の僕には何だか全てがどうでもよくなってきている。

 もはや世界さえどうなっても良いと思っている。

 ……それはさすがに言いすぎか。

 太陽さえどうなっても良いと思っている。

 

「生徒会はマスコットじゃあねえんだよ!」

「ん~~、マスコットじゃあ無いんならどうしようかな~~」

「はいはい! 帰らせるが良いと思います!」

「おいコラ」

 

 いやっふぅ! チャンスだ!

 ここでやらなきゃ誰がやる! ヘイヘイ!

 

「ん~~、でもそれは失礼だからね~~」

「失礼じゃないよ! 全然、全く、これっぽっちも失礼じゃないよ!」

「空てめえ!」

 

 善吉の怒りなんて知らない。僕は僕だ!

 ていうか委員長のお願いなんてまったく聞きたくない。

 これまであったのは――トランプゲームと猫猫猫捕まえよう大作戦と……それだけか。でも体験した身にとってはすごーーく濃いお願いだったんだよね。

 

「じゃあ~~私も濃いお願いにしよ~~」

「ああああああ! これ以上もう僕の心を読まないでー!」

 

 心じゃなくて顔を見て言ってるんだけどさあ!

 ちくしょう、さっき顔に出さないように生きていくって決意したばっかりなのに。もう僕は一生顔に出して生きていかなければいけないのか……。

 絶望した!

 仮面を被って生きなきゃ大変な世の中に絶望した!

 

「というわけではい。トモレターを書いて~~」

「トモレター?」

 

 善吉が代わりに聞いてくれた。

 レターって事は手紙っていうのは分かるんだけど……。

 

「お互いに手紙を書いて私に見せるの~~~~」

「えーーーーーーー」

 

 同時だった。

 鍵括弧が重なっちゃうぐらいのピッタリさだった。

 

「僕が?」

「俺が?」

「書くの?」

 

 息ピッタリ。

 だから多分だけど善吉も書くのは嫌だと思う。

 僕も嫌だもん。

 

「うん!」

 

 こんな時だけ良い返事だった。

 男だったら頭をグリグリしたくなる程の良い返事。

 

「あ、書くのは良い所だけね~~」

「悪口の方が良いな……」

 

 お互いがお互いを褒め合うって何の罰ゲームだよ。やだよ、それならむしろ貶してほしいと思うのは僕だけか?

 あ、もしかしてトモレターって友達レターを略してトモレターかな。誰が考えたのかは知らないけどありそうな割にそんなに聞いた事が無いから分からなかったよ。

 

「じゃあ、すた~~と」

 

 ルール1。書くのは相手の良い所だけ。

    2。三十個以上書くこと。

    3。書かなきゃ居残り。

 

 初めから用意してたのか常に常備しているのか太刀洗先輩は僕らにルールが書いてある紙を見せてからまた眠りについた。

 

 

    □ □

     ■ ■

 

 

「///////////////」

 

 照れちゃった!

 自分で書いてて照れちゃった!

 

 僕はルール通り三十個以上善吉の良い所を書いて、顔の赤いところを善吉と先輩に見せたくなくてすぐに廊下に出た。

 そういえば僕が先程、照れていた所をスラッシュで表現していたのに誰も突っ込んでいないのを不思議がった人もいると思うがその理由を簡潔に説明しよう。

 

 善吉はツンデレ。

 

 つまり善吉はまだ書き終えていない。筆を動かそうとするたびに叫び声を上げていた所を見るとやっぱり善吉も善吉で相当恥ずかしかったんだと思われる。

 そういえば僕が部屋から出るのに善吉の許可は得てなかったけど出たときに何も言ってこなかったから別に良いか。

 

「あれ人間クン、何をしているんだい?」

 

 残念! 僕は人間だ!

 あれ合ってる? でもやっぱりバカにしたような言い方には変わりない。

 さて、僕は阿久根先輩の疑問に答えたらまた照れてしまいそうになっているのだがどうしようか。

 

「……阿久根先輩こそ依頼はどうしたんですか?」

 

 僕は阿久根先輩の疑問をスルーした。

 ごまかした。

 ごまかしました。

 

「ああ、依頼を終えたからね。めだかさんに念のため代筆した手紙を見せに行こうという所さ」

 

 依頼者のプライバシーに関わるから君には見せられないけどね。

 そう言ってから阿久根先輩は僕に手紙を少し見せてからまた隠した。

 

 ……ごまかしませんでした。

 阿久根先輩はごまかしませんでした。

 罪悪感。

 

「へー、でもそれって内容も阿久根先輩が考えたんですか?」

「ああ、そうだよ。普段女の子の気持ちになんてならないから少々てこずったよ」

 

 やっぱり内容は阿久根先輩が考えたらしい。

 

 でも、それって――

 

「良いんですか?」

「へ?」

「いや、その何ていうか」

 

 それで――良いの?

 

 代筆。

 ありそうな依頼だろう。でも、わざわざ生徒会に頼んだ。

 友達がいないとか、それなら仕方が無い事なんだろうけどわざわざ生徒会に頼んだんだ、先生に義務の連絡をするとかそういう単純なものじゃあ無いと思う。それこそもっと。

 

 ファンレターみたいな。

 ラブレターみたいな。

 

 大切な手紙なんだろう。

 なのに、その人の気持ちを聞いて、もしくは考えて、それを阿久根先輩が表現も字も上手く書いて、それで終わって――良いんですか?

 

「もっと、こう、自分で書いたからこその物があるんじゃないですか?」

 

 善吉を褒めちぎった内容の手紙を書いた経緯。

 それこそ恥ずかしくて恥ずかしくて誰かに代わりに書いて欲しいと思うぐらいだったけど、それでも、自分で書くからこその、僕が恥ずかしがって書いたからこその意味もあるだろう。

 

「…………」

 

 その僕の問いに阿久根先輩は呆気に取られたような、鳩が豆鉄砲を食った(見たことが無いけど)ような、そんな顔をしている。

 しばらくの沈黙の後、阿久根先輩はやっと思い出したかのように僕に話した。

 

「あ、ああ。そうだね。……まさか君に教わる時が来るなんて、じゃあちょっと依頼者の所へ戻るよ。じゃあね守原(・・)クン」

 

 どうやら僕はちゃんと人間という消費者になれたらしい。

 

 

 

 ちょっとだけ阿久根先輩と仲良くなれた気がした、そんな日だった。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ不知火ちゃん、そろそろ帰ろっか」

「あれ、善吉は?」

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

「人吉君まだ~~?」

「恥ずかしいいいい!!」

 




1話に1人新キャラペースになってるなあ……。
まあ基本1話簡潔だからなあ。
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