鉄板屋『龍驤』プロトタイプ   作:モチセ

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息抜きの勢いが強すぎて困惑
ネタ絵がガチ絵を越えて悲しい気持ちになるソレ


03

 

 営業を終え帰宅。

 メンテナンスを終わらせると既に外は暗くなっていた。

 

「あーしんど」

 

 移動販売車や屋台はメンテが大変である。いっそ店を構えるのもありやな、ガソリン代もかからんし。

 

「店か屋台か……」

 

 どちらも簡単ではない。家から鎮守府までは近いわけではない以上、屋台の移動はそれなりに時間が掛かる。かといって店を構えるとしても、建物が必要である。

 

「すぐ準備できんのは屋台やな」

 

 お金に余裕はあるけどあまり使いたくはない。ダメ元で魚市場のおっちゃんとかに聞こう。もしかしたら手に入るかもしれない。

 そもそも一から作るのはどうやろか。そーなると明石や妖精さんあたりに頼むのがええな。

 

「アカン」

 

 魔改造する未来が見えてもうた。そもそもこの義手も明石や妖精さんが作ったモノや、微妙に信用できんわ。

 この義手はウチの思いどおりに動いてくれてるんやけど、どういう機構なんやろか。もしかしたら、夕張の言うとおりガトリングになったりしてな。

 

「……はぇ?」

 

 突然義手から変な音が出る。ガシンガシンといったような音だ。もしかしてウチが変なこと考えたからなんか?!

 袖をまくってみてみると義手は変形を開始していた。そして数秒後、ただの義手だった左腕は。

 

「…………」

 

 ミニガンを模したガトリングアームとなっていた。

 

 拝啓、師匠へ。ウチは関東の龍にブッ飛ばされるんや。

 

 

 

 

 

 

 翌日。いつもの魚市場。

 そもそも明石や妖精さんに頼むのはアカンと思い、ここの人たちに訊くことにした。あくまで趣味の範囲内やしな。

 

「なあおっちゃん、屋台持ってたりするん?」

「どうした急に、とりあえずタコ買え」

「おっちゃん以外でもええで」

「屋台に関しては工藤のじいさんぐらいだな。あとタコ買え」

「あんがとな!」

「礼を言うならタコを買え!!」

 

 タコを執拗に押し付けようとするおっちゃんから逃げ、じっちゃんの場所へ向かう。じっちゃんところは他の人と違い養殖業だ。何でも歳だとか。

 じっちゃんの場所へ到着すると、いつものじっちゃんではなくレ級が店番をしていた。

 

「リュッチーオッスオッス」

「あれ、じっちゃんはどうしたん?」

「腰ガ砕ケタ」

「アカンわ」

「冗談ダゼ、何カ用カ?」

「使わない屋台持ってるか訊きたかったんやけど」

「ソンナン訊クダケ無駄ヤロ」

「そか」

 

 そもそも屋台を持ってる人が少ないんやけどな。このご時勢やし。買うのも癪だし魔改造されてもいいから明石にでも頼むとしよう。

 今日はお好み焼きの気分やしイカでも買ってこか。

 

「マー、アルンダケドサ」

 

 レ級の言葉に歩みを止める。確かにないとは言ってないな、ハハハこやつめ。いや、そもそもなんであるかどうか知ってるんや。

 

「弟子ダカラ」

「なんで屋台持ってるねん」

「ンー、ゴ都合主義ダカラ?」

「……ウチもそうとしか思えんわ」

「今日師匠ガイナイノハドコカニ屋台ダシニイクカラナンダケドサ」

「使ってるんかい!!」

 

 コイツはどこまで振り回せば気が済むんやろか。でも使ってるならしゃーないな。

 おっちゃんいわく工藤のじっちゃん以外いないみたいだし、やっぱり明石に頼むしかないか。

 

「マーマー元気ダセヨリュッチ、ソンナンジャ胸モ大キクナラナイゾ☆」

「これはもう諦めたからええんや」

「諦メンナヨ!! ドーシテソコデ」

「やかましいわボケ」

 

 一発チョップをかます。が、しっぽにガードされてしまった。

 

「アメーゼ」

「反応速度ヤバいな」

「……リュッチ、オメーノイタ鎮守府ッテドコダ?」

「……なんで教えないとアカンのや」

「ドーセ1番近イ鎮守府ヤロ?」

「それを知ってどないするんや」

 

「簡単ダゼ、屋台出シニ行クダケダ」

「へ?」

「ダイジョーブデース、制服着レバドーニカナリマース!」

「い、いや、なんともならんやろ」

「ソカ、リュッチノ後追ッカケテイケバエエヤン。レッチャン天才?」

「そもそも来んなや、キミ深海棲艦やろ」

「ソンナ! ヒドイ! 私ト龍驤ノ仲ナノニ!」

「知らんわ」

 

 なんか今日は嫌な予感がする。おっちゃんのところでイカを買ってさっさと営業しにいこか。

 

 

 

~~~~

 

 

 師匠のお言葉その3

  同業者は大切に

『龍驤! 同業者は大切にするんだぞ!』

『商売敵の類やないんか?』

『お互い切磋琢磨することで自身の成長にもつながるぞ!』

『それは盲点やったわ! さすが師匠や!』

『ただし焼き鳥屋は潰せ!』

『なんでや!』

『再起不可能になるまで叩き潰せ! 屋台をぶっ壊しても構わん!』

『焼き鳥屋に何の恨みがあるんや!』

『客を半分取られたからだよ! あいついっつも俺と同じ場所狙ってくるんだよ!』

『私怨ダダ漏れやないか!』

 

 

~~~~

 

 

 

 鎮守府付近。

 

「キチャッタ……」

「ホンマに来んなや!!」

「ワイノジユウヤ! エエヤデ!」

「良くないわ! 帰れ!」

「リュッチガホッポニ!」

「うっさい!」

 

 鎮守府の近くに赤い移動販売車が止められているいつもの光景に、新しく屋台が追加された。

 ここまで持ってきたであろう張本人であるレ級は、割烹着のような服に身を包んでいるためか深海棲艦特有の禍々しさが感じられない。そもそもしっぽはどこへ行ったんや。

 

「ここ車でも30分かかるんやけど?」

「エ、走レバ30分デ着クダロ」

「訊いたウチがアホやったわ。で、何の屋台なんや?」

「焼キ鳥ヤデー、居酒屋モ兼ネテルラシイゼ」

「時間帯間違えたんやないの? まだ昼やで?」

「来ル奴ハ来ルカラ問題ネーヨ」

「その自信はどこから来るんや」

 

 なんか帰りそうにないし次々焼いてるし……もう放っとこ、知らん。今日はお好み焼きや。ウチも焼き始めるとするか。

 

「いいか、変なマネはするんやないで」

「モッチーノローン」

「……信用できんわ」

「レッツァン、ウソ、ツカナイ」

 

 話しながらも手を止めないレ級。その速度はどこか師匠を髣髴とさせる。

 でも師匠は粉物以外壊滅的やから仕込んだのは師匠やないやろ。もしかして工藤のじっちゃんは師匠レベル? あ、そういえば。

 

「そういやじっちゃんはどうしたん?」

「コレ、奪ッタ、後、知ラン」

「あの人も災難や……その服は?」

「使ッテナイ部屋ノタンスニアッタ。似合ウ?」

「たぶんそれ使っちゃアカンやつや。あと似合ってへん、微妙や」

「ヤッパリパーカーガ1番ダヨ」

 

 正直深海棲艦というところを見ると帰ってほしいんやけど、空母の奴等を考えると残ってくれたほうが助かる。

 ここまで来たらもうあれだ、ただの同業者と考えよう。これ以上考えると胃に悪い。

 

「バレへんか心配や」

「問題ネーヨ。シッポハ置イテキタ」

「あれ着脱可能だったんか」

 

 鉄板屋は今日も元気に営業する。

 




息抜きに飽きたんで更新停止します
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