あとがきとか前書きに書きさえすればで構わんで。
「龍驤さん、店を構えませんか?」
「急にどないしたんや」
営業を始めて数時間。空母の襲撃に耐えられなかったレ級は帰ってしまった。逆にこっちは空母があっちに行ってしまった分の材料が余ってしまった。
それでも売れてる方なんやけどな。あいつらの食欲がおかしいだけや。普通やったら1時間で材料なくなるわ。
今現在、昼の休憩に入った工廠の方々が来店している。具体的に言えば夕張と明石だが、夕張は妖精さんにお好み焼きを持って行ってる最中だ。よってここには明石だけ。そして、明石が何故か店を構えようといったところで冒頭に戻る。
「隣の焼き鳥屋に客を取られてるじゃないですか」
「ウチは空母が分散するから万々歳なんやけどな」
あまりのオーダーの多さにレ級が泣いていたような笑ってたような表情をしていたことを思い出す。あの猛攻に初見で泣かない奴なんておらんわ。ウチは初見やなかったから最初から対処してたんやけどな。
「酒が飲めるのと飲めないのでは大きな差があります」
「そこかい、というかなんで知ってるんや」
「加賀さんが話していたんですよ。あと、屋台だと座れるという強みもありますね」
なんでもビールサーバが屋台の下の方に隠してあったのを発見したとか。飲みの方も潰す気なんかお前等。
「そうだ! じゃあ龍驤さんも屋台にしましょう!」
「なんでや」
「そうと決まれば早速妖精さんと相談しましょう」
「ウチは承諾してへんで」
「義手と同じように変に細工を入れるのもありですね!」
「人の話を聞けや、というかお前やったんかアレ」
「もしものときの護身用ですよ!」
「護身用にしちゃえげつないんやけどな」
そもそも使う場面が想像でけへんわ。
「こうしちゃいられない! さっそく作ってきますね!」
「あ、ちょぉ待ってんか……」
アカン、走り去ってもうた。
明石なら今日中に屋台完成しましたっていいかねない。そのときはそのときなのだが。
★
「案の定や……」
「龍驤さんお疲れ様です」
午後の業務が終わった空母の襲撃により鉄板屋が撃沈。燃料弾薬全てはき切った。もしこの車に応急修理女神がいたら資材が補充されて再稼動を強いられる。いやや、ウチは赤疲労なんや。
近くのベンチで口から半透明な白いナニカを浮かばせているといると、しばらく前に走り去った明石から声をかけられた。アカン、嫌な予感がする。
「屋台完成したので持ってきますね」
「まだ2000文字もいってないで……いくらなんでも早すぎやろ……」
「100文字あればできますよ」
「それはいくらなんでも早すぎや……あ、このセリフ2回目や……」
「ついでに間宮さん呼んできますか?」
「いらん。ウチはもう引退した身やからな。それにウチの趣味でウチがこうなってるだけや。気にするだけ無駄やで」
「そうですか」
それはそうと、明石が屋台を完成させたのなら見なければならない気がする。
「明石ぃ、屋台持ってくるんやろぉ?」
「なんでねっとりしてるんですか」
「疲れたんやぁ」
「じゃあ持ってきますね」
★
「ええやん。思った以上に普通やったわ」
「どんなのを想像してたんですか」
「変形して巨大な艤装になる屋台」
「それは……さすがにしてませんよ」
「なんや今の沈黙」
「じゃあ今から説明を始めますね」
「説明って言うだけでもう普通の屋台やないな」
「もちろんです。私たちですから」
「まずは屋台において問題である移動ですね」
「時間がかかるからな」
「そこで強化型艦本式缶を改造して組み込んでみました」
「普通にエンジン積めばええやろ。なんでボイラーなんや。なんでそないなもん使ったんや」
「龍驤さんの燃料で動かすようにしたんですよ」
「そか」
「調理するための火もこの原理を応用しているものです。なので、稼動には燃料が必要になります」
「営業が必然的にここになるで?」
「その前提で作りましたから。龍驤さん基本的にここで営業するじゃないですか」
「せやな」
「あとはデメリットとしてガトリングが使えなくなるくらいですかね。咄嗟の事態に対処できません」
「今まで使ってないんやけど」
「なので自衛システムを屋台に組み込んでみました」
「無駄や、外せ」
「即答!」
「当然や、危険になるものを放って置く訳にはいかんやろ」
「そ、そうですね」
「深海棲艦が客として来るかもしれんやろ」
「どういう状況になったらそうなるんですか……」
「外見は昔の感じを出しました」
「現代風よりは好みやで。そんな変わらんけどな」
「店を持つとしたらどんな内装にします?」
「レトロでこじんまりした感じのが欲しいなぁ」
「最後にこの装備は艤装です」
「屋台やないとは思ってたけどな。義手みたいに変形機構とか組んでへん?」
「まさか」
「じゃこのボタンはなんや?」
「変形して水に浮くようになります」
「何用なんや?」
「海上で営業するための機構です」
「海上で営業しろって遠まわしに言ってるわけやないんやな?」
「まさか」
「なんでとりつけたん」
「困ったときに屋台呼べるなって思って」
「どこでも現れる屋台なんて聞いたことないで」
「龍驤さんがなればいいじゃないですか」
「アホか」
「あとは空を飛ぶ機構を開発して組み込めば万能屋台になりますね!」
「お前はどこを目指してるんや」
「以上ですね。後はどうにかして空で営業できるようにしなければ」
「誰が来るんや」
「……それを考えてませんでした」
「無理やろ」
「滑走路も取り付けねば!」
「まだ空飛ぶ航空戦艦の方が現実味あるで……」
「それはそうとして、海上の屋台ってかっこよくないですか?」
「見つからんわ」
「大海原にぽつんと存在する屋台……なんか神秘性を感じますよね」
「ウチはやりたくないわ」
「意外と深海棲艦がよってくるかもしれませんねぇ」
龍驤
義手 対空+1
屋台 装甲+2
今日、鉄板屋は新しい商売道具を手に入れた。
息抜き終了や。時間が来てもうたからな。