ハイスクールD×D その身に背負う物 一時停止 作:ケツアゴ
拝啓、天国のお祖父様……天国に居るよね? 俺が悪魔になったからって天国から追放とかされてないよね?
俺は今……死に掛けています。いや、修行では何時もの事なんですけれど……・
『ほらほらっ! ボサボサしてると挽肉になるんだな!』
「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
マッチ一本分の光源もない地下洞窟の中を俺は疾走する。悪魔の力のおかげで視界はハッキリしてるけれど、人間だったら数センチ先も全く見えなかっただろうな。そんな中を俺は走る。兎に角走る。全力で走る。
背後からは四足歩行の
『Boost!!』
籠手の宝玉から倍化を告げる音声が鳴り響き、俺と
あっ! 前までは激しく動いたら倍化が解けてたけれど、師匠に”戦場でその様な余裕が有るか。出来なければ死ぬ。出来る様にならなければ殺す”、と言われて何とか出来る様になりました。
そもそも一体どうしてこんな状況になったのか。それは何時もの様に金曜の放課後から行う泊まりがけの修行に向かった時に告げられた事にあった。
「三地龍? 其れがこのエリアの主なんっすか?」
「ああ、そうだ。鋼鱗龍ロックタンク。剛腕龍フォーハンズ。駿足龍マッハブレード。それがこのエリアの主達だ」
最近になって修行として向かっている魔境。今居るエリアは更に三つに分かれている。豊富な水源となる地底湖を中心にアリの巣の様に入り組んだ地下洞窟。最も多くの種類の生物が生息する地上。そして複雑に絡み合った枝が頑丈な足場になった樹上。魔境にはエリア毎に圧倒的な力で君臨する主が居るらしいけれど、今いるエリアには三つ全てに別の主が居るって話だ。
「
そう師匠は言って俺を地下洞窟への入り口へと蹴り落とした。坂道をゴロゴロと転がり落ちた先に居たのが俺を追い掛けている
『情けないんだな。そんなんじゃ他の奴らには殺されるんだな』
結局、俺はロックタンクに追い付かれて跳ね飛ばされました。俺、翼で飛べないけれど宙を飛びました。今はロックタンクの背中に乗せてもらい、体中の痛みに耐えながら地上を目指しています。
あっ、ロックタンク……さんは結構善い龍でした。
「イッセーさん。一緒に行きましょう」
可愛い笑顔を浮かべながらアーシアが寄ってくる。
「クソッ! どうしてあんな変態と!」
「アーシアさんが穢れるわ!」
周囲から怨嗟の篭った声が投げかけられるけれど、気にせずに俺はアーシアと学校を後にした。はい、そうです。あの後、アーシアは無事? に悪魔になりました。聖書が読めなくなるなどのデメリットを提示した上での交渉だったけれど、それでも良いとの事だ。命を助けて貰ったお礼がしたいんだってさ。
「えっと、今日は修行はお休みでしたよね」
「ああ、でも、この先にある喫茶店に向ってさ。他の眷属の人との顔合わせがあるらしいぜ」
勿論アーシアも修行を受けています。と言っても、師匠じゃなくって師匠の弟子、つまり俺の兄弟子にあたる人からルーン魔術と合気道とかの護身術を習っているんだ。師匠曰く、”相手を傷付けるのは気性的に無理だ。牽制も躊躇うだろうし、ならば其れは最初から切り捨ててサポートに徹してもらう”、だそうです。俺もそれに賛成だアーシアが相手を傷付ける姿とか想像できねぇよ。
「いらっしゃいませー。……良かった。今度は普通の……はっ! 二名様ですか?」
「あ、ああ。そうだけど……」
指定された喫茶店に来てみれば店員さんの様子がおかしい。何故か客席の一部をあえて見ない様にしているし、他の客も一部に固まっている。その光景を疑問の思った俺とアーシアは空白地帯の中に視線を向け、その理由を直ぐに察する。
其処には一人の男が居た。二mを優に超えるであろう巨体に長い手足。鍛え上げられた四肢は金属の塊を思わせる逞しさを誇り、親指の太さはアーシアの細い手首程はあるんじゃないかと思わせる程。そして顔は厳つく無表情。
そして彼の座る席のテーブルには店のメニュー全種類と思われる量のデザートが手付かずのまま置かれていた。あれか? まさか似た様なのが後から来るのか? マッチョな甘党の集いとかそういうのかっ!?
「あの、イッセーさん。待ち合わせしている方って、あの方じゃないでしょうか?」
「いや、違うと思うよ?」
何言ってるの、アーシアァァァァっ!? あれは関わったらやばい世界の人だからっ! 世紀末覇者とかそういう世界の人だから。えっと、メールによると落ち合う予定の眷属の特徴はとても目立つ男。……アレしか居ないねっ! ってか、よく見れば腕に俺達と同じレラィエ家の家紋が入った腕時計してるよっ!
「……あの〜、エミヤさんが言ってた人ですか?」
恐る恐る近付いて、何時でも逃げれるように距離を保ちながら訊ねると男はコクりと頷く。怖いよっ! 何か言ってくれ!
「初めまして。私、アーシア・アルジェントと申します」
あっ、アーシアが平然と前の席に座ったよ。こうなったら俺も腹をくくって座るしかない。オドオドしながら座った俺は取り敢えず頭を下げた。
「ひょ、兵藤一誠っす」
「……忠勝。本田忠勝だ」
その声はまるで魔獣の唸り声の様で、俺は背中から汗がブワッと吹き出すのを感じていた。動揺を隠さないと怒らせて何かされちまうと俺が恐怖で身をすくませる中、俺の前にスマホが差し出された。
「……アドレスを交換しておこう。何かと便利だ」
断れませんよっ! 断ったら何されるか分かりませんもん!
「えっと、これってどうやったら交換できるのでしたっけ?」
「あっ、俺がやってやるよ」
アーシアは平然とスマホを出すも操作方法が分からず、俺が代わりにアドレスを交換する。すると即座に俺とアーシアのスマホにメールが届いた。
『件名:初めまして。
初めまして、本多忠勝です。俺は口下手なのでこうやってメールで挨拶する事を許してくれ。君達の事はレラジュ様やコキュートス師範から聞いているぞ。ああ、このデザートは俺からの歓迎の証だから遠慮せずに食べてくれ。甘いの嫌いだったら好きな物を頼むといいぜ。あっ、俺の駒は
気さくだー!! 凄い気さくだよ、この人っ! 見た目で判断してスイマセンでしたー!!
て、タメっ!? 同じ年かよぉぉぉっっ!?
この後、メールで送られてくる会話で仲良くなりました。ちなみに人見知りだったから会う勇気が中々湧かなかったらしい。見た目とは大違いだねっ!
『この肉体? 人と会う時間を筋トレに費やして手に入れた』
「レーティングゲームを行う? アレって成人からじゃ?」
修行の合間にあるお楽しみのお茶の時間。メイドさんに注いで貰った紅茶を飲みながら俺は疑問の声をあげる。眷属を駒に見立てて戦うレーティングゲームに参加できるのは成人からだって聞いてたのに、二週間後にゲームがあるって言われた。
「ああ、本来はそうなんだが、まだ子供のレラジュだけど立派にやれていますとゲームでアピールするんだ。っと言っても、ある程度の所で相手が降参する事になってる出来レースだがね。まぁ勝ったという実績を手に入れる為の物さ」
だからデビュー戦だからと気張る必要はないと笑い掛けるエミヤさん。相変わらずのイケメンですが、この人は爆発しろとか言う気が起きません!
「それでさエミヤ。ゲームの時に一誠の
僕は別に戦闘狂ってわけじゃなけれど、それでも自分の力がどこまで通用するのかを知りたい。……レイヴェルさんに良い所見せたいし。
僕の目標の姉様は一族特有の力を持ってなかったし魔力も高いとは言えなかった。だけどレーティングゲームのタイトルを取ったし、現チャンピオンのティハウザー・ベリアルに勝った事がある程だ。
「
深い溜め息を吐く一誠だけど、最近スカサハが言っていた通り自信を無くしてるみたい。自分には偶々貰った物以外に長所がないって。
「あのさ、一誠。神が創った物でも、持って生まれたからにはそれは一誠の力だよ? それを言うなら純潔悪魔にも特殊な力を持つ一族とそうじゃない一族が居るんだし。それにこれは姉様の言葉なんだけど、自分の価値を最後に決めるのは他の誰でもなく自分自身なんだ。だから、誰もが否定しても自分は自分を最後まで信じてあげなきゃ駄目なんだよ」
「……うっす」
少しは元気が出たら良いけどなぁ。まだ経験が浅い僕じゃ言葉の重みが足りないと思う。もっと経験を積まなきゃなとエミヤが作ったケーキに手を伸ばしたけど、その手は空を切る。何時の間にか僕のケーキは急に現れたお爺さんに食べられていた。
「レラジュ、久しい」
「オーフィス!」
このお爺さんの名前はオーフィス。本当の姿は
オーフィスは口元を汚しながらケーキを貪る。僕はエミヤが直様出してくれた新しいケーキを食べながら、呆然としてる一誠達の方を向く。あっ、初対面だっけ。
「紹介するよ。無限龍オーフィス。世界で二番目に強い
本当に姉様は凄いと思う。種族性別年齢問わずに友達に成れるんだから。一部変な趣味の人も居るけれど。どうして同じ女の人なのに姉様にキスを迫ったりしてたんだろう? エミヤに聞いても教えてくれなかったしさ。
「やっぱアレ? ドライグの気配感じて来たの?」
「其れもある。……今回の赤龍帝。名前は?」
「ひょ、兵藤一誠だよ」
ジッと自分を見詰めてくるオーフィスに動揺してる一誠。何歩か後退りしてもオーフィスが付いてくるから距離は離れない。感情が感じられないから怖いのかなぁ?
『おい、小僧。オーフィスと会っていて大丈夫なのか? 流石に相棒が未熟なうちに政府とやり合うのは勘弁だぞ』
「それなら大丈夫。姉様の時に魔王様達から何とか懐柔して敵に回らないようにしてくれって頼まれてるから。だから何かあったら魔王様達の責任になるようになってるってデミウルゴスが言ってたよ」
『……あの男か。例の大戦の時から知ってはいるが……』
デミウルゴスはドライグ達が封じられた大戦より前からウチに仕えてるし、何度か他の赤龍帝にも会ってるらしい。ドライグの口調からして苦手なのかな?
「それでさ、もう一つの要件は何? エミヤのケーキを食べに来たの?」
「其れもある。だけど今日はお願いがあって来た。我、グレートレッド倒すための組織作った。レラジュ達にも協力して欲しい」
「……無理だよ。僕は当主として領地を守らなきゃならないもん」
確かにオーフィスの事は僕も友達みたいに思ってるけれど、それだけは出来ない。僕の返事に対してオーフィスは無表情で、そう、とだけ言うとクッキーの乗った皿を持って消えていった。
「……エミヤ。僕は間違った選択をしたのかな?」
「其れはお前が決めることだ。私に訊いても答えは出んさ」
エミヤはそう言いながら紅茶のお代わりを淹れてくれる。程よく砂糖が入った紅茶は甘くて美味しく、昔、姉様やオーフィスと一種に飲んだ時と同じだった……。
「……クヨクヨしてても始まらないよね。今はゲームの事を考えよう!」
そうだ! 僕は王なんだから眷属に情けない姿は見せられない。まだ決裂した訳じゃないよね。これから先は僕次第だ!
まずは今度のゲームで実力を示す。姉様から受け継いだ眷属だけが戦力じゃないってアピールしなきゃね!
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