ハイスクールD×D その身に背負う物  一時停止   作:ケツアゴ

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第七話

 誰かが言った。俺には武器を扱う素質がないと。俺自身、その事に納得が行った。

 

 誰かが言った。俺には魔力も魔法の才能も皆無だと。生涯をかけて死に物狂いで努力しても下の下にさえ届かないと。俺は其の事を直ぐに受け入れた。

 

 誰かが言った。俺は決して強くなれないと。俺は其れを直ぐに否定した。武器がなくても俺にはこの体がある。魔力や魔法を放てないのなら、拳や足で補えばいい。威力が武器に劣るというのなら、もっと力を付けて技を磨き、魔力に射程や有効範囲で劣るなら、より早く動き回ればいい。簡単な事だ。

 

 戦士に必要な物は何かと聞かれ、誰かは優れた武器と答え、別の誰かは才能と答えた。そして俺は最後まで貫き通す信念だと、そう答えた。

 

 

 

 

「今日の敵は中々の大物だ。縄張りを追い出された主でも連れて来たか?」

 

 フィールドの中央で腕を組みながら今回の敵を見据える。俺の数倍はある巨大なゴリラの様な魔獣。推定戦闘力は上級悪魔以上最上級悪魔未満。ただし、非常に興奮して凶暴化しているので危険度は高めに設定すべきだろう。

 

「なんだ。楽勝じゃないか」

 

 其の呟きが聞こえたのか、聞こえても理解できないがニュアンスを感じ取ったか、それとも知能が高く理解出来たのかは知らないが、魔獣は両腕で胸を叩く威嚇行為、所謂ドラミングをしながら吠える。耳を劈くような叫びを上げながら牙をむき出しにした魔獣は自分の体の半分ほどもある大岩を持ち上げると上に放り投げ、引き絞った右腕のパンチで砕く。無数に砕かれた岩の破片、それでも俺の体より遙かに大きい物が流星群のように俺へと迫った。

 

 ……普通なら退いて距離を取るのが上策なのだろうが、俺はチャンピオンだ。観客の子供達は俺が戦う姿を見て勇気の何たるかを知る。故に! 観客の前で俺は決して退くわけには行かない!!

 

 ……俺を押し潰さんと迫る岩の雨に魔獣が笑った気がした。

 

 

 

「残念ながら俺は普通じゃないんだ。十三のブラボー技(アーツ)の一つ……粉砕! ブラボラッシュ!!」

 

 繰り出すは驟雨の如き猛打。俺へと迫った岩全てを文字通り粉(・)砕(・)した。その光景に怯むかに思えた魔獣だが、流石は魔境に住むだけあって臆すことなく頭の上で拳を組み合わせ、そのまま戦鎚のように私目掛けて振り下ろす。それに対し、私は指を水平に伸ばして腕を頭上へと上げ、神速で振り下ろした。

 

 

 

 

「両断! ブラボチョップ!!」

 

 この瞬間、勝敗は決した。振り下ろした手刀の直線上の地面には深い深い亀裂が走り、魔獣の体は拳を振り下ろそうとした体制で止まり、左右に分かれる。一瞬間を開け、観客の歓声が響き渡った。

 

 

「私の名前はキャプテンブラボー! 名前は秘密。何故ならば!!」

 

 私は右の拳を天高く突き上げて問い掛ける。直ぐに観客席から答えが返ってきた。

 

 

『その方が格好いいからぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 ブラボー! ブラボー! 君達は最高の観客だ! 歓声が止むまで俺は拳を突き上げた状態を続けていた。

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、ブラボー」

 

「おおっ! 暫く会わない間にまた背が伸びたようだな!!」

 

 エキシビジョンが終わった俺は予め呼ばれていたVIP用の観覧室へと向かった。久々に会ったレラジュはまた大きくなっていて何よりだ。頭を撫でてやった後、うっかり挨拶を忘れるところだった方に跪く。

 

「お久しぶりです、ベルゼブブ様」

 

「いや、今日はお忍びだから畏まらなくても結構。……それよりも極秘で重要な話がしたい。オーフィスの件は知っているね?」

 

 その言葉に俺は立ち上がって頷く。既に電話で聞いているからオーフィスが次元の狭間をグレートレッドから取り戻す為に組織を結成したという事は知っている。俺の前の主である彼女と仲良くしていたので知っているが、嘘をつけるタイプではないので本当だろう。

 

「私達はこの事を重く見て、堕天使や天使側にも情報を流したのだが、どうも堕天使側も其の組織だと思われる組織を警戒していたらしくてね。……極秘の会談が行われることとなった。よって関係者たる君達に命じる。レラィエ家前当主ハクノ・レラィエの眷属だった者及びレラジュ・レラィエと其の眷属は其の会談に出席する事。場所は中立地帯が望ましい為に検討中だが、近日中には決定するだろう」

 

 其れまでこの事は他言無用だと言ってアジュカ様は転移していく。……やれやれ、厄介な事になりそうだ。

 

 

 

「っと、挨拶が遅れたな。君が赤龍……いや、兵藤一誠だな。私はキャプテンブラボー。エミヤの戦車(ルーク)でこの闘技場のチャンピオンだ」

 

「ど、どうも」

 

 一誠に向き直った俺は手を伸ばし握手を求め、彼もそれに応じる。うむ! 鍛えがいのあるいい目だ。スカサハが弟子にしていなければ俺が弟子にしていたのだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、遂にこの日がやって来たのだが……緊張しているようだな」

 

 色々あったけど、遂にやって来ましたゲーム当日! この日の為にやってきた修行の日々が思い起こされ…思い起こ…思い……兎に角頑張るぜ!

 

 やっぱり非公式とは言え俺のデビュー戦。魔境で命懸けの戦いをしてきたけど、それでも緊張はする。横を見ればアーシアも緊張しているのか右足と右手が同時に前に出ている。

 

「安心しなさい。アナタ達に期待してないから」

 

 ……あ、うん。厳しいってか割と酷い言葉を掛けて来たのは戦車(ルーク)のナーベラルさん。一応俺と同じで師匠の弟子で、アーシアに魔力制御とルーンを教えているんだ。あと、レラジュ様はこっそり教えてくれたけど、今のは負けてもフォローしてあげるからリラックスしなさいって事らしい。……ツンデレってよりは口下手?

 

 控え室の中は豪華な作りで、俺の家よりも面積が広いんじゃないかって位だ。ソファーもフカフカで、マッサージチェアやドリンクバーまで完備。金ってある所にはあるんだなぁ……。

 

 

 

 

『皆様、今回の審判を務めさせて頂くラニ・ダンダリオンです。それでは時間も差し迫っていますのでレラジュ・レラィエ様及びライザー・フェニックス様達は転移用の魔法陣の上へとお移りください』

 

 感情の希薄そうな声のアナウンスに従い俺達は魔法陣の上へと移動する。転移の光が俺達を包み込み、次の瞬間には先日訪れた闘技場の控え室によく似た場所に来ていた。……ここがゲームのフィールド?

 

 

 

『今回のゲームは特別ルールとし、駒ごとの総当たり戦となっています。それでは両陣営の兵士(ポーン)の皆様、闘技場へとお進みください』

 

 

うおっ! 急だな、おい。……でも、エミヤさんも居るし。……いや、駄目だ。それじゃ、駄目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エミヤさん。出来たらこの闘い、サポートに回ってくれませんか? 俺だけで戦えるだけ戦ってみたいんです」

 

「……良いだろう。元からそのつもりだったしな。無茶しない程度に頑張り給え。……だが、全て倒してしまっても構わんのだぞ?」

 

 闘いで仲間の誰かを頼るのは悪い事じゃない。でも、誰かに頼らなきゃ戦えないんじゃ強くなれねぇ。俺はこのゲームで自信を身に付けるんだっ!!




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