最近、並盛中学校で気になる噂が流れている。
『雲雀恭弥が女を襲った』
嘘か本当は別にして、今最も話題となっている噂だ。
あの雲雀恭弥が、というものもいれば、何を血迷ったか襲ったに違いないという命知らずもいる。
まぁそれ自体は特に気にすることではない。
骸が気になったのは、後者が圧倒的に多いという点だ。
それはそれは不自然な程に。
「これは、不思議ですねぇ」
と言いながらも内心では、馬鹿らしいと悪態をついていた。
アレは確か老若男女構わずに気に入らなければ咬み殺しているはずだ。であるのに、こうして限定的に女を襲ったと噂されるというのはつまり、性的になのだろう。
それを信じるとは。
馬鹿らしい。
奴に性欲なぞおよそ人間らしいモノがある筈ないだろう。____いや、実際はあるのだろうが、重きを置くのはそこではない。
アレは規格外だということだ。
そもそもアレは女なぞより骸の目下の標的、沢田綱吉の方に興味を持っているはずだ。彼を襲うのなら(まぁ、これもどうかと思うが)100歩……いや、1万歩譲って納得出来なくもないが、女を襲うとは……天変地異の前触れか。
しかし、この間興味本位で並盛へ足を運んだ時(勿論、姿を消してだが)の獄寺達の様子を見るに、彼らは本当に雲雀が性的な意味で女を襲ったと認識しているようだ。例え操られていたとしても、一体どういう思考回路をしているのか。
馬鹿らしい。
本当に、馬鹿らしい。
むしろ、馬鹿なのではないか。
けれどここまでくるといっそ骸の幻術のような、そんな能力を疑うことになるだろう。
だって、不自然すぎる。
その理由は雲雀恭弥だからだ。
だから、相手が雲雀恭弥だということを並盛中学校の生徒は忘れているのではないかと思ってしまう。
……つまり、忘れているのだろう。
「クフフ、彼が潰れるのは構わないのですが。……ねぇ?」
しかし。
しかし、と思う。
まだ気になる。この前見た彼がまだ気になるのだ。
沢田綱吉だ。
綱吉は骸に気づいていたが、気づかないふりをした。
そして、彼は獄寺達が憤る様を静かに見つめていたのだ。
そう。静かに。まるで、見極めるかのように。
その瞳は普段の彼からは想像出来ないほどに深い瞳だった。
そして、その瞳が骸を捉えて離さない。こびりついて忘れられない。
ずっと、ずっとずっとずっとずっと。
胸に、頭に、身体に、あの見極められているような___いや、見透かされているようなあの瞳が、瞼の裏に鎮座してしまっている。
「彼に会えば何かわかるでしょう」
そういえば、と、ふと疑問に思う。
晴のアルコバレーノは今回のことに手を出さないのだろうか?
まぁ、でも。と思う。
取り敢えずの目的は沢田綱吉だ、と。
「クフフ、彼と会ってみましょうか……。」
すぅっと、霧が……。