あいあいあいんずさま   作:いつかこう

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かなり無理やりな後日談です。……前後編です。

内容の、違ウ違ウ・コレジャナイ感に関しては……すいませんとしか。
ソノママヤッタラR-18ニシカナラナイシ。
キャラの独自解釈・設定もかなり多めになりましたがそこも出来ればご勘弁を。

よろしければお読み頂けたら幸いです。


ごごごごじつだん ぜんぺん

 その日、アルベドは微笑んでいた。

 

 いや、彼女はアインズの前では常に微笑んでいる。ただ、その微笑みの種類が違った。

 どこがどうと明確に指摘出来る訳ではない。シャルティアとやりあう時の般若の笑みでも無い。

 しかし、何かが違った。アインズは首を傾げる。

 

 態度は、いつもと変わらない。執務は的確で、ソツがなく、非常に優秀だ。

 もっとも、根が凡人なアインズがその優秀さを真に理解出来ている訳ではなく、多分これは優秀なんだろうと雰囲気で予想しているに過ぎないが。

 

 ──単に自分の気のせいだろうか。──

 

「それでは今日の定時報告はこれで終わりということで。」

「うむ、ご苦労だったな、アルベド。」

「とんでもございません。ではこれで失礼を……あっ……。」

「うん? どうしたんだアルベド。」

「私とした事が、失念しておりました。大変申し訳ございません、もう一つよろしいでしょうか? それほど重要な案件ではないのですが……。」

「もちろん構わんぞアルベド。ははっ、お前でもそのような事があるのだな。なかなか新鮮だ。」

「守護者統括として本当にお恥ずかしい限りです……。ではお言葉に甘えまして。あっ、その前に。」

 

 そう言って、アルベドは人払いを願った。だがアインズは例の一件があるだけに、多少躊躇(ためら)う。

『でもなあ、まさか、さすがにまたあんな真似はしないだろう。それより、じゃあ、重要な案件ではないって言ったのは、人目があるからなのかな。』

 失念していたというのも、あるいは演技かもしれない。

 

 もちろん無私の召喚モンスターである八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジアサシン)や、その日のアインズ担当のメイドのフォアイルがそれを漏らすはずは無いし、場合によっては《命令》という形で口止めしても良い。

 とは言え、耳に入れないに越したことは無いという、守護者統括としての用心深い判断は好ましい。

 

 例えば万が一、フォアイルが《敵》に拉致され、世界級アイテムや未知の魔法等で話の全容を聞き出されたりしないように。

 もちろん確率はほぼゼロに近いだろう。だが近いという事は、本当の意味でのゼロでは無いのだ。警戒するに越した事はない。

 真に重要な情報とは、その内容を知る者が少なければ少ないほど良い。

 そう判断したアインズは願いどおり、例の一件以来アルベドの一挙手一投足に警戒する八肢刀の暗殺蟲、それにフォアイルを退室させる。

 

「──これで良いか。望み通り二人きりだ。では話すが良い。」

 アインズは多少身構える。まさか、仲間の消息についてだろうか? あるいは他国関連で何か重大事が……?

 

「……ありがとうございます。実は……このような言葉を耳にしまして。」

「うむ。」 ……言葉?

 

アルベドはどこから取り出したのか、一枚の羊皮紙を手に取ると読みだした。

 

「『私はお前達を愛している。美しく可憐なナザリックの華達よ。お前達がいなくば、この大墳墓もなんと色あせたものになる事か。私は仲間達に感謝する。お前達という存在を生み出してくれた仲間達に感謝する。』」

 

「…………。」

 

「『我が愛しき華達よ、煌めく宝石達よ、燦然と瞬く星達よ、麗しき戦女神達よ、己を誇るが良い。お前達こそが我が至宝。』」

 

「…………。」

 

「『お前達こそが我が至宝。ああ、宝物殿に眠る無限の宝の中にすら、お前達の価値に匹敵する物が二つとあろうか。私はお前達を愛する。』」

 

ぺかーっ

 

「……これがアインズ様のお言葉だと聞き及んでいるのですが、それほど大事な愛するシモベがいるのならば、すぐにでも取り立てそれに相応しい地位を与えなければと愚考いたします。あの宝物殿の世界級アイテムすら凌ぐ価値があるシモベの存在、無知なる私は全く存じあげておりませんでした。それも複数。ナザリックの運営の責任者たる守護者統括として恥じ入るばかりでございます。」

 

「……あ、あ、あのな……。」 いや、もう分かってるだろ! ちょうどその部分、抜いて読んだだろ!

 

「領域守護者、いえ、場合によっては階層守護者全員との入れ替えも考えなければいけませんね。階層守護者は至高の御方々がお決めになった栄えある役割。なれど、御方々の統括であられたアインズ様の望みとあらば、私達も断腸の思いで従います。私も守護者統括を譲るに(やぶさ)かではございません。なにしろ、あの世界級アイテムより大切なシモベなのですから。それに比べれば、しょせん私などエクレア程度の価値しかございませんから。」

 

「ちょっ、待て待て落ち着けアルベド! ば、ば、バカを言うな、そんな事をする訳が無いだろう! 階層守護者を替える気は無いし、もちろん守護者統括もだ。私はお前の才覚を高く買っているのだぞ?」

 

「ありがとうございます。非才で愚かなる我が身に過分なお褒めの言葉、アインズ様の優しさにこの身が震えます。」

 

『いや全然震えてない! っていうか眼が死んでる! 微笑んでるけど眼が! 眼が! 凄いヤバい雰囲気!』

 

「あ、あの……アルベド……。   ……怒ってる?」

「なにがでしょうか?」

「いや、その……。ぷ、ぷれあ……」

「プレアデス!」

「ビクゥッ!!」 ……あっ……ビクゥッってセリフで言っちゃったよ。

 

アルベドは微笑みを絶やさず、もう一度繰り返す。

 

「プレアデス……彼女たちが、何か?」

「えっ? あ、いや、その、な、ゴホン、な、なんでもありま……ないぞ? いやほんと、うむ、プレアデスはよく頑張ってるな―って……えっと……。」

「ええ、その通りですわアインズ様。彼女達は大変に優秀です。本当に良くやってくれています。」

「で、ですよね~……じゃない、う、うむ。確かに良くやっている。素晴らしい部下達を持って私も鼻が高い。」

「全くですわ。」

「う、うむ。」

「うふふふ。」

「ふはははは。」

 

「──ですからアインズ様が賛美するのも、抱き締めて愛を囁くという恩寵をお与えになるのも、本当に無理ない事かと。」

 

「…………………………。」

 

ぺかーっ

 

「どうなさいました、アインズ様?」

「い、いや……。」

 

 どうやら、先日の事はすべてバレているようだ。変に隠しても更に泥沼の深みに嵌り込むだけだろう。

 

「…………。あーっ……。あ、アルベド、やっぱりその……怒って……。」

「怒るなど!」

「ビクゥッ!!」

「アインズ様はこのナザリックの絶対支配者。そして私はアインズ様の忠実なるシモベ。その私が、どうしてアインズ様に怒るなど、万死に値する感情など持つでしょうか。そんな事は決してありえません。ええ、絶対にありえませんとも。」

「そ、そうか……。」 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!

 

「もちろん本来、私達シモベが褒美を賜るなどあまりにもったいなく畏れ多い事。しかし、寛大で慈悲深きアインズ様は私達に恩寵をお与え下さる事をむしろ喜びとなされているようですので、私もそれに対し今更異議を唱える事はございません。」

 

「う、うむ……理解してくれて嬉しいぞ。さすが私のアルベドだ。お前に代わる存在などナザリックのどこを探してもいないな、うん。」

 

 さりげなく、アルベドが有頂天になる言葉を盛り込む。

 

「ありがとうございます。ところで……。」

 

『スルーしたあああ!!』 今までに無い異様な雰囲気だ。

 

『これなら発狂ヒドインモードの方が数倍マシだ!泣きわめいて困らせてくれた方がどれだけ楽か!』

 針のむしろ、っとはこういう状態の事を言うのだろうか。

 

 アインズが狼狽え、ぺかーっぺかーっと精神抑制を繰り返している様を、アルベドはしばらく見つめ、そして目を閉じてため息をついた。

 

「……ふう。申し訳ありません。至高の……そして愛する御方に対しこのような態度。私は本当に、万死に値する行為をしていますね……。本当……ダメな女です。アインズ様が鬱陶しい私の存在を抹消なされるというのであれば、もちろん粛々と従います。もし最後のお願いを聞いてくださるなら、アインズ様手ずから処刑していただけるのであれば、これに勝る幸せはございません。」

 

「ちょっ! ……ふう、アルベド、さすがにそこまで言ってくれるな。その……どうやらあの件についてお前の耳に入ってしまったようだが、誰が話したのだ? リュミエールは口止め……ゴホン、ま、まあナーベラルかルプスレギナあたり……かな?」

 

 沈黙。どうやら当たりらしい。

 

「まあ聞いてくれ、アルベド。かなり誤解が入っているぞ。あ、あれはだな、その……ちょっとした事故というか……。」

 

「もうよろしいです、アインズ様。アインズ様は絶対なる至高の御方。どの女に愛をお与えになるかはアインズ様の自由。私ごときが口を挟む事では、当然ございません。──では、まだ私の存在を許してくださるのであれば、早急にプレアデス達の、寵姫としての教育を始めたいと思います。私は、その……経験はありませんが、それでもサキュバスですので知識については一通り備わっていると自負しています。実技については、ソリュシャンに任せれば問題無いでしょう。エントマとシズに関しては、そのサイズ上……。」

 

「だーっ! だから聞け! 聞かんかアルベド!!」

 

 アインズは「経験ありませんが」の部分に、『へえ、無いんだ……ん? ビッチ設定書き換えてなかったら当然バリバリだったって事になるのかな……シャルティアの同性経験みたいに。 設定によって体験の有無も変わるのか……うーん、なんか納得いくような、凄く変なような、って今さら疑問持ってもしょうがないのかな……』とかなんとか妙に分析的な感想を持ちながらも、慌ててアルベドの言葉を遮った。

 

 

◇◆◇

 

 

「……そういう事だったのですか……アイテムの効果、ですか。」

「うむ。」

 

 アインズは観念して、ジョークアイテム《完全なるすけこまし》をうっかり起動させてその影響下に入ってしまった事を包み隠さず話した。

 完璧な支配者、っというイメージからはかなりかけ離れてしまうが、この際それも仕方がない。

 そしてアルベドの目に理解と……それと別の感情が込められている事に気づき、警告する。

 

「あー言っておくがアルベド、そのアイテムは一つしか無かった。宝物殿を探しても、もう無いぞ。」

 

 ……チッ

 

「……今、舌打ちした?」

「いえ、まさか。アインズ様の前で舌打ちなど。」

「だよな。」

「はい。おかしなアインズ様。うふふ。」

 

 ゾクッ! やっぱりまだ怖い!

 

「ま、まあとにかく、誤解は解けたようだな。マヌケな話で全く恥ずかしい。お前も失望したのでは無いか?」

「とんでもない! むしろアインズ様がそんな愛らしい失敗をなさるとは、より愛おしくなりました。」

「……うん、まあその、納得してくれたならそれで良い。他の守護者達には話してくれるなよ?」

「はい、もちろんです。」

 

 アインズは、プレアデス達にも改めて口止めをしなければなと思いつつ、やれやれ、なんとか乗り切ったか、っと安堵する。

 

「と、言うことでこの話はお終い……ん? まだ何か言いたい事があるのか、アルベド?」

 

 アルベドが(うつむ)いてモジモジしているのを見て、恐る恐る尋ねる。

 守護者統括はまるで少女のように赤くなり、体の前で指先を組んでせわしなく動かしている。

 そして意を決したかのように顔を上げると、アインズの顔をまっすぐ見据えた。

 

「……アインズ様!!」

「はっはい!?」

 

 アルベドの眼がウルウルと潤み、唇がかすかに震えている。頬が紅潮し、腰の黒い翼もワシャワシャと小刻みに振動してる。

 

「こ、このような……至高の御方に対し非常に意地悪な態度を取ってしまった後に、その、こんな事を言うのはあまりに不遜で礼儀知らずです。それは分かっています。分かっているんです。ですが……。」

「…………。」

「アインズ様、ダメでしょうか。」

「……な、何が?」

「真似事で構いません。私にも、その……プレアデス達に与えた恩寵を……授けて頂けないでしょうか。」

「……。」

「アイテムの効果とはいえ、私が一度も与えられていない恩寵を賜った女が複数いるのが……辛いです。いえもちろん、プレアデス達に何か含むところなどございません。彼女達もそれを受けるに相応しい存在だと思っております。それでも……。」

 

アルベドは言葉を詰まらせると、目を伏せた。

 

「アルベド……。」

 

 アインズは、アルベドにバレた段階で捕食者モード全開で強引に押し迫られるものだと覚悟していた。

 しかしさっきの雰囲気といい、一転してのこのしおらしいお願いといい、かなり意外に感じる。

 それだけ、アルベドにとってショッキングで重大な出来事だったのだろうか。

 

「ダメ・でしょうか?」アルベドが、再びなけなしの勇気を振り絞って、っという風に顔を上げアインズの眼を見て尋ねる。 

「い、いや、アルベド、あのな……。」

「ダメ……でしょうか?」

「う……うむ……。」

 

「やっぱり……ダメなんですね。」

「…………。」

「……申し訳ありません、アインズ様、また困らせてしまいました。……本当にしつこい、厄介な女です。自分でも嫌になります。お許し頂けるのならば、また暫くの間自室で謹慎したいと思います。それでは、失礼致します。」

「ま、待て、アルベド。待ってくれ……。」

 

 アインズは慌てて、見るも哀れにしょぼくれ俯いて退室しようとする守護者統括の背に声をかける。

 アルベドはピタッと止まると、ゆっくりと振り返った。どんな心理状態であれ、至高の御方に背を向けたまま話を聞くなどという真似は出来ない。

 キチンと振り返り、居住まいを正す。顔は悲しげでありながら、それでも礼儀を失うまいと必死に感情をこらえているようだ。

 そんな、NPCであるがための習性を、アインズは少し哀れに思った。

 

「そ、その……説明した通り、あれはアイテムのせいで()む無くやってしまったことであるから、その………。」

「……。」

「お前が、望むようなものにはならんと思うが……その、それで良いなら、まあちょっとぐらい……なら。」

「……。」

「お前達は皆、等しく私の大事な存在なのだ。それは分かって欲しいのだ。分かってくれるために必要ならば……。」

「アインズ様、では……?」

「う、うむ。た、ただ、なんだ、その……繰り返しになるが、期待してくれるなよ?」

 

「ありがとうございます。アインズ様!」

 

 それこそパアアッ……っと花が咲くような笑みを見せた後、アルベドは深々と頭を下げた。

 

『うっ、かっ、可愛い……。』 アインズは思わず心の中で呟いた。

 先ほどの雰囲気からのギャップだろうか。これほどいじらしく邪気の無い笑顔を見せられては、いかにアンデッドの精神とはいえ、感じるものはある。

『こうも喜ばれると……な。羞恥プレイにもほどがあるけど、いつも良くやってくれているアルベドへの褒美になるなら、がんばってみるかな……。』

 

 ──アルベドは、まだおじぎをしたままだ。そして、その長く黝い髪に隠された顔に浮かんだ笑みは──

 

 

 例えようもなく邪悪で淫靡なものだった。

 

 

『くふふふっ……計画通り。』 彼女は心の中で、密やかな歓喜と共に呟く。

 

 アルベドは浮かれきったルプスレギナから話を聞き、そして裏を取るためにナーベラルを詰問した後、これを思いついた。

 もちろん聞いた時は非常にショックだったが、そのショックがあまりにも大きかったためか逆に頭は澄み渡り、異様に冷静になった。

 ルプスレギナにも本音を明かさず自尊心をくすぐる形でうまく全容を聞き出し、ナーベラルに対しても全く冷静に話を促した。

 ──もっともナーベラルはアルベドの微笑みの裏に込められた《何か》に怯えに怯え、かなりつっかえつっかえだったが。

 

 そして二人からの聞き取りにより、恐らくこれは未知のアイテムの効果だと推察した。

 かつて、それが巻き起こした混乱の後、主が必死に隠し通そうとした《完全なる狂騒》での騒ぎのように。

 突然雰囲気が変わったのは、アイテムの効果が切れたためだろう。

 (あるじ)の告白で、その予想が当たっていたと証明出来た。

 

 もちろんこれからの展開で一番の理想はそのアイテムを手に入れる事だったが、それは元々あまり期待していなかった。

 例え一つしか無かったというのが主の嘘だったとしても、我に返った後すぐに残ったアイテムは破棄するか、あるいは絶対にアルベドやシャルティアに見つからない所に隠したはずだ。

 で、あるから、本命はこちらだ。すべてはアインズの後ろめたさをうまく引き出し、この状況に持っていく。そのための演技だった。

 

 強硬にお願いしても、あるいは願いは叶ったかもしれない。

 しかしそれでは恥ずかしがり屋の主人はつかえながら少しだけ演じて、すぐに止めてしまうのが容易に想像できた。

 で、あればこそ。アインズをのっぴきならない状態、恥ずかしくなってもすぐには止められない心理状態に持っていく事が大切だった。

 

 まずは言下に秘められたプレッシャーで強く押し、その後重圧から開放した後に相手ではなく自分を責めて罪悪感を刺激し、恐る恐る望みを伝えためらっているところですぐに引いて哀れみを誘い、優しい主の気持ちが揺らいでもがっついた様子を見せず、決心してくれたら即座にただただ輝くような感謝と喜びを表す。

 他にもアインズの反応に合わせ数パターンを考え、事前に何度も脳内シミュレーションを行い実行した。我ながらうまくいったと思う。

 

 ちなみにアルベドはアインズのおべっか……もとい、賛辞には、ちゃんと感じ入っていた。

 それはシモベとしての生理に基づく反射反応とでも言うべきものだからだ。それに抗う事は出来ない。

 だが、その喜びを見事に隠しきって見せた。

 

 女はすべて、生まれながらの女優なのだ。ましてやアルベドは女の中の女、女の業を凝縮したような存在だ。

 必要とあらばどんな凄まじいどす黒い憎悪も見事に隠し通し、復讐を成すため完璧に親しげな笑みの仮面を被る事も出来る。

 ──それはすでに現在進行形でやっている事だ。──

 それに比べたら今回はまだ生優しい、本当にただ愛する男と結ばれたいがための、他愛のない、いっそ可愛らしいとさえ言える演技だった。

 

 顔を上げたアルベドの表情は、わがままを聞いてもらえたという嬉しさと感謝が溢れる、屈託のない満面の笑みで光り輝いていた……。

 

 

◇◆◇

 

 

 アインズは、万が一に備えて八肢刀の暗殺蟲を入室させるか……っとも思ったが、いかに滅私の護衛とはいえ、こんな恥ずかしいシーンを見せるなんてゴメンだと考え直した。

 プレアデスの時も退出させていた自分を褒めてやりたい。

 もちろん、アルベドには強く釘を差した。決してあの時のように襲いかかるような真似をしない事、っと。

 アルベドもまた、自らの創造主たるタブラ・スマラグディナ様、そしてその他の至高の御方々全員に誓って、っと断言した。

 

 ──その誓いに意味が無い事に、アインズは全く気づかなかったが。──

 

 もっともアルベドも、今回は無理やり手籠めにする気は無かった。千載一遇のチャンスなのだ。

 例え精神抑制が効いたとしても、それを上回る魅力で必ず籠絡してみせる!! 

 サキュバスの名に賭けて!! という強い決意を秘めている。

 

『くふふっ、アインズ様の方から辛抱たまらん状態にしてしまえばこっちのもの……!』

 

 アンデッドが精神抑制のプロフェッショナルならば、サキュバスは誘惑のプロフェッショナル。

 そしてLVは互いにMAX100。ならば、勝負出来るはず。

 

 それにシャルティアの事を考えるならば、あらゆるアンデッドが必ず感情抑制が効き、性に興味が無いという訳では無いのは明らかだ。

 さらにアイテムによってその抑制が解かれたという事は、精神の最奥部にはちゃんと強い感情がある証明なのだ。

 いやいや、そもそも《精神抑制が働く》っという事は、『感情はちゃんと動くが種族スキルによってコントロールされている』っと言う事では無いか。

 《星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)》が効かなかった時の、そして保護を約束した人間(ツアレ)(さら)われ、それをアインズ・ウール・ゴウンへの侮辱と受け止めた時の、あの心胆を寒からしめる怒り。

 間違いなく激情は持っているのだ。ならばそれが怒りだけでなく、性欲にもあると考えるのは不思議では無いはずだ。

 

 自分はそこを突いて、サキュバスの能力によって扉を開き、陥落すれば良いのだ。

 至高の王は、決して攻略絶対不可能な難攻不落の牙城では、無い。

 

──アルベドは当然、アインズの中にある鈴木悟の残滓の存在は知らない。だが論理の帰結として、死の支配者であり、且つ、かって人間であったアインズ……モモンガの特殊な本質を見抜いたとも言える。──

 

 

『ああ、早くこの情熱をアインズ様に届けたい! 同じ熱で融け合いたい! 一つになりたい!』

 

 下腹部がジンジンと熱く火照っていくのを感じる。血が沸々と滾る。

 

 邪気を消した微笑みの裏側で無数の淫猥な妄想が溢れ出すのを、アルベドは楽しんでいた。

 

 

◇◆◇

 

 

「で、ではアルベド……、我が元に来るがよい。」

 

「はい!アインズ様!」

 

 アルベドの希望で、まずは呼ばれるところから始まった。

 嬉しげに返事をすると、駆け寄りたいのを我慢してしずしずと淑やかに近寄る。

 内心の、卵を狙う蛇にも似た、ジワリと這い寄るねっとりとした妄執はおくびにも出さない。

 

「……も、もう少し……手前だ。」

「このぐらいでしょうか。」

「うむ。」

「……。」

「あっいや、もう半歩前かな。」

「はい♪ ………………。」

「……あっ、えっと、あと……ちょっと前に。」

「はい♪」

 

 ピトッ

 

 足先が触れる。

 

「はうっ……。」

 

 ただそれだけで、アルベドの全身がブルっと震える。悔しいけれども、身も世もなく惚れているのは自分の方。

 こうやって寄り添えるだけで体内を歓喜が巡り、陶然としてくる。

 恋する乙女はうっとりとした表情で、愛しの君の顔を見上げる。

 

『ああ、本当に……なんて美しく凛々しいお方……。』

 

 この稀代の美丈夫に『予を愛せ。』っと魂に刻まれ命じられた事は、喜びでしか無い。

 例えそれがほんの気まぐれ、神の(たわむ)れによるものだったとしても、全身全霊でその命を貫こう。命じた本人がその熱に戸惑おうと。

 他のNPCがどれほど忠節を貫こうと、あるいは愛を告げようと、『愛せ。』という勅命は、自分にしか与えられていないのだから。

 

 ──だからこそいかに抵抗不能のアイテムの効果とはいえ、自分以外の女に愛を囁いたままにしてなるものか。ならば自分は、素のこの方にそれ以上の愛を囁かせてみせる。抱かせてみせる。それが、正妃の矜持というもの。──

 

 

『うーむ、この角度、ちょっとヤバイな。』アインズは内心で独りごちる。

 

 アルベドの豊満で完璧な形のバストが、最も谷間の魅力を発揮する角度だ。

 アンデッドで無ければ、どんな経験豊富な男でも一瞬で籠絡されるだろう。ましてや童貞の男など。

 

 そしてこの肉体になってほとんど無いような状態であるとはいえ、性欲が全くゼロという訳でもない。

 自然にその谷間に視線がいってしまう。それに美を愛でる感情は普通にあるのだ。……多分。

 アルベドの肉体は完璧な美の結晶体だ。こうやって改めて見つめると、それが良く分かる。

 

『こんな美女が自分に惚れまくってるとか、人間だった頃の鈴木悟が見たらそれこそ「リア充爆発しろ~っ!」だよなあ。』

 

 ドクン

 

 『ん? あ、あれ?』

 

 なんだ今の……? っと、アインズは戸惑う。

 

 無い心臓が鼓動したような感覚。

 まるでそれを見透かしたかのように、アルベドがもたれかかってきた。

 

「アインズ様……。」

 

 普段のがっつくようなあからさまな肉食系ではなく、楚々とした……それでいて内に秘めた愛情がたまらず溢れ出ているような上品な色気。

 羞恥を湛えながらも、愛する男に体重を預ける喜びに陶酔する、自分を抑えきれない、恋する乙女。

 儚げで、それでいて匂い立つような色香を発散している。

 

 アインズはその姿に思わず見とれ、極自然にアルベドの細い肩を抱いた。

 どこに戦士職レベル100の力があるのかと疑問に思うほど華奢で、アインズの骨の指が容易くめりこむほど柔らかい。

 

 肋骨に、ユリやソリュシャンとも感触が違う、たわわな胸のふくらみが当たる。

 いずれ劣らぬ甲乙つけがたい見事なバストだが、それぞれ微妙に柔らかさや形が違うようだ。

 一番柔らかいのはやはりスライムであるソリュシャン、硬めなのは……とはいえもちろん二人に比べればという事だが、首無し騎士(デュラハン)であるユリ。

 アルベドはその中間といったところか。柔らかく、しかし実に適度な弾力がある。

 

『ああそういえば俺、この胸揉んだんだよな……。』

 

 アインズはぼんやりと思い出す。人間だった頃の皮膚感覚は無いとはいえ、それでも充分に心地よい肌触りと揉み応えだった。

 

『もう一度……って、イヤイヤイヤイヤ! えっ、今俺、何を思った!? あ、あの時は、まだこの世界が現実かどうか分からなくて、ゲームの制約が働いているかどうか、それを調べるための止むを得ない行為だったじゃないか! 違う、違う、決して、決してやましい気持ちで揉んだんじゃ……!』

 

 その美女はアインズの胸元に顔を埋め、見えないようにニタリと笑みを浮かべてた。

 アインズの戸惑いを感じる。それも、決して不快では無いものだ。

 今までに無い好感触、良い反応だ。愛しの君は確かに、自分に何かを感じている。

 

『でもダメ、まだよ。まだ始まったばかり。かすかな"当たり"があっただけ。焦っちゃダメよ私……。』

 

 アルベドも成長していた。そう、確かに成長していたのだ。

 アインズに対しては、強引に押すばかりではダメなのだ……っと学んでいた。

 普通の男……性欲があり美醜の基準が同じ人間タイプならば、単純に好意をチラッと見せつけるだけで簡単に籠絡出来る。

 サキュバスの能力など使わずとも、アルベドの美貌と色香なら容易い事だ。もちろん他の男にそんな真似をする気などある訳が無いが。

 

 だがアンデッドであり、智謀知略・権謀術数の主であるアインズにはそんな単純な攻略法は効かない。

 己の手練手管すべてを駆使し、ジックリジックリと絡めとっていかなければならない。

 

 ──アルベドは、学んでいた。──

 

 "恋する清純な乙女"は再び顔を上げ、潤む瞳でアインズの眼窩の赤い光を見つめる。

 と、その目尻からツーっと涙が溢れる。

 

「あ、アルベド、なにを泣く? な、なにかまずかったか?」

「いいえアインズ様……いいえ。……ただ、嬉しくて。アインズ様が、こうやって優しく肩を抱いて下さる事が、嬉しくて。」

「……。」

「幸せ……です。こうして、私を受け入れて下さる事が。嫌われていないのだと思える事が。」

「嫌うなど……私は、お前を愛しているぞ? これまでも何度も言ってきたと思うのだが。」

「でもそれは、私だけではない、NPCすべてにあまねく行き渡る広大な愛。友人の子供達を見守るような慈愛なのですね……。」

「……。」

「分かっています。でも、でも今だけは、私のわがままを聞いてください。私自身を愛していると言って欲しいのです。女として愛していると。……ただの演技で……構いません……。」

「うっ、ぐむ……。」

 

 以前は、例えNPCすべてへの愛だとしても、自分がその中に入っているというだけで有頂天になっていた。

 いや、脳内妄想で自分への強い愛へと昇華出来ていた。 ──怖いけど──

 しかし事故とは言え、より個人的な愛をアインズが他の女に囁いてしまった事が、アルベドの基準を変えたのだろうか。

 あるいはそれを抜きにしても、なのだろうか。ならばこれはNPCの成長、変化として喜ぶべき事なのだろうか。

 

『演技でも構わない……か。』 いじらしいセリフだ。

 

 いつもように強く要求したら、自分がまた引いてしまう。だからこその怯えを表したセリフだとしたら、切なすぎる。

 

 アルベドの設定を書き換えた罪悪感は、こういう折りに触れアインズを苛む。

 本人がそれで構わないと言っても、結局の所その設定に縛られているからこそ、そう思っているだけだろう。

 ならそうしてしまった張本人が、いつまでもただお茶を濁してばかりで良いものだろうか。

 少しは答えてやるのが義務なのではないか。責任……なのではないか。

 義務や責任という言葉もまた、ズルい誤魔化しであるかもしれないが。

 

『そうだよな……せめて……今だけでも。』

 

 アインズは、自分を愛するように命じた女に腕を回し、ギュッと抱きしめた。

 信じられないほど柔らかく、そして温かかった。

 

 アルベドの口から「はああ~っ……。」っという吐息が漏れる。

 

『苦しい……訳じゃないよな。いくら俺だって、それぐらいは分かる。』

 

 いきなり、アルベドの方から強く抱き返してくるかと多少身構えたが、彼女は完全にアインズに身を任せ、ただしなだれかかってくる。

 少し持ち上げるようにしないと、そのままズルズルと腰を落として膝をついてしまうかと感じるほどに力が抜けている。

 

『……あ、これ……気持ち……いい。』 アインズは思わず、抱きしめる力を強めた。

 ソリュシャンのように身体の中にズブズブと腕が入っていく訳ではないが、そう錯覚するほどアルベドの肌は柔らかい。

 まるで温かいジェルの入った、心地良い肌触りの抱枕を抱きしめているような感覚。これほどまでに抱き心地が良いとは。

 じんわりと、その温もりが自分の骨の体に染み渡ってくるような心持ちがする。

 まるで、アルベドの体が自身の肉となるような。

 

「アルベド……。」

 

 アインズは全く無意識に、彼女の耳元でその名を囁いた。

 

「……!!」

 

 今までも、あやすように優しく抱き締められた事ならある。だがそこに女への欲情は無かった。

 初めてだ。アルベドは、今初めてアインズの行為に、確かに……自分が求めてやまない感情が込められているのを感じた。

 そして優しく囁かれた自分の名。

 

『ああっ! ああっ! あああああああっ!アインズ様ああああああああっ!!』

 

 歓喜の絶頂が全身を貫く。

 

 ── 今すぐ押し倒したい! しゃぶりつきたい! むさぼりたい! ──

 

 凄まじい欲望がアルベドの体内を駆け巡る。今にも沸点を超え、激情が暴発しそうになる。

 だがアルベドは、完璧に隠し通してみせた。快楽の波を、なんとか(しの)いでみせた。

 少し力を入れたら折れそうなほど儚げで、傷つきやすく、愛に怯える女を演じてみせた。

 欲情の暴走を抑えるための震えを、ただ純粋な喜びに震える乙女の姿に変えてみせた。

 

『だめっ! まだだ……気持ちいっ! 食べ……ダメ! 我慢……ああっアインズ様アインズ様…………モモンガ様あああっ!!』

 

 口の中に泉のようにヨダレが湧き出してくるのを、何度も、音を出さないよう気をつけながら飲み込む。

 アインズを逃さないためフルパワーで抱きしめたいのを必死で我慢し、脱力する。

 すべては愛しの君の心を捕らえるため……!

 

 その心理はまさしく、無垢な妖精の皮を被って獲物に(にじ)り寄る飢えたプレデターである。

 アインズは、そんなアルベドの心境に気づいていなかった。

 

『アルベド……こんなにも弱々しげな存在だったのか?』

 

 これまでの激情が幻だったとかと思えるほどに儚げで、少し乱暴に扱えば壊れそうなほど華奢で。

 こんな美しい存在が、設定の効果とはいえ自分を熱愛している……不思議な感覚だ。

 アインズは恥ずかしいという感情も意識せず、ごく自然に囁く。

 

「愛してるぞ、アルベド……。」

 

『うわっうわっうわあああああああああああああああああああっ!!!』

 

 ──ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!──

 

『でもまだ、まだよ! まだ!』

 

「それ……は……主として……創造主としての……あまねく慈愛なのでしょうか……。」

「……いや、違う……な。アルベド。お前は……美しい。そう、これは……一人の女への、愛だ。」

 

『くぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!』

 

 アインズの視線に入らない角度のアルベドの眼が、くわっ!! っと真円に近いほど見開かれ、金色の虹彩が光を放つ。

 だがここで判断を誤ってはいけない。アルベドは暴走寸前の肉欲をあらん限りの理性で抑え、演技を続行する。

 

 首を回し眼窩の赤い光と目線が合った時、その眼は目尻に真珠のような喜びの涙を湛えた、トロンとした陶酔の眼差しに変わっていた。

 

「アインズ……様……。」

「アルベド……。」

 

 アインズはアルベドの瞳を見つめながら、ぼんやりと考えていた。

『ああ……そういえば、プレアデス達には色々と……歯の浮くセリフを言ったんだよな……。』

 しかし今それを思い出しても、不思議とあの強烈な羞恥心が湧いてこない。

 それよりも、アルベドに対しどんな賛辞の言葉を送るべきか、それに迷う。

 すけこまし状態では無い自分に、どんなセリフが思いつくと言うのか。

『……ただ素直に、今の気持ちを伝えるべきなのかな。』

 

 そう決心し、言葉を探しながら静かに話しかける。

 

「……アルベドよ、私は無粋な男だ。アイテムの力でも無ければ、気の利いた口説き文句の一つも言えん。」

 

 アルベドは愛しい主がゆっくりとした口調で自分に語りかける言葉に、じっと耳を傾ける。

 

「だが……そうだな、お前には深い感謝と信頼を。お前がいてくれる事で私がどれだけ助かっているか、恐らくお前自身想像つくまい。ああ、NPCなら尽くすのが当然などと、今はそういう事を言わないでくれ。」

 

 口を挟もうとしたアルベドの唇を人差し指で抑える。同じ事をナーベラルにもしたが、アイテムの作用無しにそんなキザな行為を自然に出来た事にアインズ自身内心軽く驚く。

 ──アルベドは賛辞への喜びに震えながら、その人差し指にむしゃぶりつきたい欲望に必死に耐えていたが。

 

「……宝物殿で泣き縋ったお前は、お前達にとっての私がそうであるように、私にとってお前達がどれほど大きな存在になっているか自覚させてくれた。それが、まだ私に燻っていた迷いを本物の覚悟に変えてくれたのだ。そして戦いを終えシャルティアが復活したあの時、お前は守護者達の中に私を誘ってくれたな。……私にとって、あの手がどれほどの救いであったか。そう……お前は私を救ってくれたのだ。」

 

「アイ…ンズさ……ま……。」

 

『くううううぅう~! くふっ、くふうううううう~! 私が! わ・た・し・が!! あ、アインズ様をおおお~っ!? あふぅ~っ!』

 

 ビショビショだった。何がって、ナニが。

 

「……アルベドよ、だから私は……ああ、どう、……言えば良いのだろうな。私はお前の事を……。」

 

 アルベドは言い淀むアインズの首にスッと両手を回し、目を閉じた。(本当は薄っすら開けていたが。)

 あまりに自然な動きに、アインズもまた拒絶せず、アルベドの腰に手を回す事で答えた。

 

 着飾った骸骨とサキュバスが抱き合うその姿は、もしも人間が目撃したならば例えようもなく奇怪に見え、そして例えようもなく美しいと感じただろう。

 まさに魔界の王と王妃の姿そのものだった。サキュバスの内面を覗きさえしなければ。

 

「アインズ様……。」

 

「アルベド……。」

 

 二人の顔が、唇とむき出しの歯が、自然に近づいていく。

 

 

 ──いける!!!!!──

 

 

『ああっ!! ああっ!! ついに! ついにこの時があああああっ!!』

 

 アイテムの作用ですけこまし状態になった時さえ、プレアデスの誰とも口づけを交わさなかったのは調べがついている。

 まして素の状態の主から接吻を賜れば、もはや正門をこじ開けたのと同義!

 

『うまくいけばこのまま、このまま……っ! ああ、私はついに、愛する方の手で花を散らされるのねっ!!』

 

 もう愛しの御方の匂いを求めてシーツをクンカクンカする事も、自分で自分を慰める必要もなくなる!

 いや、それはそれで別腹だけど!!

 

 真珠のような真っ白な歯が近づく。あと5センチ、あと3センチ、あと1センチ、あと5ミリ……。

 

「アルベド……愛し……て……」

 

『アインズ様! アインズ様!! アインズ様~~~!!! あ゛っ、だ、だめ、いっ、いっ、い……!!』

 

 

 

 ……様っ! お止めを! アインズ様はただいまアルベド様と内密の……!

 

 

 

 

 突然ドアの向こうから、フォアイルの焦った声が響いた。

 同時に、ぐはっ!がっ!っという八肢刀の暗殺蟲の呻き声。

 アインズは瞬時に現実に引き戻され、顔を上げてドアの方を見る。

 

『なんだ!? まさか、ありえん、ここに《敵》!? いや……!?』

 

 途端、ドゴーンっという爆音と共にドアが破られた。

 

「あ゛ひんずざばああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

『ええーーーーーっ!?』 思わずパカっと骸骨の口を開けてしまう、ナザリックの支配者。

 

 

 

──そこには髪を振り乱し、顔をグチャグチャに歪め、胸の形がズレた真祖吸血鬼(トゥルー・ヴァンパイア)が立っていた。──

 

 

 

 


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