・オリジナル設定有り
・オリジナルキャラ有り
・原作との矛盾有り
・(重要)作者準拠の頭脳を持つ守護者達とアインズ様
以上を留意して読んで頂けますと無駄な心労を減らせたり精神の健康に良かったりするかもしれません
序章:急転直下の支配者
広大な宝物殿に足音が響いた。堂々と歩いていたのはナザリック大墳墓の主にして魔導王アインズ・ウール・ゴウンその人だった。宝物殿のとある一角まで来るとアインズはさてこの辺りだっただろうかとキョロキョロと周辺を見渡した。
「父上!探し物は見付かりましたか?私が代わりにお探し致しましょうか!?」
後方より宝物殿の守護者であるパンドラズアクターの声が聞こえてきたが、アインズは軽く手を振り否定した。特に何か探しているわけではない。ただ、ときおりアインズを襲ういかんともしがたい郷愁の念がここまで足を運ばせるのだった。クラン結成当時からギルドを立ち上げ、そして…。
アインズは飽きる事なく宝物殿の棚をゆっくりと愛おしそうに眺めた。宝物殿に収めてあるアイテムや武具の数々は特に入手した順やアイウエオ順といった法則で並べられているわけではない。しかし全体として見るとやはり宝物殿に収めた時期が同じだった頃の物は固まって置いてあった。
「懐かしいな。これは確か“原初のへその緒”だったっけ…一時期縛りプレイにみんなハマっていたよなあ。無駄に辛いんだよなあ使うと。ああ“昔逆の鏡”と合わせて使ったマゾプレイ楽しかったな」
「思い出の品でありますか?」
「ちょっとしたお遊びだ。上からじゃ見えない景色を見せてくれるからなこれは」
その一角はまさにギルド全盛期に集めたガラクタが所狭しと置いてあった。
初期職縛りで高難度ダンジョン攻略するイベント。低ステータス低レベル武器しか装備できないワールド攻略。その為に必須のイベントアイテムやそこのクリア報酬等。
アインズはそのうちの一つを手に取り、そういえばこれ、イベント期間の間しか効力を発揮しなかったけどこちらの世界でどうなんだろうとアインズが考えていた。まあどちらにせよこの宝物殿では一部を除くマジックアイテムの効果は打ち消されるようになっているはずだ。グネグネとしたそのアイテムにはもはや力は何も残っていないように見えた。アインズはしばらくそれを手で弄び、ギュッと握ったあと、また棚へと戻した。
「そういえばぶくぶく茶釜さんがこの感触気持ち良いって言ってたなあ」
それをにやにやしながら見ていたペロロンチーノの顔が鮮明に浮かんだ。
しかしその幸せな回想もすぐに抑えられ、残るのは虚しさだけだった。
「はあ…何やってんだろ」
溜息を付いたアインズの独り言を消すようにメッセージの着信を知らせる音が響いた
「アルベドか。どうした…なるほど。すぐに向かおう」
アルベドからのメッセージを聞き、アインズは思案した
アルベドは“ナザリック及びエ・ランテルにおける防衛網とその再編”だっけ?の打ち合わせをしたいと言っていたな。正直勝手にやってくれていいと思うのだがそういう訳にはいかないか。アルベドをはじめとしてナザリック及び魔導国に所属するものは皆自分に為政者として絶対者としての振る舞いを求めている。それはアインズにとって重圧であり、ある種のストレスでもあった。
「昔のように気兼ねなく過ごせたらなあ…まあ無理だけど」
「私もご一緒致しましょうか!?」
「良い。データクリスタルを磨いている最中邪魔して悪かったな」
「何を仰います!父上の為ならばいくらでもこの身を裂きましょう!」
「…ほんとそのオーバーリアクションやめて…」
恥ずかしい気持ちを振り払うようにアインズは足早にその一角を立ち去った。
「父上…おや?」
しかしアインズと気付かなかった。彼が触れたアイテムとその横にある鏡が微かに光っている事に。
アインズが違和感に気付いたのは宝物殿を出てエ・ランテルの館の前へと転移してすぐだった。どうにも体が重い。その上、著しく魔力が減っていくのが分かった。
「なんだ?バステか?いやアンデットに効くバステなんてかけられた覚えはないぞ」
どんどんと重くなっていく体。そして魔力が枯渇していく。
アンデットは種族特性と取得したスキルでほとんどの状態異常を無効にできる。
これを突破できるのはそれこそワールドアイテムかワールドエネミーぐらいだ。
「馬鹿な…!まさかワールドアイテムか!?」
危機的な状況に声を上げるアインズの姿に気付いたのか館の中で待っていたであろうアルベドが飛び出てきた。
「!?」
あまりに体が重く、最早立っていられず地に膝がつき手で支えながらアインズは必死で顔を上げ、アルベドへと警戒を呼びかけようと口を開いた
「アルベド!ワール…」
しかし全てを言い切る前にアインズは地面に倒れてしまった。意識が朦朧として駆け寄るアルベドの怒声だけが頭に響いた
「貴様!…アイン…ど…!?」
途切れ途切れに聞こえるアルベドの声に答えようとするも、保っていた意識が暗転。
それはアインズにとってはこの世界に来てはじめての経験だった。
一体どれほど意識を失っていたのだろうか?一瞬のように思えるし、随分と長い事眠っていたように思えた。アインズはそんな意識を隅においやり、現状を把握しようと辺りを見渡した。薄暗く、周りには骨やら死体やらが積み上げられ、山となっていた。
「ここは…」
アインズにとって見覚えのある景色。
「ここはエ・ランテルの共同墓地か」
かつてズーラーノーンと戦闘した場所だ。戦闘というにはいささか一方的過ぎたが。そうしてようやくアインズは目の前に何者かが立っていることに気付いた。
「よお新人。アンデッドの天国へようこそ。いやむしろ地獄か?まあどっちでもかまわないが、良いタイミングで生まれてきたな」
目の前に立っていたのは細身の身体にメス状の爪、顔には笑顔を象ったマスクを被ったゾンビだった。
それはアインズが良く知るアンデッド。
「ジャック・ザ・リッパーか!?アルベドは?エ・ランテルは攻撃されているのか!?」
勢い良く捲くし立てるアインズにジャック・ザ・リッパーは呆れた口調で返した。
「おいおい自我持ちかよ珍しいな。というか俺しかいないから良いが、間違ってもアルベド様をはじめとした守護者達を呼び捨てにするなよ?ソッコウ不敬罪で消滅させられるぜ?」
その口調といい、態度といいどう見ても目の前の存在は自分の配下であるはずだが、全く敬うような気配がなかった。アインズにとってそれは久々の感覚だった。そうまるで初めてモモンとなり冒険者を始めた時のようだった
「ジャック・ザ・リッパー、状況を説明しろ」
説明を促そうと手をジャック・ザ・リッパーへと向けた刹那。
「落ち着け新人」
アインズの顔はメス状の爪で掴まれ、さらにその細腕の腕力だけで地面より持ち上げられていた。
「良いかスケルトンメイジ。何を勘違いしているか知らねえが、実力差ってのを加味した上で言葉を選べよ?」
ギリギリと爪の圧力をかけていくジャック・ザ・リッパー。アインズは驚くほか無かった。アンデッド最上位のオーバーロードである自分をたかが中位アンデッドであるジャック・ザ・リッパーが圧倒している?
ありえない。しかし実際にそれが起こっているのだ。
「私がスケルトンメイジだと?馬鹿な」
ジャック・ザ・リッパーは掴んでいたアインズを離した。そのまま地面へと落ちアインズは尻餅をついた。
「どこからどうみてもスケルトンメイジだろお前。…ああもしかしてあれか、たまにいる前世の記憶持ちって奴か?だったら早くそんなの忘れることだな」
スケルトンメイジ。それはアインズがユグドラシルで一番最初についた職。そしてようやくアインズは自分がぼろぼろのローブだけを着て、ワールドアイテムどころか普段装備していた指輪すらないことに気付いた。
「まさか…」
イベント期間限定アイテム“原初のへその緒”。原初の獣というボスを倒すと手に入るイベントアイテム。使用すると使用者を強制的に“初期職のステータス及びそれに順ずるスキル魔法構成にする”という効果を持つ。解りやすく言えばレベルシンクでデメリットしかないのだが、これを使わないと入れないダンジョンがあり、上級者ほどクリアが難しいと、その当時阿鼻叫喚がトップ勢からあげられていた。さらに、“昔逆の鏡”というアイテムを併用することで、見た目、装備、アイテムまで制限でき、一部のマゾプレイヤーに好んで使われていたというアイテムだった。その性質状、準備を整えられるように効果が現れるまで若干タイムラグがあり使用者のみに効果を発揮。それはあらゆる耐性を抜ける。
「まさか効果が発動したのか」
宝物殿での一幕を思い出す。あの姉弟がこのアイテムについて喧嘩していたことを。
「しまった…安易に触れるのではなかった」
かくして。結果として。事実として。アインズは。
ただのスケルトンメイジとなり、装備もアイテムもない状態になったのであった。