骸骨魔法師は無慈悲な支配者   作:エギュベル

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第4章:一点突破の剣

 

 

 

 

 吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)

 善悪反転(リバース・カルマ)によって極悪のカルマ値補正の乗った神聖魔法に支援魔法。魔力値と筋力値の入れ替えスキル魔力置換(マジック・エクスチェンジ)による戦士職顔負けの近接戦闘。攻守隙のない上位アンデッドだがもちろん対策はある。しかし、()()()()()()()()()はほぼ対策のしようがないチートモンスターと化していた。

 

「有効打があるとすれば炎、神聖属性魔法か近接戦闘による突破、か。…厳しすぎるぞ!」

 

 アインは転がるように吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の逆十字を避ける。これ以上まともに食らってしまえば、先ほどのジャックのように明らかにHPが危険域に入り、行動不能になるだろう。回復手段がない以上はそうなればもう死を待つしかない。

 

「そうね。炎もしくは神聖属性魔法を撃てて、なおかつ近接戦闘をこなせれば可能かもしれない。試してみれば?」

 

 アンデッドに共通する弱点はいくつかあるが、最も一般的なものは炎属性か神聖属性による攻撃だろう。そして特にこれらの弱点をアイテム装備魔法などの追加効果で全て無効化するのは不可能であり、例えば炎属性攻撃を火属性防御(プロテクションエナジー・ファイヤー)で軽減すれば、神聖属性魔法に対しての耐性は上げられない。

 

「アンデッドしかいないこの墓地において憂うべきは低位アンデッド、そうあなたのようなスケルトンメイジでも撃てる炎属性攻撃のみ」

 

 だから。そう続けてバックステップし距離を置いた吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)は魔法を発動。

 

魔力増幅(ブーステッド・マジック)火属性防御(プロテクションエナジー・ファイヤー)魔力増幅(ブーステッド・マジック)鎧強化(リインフォース・アーマー)

 

 赤と緑の膜が何重にも吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)を覆い、もはやアインの最高火力の火球(ファイヤー・ボール)をもってしてもダメージは微々たるものしか与えられないだろう。

 

「全く。私のような雑魚相手に随分な念の入りようだな」

 

 動きに慣れさえすれば、なんとか凌げる逆十字による攻撃の隙に火球(ファイヤー・ボール)を撃つという作戦を却下しアインは再び剣を構えた。

 

「残念ながら私はロールプレイを重視していてね。死霊系魔法しか取っていなかったんだよ。神聖属性魔法なんて一つも撃てはしない」

 

 アインは魔法を警戒しつつそう説明しながら、吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)へと接近、一番出の早い突きを繰り出す。

 

「だから破れかぶれの突撃?意味のないことを」

 

 あっさり弾かれたアインの剣。剣が上へと打ち払われて、空いた腹部へと強烈な蹴りを叩きこまれた。

 

「くっ!」

 

 強烈な筋力から繰り出せる蹴りはそれだけでアインに十分なダメージを与えたが、神聖属性ではない為アインは耐え、体勢を崩さずそのまま後退。

 

魔力増幅(ブーステッド・マジック)魔法の矢(マジック・アロー)!」

 

 アインは剣先からまばゆい光の矢を三本放った。魔力増幅した矢が音速で吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)へと飛来する。

 

「無属性なら効くとでも思った?魔法障壁(マジック・ウォール)

 

 しかし矢が当たる直前に緑色の膜が吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)を覆い、矢のダメージを軽減。だがそれを見越してアインは再び突撃。右上段から袈裟斬りを放つ。やはり届かず逆十字に塞がれてしまった。そのまま吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)は逆十字を押し出し、アインが体勢を崩したところへと薙ぎ払う。

 

火球(ファイヤー・ボール)!」

 

 アインは無理やり剣を前に出し、火球を放つ。威力よりも範囲重視の火球を放った。至近距離での爆破に、アインと吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)が吹き飛ばされた。

 

「勝てないと分かっての自殺行為!?」

 

 逆十字を地面に立て、後ろへと吹き飛ぶを防いだ吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)。赤い膜によりダメージは防げたものの衝撃は殺しきれず、余波で靡く髪と巻き起こった粉塵により視界が狭まった。大きく後ろへと吹き飛ばされたアインはごろごろと転がりながら緊急回避の成功に喜ぶものの、払った代償(HP)が大きかった事を痛感した。

 

「十字架に殴られるよりはマシとはいえ、これはキツイな…」

 

 体中が悲鳴を上げており、ギシギシと骨が軋む音を立てていた。しかしのんびり思考している暇はなかった。

 

魔法混成化(コンバイン・マジック)炎の雨よ(ファイヤー・レイン)聖なる光よ(ホーリー・レイ)

 

「くそ!」

 

 嫌な予感がし、アインはすぐに立ち上がると迷わず、突撃。今から後方に逃げたところで魔法の範囲外にはとてもじゃないが逃げられない。朗々と詠う吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の魔法が完成し、発動。例え視界が遮られて狙いを付けられなくても構わなかった。

 

「降り注げ聖なる光雨(ホーリー・レイン)

 

 辺り一帯に光の束が雨となり、振り注いだ。それはあまりにも荘厳でそして静かな攻撃。回避不可能、広範囲殲滅型神聖属性魔法。光の雨の一つ一つのダメージはそれほどではないが、あまりの広さとそして効果時間の長さは留まる事は死を意味していた。

 

「はああああ!」

 

 多少のダメージは覚悟でアインは剣を掲げ、吶喊。この魔法の効果時間の長さ。それはつまり()()()()()()()()()()()も長いという事。そう、今ならば、吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)魔力置換(マジック・エクスチェンジ)を行えない。そしておそらく()()()()のはずだ。

 

 剣によっていくらか直撃を防ぐも光の雨によるダメージでよろめきつつ、アインは剣を上段から振り下げた。まさか突っ込んでくるとは思わなかった吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の驚きの表情。しかしそれはすぐに獰猛な笑みへと変わった。

 

「そういうの嫌いじゃない!」

 

 吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)聖なる光雨(ホーリー・レイン)を強制終了させ、すぐさま魔力置換(マジック・エクスチェンジ)を発動。アインの上段からの斬撃に対応するように逆十字を動かそうとするも、手が追いつかない。

 

「…!?」

 

 アインの斬撃を受け止めきれず、右腕に裂傷。そのまま剣を返し追撃するアインに危機感を感じ、後ろへと退避。

 

 

「どうした?遠距離も支援も近接戦闘も得意なのだろう?なぜ剣を持ったたかだかスケルトンメイジから退く?」

「なぜ魔力置換(マジック・エクスチェンジ)が発動しない!?」

 

 アインの体の各部から浄化による煙が上がっており、かなり危険な状態になっていた。しかし、アインはもはや勝利を確信した。

 

「アクティブスキルというものは回数制でね。そう何度も魔力置換(マジック・エクスチェンジ)使っていてはいずれ使用回数は底をつく」

「…まさかそれでわざと」

「ああ。わざと勝ち目のない近接戦闘と無意味な後退を繰り返し、誘ったのだよ。魔力と筋力の入れ替えと聞くとととても便利なスキルのように聞こえるが、魔法を使うたびに、近接戦闘を行うたびにスキルを使う必要がある。…最初から近接戦闘だけ、もしくは魔法だけで戦うべきだったな。強いアピールをするのは良いがそれで自分の首を絞めるのは傍から見ていると滑稽極まりないな」

「…それで?確かにもう先ほどのよう近接戦闘は出来ないわ。でもそれだけ。負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)

 

 吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の逆十字からどす黒いエネルギーが溢れ、吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)自身へと注がれた。右腕の傷がみるみる塞がっていった。

 

「炎と物理攻撃に耐性を魔法で得たあたしをその剣だけで削りきれるかしら?」

「確かに難しいな。そうだな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()話は別だが」

 

 アインは手の内の剣をためつすがめつ、刃に走る赤い回路が発光している事を確かめた。

 

「さて実践といこうか」

聖なる奔流(セイクリッド・バースト)!」

 

 吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の逆十字に再び極光が収束し、放たれるもアインは既にそれを予測し、動いた。相手が魔法しか使わないとなれば、アインにとって動きを予測する事は容易い。

「これでも魔法職は一時期極めていてね。予備動作から発動時間、挙動、はほぼ頭には入っている」

 

 さきほどのような不意打ちや距離が離れているならともかく、来ると分かっていれば、範囲魔法でなければ避けるのは容易い。アインは素早く吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の懐に飛び込むと剣を差し込むように突き刺した。

 

「来ると分かっていれば怖くないのはこっちも同じよ!」

 

 吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)聖なる奔流(セイクリッド・バースト)を発動したまま強引に逆十字を懐のアインへと打ち付けた。筋力は元の値のままの為、そこまでのダメージは出ないが、それでもスケルトン系が弱点とする殴打、神聖属性の攻撃だ。

 

「ぐうううう」

 

 アインに致命的でないにせよダメージが入る。吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)は左手を離すと自分の腹部へと刺さったアインの剣を握って固定した。このまま殴り合えばいずれ自分が勝つ。そう確信して吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)は逆十字を振り上げた。

 

「ちっ!」

「死ね!」

 

 そのまま逆十字をアインの左腕へと打ち付けた。その衝撃でアインの左腕は折れ、アインは無理やり刺さった剣を右手だけで抜いた。

 

「うおおおお!」

 

 アインはそう叫び右手だけで大上段からの袈裟切り、先ほどの一撃でバランスを崩しつつも今度は振り上げるように払う吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の逆十字が体へとめり込むのも構わず全力で左肩へと叩きこむ。

 

聖騎士の槍(ホーリー・ランス)!」

 

 同時にアインは持っている剣同族殺しの封剣(メイジ・マッシャー)の効果を発動。剣から()()()()の槍が放たれ、吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)を貫通する。

 

「そんな…!なぜスケルトンメイジが神聖属性魔法を…」

 

左半身を消滅させ、倒れた吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)の口から怨嗟の声が漏れた。アインの剣は煙をあげ、刃の赤い回路が消え、元の鋼色へと戻った。

 

「言っただろ?私は神聖属性魔法なぞ一切使えないと。ならば使用する奴から奪えばいいだけの話だ。いや、思ったよりも上手くいったようだ。なんせ試作品だからな、発動しないかもしれないとドキドキしていたよ」

 

 アインの作成した同族殺しの封剣(メイジ・マッシャー)はユグドラシルの時は単に斬った相手を一時魔法使用不能状態にするという物だった。しかしレジストされやすい上に純粋な魔法職でしか装備できなくさらに必要ステータスを満たすのが難しい為不人気だった武器。しかしアインはこの共同墓地で以前戦った女戦士が使っていた武器に大いに興味を示し、似たような物を作れないか試行錯誤していたのだ。実際試作品は出来上がったのだが、それでは満足いかなかった。ただ武器に魔法を封印するのではなく、相手の使う魔法を武器に封印できてそれを発動出来ればもっとかっこいいのに。そんな発想で作ったのがこの同族殺しの封剣(メイジ・マッシャー)。見た目は同じだが、効果は元の武器とは比較にならない。

 

「相手の発動した魔法を吸収、封印。それを任意に斬った相手に発動。残念ながら封印する際は完全に吸収できず、ダメージは受けてしまうようだ。封印、発動自体は完璧だがまだまだ改良の余地がありそうだ」

「あたしの魔法を最初、剣で受けたのはその為…」

「ああ、一目見て吊十字の聖女(ハングドクロス・マリア)、いや吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)だったな、つまり神聖属性魔法の使い手だと分かったからな。神聖属性魔法を封印しておけばいざという時に切り札になると思っていたのだが…こんなに早く使うとは」

 

 ふううと息をつき、アインは地面へと座り込んだ。アンデッドの特性上疲れはないのだが、精神的に疲れた。いやなんで初っ端からこんなぎりぎりな戦いをしているんだ?先が思いやられる…。勝ったとは言え、回復手段がない以上、ジャックも自分もしばらくはここからは動けない。

 

「それではなぜ、止めをささない」

「言ったはずだ。力はある程度の事は解決できるが、それだけだ。私は力や武力だけで全てを支配できる等と驕ってはいないのだよ吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)

「そう…でも強くなりたいのでしょ?だったらさっさとあたしを殺して強くなればいい。」

「それも手だが、これで懲りたよ。手札が揃わないうちに勝負に出るのはやはり自殺行為だ。ジャックは敏捷性、反応に長けるが、火力と耐久力に難があり、私なんてただのスケルトンメイジだ。出来れば支援魔法と回復魔法、それとこの共同墓地の上位者全てにおそらく有効であろう神聖属性魔法を使えて近接戦闘もこなせる仲間が欲しいな」

 

 おお!ポンとわざとらしく手を打つアイン。

 

「なぜか目の前に仲間にして欲しそうに見つめている吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)がいるではないか!」

「そんな目で見てない!」

 

 睨みつける吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)先ほどとはうって変わり、少女のような顔を浮かべていた。

 

「さて、ではどうしようか。私に仲間と共に挑んできたお前には何か目的があるのだろう?それをこんなところで諦めるのか?」

「あいつは仲間なんかじゃない…」

「そうか?あの屍収集家(コープス・コレクター)がなぜか我々を庇った時にお前が撃った聖なる奔流(セイクリッド・バースト)、あのまま撃ち続けていれば貫通して私やジャックは消滅していただろう。しかしお前は()()()()()()()。なぜか?答えるまでもないだろう?」

「…」

「レクタと呼んでいたな。早く助けなくていいのか?可愛いお嬢さんにフラれたスケルトンメイジが()()()()火球(ファイヤー・ボール)を撃ってしまうかもしれないぞ?」

 

 アインは手を屍収集家(コープス・コレクター)に向けた。

 

「待って!」

「待とう」

 

 アインは手を戻すと今度は吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)へと手を差し伸べた

 

「私と共に来い吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)。ここを出ればそれに相応しい地位を与える事を約束しよう」

「約束して…レクタは連れていかないと。あの子ひどい傷で倒れていたから気まぐれで助けたの。そしたらなぜか私に懐いて付いてきただけ。本当は戦いなんて望んでいないの」

 

 ただ、単純に面白そうだったから。そして自分の力を試したかった。まだ生まれたばかりの吊十字の黒女(ハングドクロス・ダリア)はただそれだけの理由でアイン達へと挑んだ。その意志を受けて、屍収集家(コープス・コレクター)が勝手に勝負を仕掛けたという。

 

「ふむ…あの耐久力は良い戦力になるのだが…致し方あるまい。良いだろう。ただしここで回復してしまうときっとお前にまた付いていくだろう。だからこのまま置いていく。それでいいな?」

「ええ。それで結構よ。私はダリア。負けたからにはあなたに従うわ」

「私はアインズ…様を尊敬するアインだ」

「そう。よろしくねアイン。回復するから逆十字取ってくれる?」

「ああ、ちょっと待ってろ…って重っ。え、こんなの振り回してんの?」

 

 アインは立ち上がり、ダリアのすぐ傍に落ちていた逆十字をなんとか持ちあげると、引きずってダリアの右手へと持たせた。

 

負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)

 

 負のエネルギーがアインを包みこむ。折れた左腕も元通りになり、HPも回復した。

 

「便利だよな…それ」

 

 続けて自分へと発動させるダリア。吹っ飛んだ左半身が元通りになり、ダリアは立ち上がった。そして逆十字を振り上げた

 

「裏切らないとは言ってないから!」

 

 ダリアは邪悪な笑顔のままアインへと逆十字を振り下ろした。しかしアインは微動だにしなかった。アインに当たる直前。ダリアは逆十字を横へと逸らせた。アインのすぐ横へと落ちた逆十字の衝撃で土が舞う。

 

「…反応すらしないなんて。試していたのがバレバレ?」

「…児戯はそれぐらいにしておくんだな」

 

 ちぇっと舌を出したダリアは見た目よりも幼く、しかし相応に思えた。

 

「じゃあジャック?だっけあのぶっ飛ばしたの回復してくる」

 

 そういうとダリアはくるりと回ってジャックの倒れている方へと向かった。

 

「…」

 

 いやいやいや、完全に油断していましたよ。あんなの反応出来る訳ないじゃん。内心冷や汗が滝のように流れたアインだった。向こうで黒いエネルギーが放たれているのを見るとちゃんとジャックを回復してくれているようだ。

 

「お前は!アイン!?まさかやられたのか!?」

「あーえっと落ち着いて。もう終わったから」

「終わった?まさかアインを殺したのか!?貴様!」

 

 爪を構えるジャックにどうしようかと迷うダリア。さてこのまま見ておくのも面白いかもしれないが…

 

「いやだからもう敵じゃないから」

「敵にならない程の弱さだったと?殺すのみならず侮辱するとは許さんぞ!」

「…もっかい殴っていいアイン?」

 

 呆れたダリアがこちらに視線を向けた。仕方なく、歩み寄るアイン。

 

「いやMPの無駄使いはやめておけ。もしかしたらまたすぐ襲われるかもしれん」

「アイン!無事か!…あれ?」

 

 ようやくアインの存在に気付いたジャックだったが、状況が把握できず混乱しているようだ。

 

「ジャック、新たな仲間のダリアだ」

「昨日の敵は今日の友って言うしね。私ダリアよろしくね」

「仲間…いやさっきまで戦っていて…どういうことだアイン!」

 

 

 こうしてアインはジャックに現状を把握させるのにしばらくの時間を取られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんねレクタ。あたし行くから。一人でもこの辺りにいればあなたを殺せる奴なんていないから大人しくしているんだよ」

 

倒れている屍収集家(コープス・コレクター)に手を乗せ、ダリアはそう呟くと魔法を掛けた。

 

「これでよしと」

 

 そしてダリアは立ち上がり新たな仲間であるアインとジャックの下へと歩み去った。

 

 

「さて行くか“竜の墓場”」

「アイン、やっぱりこいつ信用できねえから置いていこうぜ」

「うるさいよ無能君。そういうことはまともに戦ってから言えば?」

「腹掻っ捌いてやろうか」

「やれるものならどうぞ、変質者」

「…やれやれ」

 

 賑やかになった一行は目的地である“竜の墓場”へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイン達より遠く離れた墓地。戦闘馬車(チャリオット)が止まっており、その持ち主は地面に降り、とある人物へと膝を折り頭を垂れていた。

 

「…それで、カルタ。そのスケルトンメイジが要監視対象だと?」

「はっ!スケルトンメイジにあるまじき戦闘能力。さらに常に戦場を俯瞰する余裕を持ち、圧倒的カリスマで仲間も増やしております」

「なるほど。それで、君は個人的にどう思う?」

「間違いなくそうかと」

「…まだ時期尚早な気がするんだけどね。でもあれも動いているのでしょ?」

「はい。恐れていた事態になりつつあります」

「まだ()()の出る幕じゃなさそうだけど」

「どう致しましょうか」

呪骨の戦車兵(アガルタ・チャリオット)よ、命じます。監視を引き続き行い、万が一は動きなさい」

「よろしいのですか?」

「もちろん。その際は…」

 

 呪骨の戦車兵(アガルタ・チャリオット)は顔を上げ、自らの主人を見つめその言葉の続きを欲した。それは雁字搦めに縛られた鎖を解く言葉。

 

「その際は…ナザリックが威を示しなさい」

 

 

 

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