「……さて、この部屋じゃ」
「……」
同じような廊下を歩き同じようなドアの前に立つ
何か物がないと迷いそうなくらい白くて清潔でそして同じ風景しかない家だ、いやこれは屋敷というべきか
「……おーい、アミちゃん」
とドアをノックする
「……あの、俺の時はノックしてませんよね」
「そりゃ女の子の部屋に入るのと男の部屋に入るのとではのう」
「そーですか」
その辺を気にするタイプだ
まあどうでもいいと思うしかない
「おや?入るよ?」
ドアがかちゃりと音を立て開く
白を基調にした部屋にベッドと机と椅子
ほとんど変わらない部屋だ
ベッドには確かにアミが寝ていた
しかし目覚める様子はない
「ふむ、起きてくれるまで話をしようか、気になることは山のようにあるんじゃないか?」
「……まあ確かに」
「とりあえずだ、まずこの世界の死の概念は寿命しかない、だから簡単に死刑なんて執行される、君たちの世界でいう死刑に当たるのは永久死刑、首吊りをして死んだ後その輪っかにもう一度生き返りずっと死ぬを繰り返すんだ」
「……想像もしたくない」
「そして次、終身刑に値するもの、定期死刑禁固刑、定期的に死にそれ以外はずっと部屋にいる、こちらは飲み物や食べ物も与えられないからこっちの方が重いね、そして軽い罪としてあるのが死刑、一度死ぬとそれで終わり、牢屋に入る方が辛いね」
「……人を殺すとどんな罪に?」
「罪にはならない」
「……は?」
「死んでも生き返るんだ、罪にはならない、でもね、怪我をさせるとかそれは罪にならなくても強盗や泥棒は罪になる」
「狂ってるなぁ…」
「そう、狂ってるのさ、そしてもう一個いいこと教えてあげよう、この世界は変わっててね、人間ゴルフとか人間ダーツなんかが法で罰せられるんだよ」
「いやいやいや!普通にそんなの存在しないでしょ!」
「あ、そう?」
「でもまあこの世界ならあっておかしくないんじゃないかと思ってしまった」
「ちなみに小さな子を使ってそれをすると禁固5年の刑だよ」
「お、おう」
「ところでアミちゃん、ここまでの流れで質問はあるかい?」
その声と同時にアミがスッと起き上がる
「なんでわかったんですか?」
「わしにはわかるんだよ、狸寝入りをするならもっとうまくなりなさい」
「……はぁ…」
「そうだ、君にはこれをあげよう」
地面にトッと音を立て一対の短剣が突き刺さる
「短剣?というか…これは双剣?」
「順手ならデュアルエッジワンチャンある」
「ありません逆手一択ですそして順手の双剣士いたよ」
「アッハイソーデスネドーデモイイデス」
「……ところで能力だけど、アミちゃんはね、透明の直径10cm長さ30cmの棒を出す能力を与えるよ、でも固定されてるから動かせないよ」
「なにそれビミョー」
「うるさいなぁ兄さんは、私のだってうまくやれば強いと思うし…」
「その棒、滑るよ」
「「……どう使うの?」」
「あとつぎね、スピードが上がるような能力だよ、頑張れば300キロはいくんじゃないかな」
「速!??」
「私の能力はやっぱり強いんだね!」
「でも今は練習段階だろうから50キロが精一杯かな」
「マラソン1時間なくても完走できるじゃん!」
「どのみちはええ」
「そして次は……実はみんな持ってるんだけど空間だね、そしてえーと」
「ちょっと待って!?みんな持ってる!?俺の能力実質1つなの!?」
「そうだね、そしてアミちゃんの最後の能力は炎を操る力だよ、アミちゃんの場合は青色の炎が出るだろう、だとすると身体強化だ」
「俺も欲しいよ能力…」
「ははは、そうだな、君達は今度、学校に行ってもらうけどそこで1位を取ればいいものをあげよう」
「……何の1位?」
「定期テスト、それも勉強じゃない、殺し合いのね」
「なっ!?」
「えぇ!?」
「武器を持っておいで、さっきの部屋で稽古をつけてあげよう」
「……」
互いに顔を見合わせやれやれといった感じでため息をついた
それ以上に何かを考えたりするのは得策ではないだろう
「ワシはね、君たちに戦い方を教えこの屋敷で衣食住を保証する」
「……」
「君達には力を与えた、君たちは復讐という名目のやる気がある、だから君たちは強くなれる」
「……」
「そうだ、まず手をパーにしてごらん」
『そして指の隙間をなくし空間を開くことを意識して手を移動させる』
よくわからなかったがそう聞こえた、聞こえたとおりにやると白い部屋に黒く縁取られた青い空間が現れた
「そして指の隙間をなくし空間を開くことを意識して手を移動させる、おや、君は無意識に予知してしまったのか?わしがやることを、素晴らしい」
「……?」
「ふふふ、まずわしを、殺して見なさいな」
白い空間が現れ1本の刀を取り出す
「さて、わしは手を出さない、わしを傷つけてみなさいな」
刀を抜き床に刃を突き立てる
「……」
困惑しながら武器を向ける
「大丈夫、わしは死なない」
バラバラに落ちた武器を眺める
これをどう使うのかと
セーフティーなどを確認し打てるようにする
今持ってるのはAK-47
世界で最も知られてる名前の銃だと思う
「……いくぞ」
「OK…じゃない!なんで人殺そうとしてるの!?怖くて怖くて仕方ないけど!?」
「そんな概念が残ってたのか?仕方ないの…」
ドババババババ
銃を乱射する
銃の反動に腕が持って行かれている
しかししっかりイルマを捉える弾はある
だがその弾は無情にも弾かれた
全弾がだ
「……今のは?」
また未来を予知したということか
なら未来に逆らおう
銃の山からサブマシンガンに持ち替えて向け直す
これならおそらく反動に持っていかれることもないだろう
「アミ、ちゃんとやらねぇとなんねぇみたいだわ」
そう呟き撃つ
ドババババババ
「…!?」
銃声が同じだった
その瞬間悟った
この弾は当たらない
腕が振り回される
金属音と共に弾は弾かれた
これでは勝てない
「情けないなぁ!私がやるよー!」
タンタンと跳び前方に駆け出した
しかしイルマを通り越した
だが次の瞬間左手が伸びたその左手の先を円の中心にするかのようにぐるりと回転しアミがイルマに迫る
イルマは背後から迫り来るアミをチラリと見てそのまま無視した
勝ったそう確信した
だが攻撃は届かない
当たる直前で止めてしまったから
殺すことを怖がっているから
「わかるかい?アミちゃん」
双剣を持つアミの手にイルマが手を添える
「人を殺すというのは、怖いかもしれない、でもそれ以上の恐怖なんて万とある、せっかくこの世界に来たのに君にはまた悲しんで絶望し一生を終えてほしくないんだ」
そういい一歩前に出る
イルマの胸のあたりに双剣の先が触れる
「……え…?」
双剣を引っ張ろうとしているらしいが後ろに引けず困惑しているらしい
手を離そうとしても固く握られた手は開かない
イルマは手を開かせず手を動かせないように自分の手でアミの手を包み込んでいた
「やめてよ…嫌だよ、怖いよ…!」
涙声になりながら拒否した
現実を受け入れようとしない
「大丈夫、大丈夫だから」
切っ先がイルマの服に突き刺さる
白い服に血がにじむ
「いや!いやだよ!やめてよ!!」
大声で叫んだ
鳴き声が部屋に響いた
力なく体が崩れた
気を失ってしまったのだ
「……」
そのさまをみてることしかできなかった
言葉を出せなかった
狂気さえ感じた
安心してしまった
何が起きたのかわからなくなった
脳の処理が止まったかのように
「……さあ、君はわしを傷つけられるかな?」
「…少なくともその刃くらいは」
地面に突き刺された刀が引き抜かれる
グリグリと地面をえぐられたような跡が残った
真剣の鋭さに恐怖を与えられた
「ふふふ、ここからはわしも君を傷つけよう、君は原石だ、アミちゃんは石を取り除けた、君の石を取り除くには、死が必要だ、磨くには…いや、いまはやめよう」
スッと刀を振るう
剣の切っ先が床を撫でる
「……怖いなぁ、マジで、ところでこの屋敷破壊してるけどいいの?」
「大丈夫、わしにかかれば数瞬で戻せる」
気付けば地面にあった痕も無くなっている
「……飛んだチートだね、お爺さん」
「ははは、さあ、原石はどんな風に光るのかな」
金属音と発砲音が鳴り響いた
手に持っているのはハンドガンだ
リロードを繰り返し打ち続けた
違いの様子見と言える攻撃は数秒で全面的に否定された
思いっきり攻める
それで勝つしかない
だが一手が届かないのだ
「ッ!あたれぇぇ!」
運頼りの乱射は当たらない
至近距離でも冷静に弾き
冷徹に切りつけてくる
腕や脇腹を斬り付けかすらせ動きを鈍らせられる
痛い
血が流れている
痛い
血は沸騰したかのように熱かった
だがイルマは静かにこちらを攻めてくる
氷のような冷たさで
視界が変わった
モノクロの世界で幾つかのコマのように別れた映像で見たのは
袈裟、唐竹、突きのコンボで死んだ自分の姿だった
眼の奥に焼きつけられた
脳に確実な正確な情報が入ったと確信した
角度もタイミングも覚えた
「せめてその刃を砕く!!!」
そう叫んだ
自信に満ちた声で
命懸けの戦いにここまで高揚するものなのだろうか
袈裟
これをあえてうける
血が噴き出した
だがタイミングを図れる
唐竹に合わせて銃を向ける
イルマの顔面をターゲットするかのように視線で射る
そして銃口が向くと同時に刃が降り注いでくる
また金属音だ
耳がやられたようだった
そこからの行動は早かった
スッと左手の銃の銃床で左から迫る刃を砕いたのだ
金属片が飛び散る
光が複雑に反射した
とても綺麗に見えた
まるで知っていたかのような行動だった
しかしそれと同時に死を悟った
脇腹に痛みを感じた
ポタポタと血が落ちる音がした
「……ここまでか」
「よくやった、わしの刀が使えんくなるとはな、素直に褒めよう」
「そりゃ……どーも……」
その言葉はちゃんと発音できたかも怪しい
ブラックアウトした視界が光に呼び戻された
そしてまたベッドに寝ていた