3、『家族旅行です』
道中の車の中。
僕は激しく車酔いをしていた。
「う、うぶぅ‥‥おえっ‥‥」
そもそもの事の発端は、小鈴が車の中暇だから一緒にゲームをやろうと言い出した事だった。
もとより酔いやすい体質の僕なのだが、車酔いの感覚がどうにも快感で‥‥((自重
結果、ゲームの画面を見すぎた僕は酔い潰れてグロッキーである。
次のPA(パーキングエリア)まで耐えろとの事だった。
僕がビニール袋を口に当てて悶えてると、小鈴が背中をさすってきた。
「お兄ちゃん大丈夫??」
とても心配そうな様子である。
少し目が潤んで見えるのは僕が重症(シスコンとして)だからだろうか。←多少の自覚はあるのだ
‥‥あれ?
『お兄ちゃん』‥‥だと??
普段『Mにぃ』や『バカにぃ』だったのに!!
「小鈴ちゃん!!今お兄ちゃんって呼んだね!??」
ガバッと起き上がり早口に聞いた。
気持ちが高揚している。
さっきまでのグロッキーは何処へやらである。
「え??‥‥あ‥‥うん‥‥」
小鈴はそんな僕を見て、非常にドン引きしているようだった。
変なものを見るような薄目で見てくる。
あぁ‥‥その視線!!その視線だよっ!
かわいそうなものを見るような、いぶかしむような目!
あぁ!!素晴らしい!!!
「おい進夢?どうした??元気になったのか?」
父さんが運転をしながら聞いてきた。
我が家族ながらいい声である。
渋い渋いと、休日に遊びに来る友達は大方がそ
んな感想を残すのだ。(作中ではモブである。((メメタァ)))
ルームミラー越しに目があった。
僕のMさ加減には両親はノータッチなのが八月十五日家の暗黙の了解である。
「うんっ!!小鈴ちゃんに、大丈夫?お兄ちゃんって背中さすってもらったら治った!!」
これまた早口でまくしたてるように言った。
きっと頬は紅くなっているだろう。
息も荒いかもしれない。
すると父さんは、
「そうかそうか。それはよかったな。」
あまり興味はなさそうである。
と、いうかこめかみを押さえそうな勢いの呆れ
具合といったところか。
今に始まったことでは無いから気にしたら負けだとわかっているのだろう。
「じゃあ次のPAは寄らなくて大丈夫か?トイレとか、いいな?」
スルースキルぱねぇ。
この切り替えである。
動じないなこの親父。
「まぁ、そろそろ高速降りて、しばらく走ればネズミーつくからな。そんくらいなら間に合うだろ。」
まぁトイレ行きたいわけじゃないからな。
間に合うも何も体調次第なんだけどね。
ふと隣を見ると、ゲームをこっちに差し出している小鈴の姿があった。
容赦無い妹である。
‥‥いいだろう。やってやろうじゃないか。
ゲームで妹にボロボロに負けて、グロッキーになるの素晴らしいじゃないか。
‥‥そのあと、ゲームに付き合わされ、車に酔い、ハリネズミーランドに着いた頃にはぶっ倒れる寸前だった。(1日目は一人でハリネ
ズミーランド内のホテルで仲間はずれ感にゾクゾクして過ごしました。)
‥‥次の日
ホテルの朝も、心地の良い罵倒で目覚めた。
僕が寝そべってる上に馬乗りになって肩を揺さぶっているのは小鈴。
上から罵倒を浴びせてくる。
「ばかにぃー!!7時だよ!!何まだ寝てんの。また時間無駄にすんの?いい加減起きないと殴るy‥‥」
「ぜひっ!!!お腹でも顔でもどこでも‥‥((自重」
素晴らしい食いつきだったかもしれない。
バッ!!という効果音が鳴り響くような勢いで飛び起きた。
もしかしたら、起きなければ本当に殴ってもらえたのかもしれない‥‥。
あぁっ 失敗してしまったよ。
僕が勢いよく起き上がった時、上に馬乗りになっていた小鈴はしなやかな体使いで僕の上から飛び降りたらしい。
くるんってね。
ちなみに小鈴は中学の部活は新体操部に所属している。
そのスキルを活かして、襲いかかってくる学
校の男子どもを撃退しているとかいないとか。
‥‥襲ったら殴ってくれるかn‥‥((自重
「ね、ねぇ。それよりMにぃ。さっさと着替えてよ。一緒に行こうよ?お化け屋敷がね、こわ‥‥じゃない‥‥ふ、二人じゃないと入れないらしいか‥‥ら」
最後は消え入りそうな声になっていた。
どうやら一緒に来て欲しいってことらしい。
ちなみに両親は僕らを放っておいてデート中だ。
いい歳してラブラブな夫婦なのだ。
というか‥‥あれ‥‥??
お化け屋敷が‥‥怖いのか?
なんてこった!
可愛い‥‥!!
おぉ!!!Милый!!(可愛い)
頬を赤らめて、もじもじ。
上目遣いで。
ベットから降りた際に女の子座りになったらしく今もその姿勢である。
相乗効果で僕の心拍数を上昇させてきた。
今、僕の心拍数は♩=125くらいだ。
死んじゃうよ。
ちなみに全く関係のない話だが、昨日の夜はなぜか兄妹で寝ろって言われた。
僕は小鈴にベットを追い出されて床(布団なし)に寝かされたけど。
「年頃の女の子と一緒に寝られると思ってるの?Mにぃは床で寝てなよ。そういうの好きでしょ?」
という論で。
わかってらっしゃる。
もう惨めで惨めでゾクゾクしたね!!
正直床が硬くて寝られなかったけど、寝不足なのもまたいい!
要するに万事オッケー!
「じゃ、じゃあ、着替えてくるからそこで見ててね!小鈴ちゃ‥‥ぐふぅっ‥‥」
どストレートの拳が腹に入った。
軽くひねりを加えるという小技も忘れない。
はぁん‥‥いい‥‥いいよ小鈴ちゃん!!
「息荒げないでキモい!!にぃ。はやく着替えてきなさい!!」
「Sir yes Sir!!!」
嬢王様に命令された哀れな豚は高速で着替えを済ませてきた。
ホテルのフロントを出た八月十五日兄妹は、早速お化け屋敷へと向かった。
「ねぇにぃ。お化け屋敷、怖くないよね?」
さっきっからずっと僕の手を握っている小鈴は、なぜかずっとおどおどしている。
お化け屋敷に近づくにつれて手に力が入り初めているのは気のせいではないはず。
「アレェ小鈴ちゃん。怖いのかなぁ〜??」
ちょっとだけ凶悪っぽい笑みを浮かべて言ってみた。
人生初のS顏である。
すると小鈴ちゃんは、
「は、はぁ?怖いわけないじゃん!!あんな子供騙し私に通じるわけないじゃん!!にぃこそビビってるんじゃないの!??」
顔を真っ赤にしながら否定してきた。
うん。かわいい。
だけどバレバレですよ?小鈴さん‥‥
だけど僕のことを指差しながら『ビビってるんじゃないの』と聞いてきたわけは、僕の足にある。
そう。
先ほどからずっと僕の足が生まれたての子鹿状態な訳である。
いわゆる「ガックガク」なのだ。
‥‥いやいやいや。
決してビビってるわけではないですよ!??
もちろん!
「びっびびびび ビビってるわけないじゃないか。僕だよ!?八月十五日 進夢だよ!??」
僕の全力の否定。
なんの説得にもなってないけど。
論にすらなってない。
「知ってるよ。どMで!シスコンで!キモくて!見た目こそ頭良さそうでモテ気味だけど実はバカで!!最悪な人間の底辺の八月十五
日進夢でしょ!」
グサグサ来るね!??
でも僕にとっては最高の褒め言葉だよぉ〜!!
もっと罵ってくださぁい!!(自重なし!!)
ちなみに言い終わった子鈴ちゃんは一瞬だけ
あ‥‥言いすぎちゃった‥‥って顔をしたけど、すぐに僕の様子をみてあぁこいつどMだからいいや。
って言ういわゆる「ゴミを見るような目」
で見てきた。
それも僕の興奮を加速せた。
そうやってわいわいがやがやしながら歩いている
とやっとお化け屋敷についた。
「おぉー全然人いないね。」
古めかしい洋館の形のごくありふれたお化け屋敷だ。
特に演出が凝っている様子はない。
外見を眺めていると、係員が話しかけてきた。
「2名様でご来館ですか?それでは中へどうぞ。」
そう言って係員は、古めかしい扉を開いて中へ招き入れた。
何も言っていないのに結構無理やり背中を押されて。
この場合招き入れたというより、押し込んだって言った方が正確なんじゃないかな‥‥。
中へ入るととても肌寒い。
ごーっという音がする。
‥‥いやエアコンの音ひどいな。
めっちゃ聞こえてるんですけど。
係員は僕らが奥に進んだのを見届けるとボソッと一言つぶやいた。
「逝ってらっしゃいませ‥‥。」
そして重々しい音を立てながら扉を閉めた。
コ○ンみたいな感じだ。
てかいやいやなに!??
『逝ってらっしゃいませ』って!
ニュアンスでわかっちゃったよ!
この先どんな怖がらせが待っているのやら‥‥
多少の不安を抱きながらも僕らは奥へと進んだ。
第三話になります。
これからも頑張ってまいりますので、よろしくお願いします!