すべてを放り出して奥穂高岳に登ったりウイスキー工場に行ったりしてました。
やっぱり空気が旨いところで吸うタバコはもっと美味いですしテント泊しながら作る飯も最高ですね。
「ワンちゃんがいたの!? どこどこ~!」
「静かに!!」
突然大声を上げて犬を探す丈槍さんを小声で一喝すると大人しくなった。
「いいかい。ただの犬だと思ったら命はない。感染してる犬だったら銃はほぼ当てられないし鈍器も振り上げてる間にどこか噛みつかれて終了だ。出会わないにこしたことないんだ」
僕が一人で対峙したなら銃を使って仕留められる可能性はあるだろう。しかし同士討ちの可能性がある集団行動では素早い動きをする奴に一撃を加えることは不可能とは言わないまでも難しい。
「非常階段は諦めて帰るか、エスカレーターを突破して上がるかのどちらかに絞りたい。幸い必要物資は手に入れたから手ぶらで帰ることはないしホームセンター内でトランプとかちょっとした娯楽は手に入ってる。命を危険にさらしてまで娯楽を手に入れる必要はないからな」
「そうよね。トラックの中身があればとりあえずしばらくはバリケード設置で忙しくなるし・・・」
「他のみんなも今日は撤収ってことでいいか?」
「仕方ないな・・・」
「帰ったら打ち上げだな」
「みんなごめん。きっとまた来よう」
そういいながら、先の見通しが大きく曇り始めたことに不安を感じざるを得ない。次に来るときまでに奴がいなくなってくれればいいが、むしろ他の感染犬を呼び出してしまう恐れもあった。温かくなるまで3ヶ月は様子を見た方がいいだろう。
「よし、帰ろう」
見つからないうちに撤収しようとレジ裏から立ち上がり、店先に目を向けると、そこには今しがた危険なので撤収すると判断したその元凶である犬と目があった。
「あ」
全身の血が冷たくなり、心臓は早鐘を打ち始める。臭いで感づかれたか、それとも話し声が案外響いていたのか。何としてでも仕留めないと・・・。
周りを流れる時間が遅くなり、64式小銃の照準を合わせるまでの時間が異様に長く感じる。ストックを肩に当て、ハンドガードを握りしめて脇を締める。トリガーに指はかかり、懐に入り込まれる前に照準は合わせた。この距離、犬の動き。万が一にも外すことはありえない。しかし、
「ワン♪」
嬉しそうな表情でこちらに迫ってくる犬に対し、僕は遊び限界まで絞った引き金を引くことが・・・・できなかった。
「感染は・・・してないのか・・・」
「いきなりこっちに飛び込んでこられたときは心臓とまりそうだったけど、なんだお前かわいいやつだな」
胡桃にすり寄って甘えている子犬の姿に毒気を抜かれて緊張が緩む。あの後スネ夫が間一髪で子犬を抱き留め、全身をまさぐった結果、噛まれたりひっかかれたりした跡はなく、脈拍もあって温かい、正真正銘無傷の犬であることが証明された。
「なんだよ、のび太はこんなちっちゃい犬にビビってたのか!」
「ちっちゃい犬のが怖いだろ」
当てづらいし。しかしあの時引き金を引けなかった自分を呪ってやりたい。今回は可愛らしい子犬だったから結果的には良かったのかもしれないが、アレが本当に感染犬だったとしたらスネ夫はともかく、他の人も無事であったとは思えない。
「はぁ・・・。とりあえず安全そうでよかったわ。探索はどうします? 問題の犬はどうにかなりましたし」
「続けたい人は?」
全員が手を上げた。やはりみんな娯楽がほしいのか・・・。
「まぁいいや。本屋に行くか。その犬はどうする?」
「このままここに置いて行くのもなんですし。またここに来た時に感染してたらそれこそ大変だから・・・」
「連れていくか・・・。好きにしてくれ」
「良かったね! えーっと名前は・・・Taromaru、太郎丸か! いい名前だね!」
「ワン♪」
どうやら犬がしていた首輪に名前が刻印されていたらしい。飼い主はもう生存していないだろう。
先ほど引き返した通路を再び引き返し、今度こそ問題なく非常階段のある防火扉前までたどり着いた。吹き抜けの天井がガラス張りだったモール街とは違い、防火扉の裏側にある非常階段は真っ暗闇で、ライト無しでは登れそうになかったため、先に僕とスネ夫が先行し、3階までの安全を確保すると、無線で合図してジャイアンとともに上に登らせた。
「3階は1階よりも奴らが少ないな」
「襲撃時に1階に降りた人が多かったのかな」
「でも外から見た限り2階から上も窓ガラスが割れていた。1階と同じレベルでゾンビが跋扈しててもおかしくないと思ってたんだけど・・・」
「やっぱり上の階で誰か籠城してるのかも。奴ら階段は時間かければ登れるからエスカレーターでいけるでしょ」
「籠城してるっつってもあまり多すぎるとこっちが困るぞ」
「学園に避難させて大丈夫な人物かも見極めないといけないしね・・・。様子を確認するのはとりあえず目的物を回収してからにしよう」
「おう。ここが本屋だな」
店舗内をざっと歩き回って奴らがいないことを確認し、ホームセンターとは違い手動式だったシャッターを閉じて店内を安全地帯として隔離する。
3階の一角にある書店は全国チェーンの某蔦を生業とする大規模な店舗だった。ここなら娯楽書もあれば家庭栽培や山中サバイバルの指南書、さらには新旧CD、DVDなど役に立つものが手に入るだろう。インターネットが使えなくなった現在、紙の資料というものは人類の知恵を後世に伝える物として最上級の価値を持つことになる。
「J-Groundはいらないだろ・・・」
「いやいや、俺たちの装備だってちょっと見栄え良くしたりして楽しみたいだろ?」
「じゃあ僕はJ-Wings持ってくよ」
「俺は世界の艦船だな」
「そこはJ-Ships持ってこうよ」
「どうでもいいから全部詰め込めよ!!」
しかしくだらないことで言い争う僕らは未だその価値について深く考えることはなかった・・・。
その後はとりあえず暇つぶしになりそうな(暇つぶしというにはあまりにも大量の)小説とホビー雑誌、家庭栽培の指南書、ロープの使い方など応用の効く技術が記載されたサバイバル本、勉強の参考書など、数十冊の本をボストンバッグに詰め込み、電気が使えなくなれば屋上農園の鳥よけにも使えるだろうということで大量のCDとDVD、BDも詰め込んだ。若狭さんはなぜかこっちのが鳥が寄り付かなくなるらしいわと大量の演歌CDを詰め込んでいたが・・・演歌好きなのだろうか。渋いけど恥ずかしがることでもない気がするが。僕らなんてアニメ関連ばっかりだし。どさくさに紛れてポータブルBDプレーヤーと黒い暖簾の裏にあるDVDも入手したことは割愛しておく。
「娯楽はこんなところか?」
「いいんじゃない? そろそろバッグもいっぱいだし」
「胡桃たちは?」
書店に限っては安全を確保したので女性陣とは別行動を取っていた俺たちだが、彼女たちがどんな書棚に集まるかは大体予想つく。案の定彼女たちはホビー雑誌とはだいぶ離れた位置にある女性向け雑誌コーナーに陣取っていた。
「あ、の、のび太・・・」
「ほしいのがそろったならそろそろ帰ろうと思うけどどうしたの? ファッション誌?」
「ちょっとだけ・・・服見てもいいかな?」
女性用服屋は4階にあった。3階では少ないとはいえちらほら見かけた奴らも、4階には全くと言っていいほど歩いておらず、スムーズに歩を進めることができた。それでも念のためシャッターを閉じて店内を物色する。
「お、俺たちこんなとこ入って大丈夫かな・・・」
「ジャイアン・・・・。洋服屋に入るだけでそんなに挙動不審にならなくても・・・」
「しょうがねーだろうが!! 女の子連れでこんなとこ入るの初めてなんだよ!!」
「ジャイアンいもう・・・なんでもないや」
「・・・ああ」
「じゃーん!! みんなどうかなこの服!!」
うーん。服装はまぁいい。似合っているだろう。しかしハイヒールはなぁ・・・。お洒落したいお年頃だとしても丈槍さんの外見は幼く、背伸び感が大きかった。現に物理的にバランスが取れてないようでフラフラしている。
「・・・いいんじゃないかな」
言葉に詰まるときは無難に答えておくべし。
「のび太・・・どうかな?」
胡桃はジャケットの下にラフなファッションネクタイをさげ、サングラスをかけた姿だった。活動的な彼女に似合う服で事実、
「可愛い」
おっと本音が・・・
「そうか・・・ありがとう」
若狭さんは・・・。
「どうかしたの?」
大きい。うん、大きい。それだけ言えれば十分だろう。言ったらまずいが。
「つかここにあるのどう見ても夏物ばっかじゃねーか。12月なのになんで水着まで置いてあるんだよ・・・」
女性服売り場という緊張に吹っ切れたジャイアンはとりあえず店舗を物色してそんなことに気付いたようだ。
「夏物専門店だったみたいね・・・」
「水着は流石に試着するわけにはいかない・・・かな」
「私は別にいいけれど」
「私もいいよ!! 水着水着!!」
「お前らには恥ずかし気ってものはないのか!!」
「胡桃ちゃん・・・、あまり大きな声は・・・」
顔を真っ赤にして天然(?)な二人を糾弾する胡桃をさておき、先生はなぜか破れたスカートを持って意気消沈していた。
「大丈夫じゃなかった・・・大丈夫じゃ・・・」
そこで僕やスネ夫、ジャイアンのしている腕時計から静かな電子音が流れてきた。事前に設定していたアラームである。
「今日はここまでだね」
現在時刻は午後4時。5時になれば学校帰りや会社帰りの元人間が路上に流れてくることを懸念し、その前に撤収することを決めていたのだ。
「はぁ・・・もうちょっと見てたかったなぁ」
持って帰りたいけどもう持てない。そんな顔で背負ったリュックを見る丈槍さん。女性陣が持ってきたリュックはすでに他の物資でいっぱいだし、ボストンバックも他に仕入れた娯楽で服を詰め込む余裕はなかった。
「何言ってるんだ。全部持っていけばいいじゃないか」
不満げな顔を向ける丈槍さんにそういってバックパックから小さく折りたたんで携行できる予備のボストンバッグを取り出すと、女性陣の顔はとたんに明るくなったのだった。君たちもやっぱり欲しかったんだね。
「ワンッワンッワンッ」
4階から下に降りるため、非常階段に向かって歩いていると、急に太郎丸が吠え出した。何か発見があるかもしれないと、行きとは違うコースで戻っていたため太郎丸が吠えた原因は気になった。
「映画館か。そういえば生存者がいるのかもしれないんだっけ? ここに籠城してるのか?」
「私が様子見てくるよ。のび太たちはちょっとここで待ってて」
「待って胡桃。僕も行く。ジャイアンたちがここで待ってて」
「おう」
流石に安全確認もしていない暗い映画館に一人で行かせるのはまずいので僕もついていく。フロントをすぎ、第1シアターの前まで行くと不自然な物が目についた。
「バリケード? やっぱりここで籠城してたのか」
「ストップ!」
「なんだのび太。生存者がいるならなんとかしてあげないと」
「その扉、外にバリケードがある。バリケードを組まなきゃならない相手は扉の内側にいるってことだ」
「え・・・。っていうことは・・・」
「多分中にいるのはゾンビだろうね」
「危なかった・・・」
それにしても脆そうなバリケードだ。周囲に積まれた段ボールは扉を固めるわけでもなく、実質的に扉を固定しているのは細い箒だけである。
「あれ・・・?」
ライトの光が向けられた床が一瞬光った。何やら細くて小指くらいの長さのようだが、奴らに食い散らかされた死体のかけらは光ったりはしない。
「これは・・・薬莢か」
僕が持つ64式小銃の弾と同じ7.62ミリ弾の薬莢のようだ。あたりを見渡せば同じ物が何個も転がり、壁には数発の被弾痕が残されている。
「僕らのほかに銃を持った生存者がここに来た・・・?」
「それって大丈夫なのか?」
少なくとも僕らが来る前だろう。ホームセンターに侵入したときからこれまで銃声は聞いていない。サプレッサー装備の銃なら聞こえないかもしれないが、薬莢の雷管周囲を見れば商品名はウィンチェスターだ。7.62×51弾の民間用モデルであり、僕らの使用する7.62×51NATO弾という軍用モデルとは異なる。周囲に落ちる薬莢の数からみても、おそらくセミオート、もしくはボルトアクションの狩猟用ライフルを持った生存者であり、日本の銃規制を信頼すればサプレッサー装備とは考えにくいだろう。
「大丈夫だ胡桃。今はもうここに「のび太危ない!!」っ!?」
胡桃の声にとっさに振り向くと、気づけばすぐ後ろにゾンビが迫っていた。
64式小銃を構えなおすには若干間に合わない気がしたが、しゃがんでいる状態でレッグホルスターの拳銃を抜くのは案外難しい。少々無理をして安全装置を外し、銃床で胸部を殴りつけると、よろめいた奴の頭に小銃を突き付けるように発砲した。
「まずいっ」
力を失って倒れるゾンビの軌道上には、ゾンビを閉じ込める扉を支える箒があった。銃声に反応したのか扉の内側からたたきつけるような音が鳴り始めている。しかしゾンビの体は止める間もなく箒を弾き飛ばし、扉の封印を解いてしまった。
「走れ!!」
続けざまに起こる事態に状況を呑み込めていない胡桃の手を引き、一目散に扉を離れジャイアンたちの元へ向かう。振り向きざまに背後を確認すると、扉を突破した夥しい数のゾンビが見えた。
「やばいやばいやばい!!」
「どうしたのび太!! 銃声がしたぞ!!」
「あとで話す!! 早く逃げろ!!」
銃声を聞いて飛んできたらしいジャイアンたちは僕らの背後から近づく大群に血相を変えてきた道をUターンする。
「どこに逃げる!?」
「非常階段だ!! あそこならまだ安全なはず!!」
「キャッ!」
「めぐねぇ!!」
足をもつれさせた先生が転び、それに気づいた丈槍さんが悲鳴を上げる。
「クッソ、先に行ってろ!!」
意外と思うなかれ、先に動いたのはスネ夫だった。
「先生はスネ夫にまかせていくぞ!!」
スネ夫は転んでしまった佐倉先生に駆け寄り、距離を詰めるゾンビに数発の弾丸を撃ち込む。どうしてかあの映画館にはこれまでに見かけたモール内より多くのゾンビが閉じ込められていたようだった。それが僕らに標的を定めて追い込んでいる。これでは手持ちの即応弾だけでは持たないだろう。
「走れますか!?」
「大丈夫・・・っつ」
顔をしかめる先生の足首は赤く腫れている。詳しくはわからないが触ったところ足をひねっただけのようだ。弾薬が惜しいのであとで回収できるよう、バックパックを吹き抜けから下の階に落とし、戸惑う先生をおぶる。
「両手は銃を使うから使えません。しっかりつかまっててください!!」
少し先では非常階段の防火扉を開いたのび太たちが方膝を立てて銃を構え、防火扉を守るとともに万全の態勢で僕らを待っていた。すでに若狭さんたちは階段側に入っているようだ。
「スネ夫早く!!」
のび太の撃った弾が後ろに迫る奴らの頭を貫く音が間近で聞こえる。
全力疾走で防火扉まで走り、ジャイアンとのび太の間をすり抜けると、そのままの勢いで非常階段に飛び込んだ。直後のび太たちも小銃をフルオートでばら撒きながら非常階段に飛び込み、間一髪で防火扉が閉められた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「大丈夫かスネ夫!! 先生は!?」
「・・・全力、疾走なんて、ひっさしぶり、だった」
「ありがとう、骨川君。置いて行かれたらどうなっていたか・・・」
「ワンッ」
「や、やめろ、よ、くすぐったい。それと、仲間を、助けるなんて、当然のことです、よ」
防火扉はガンガンと叩かれていたが、息も絶え絶えなスネ夫も、足を挫いたらしい先生も、とりあえず無事だったことに一同安堵の息を吐いた。
「ほらスネ夫、水」
「サンキュ」
「あまり無茶しないでよ」
「のび太にだけは言われたくなかったな。あと先生の足、折れてないと思うけど捻挫してるみたいだから見てやって」
「はいはい。先生、足見せてください」
真っ暗闇なので他の人の光源も借りながら先生の足を観察する。
「スネ夫の言う通り腫れてるけど折れてはいないみたい。ヒビとかは流石にわからないけど。包帯で固定しておけば肩貸して歩けるとは思う。メディカルキットに包帯と湿布があったな」
打撲捻挫骨折などの応急処置としては、RICE処置法に則ると回復に効果的だ。Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(上げる)の4行程の頭文字をとったものであるが、ここでは湿布を貼って足首を固定することでこの対処を行う。学校に帰ってから氷水で冷やし、安静にしてもらえばいいだろう。包帯はまず裸足になってもらい足首を足裏に対し直角にして足の甲に何回か巻き、足首から脹脛にかけてずらしながら1,2回巻くことを繰り返すことで患部を固定することができる。包帯がない状況などではハンカチなどを繋げて縛り付けるなどの方法は存在するが、きちんとしたメディカルキットがある以上、伝統的な方法に頼る方が無難だろう。最後に靴をきつめに履かせれば無理は禁物とはいえとりあえずは動くことが可能となる。
「よし、これでなんとか。胡桃たちも覚えておいてね。役に立つから。先生の荷物は丈槍さん持てる?」
「大丈夫だよ!」
「ごめんね由紀ちゃん」
「心配しないでめぐねぇ。これでも私は力持ちなんだよ!」
「あらあら。じゃあバリケードの設置も頑張ってもらわなきゃね。それにしても野比君、凄い手際ね。どこで覚えたの?」
「まぁいろいろとね・・・。さて、学園にもどろうか」
空になった弾倉をバックパックに戻し、代わりにリロードされた予備弾を取り出してポーチに入れなおす。バックパックを放棄したスネ夫はジャイアンから予備弾を受け取りポーチに詰め込んでいた。89式小銃もM4A1も同じ5.56ミリ弾を使っているうえ、STANAG規格によって弾倉の互換性があるためにできる芸当だった。その面で言えば1人だけ7.62ミリ弾を使用する僕は不利な状況といえる。まぁ普段から220発もの弾薬を持っているのだ。足りなくなる局面などそうそう訪れないだろう。というか訪れられても困る。あと少しだと気合を入れて、先生を気にかけながら階段を下り始めるのだった。
戻りは楽なものだった。先生は若狭さんの肩を借りてゆっくりとしか歩けなかったが、ゾンビは銃声に反応して非常階段とは反対側に群れていたし、不審な犬に無言の引き返しを強いられることもなかった。君のことだよ太郎丸。4階から落とされたスネ夫のバックパックも回収し、ホームセンター前のシャッターを潜って装甲車とトラックの前まで戻ってくると、ほぼほぼミッションコンプリートだ。何故か3週間くらいかかったように感じる学外遠征は、生存者は見つからなかったが、どうにかこうにか生死レベルで無事に終わりそうだった。
「じゃあ僕がトラックでジャイアンは装甲車ね。しっかり頼んだよ」
「のび太こそな」
万が一を考え、トラックには僕一人が乗り他の人は全員装甲車に乗せた。事故ったら洒落にならない。シャッターを少しだけ開け、外の安全を確認してから全開にし、先に装甲車を外に出すと、物資が満載されたトラックをジャイアンから教わったとおりのクラッチ操作、シフト操作で動かし、とりあえずシャッターの外に出すことは成功した。ジャイアン曰く、トラックは2速発進が基本なのだそう。
「とりあえず何とかなりそう。そっちは異常ない?」
『大丈夫。しっかりついてきてくれよな』
あとは信号もないし放置車両を気にするだけでいいので案外どうにかなるものである。
しかし搬入場を後にし、モールの横を加速して通り過ぎようとした次の瞬間、急ブレーキにより道路にゴム跡を残しながら前方を走る装甲車が急停車した。追突を回避するため慌てて急ブレーキをかける。横転の可能性があるから急ハンドルは切るなと教わったせいで、ハンドルは直進のままだったが、車間をとっていたおかげでぶつかることはなかった。だがおそらく後ろのコンテナでは物資が荷崩れを起こしただろう。
「あぶないじゃないか!! 何かあったの!?」
『いや、丈槍さんが急に止まれっていうもんだから・・・』
「どうしたんだ?」
装甲車では車長ハッチが開き、双眼鏡を手にしたスネ夫が何やら確認している。
『窓から外見てたらモール内に人がいたらしい』
「ゾンビの見間違えじゃないの?」
『今確認してるけど・・・あれだ!! ほんとだ女の子が一人、取り囲まれてる!!』
「ホントに!? ジャイアン!!」
『任せろ!!』
大きくハンドルを切り、エンジンを唸らせながら96式装輪装甲車はガラス張りの正面入り口を突き破り、中に強行突入した。
ネット小説に書くのも変な話ですが、奥穂高登山中に滑落死亡事故があり、山の恐ろしさを間近で感じることになりました。亡くなった方に対してはこの場を借りてご冥福をお祈りし、ご家族にお悔やみを申し上げます。
やはり運というものもあるのでしょうが、それでも客観的・主観的に万全の準備で動くことが大切であると感じます。これから秋にかけ、再び登山のピークを迎えますが、皆さんも自分に合った山と装備を選ぶよう、お気を付けください。応急処置についても、包帯の巻き方なんぞはいくらでもネットに転がっていますし、更に三角巾は状況に沿った便利な使用方法がたくさんありますから、使い方を覚えておくと役に立ちます。