あとこれってどちらかというと原作ドラえもんなのかな。主人公側だし。
今回はがっこうぐらし濃度30パーセントくらいかな。後半完全オリジナル設定だし。
あの日、私は帰りがけに友人と近場のショッピングモールへ遊びに来ていた。友人はCDを、私は外国書の新刊を目当てに来ていたが、ファッション店やスイーツ店など目移りして、結局かなりの時間ショッピングを楽しんでいたと思う。こんな楽しい日常がいつまでも続く。また来週も遊びに来よう。そんな当たり前だと思っていたことがたった一本の館内放送によって一瞬で崩れ去ってしまった。
『ご来店のお客様に申し上げます! 現在館内で暴力事件が発生しているため、安全のためにお客様は誘導員に従って館外へ避難してください!!』
『おい、早くそいつを取り押さえろ!! ッ! コイツ噛みつきやがった!!』
『キャッ!!』
切羽詰まったような女性スタッフの声はその後ろから聞こえる怒声に交じって非常事態であることを知らせていた。
「美紀、逃げないと!!」
圭は呆然とする私の手を取って出口に向けて走り出す。しかし同じことを考えた人たちがエスカレーターに押し寄せたせいでそこは止まってしまい、しかもなぜか逆走して上にあがろうとする人々のせいで完全に詰まってしまっていた。
「何してんだ!! 早く下に降りろ!!」
「あいつらが来る!! 上に戻って!! もう何人もやられてるわ!!」
「ハァ!?」
ここは駄目だ。別の場所を探さないと・・・。
「圭! あっちにエレベーターが」
「行こう!」
「一体何があったのかな」
「下の階の騒ぎ、普通じゃなかったよね」
エレベーター待ちの人はエスカレーター前に比べれば少なく、落ち着いているように見えた。雰囲気に気持ちを落ち着かせ、騒ぎの原因が気になり始める。
「とりあえず危なそうだからここから出よう。家でニュースでも見ればわかるでしょ」
「そうだね」
チーン
1階から上がってきたエレベーターの扉が開き、血の海となっていた床を見た。
・・・それからのことはよく覚えていなかった。
もう逃げ場はない。なんで私はあの部屋から出てしまったのだろう。ここに来ていたであろう生存者の姿は既に見当たらず、焦りからかゾンビの数が多い正面ホールに出てしまったことに気付いたとき、周りは自分を獲物と認識した奴らに包囲されていた。じりじりと近づいてくる腐敗した元人間は、私が避難しているグランドピアノを叩き、不快な音色を奏でながら私の足や腕に手を伸ばしてくる。
「ごめんね。圭・・・」
自分を助けるために一人部屋を出て行った親友を想い、私は目を閉じて襲い掛かってくる痛みと恐怖を覚悟した。
しかしその覚悟は正面入り口を破壊して突入した装甲車によって霧散してしまった。
ああ、圭。助けを呼んでくれたんだね・・・。
耳をつんざくような銃声のあと、男の人が投げた物体からひと際大きな音と光が耳と目を襲い、私の意識はここで暗転した。
のび太はモールの正面入り口を突き破って突入した装甲車の退路を守るようにトラックを停車させ、助手席に立て掛けていた64式小銃を引っ掴んで降車する。
「ジャイアンはM2で援護! スネ夫と僕で目標を確保する!」
『了解!』
モール中央ホールには夥しい数のゾンビが押し寄せていた。そして奴らの興味は大音響を立てて突入した僕らと、ホール中央に設置されたグランドピアノの上に避難している少女と半々、いや確実に大部分はこちらに興味を向けただろう。
「注意をこちらにひきつけろ!! 彼女から奴らを引き離すんだ!! 離れたところを狙って隙を作り目標回収、離脱する!! 一斉撃ち方! 撃て撃て!!」
これまで沈黙を保っていた装甲車にマウントされた12.7ミリ重機関銃M2が火を吹く。12.7ミリ弾は第2次大戦時には対戦車ライフル弾として用いられたこともある強力な弾薬だ。ゾンビの頭部に当たればまるで風船のように脳髄もろとも破裂させ、首や胸部に当たっても頭部を胴体から切り離すことは容易かった。また重機関銃弾はピアノが射線に入ると確実に貫通して彼女が避難しているピアノまで破壊してしまうため、同時にスネ夫と僕の小銃も指切り連射で射撃し、ピアノ周囲を取り巻く奴らを始末する一方、着実に少女への注意をこちらに向けなおしていた。
「目標付近確保!!」
「よし今だ、全員目と耳塞いで口を開けて!!」
「え、ちょ」
防弾チョッキにぶら下げていた筒状の物体を2本取り外し、安全ピンを抜くと投げて転がす要領でそれをピアノ周辺が開けた状態でその周囲に密集するゾンビの正面へ放り投げた。
「フラッシュバンッ!!」
自衛隊内では閃光発音筒と呼ばれる所謂スタングレネードだ。100万カンデラ以上の閃光と170デシベルの爆音を発する非殺傷手りゅう弾であり、室内では反響する音と合わせて数十秒から数分間ゾンビの動きを止めることができた。
「ジャイアンは装甲車を反転させて離脱準備!! スネ夫は僕の銃を頼む!!」
スリングを外して64式をスネ夫に押し付けるとピアノまで駆け寄り、気を失っている様子の少女を肩に担ぐ。周囲のゾンビは視力と聴覚の麻痺によって前後不覚に陥り、僕らを襲う余裕はないようだ。しかし万が一があるため近くに寄ってきてしまった奴らは潰す必要があり、ホルスターから抜き放った9ミリ拳銃がその役目を果たしていた。正面入り口では粉々に砕け散ったガラス張りの自動ドアを完全に破壊して大きな穴を作りながら96式装輪装甲車が前後の向きを入れ替えていた。
「のび太!! 周りからどんどん集まってきてる!! 急いだほうがいいぞ!!」
「分かった。スネ夫は銃座に着いて前方で障害になりそうな奴らだけ撃って。僕は君たちのあとを走るから。この子は装甲車に。先生、気を失ってるだけだと思うけど一応みてあげてくれますか?」
「大丈夫よ。悪いけど胡桃さんはトラックに移ってもらえる? 一応噛まれてないか確認しないといけないし狭いと困るの」
「わかった。のび太、事故るなよ」
「わ、わかってるよ」
先生に気を失っている彼女を預け胡桃をトラックに載せる。
『全員乗ったか!? 忘れ物はないな!? 出すぞ!!』
「オーケー!」
銃座に取りついたスネ夫が固まって近づくものをまとめてなぎ倒し、装甲車が安全に脱出できるよう退路を作り、自動車という機動化された足によってあっという間に一安心できる場所まで退避することができた。
「だいぶ疲れたな・・・」
時刻は17時を回っている。既に日没を迎え、辺りは薄暗くなってしまっている。本来なら日没前に学校に帰れる予定ではあったのだが想定外が多すぎた。次回からはもっと余裕を持っていた方がいいだろう。
「胡桃、このトラックCDかなんか置いてない? 運転に集中しすぎて死にそう」
「オーディオ機器があるからCDもあるとは思うけど・・・。持ってきたCDは装甲車の中だからなぁ」
「じゃぁAMならどこか放送してるかもしれないからラジオ」
「ハァ・・・どの操作盤だ? これか?」
運転席と助手席の間にあるオーディオ機器を胡桃がいじくること数秒、流れてきた音は雑音だけ・・・いや・・・まてよ。
「そこ周辺の周波数少しずつ切り替えて」
「これFMだけど・・・AMに切り替える方法がわからなくて」
「大丈夫。1Mhzずつ・・・・」
少しずつ周波数をずらしてもらうと、雑音の中かすかに聞こえた音声が途切れ途切れながらも誰かの声として車内に流れ始めた。
『私はめぐ・・・高k・・・2年、し・・・圭・・す。巡ヶ丘駅・・・室から放送してい・・す。この放送を聞いている生存者のかた、リバーシティ―トロンの最上階・・・・にいる・・・を助けてください。私は・・・を負傷し・・・動けま・・・ん。どうか・・・この放送を聞いているかた・・・』
「・・・・切れた。のび太・・・これって・・・」
リバーシティートロン最上階にいたラジオ発信者の知り合い。これは十中八九今しがた保護した彼女の事だろう。彼女は救出できたがそれによって現在一番危険な状況にあるのは発信者だろう。
「もう夜になる。明日の朝からならともかく・・・今からは無理だ」
「そんな・・・朝になったらラッシュの時間帯で奴らが・・・!!」
「今は彼女が救出できただけで上々なんだ。弾薬も心もとない。一旦取りに戻って再出発の準備をしたらもう外は真っ暗だ。危険すぎるよ」
「危険を避けるんだったらなんでショッピングモールでは彼女を助けたんだ! あれも十分危険だったぞ!! 今助けに行かなかったら誰が助けに行く!? 私たちだけしか聞いてないかもしれないんだぞ!!」
「・・・弱虫でゴメン」
「・・・・」
薄闇のなか暗い影を落とす校舎が近づいてきた。今日はもう作業はできない。もちろん救出に行くこともできないだろう。
こうして僕らの第1次校外遠征は幕を閉じたのだった。
同時刻
例の生物災害が起きたあの日、日本全国に基地・駐屯地を置く陸海空自衛隊は、偶然にも北朝鮮のミサイル発射予告によって外出禁止措置が取られていた。感染爆発当初こそウイルス性格の認識不足などで少なくない犠牲を出してしまっていたが、態勢再構築中の現在、人口密度の高い(=感染者の多い)地域の駐屯地の放棄に伴い、大規模な基地に集積された人員・物資によって有事宣言下の臨戦態勢が敷かれていた。早い段階で敵性国家によるバイオテロと断定し政府中枢人員の救出を行った結果、指揮系統の混乱は想定したほど大きくはならず、洋上のヘリ搭載護衛艦「いずも」に設置された臨時政府によって、むしろ指揮の柔軟性が増したといっていいだろう。
航空自衛隊中部
「東京湾沖上空に大型のアンノウンを確認」
「東京湾沖上空!? 領空内に間違いないか!?」
「防空識別圏に侵入した飛行物体はありません。領空内に突然現れました」
「トランスポンダ反応およびIFF応答無し、国籍不明、要撃および偵察スクランブル要請!!」
「要撃スクランブル了解!!」
「都内哨戒中のRF-4EJが一番近い。燃料に問題なければ向かわせろ」
「了解、こちら中部DC。ファントムストーカー、現時点の任務を放棄し指定するルートへ転進せよ」
DCからの通報により、百里基地で待機しているスクランブル機は直ちに発進できる状態にある。訓練通りであれば3分以内にこちらのレーダーでも上空に上がった305SQのF-15Jが確認できるはずだ。すでに目標近くを飛行していた501SQのRF-4EJはレーダースクリーン上で早くも目視距離に達しようとするのが確認できた。
「スクリーンにスクランブル機を確認、偵察機は2分、スクランブル機は7分で目視圏内に達します」
「了解。継続して監視を続行。集積基地と航行中の全護衛艦に警報を発令せよ」
「了解」
「・・・こんなご時世に大型機で首都に乗り付けるたぁどういうことだ?」
「アンノウンタリホー、北西に時速10ノット程度で進行中、ヘリコプターか?」
「ヘリにしちゃデカすぎる。RCSは護衛艦ぐらいあるぞこりゃ」
タンデム式の後部操縦席に座る同僚は元F-1支援戦闘機乗りだ。現代の護衛艦が多少ステルス技術によってレーダー上では小さく見えるようになったとはいえ、やはり艦船としてのRCSは残っている。とすると彼が言う通り相当な大きさの飛行物体なのだろう。飛行船の可能性もありうるが・・・。
「・・・!! アンノウンを目視確認。何だありゃ。見たこともないぞ」
「形態は・・・白い艦船のようなものを目視で確認。カラーリングは海保に近いか。艦尾に日本語でいそなみとの表記を確認・・・。どうなってやがる」
『CPよりファントムストーカー。目標到達を確認している。警告を開始せよ』
「ラジャ。えー飛行中の国籍不明機に告ぐ。当該空域は日本国領空であり、許可ない飛行は禁じられている。我の誘導に従い着陸せよ。繰り返す」
英語、中国語、ロシア語、韓国語など、周辺の言語はためしたが応答はない。
「アンノウンは音声警告に反応なし。警告射撃の許可をもとめる」
『CPよりファントムストーカー。ガンの使用を許可する』
通常偵察機型のRF-4Eは機首にカメラを搭載するため20ミリ機関砲は装備されないが、戦闘機改修型のRF-4EJは偵察ポッドの使用により機首の機関砲が残されている。更に定期偵察の任務中は、スクランブル機の燃料節約のために上空警戒待機という意味合いもあってAIM-7F空対空誘導弾を装備し、40年以上前の機体とは言え戦闘機型と比べて遜色ない戦闘能力を保持している。
「国籍不明機へ、これより警告射撃を開始する。飛行操作に注意されたし」
「警告射撃スタンバイ、FOX3!」
「射撃効果無し!! ファントムストーカーからCP、アンノウンをボギーと設定し、撃墜許可を求む。このままでは本土上空に侵入されます』
『CPよりファントムストーカー。撃墜許可はまだ出せない。何とかして注意をそちらにひきつけたし』
「クソが!! 総理大臣は護衛艦で保護されてるはずだろ!! この非常時になに考えてんだ!! ファントムストーカーラジャ。レーダー照射によってコース修正を試みる!」
「FOX2スタンバイ」
セミアクティブ誘導のAIM-7Fのために機体のレーダーでアンノウンをロックすれば回避しようと進行方向を変えるか、もしくはチャフを散布するだろう。回避されることを狙っていたが、その最後通牒ともいえる警告はアンノウンから入ってきた無線によって打ち切らざるをえなくなった。
『攻撃を中止されたし。我、貴機の誘導に従う』
「艦長。4時方向から航空機が接近してきます。識別型からしておそらく日本空軍のRF-4EJ戦術偵察機かと」
「次元潜航ステルスが作動中だ。400年前の機体にこちらが気づかれることはあるまい。それより状況報告だ。本部と連絡はどうしてもできないのか?」
「はい。なんどか非常回線も試しましたがどうしても繋がりません。やはり超空間離脱の際に超空間通信システムが故障してしまったようです。酷い時空乱流でしたから」
「本部から特異点偵察の任を受けたはいいが現状報告すらできないとは・・・」
『CICより艦橋!! 接近する航空機から領空侵犯警告が発せられています!!』
「なんだと!? この時代に次元潜航ステルスの探知ができるわけがない。周囲を飛行する別目標に対してではないのか?」
「現空域に本艦以外の航空反応なし。完全に我々を補足しています!!」
「ステルスが作動してないのか・・・」
「艦長。我々の存在を知られたからには生かしておくわけにはいきません。航時法に基づき撃墜命令を」
「馬鹿を言うな。これは我々の落ち度だ。戦闘機が警告しに来たということは既に防空指令に状況が知られているということだ。撃墜しても別の戦闘機が我々を撃沈するために飛んでくるぞ。それにこの世界はすでに我々の創造以上に世界と乖離したパラレルワールドとしか考えられない。ここは素直に協力した方が我々のためにもなる」
『偵察機より警告射撃!!』
「この時代の日本空軍は戦闘に抑圧的だと習ったはずだが・・・」
「状況は国の性格を変えます。取返しのつくうちに撃墜命令を」
「副長。我々は時空警備隊だ。正当な職務を遂行する現時人を害することはできん。本艦はこれより通信不通による一時的措置として艦長命令による独自任務を開始する。通信士!! 日本空軍機に常空間通信を送れ。平文で貴機の誘導に従うとな」
「艦長!! 馬鹿なことを!! 全艦対空戦闘用意!! 艦長はパニックを起こしている!! 私の命令に従え!!」
「貴様はそれほどまでに愚かなのか。航海長、副長を拘束し自室へ連れていけ」
「ハッ」
『CICから艦橋!! 空軍機からレーダー照射を受けています!! 電子妨害開始しますか!?』
「一切の抵抗を禁じる!! 通信回線を開け」
「現時人に従ってどうするおつもりですか?」
「この時代にはおそらく我々をよく知る人物がいるはずでね。子供に助けを求めるのは大人として恥ずかしい限りだが、彼ならなんとかしてくれるかもしれない。賭けてみる価値はあるよ」
「・・・だれです?」
「君は確か第17管区に配属されたことがあったね? トモス島事件のときに会っているはずだが」
「・・・あっ。あの少年ですか。確かあの時は小学生でしたから・・・今は高校生くらいですかね」
「そうだ。彼は実に面白い。24世紀で彼の記録を調べてみたら射撃の世界記録を持っていた。24世紀でもその記録は塗り替えられていない」
この世界でもきっと生存しているはずだ。できるだけはやくに連絡を取りたいが直接探すしか方法はないだろう。
「攻撃を中止されたし。我、貴機の誘導に従う」
まずはこちらの素性を明かし、信じてもらわなければならない。我々の存在を知っている人物は政府高官であれば何人かいるが彼らが生きているとは限らない。一呼吸置くと無線機の反対側にこう語りかけた。
「こちらは