皆が楽しんでる夏休み。
一人修羅場に潜っていく一夏君ぇ。
3日後にはリアルで学校が始まるギルオードです。
常勝の剣
~一夏サイド~
女神の放った言葉により、世界は混沌に満ちていた。
夏休みに入りだそうとしている、このIS学園もその影響を少なからず受けていた。
特に用務員や事務員などへの目線は冷たくなっていた。
これを危惧したであろう職員は、全校集会を開いたが、世間がこれでは焼け石に水だろう。
龍野君への目線は優しい。
しかし、僕への目線は相変わらず冷たい。
特に、まともに会話を交わさない、他クラスの平穏な場所育ちの子からは冷たい。
上級生は一年間、そういう子も見てきたからか、割り切ってはいる。
そして、今のSHRが終われば、亡国機業本部へ帰る。
「──────。では、皆さん。夏休みをしっかりと満喫してください!!」
おっと、山田先生の話が終わったようだ。
そして、千冬姉が教壇に立つ。
「浮かれているようだが、諸君。...新学期初日から実力テストがあるのを忘れないように。基本科目の五教科だけとはいえ、ここはIS学園。夏休みで勉強してなくて赤点を取った生徒は──────」
分かりやすく一旦話を切っている。
周りの生徒はガクガクと震えている。
なぜそんなに震えるのか?
要は勉強して、平均点を越えれば良いんだけど?
そんなに心配かな?
↑(皆も察していると思うが期末テスト学年一位。尚チート転生者、入試一位、それ以降の学力テスト一位のオレンジ、クラス総合成績二位の軍人兎がいるため、クラス平均は...ギルオードなら英語は赤点確定だね!!)
「放課後、みっちりと補修がある。覚悟するように。では全員起立!!」
『気をつけ、礼!!ありがとうございました!!』
僕は寮の部屋に置いているボストンバックを取りに行く。
外出届は先日千冬姉に出している。
自室へ入り、戸締りをする。
冷蔵庫の中身なども空であるため、コンセントを抜く。
あまり意味などないかもしれないが、なんとなくやっておく。
トリィには留守番を命じている。
そして、鍵を閉めてフロントに向かう。
「あっ、キラ。これから出発?」
後ろから声をかけられ、振り向くと簪がいた。
「うん。故郷にも帰る予定だからね。みつるぎに行ってから護衛をつれて故郷に行って、そうだねぇ...色々終わったら日本観光もしてみたいな。そうだ!!その時は簪に案内してもらうのもいいかもね」
「もう、キラ。あまりからかわないでよ」
「ゴメンね...少しは本気なんだけどね」
「うん?今なんて?」
「いや、なんでもない。ゴメン、人を待たせているから先に行くね」
「じゃあ、またね」
「またね」
そう言って、僕は走り出した。
フロントにいる千冬姉に鍵を渡すと、僕はモノレールで待ち合わせをしていたスコールとオータムと共にモノレールに乗ってみつるぎへ向かい、服装を整えてISをアカツキからフリーダムへ入れ替えてから空港へ向けて出発する。
亡国機業が手配している飛行機に乗って、アメリカへ向けて出発する。
僕は彼女が今頃月面基地に着く頃かと思いながら、過去の事を思い出す。
彼女、エクシア・ブランケット...今はエクシア・カリバーンという常勝の剣となった女の子の事を。
僕が十歳ぐらいのころ、僕は最高幹部になったばっかりだった。
僕の前任の担当任務を引き継いでいた時に、エクスカリバー計画を知った。
僕も、この作戦は使える、そう判断した。
宇宙からの重要拠点に対する砲撃は魅力的だったからだ。
今のISは嬉しい事に、地球用に改造されていたから、こちらの迎撃は篠ノ之束が協力しない限りは不可能と断定していたからだ。
僕はエクスカリバー計画を知るためにスコールと共に、宇宙へ上がった。
ISが生まれてからはロケットの打ち上げは殆ど無くなった。
それほどISというのは凄かった。
打ち上げられるのは、無人の人工衛星ぐらいだった。
だから、廃れていったロケット工場を利用して宇宙に行くのは容易だった。
レーダに引っ掛からないようにステルスを張れば、何も問題なかったからだ。
そして、僕はエクスカリバーの中に入って、彼女に会った。
培養液の中に囚われていた彼女を見たんだ。
培養液を一番効率よく利用する方法がこれだったのだ。
その時は、仕方のない事だと、必要な犠牲だと割り切った。
冷たいかもしれないが、僕は天秤をかけて、無理だと判断したら切り捨てる選択をとる人間だ。
夢や理想、自身の感情にエゴ。
そういったものは、僕にもある...と言うよりも、その塊が僕だろう。
でも、それではどうにもできないことがある。
ラウ・ル・クルーゼ、ステラ・ルーシェ。
僕だけではどうしようもなかったものだ。
ラウ・ル・クルーゼは、僕自身が彼の言葉を認めなければ何も出来なかったから止めようもなかった。
ステラ・ルーシェは仮に救えたとしても、処刑されるのは目に見えていた。
あの時、シンと協力して救えたとしても、肝心の薬がなければ救えないし、健康だったとしても、多くの人を殺した彼女を処刑させない道が見えない。
多くのザフトの軍人が死んだ時点で、デュランダル議長も処刑にするつもりだっただろう。
シンには「すまない、出来る限りの事はしたが、多くのザフトの軍人が彼女の手によって殺された事実は覆せないのだ。君の為にも彼女を救いたかったが、私はザフトの...プラントの顔なのだ。一個人の為だけに、周りの意見を聞かないわけにはいかないのだ。せめて、時間を伸ばす。その間、彼女のそばにずっといて構わない」とか言うだろう。
それが、人を導く正しい者の判断だから。
だから、僕もそう判断して、培養液を見て見ぬふりをしていた。
でも、エクシア・カリバーンの過去と培養液の効率問題を資料で見てから、その判断を変えた。
人柱による効率のアップは1%弱だった。
継続的に行うと確かに大きな差だが、僕からすれば人を犠牲にしてでも行う価値はないと判断したからだ。
そこからの行動は早かった。
僕は、ここにいる科学者に別の任務を与えて地球に帰し、僕の派閥の人間をこちらに派遣した。
ボスに交渉して、三年後に彼女を培養液に入れることを条件に、一時的な自由を与えてもらった。
その間に、打てる策は全て打つことにした。
まず、彼女に読み書きを教えて、一通りの運動が出来るようにリハビリをさせた。
そして、その傍らにスコールから護身術を習わせて、その間にISの適性検査も行わせた。
驚くことに彼女のIS適性は『A』とオータムと並んでいた。
そして僕は彼女を死なせないために、ISを開発した。
『プロトセイバーガンダム』
本当なら、ストライクやインパルス、ハイペリオンといったナイフを使う機体の方が良いんだろうが、彼女が本来居るべき場所、オルコット家に戻ったときの事を考えると、サーベルはあった方が良いと僕は判断した。
そしてISの訓練は僕、スコール、オータムと交代しながら行った。
他にも紅茶の入れ方や、掃除の仕方、金銭のやり取りなどをさせた。
ご主人様呼びだけは避けさせた。
正直、恥ずかしかったよ。
そして、約束の時が来て、彼女は再び眠りについた。
そんな彼女も元いた場所ではないが、再び目を覚ましたと思う。
合流したら、リハビリを手伝わないとね。
『着陸いたします、お客様は席についてシートベルトをご着用ください』
アナウンスが鳴った。
もう着いたのか。
これから亡国機業の今後についての会議がある。
けど、恐らくは解散に近いことになる。
亡国機業は解体されるだろう。
国からのバックアップもない。
でも、僕からすれば慣れたことだ。
悲観する程でもないね。
「行くよ、スコール、オータム」
「「はい、キラ様」」
さすがのオータムもTPOを弁えている。
給料を上げておこうか。
というわけで、新キャラのエクシア・カリバーンことエクシア・ブランケットさんです。
エクシアさんの過去については後々分かります。
まあ、殆ど原作通りだけどね!!