少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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賢者の意思

「な、なーー」

 

「何故ーー何故ーー!?」

 

「……誰……?」

 

 

 

 

 

 ソレを止めたのは。

 

 

 

 

 爺×2だった。

 

 

 この場の平均年齢を一気に老けさせる、圧倒的な高齢力を持った。

 

 爺×2だった。

 

 

 

 

「ホグワーツ校長! アルバス・ダンブルドア!」

「石、共同開発! ニコラス・フラメル!」

 

 

 

「「ふたりは老いぼれ!!」」

 

 

 

「闇の力の下僕たちよ!」

「さっさとお家に――帰りなさい!」

 

 

 

 デデーン。

 

 

 という、特に意味もない効果光。

 

 

 

「……」

「……」

『……』

「……えーっと……校長先生……?」

 

 とりあえず、賢者の石は鏡激突スレスレで止まっていたりした。

 流石ダンブルドア。

 老いてもヨボヨボでも爺でも、偉大な魔法使いである。

 

 

「……と? ニコラス・フラメル……?」

「左様。賢者の石の創作者じゃ」

『チャンスだクィリナス! 超級人間世界遺産の脳から記憶を取り出せ!! 記憶さえあれば――! 賢者の石の製造方法さえあれば――!』

「お、仰せの通りにーー!」

 

 何か開心術とかそんな感じの良く分からん魔法使って記憶を覗くクィレル。

 人間はここまで老いることが出来るのか、という人の可能性を実感させてくれるほど老けた爺ニコラス・フラメルはよぼっとした動作で特に何もしなかった。

 

 否。

 

 する必要など――なかった。

 

 

「わ、我が君……これはーー! これはーーー!!」

『どうしたことだ……どうしたことだ!? なんだ!? なんだコレは!?』

「フォッフォッフォッフォ……賢者の石、作ったのは……いつだったかのぅ~~?」

「凄く昔じゃよ、フラメル卿」

「ところでアルバスや……メシはまだかいのぉ~~?」

「お爺ちゃんさっき食べたばっかりじゃろーー?」

「そうじゃったか……ところで、アルバスや……メシはまだかいのぉ~~?」

「さっき食べたばかりじゃろーー」

 

 

「うわぁあああああ! 何だコレはーー!! どうでもいい記憶ばかりが!! 流れて来るぅううう!

 なのに!! 数時間前に喰った食事のことをすぐに忘れるぅううううう!!」

 

『苦行』

 

 

 そう。クィレルも、闇の帝王()も。ハリー達からすれば若いとは言えない年齢だが。

 この御年100歳以上なダンブルドア。そして中世ぐらいから長々と生き続けている超爺。ニコラス・フラメルの前ではよちよち歩きの赤子に等しいッ!!

 そして、まだ健全な脳の彼らには――。

 

 飯を食った事も忘れ、同じ会話をエンドレスでやりつづけるという――高齢者の精神世界は苦行ッ!!

 更には、ニコラス・フラメルは生粋のショタロリ至上主義者! だが、彼の年齢からすれば存命中の人間は基本的に赤子と同義――。即ち、爺であろうがババアであろうがロリとショタと呼び続ける狂った視界!

 そんなものが500年分積み上げられている!! その記憶に通常の人間が耐えきれるハズもない!

 

 否! それは最早拷問の域にまで達し、昇華されていたのであった――――!

 

 

「飯は~~まだかいの~~? ペレネレや~~?? ペレネレ~~?」

「おじーちゃんさっき食べたばかりじゃろーーーー」

 

 

 

 

「……何なの……これ……!?」

「お年寄りってこんなもんだよ、ベス」

 

 

 祖父母の顔すらも知らないベスは生まれて初めて、高齢化社会の闇を目の当たりにしていた。

 

 

 

「遅くなってすまなんだな、ハリー」

「おぉ、アルバスや。このショタがハリーかのぉ……? ふーむ……イグノタス思い出した、イグノタスの息子か孫かのぉ??」

「当たらずとも遠からずじゃよ。当たっているともいえるし、そうでないとも言える。フラメル卿」

 

 ハリーは何か勘違いをされていた。

 尚、ダンブルドアは何か知っているけどスルーを決め込んでいる様子だった。腹黒い。これぞイギリス人。

 

 

「では、あそこに捕らわれている哀れなショタを、くっついている黒ショタから引き離さねばならんのぅ……ところでアルバスや、飯はまだかのぉ?」

「頼んますじゃ、フラメル卿」

「南無南無南無……喝ぁあああっ!!」

 

 良く分からん呪文と共に、ニコラス・フラメルが光を手から放つと、クィレルに謎光線が直撃!

 それを浴びたクィレルは絶叫とともに、後頭部が伸びる! 伸びる! 頭皮がまるでゴムの様だった。

 

 

「ああああああああああああああああ!」

 

 純粋に痛そうなクィレルだった。

 

「駄目じゃ~~~~これは駄目じゃ~~~~。何かのぉ~~あのターバンショタと、黒ショタは深くつながっておるのじゃ。そう……体の奥の……一番深くて、やわらかい所での!!」

「ふぅ……男同士の……愛じゃの……」

「止まらないわこの爺共」

「つまり――心を許しているから、先生とヴォロクソモートは繋がっているんですか!?」

「ハリー、名前はきちんとそのものの名で呼びなさい」

「分かりました先生!」

 

 ハリーはハッとした。

 そう、クィレルとヴォルデモートは恐らくなんやかんやあって、何らかのほにゃらら事情で取りあえず心を許しているからくっつきあっているのだ!

 ハリーはすくっとクィレルの前に立つ。

 

 

「先生……目を覚ましてください先生! そいつは先生を利用しているだけなんだ!」

「わ、我が君を貶めるなポッター! わ、私は利用されてなどいない!! そうだ! わ、私は……」

「先生!」

「私……は……! ……私は……」

「先生! あなたも気づいているハズです先生! あなたを――あなたを! 本気で! 愛している人間が――! 腰が死ぬまでお辞儀を強要するわけがない!!」

 

「…………っ!」

 

 

 クィレルが、目を見開いた。

 

 

「だから――! だからっ!!

 

 

 戻ってきてください!! クィレル先生!!」

 

 

 ハリーがまるで乞う様に。

 だが誇り高さを決して失うことのない様に――。

 

 頭を垂れた。

 

 そう。

 

 

 

 

 

 それは。

 

 

 

 

 

 見る者全てを。

 

 

 

 

 

 

 許すかのような

 

 

 

 

 

 

 

 許容するような

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――お辞儀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわぁあああああああああああああ!!」

 

『クィリナーーーーーース!?!?』

 

「私は――! 私は――――!! そうだ! 私は!! 私のお辞儀は!! ブリッジなんかするお辞儀じゃない!」

 

『クィィイイイリナァアアス!! 貴様ぁああああ!!』

 

「黙れ! お前などもう我が君などと呼ぶものかこのお辞儀草が!! よくも私の腰を駄目にしてくれたな!!

 失望しました。闇の帝王のファン辞めます」

 

『うわああああああああああ!!』

 

 

 

 急展開だった。

 ヴォルデモートはみるみる内に引きはがされていく。

 どう見てもただの黒い霞っぽかった。

 

 

 

『信じられん……クィリナスとゎかれた。 ちょぉ信頼してたのに。。。もぅマヂ無理。。。』

 

 

 

 絶望し、うなだれる帝王。

 ベスはここで我に返った。

 

 

 

「何だか可哀想だからこっちに付きます私」

『マジでか。やった。勝機見えた』

「ラドフォード! ソイツの甘言に耳を貸すな!!」

『黙れクィリナス! 全てはお前のせいなのだぞ……!』

「ついに10代前半の女の子に手を出すとは……ハッ、落ちたもんだな。ヴォルデモート?」

『貴っ様ぁああああああああああ!!』

「え、ちょ……寄生するの!? 取りつくの!? すみません闇の帝王それ無理!! ソレは無理!!」

『ちょっとチクっとするだけだから気にするでない』

「ごめんなさいそんなの無理ですぅううう! だって! 純粋に……気持ち悪い!!」

 

『……』

「……」

「……」

 

 

 

「嫌がるロリボイス……ふぅむ……何年振りに聞いたかのぅ……お嬢ちゃん、この後ワシと一緒に賢者の石を造らな……」

「フラメル卿。それは許すことは出来ぬのじゃ」

「……冗談じゃよアルバス。ちょっとムラっと来ただけじゃ」

 

 

 爺さん共は元気だった。

 英雄ってどっかぶっ壊れてる奴多いから仕方ない。

 

 

 

 

『クソォおおおおこのままでは……このままでは昇天する……! おのれ……ならばせめて一矢報いるまで―――!』

 

 

 闇の帝王が完全に抽出。

 僅かだが、間違えなく実態を伴ったであろう細かい空中の粒子が、ヴォルデモート(霞)を形成する。

 そして、ヴォルデモートは。

 

 

 

 

 

 超速回転ドリルツイストをハリーの腹目がけてブチかましたッ!!

 

 

 

 

 それは、最早ツイストではない――見る者全てを飲み込むかのような――ブラックホールであった。

 

 

 

 

 

『死に晒せぇええええええええええええ!!』

「危ない!! ポッター!!」

「―――ッ!先生!!」

 

 

 ヴォルデモートのトルネードスピン!! 

 

 だが、寸での所でハリーを庇う影があった。

 それは、クィリナス・クィレル。

 ターバンすら捨て去った彼は――最後の力を振り絞り、砕けた腰を持ちあげ、その身を挺し――ハリーを庇った。

 

 

「先生ーーーー!」

「ポッター……私は――私は――闇の魔術に対……する……防衛術の……教師だ。

 ゴホッ……やっぱり……君には……ひ、ひひひ必要無かった……かも、しれないな……」

「そんなことないです! 先生!」

「……最後に……君の……先生で…………あり……たかった……。

 …………良かった……かなった…………」

「先生……? クィレル……先生!!」

 

 人生で最高に輝いた状態のまま。

 

 満足そうに――微笑んだかと思うと、ゆっくりとその生涯を終えた。

 

 

 

 

「先生……! 先生! 僕なんか……僕なんかの為に……! みんないつもそうなんだ……! 僕の――パパとママ……みたいに……!」

 

「命を賭して……生徒を守ったか……。立派な防衛術の教師じゃったよ……クィリナス」

「マジか。感心なショタじゃな」

「黙って見てただけの爺共が何を今さら」

 

 次の瞬間。

 フラメルがさっと赤い石を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、石はこの感心なショタに使うわ」

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 クィレルの砕け散った内臓にフラメルが腕を突っ込んだ。

 数秒後。

 

 

「なんだ……体が……軽いーー!? まるで……生まれ変わったようだ……」

 

 

 クィレルは復活した。

 

 

「……こんな気持ちは生まれて初めてだ! スゴイ! ちょっとサラザールスリザリンのロケットを探して破壊しなきゃいけない気分になった! 行ってきます!!」

 

 クィレルは風の様にトルネードツイストをかましながらどっか消えた。

 

 

 やがて、緊張の糸が切れてしまったのだろう。

 ハリーはその場でぱたり、と気絶してしまった。

 

 後には、ハリーに狼藉を働こうとするフラメル。ソレを止めるダンブルドア。

 何も出来ず腰を抜かすベス。

 そして、割れなかった鏡だけが、残された。

 

 

 

 

 






コレがやりたかったぁ!!


針島さん誤字報告ありがとうございました

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