少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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ギルデロイ・ロックハートと楽しい授業

『信じられない日本製品』

 

『世界よ、コレが日本車だ』

 

『東京株式市場騒然。イギリスからの資本大流入』

 

『MADE IN JAPANの神話は終わらない』

 

 

 

 

「一体どうなっているのだ!!」

 

「知りません」

「知りません」

「ニュース早すぎるわ……仕事しすぎでしょ新聞記者」

 

 

「そうだ! 空飛ぶ車!? それが日本製!? そのせいで日本車を買い求めようとする英国人が後を絶たない!! 国産車は大打撃だ! 今そのせいで工場は止まりまくっている!! 先行きの見えないイギリス経済!! 一体どうしてくれる!?!?」

 

「知りません」

「知りません」

「EU脱退でもすればいいんじゃないですかーー?」(適当)

「チュー」(90年代っつーことわかってんのか小娘が)

 

 

「そうだ適当なことを言うなラドフォード!! コレに乗じて――ハグリッドはスコットランド独立運動の集会に行きやがったではないか!!」

 

「マジでか」

「ついにやるんか」

「やだ……ユニオンフラッグどうなってしまうん……? 青いところ消えるの? すぐに国旗付きのアイテム買い占めなきゃ! あと20年くらいしたらプレミアがつくわ!」

「ちゅーー」(何の話してんだよお前ら)

 

 

「とりあえず貴様たちがしでかしたことは重罪だ! 退学だ!! ついでに暴れ柳を燃やしてくださりやがって本当に本当にありがとうございました!」

 

「どういたしまして」

「気にすんな」

「灰にしてやったわ」

「チュ~……」(誰か人間語会話の出来る奴呼んで来い)

 

 

 

「そしてお前達は退学だ!!」

 

 

 

「おいこら勝手に決めるでないセブルス」

 

 ダンブルドア、怒りの突入。

 

 

「……校長」

「ハリー、ロン、そしてベス……君たち3人のしでかしたことはトンデモナイことじゃ」

 

「はい」

「はい」

「すんませんでした」

 

 

「じゃが、ワシは面白かった。ので退学にするのは取りやめにしてやろう。偉大なる校長に感謝するのじゃ」

 

 

「「「這いつくばってお辞儀します」」」

 

「ウム、それでいい。跪け」

 

 

 よく訓練されたホグワーツ生は校長に対し何のためらいもなく土下座をすることができるのだ。

 たとえそれが肉焦がし骨焼く鉄板の上であろうとも。

 

「だけどマクゴナガルとかいう怖い婆が罰則しねぇと殺す病に罹ってるのでお前らに罰則を与えます。ハリーはロックハートのファンレターのゴーストライター。赤毛はフィルチとトロフィー磨き。んで便所娘は……そうじゃの。

 

 ホグワーツ中の全てのトイレ掃除で良かろう」

 

 

「ありがとうございます!! ありがとうございます!! 話の分かる校長HUUUUUUUU!!」

「おったまげー。罰則がご褒美になってるぜマー髭ーー!」

「ロックハート!? えー……僕あの人苦手なんだけどな……」

「人生思うままにはならないよな。ハリー」

「負け犬が。そうやって吠えてろ。私は高みに上り詰めるわ」

「君が居る場所は肥溜めだからな。そろそろ人間界に上がって来いよな」

「ちゅーーー!」(腹減った、オラ、チーズ出せコラ)

 

 

 

 なんかそうゆうコトで、罰則食らったけど減点はされませんでした。

 そのあたり本当マクゴナガルの拡大解釈っぷりが火を吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? 今年の闇の魔術に対する防衛術の先生は一体誰なのかしら?」

「今はスプラウト先生の授業の時間なんだけどな~~……えへへ~~ベスちゃん気になるの~~?」

「……眼光の輝きはともかく、面だけは二枚目と見た」

「マジか。イケメンか。大正義じゃない」

 

 去年は闇の帝王が後頭部にひっついてる奴だったからなーとベスは思い出す。

 よくよく考えてみれば失策だった。他にもっとやる手とかうつ手とか会ったような気がする。

 今年こそは挽回しないと、と思うベスだった。

 死喰い人になりたい少女は今日も頑張る。

 

 

「はいはーい! 皆さん! お喋りはそこまで!! 今からマンドレイクの植え替えをやります! 誰か、マンドレイクの特徴が分かる人はーー!?」

 

 ハーマイオニーが手を上げた。

 

「マンドレイク、別名マンドラゴラは強力な回復薬です。姿かたちを変えられたり、呪いをかけられた人を元の姿に戻すのに使われます」

「素晴らしい、グリフィンドールに10点。ですがこの薬草は諸刃の剣とも呼ばれます。危険な面もあるからです、誰かそれが分かる人は」

「ほい」

 

 対抗してベスも挙手してみる。

 

「マンドレイクの泣き声はヤベェ五月蠅いので、聴いた人間の気が狂います。もしくは死にます。多分非常に賢い草なので薬品が生成されるときに自分の四肢が切断されること、もしくは命が失われることが理解できるのでしょう。その絶叫にマトモな人間なら精神が耐えきれないからです」

「その通り! スリザリン素晴らしい! けど余計なこと言ったので点数はナシです」

「ケチ臭」

「黙りなさい減点しますよ」

 

 一番温厚と言われるハッフルパフの寮監ですらこの様。

 

 生徒たちは全員マンドレイクを引っこ抜き、隣の鉢植えに移し、その上にぱらぱらと優しく土をかけて窒息させてあげるという微妙な作業に従事することになった。

 あとハリーがジャスティンとかいうヤツに聞いてないのに素性をくっちゃべられて迷惑そうにしていたけどベスはそんなこと別に気にしなかった。

 

 

「よいっ……しょ! きゃっ!」

「介錯っ!」

「ほい」

 

「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!」」」

 

「うぅ――! 耳が~~……キーンってするよぉー……」

「喚きなさるな! 潔く最期を遂げられよ!」

「うっせ」

 

「「「ギャーーーーーーーーーー!!」」」

 

「も~も~~! 良い子だから大人しくしてよぉ!」

「恨みが御座らぬが、ここで死んで頂く」

「さっさと生き埋めよ、生き埋め」

 

 

 ひどく苦しいのだろう。マンドレイクたちはそれぞれ絶叫をあげながら、土の中に沈んで行った。

 まだもがいているモノも居るが、びくん、びくんと数度葉っぱを大きく揺らすと――――やがて動かなくなった。

 

 

「うわぁああ! も、もう! じたばたしないでったらぁ!」

「ダフネ、あまり長く苦しませるな!!」

「寝ます。zzz……」

「ふぇぇ……どうしてそんなに動いちゃうの~~! や、やだ。も、もぅ……!」

 

 

「なぁ……女子の声ってこう……アレだよな……」

「クるよな~~……特にグリーングラスの声は意識ぶっ飛びそうになるよな!」

「…………ふぅ」

 

 

「あっ! も、やぁっ! このぉーー! 悪い子は~~こうしちゃうんだからーー!」

 

 ビキバキボキィ!

 

 と、ダフネの細い、たおやかな白くて長い指先から。

 何かが折れるような音がした。

 

 

「……」

「……」

「……」

 

「あ! やっと大人しくなったよぉ……えーいっ☆」

 

「……」

「…………女って……」

「…………アイツに迂闊な気持ちで手ェ出すのだけは、やめとこう……」

 

 

「おい聞こえてんぞ男子共」

「次マンドレイクにされたい奴から前へ出ろ」

「つか、なんで鳴き声で人殺すような草を授業で扱うんですかねェ……この学校やっぱり生徒殺しに来てるわ」

「サラザール・スリザリン卿が組んだカリキュラムです文句言うなカス」

 

 こんな感じで、ネビル一人の犠牲でマンドレイクの土葬合戦が終わりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時は、来たれり」

「ついにまちにまった、この時間」

「長かった……! 爺と婆と小人……どう見ても育成過多なコウモリ……死んでも教職を離さねえ老害……ロクな教師が居ないこの学校」

「その中に光指す、ただひとつの希望―――」

 

 

 

 

「「「「キャーーーー!! ロックハート様ぁああああああああああああああ!」」」」

 

 

 

 

「黙るフォい! 女子!!」

「女子、元気……」

「女ノ子ハ、元気ガ一番」

 

 

「るっせーぞフォイカスが黙れ死ね!!」

「黙れそこどけ見えねえだろうがブチ殺すぞ!!」

「死ね! 死んで灰になれ!!」

「ロックハート様こそ大正義だろうがさっさとクソして死んどけこのフォイカス!!」

 

 

「オイ! スリザリン女子! 全員ラドフォードが感染しているぞ! ところで本物のラドフォードが何処だ!?」

「ようフォイカス。久しぶり、元気ーー?」

「居た! ラ、ラドフォード君こそ……ちょっと見ない間にまた可愛くなってるフォ……フォ!? 君……君何してるんだ!?」

「ロックハート様のウチワにハッピに鉢巻よ。コレがなきゃはじまんねーだろーが。

 

 皆様ーー? 準備はよろしくてーーーー!?」

 

 

「「「「よろしくてよーーーー!!」」」」

 

「じゃあ大きな声で呼びましょー! せーのっ!!」

 

 

 

「「「「「ロックハート先生ーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」

 

 

 

「何が始まるんだフォイ……? 今から――――闇の魔術に対する防衛術の授業をするんじゃないの……?」

 

 

 途端に落ちる灯り。

 暗くなる教室。

 

 そして灯る一筋の光。

 

 その先から。

 

 

 

 

 

 キラキラのコートを纏ったロックハート様が現れた。

 

 

 

 

「やぁ、!みんな、私の授業に来てくれてありがとう!!!!」

 

 

「「「「キャーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」

 

 

「まずは小テストの時間さ! 君たちがちゃんと予習をやっているかどうか確認させてもらいますよ~~!

 お嬢さんたち……お勉強の時間の……ハジマリだっ! ワン、ツー、スリー、フォイ!!」

 

 流れる軽快な音楽とマイクを持ち出すロックハート。

 どこからともなく現れたバックダンサーたち。

 そして始まる――――。

 

 前代未聞の授業。

 

 

 

「好きな色は~~~♪」

 

「「「「ライラックーーーー!」」」」

 

「ひそかな大望~~~♪」

 

「「「「悪を撲滅! アンド、整・髪・剤!!」」」」

 

「誕生日は~~♪」

 

「「「「26th November!!」」」」

 

「理想的な贈り物は――――」

 

「「「人間界と魔法界のーー!」」」

 

 

「ハ~~モ~~ニィ~~~♪」

 

 

「「「「きゃーーーーーーーっ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「何だこの授業……」

 

「まぁ、うん。ロックハート様だろ」

「顔だけ男のやりそーなことだわ、だらしねェな」

「…………オレこうゆうの結構好きだわ…………」

 

 

 

「素晴らしい!! スリザリンに10点です! そして~~本日の授業は終了ーーーー! また会いましょう! それでは皆さん! ハバナイスデイ☆」

 

 

「「「「ロックハート様ーーーーーーっ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 


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