少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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組分け

 グレートブリテン及び『北』アイルランド連合王国。

 首都ロンドン。

 キングス・クロス駅。

 

 そこには毎年『9と4分の3番線』を探す11歳の少年少女が溢れているという。

 

 そんな感じでハリーとかロンと愉快な赤毛一家とかハーマイオニーとかマルフォイとかネビルとか色々乗った。

  

 ホグワーツに到着。

 

 

 ホグワーツ特急の快適な汽車旅中にトイレを独占し、ありとあらゆる人間に迷惑をかけまくっていたことを放置し、外の世界の目まぐるしく変わる景色さえもスルーし、ホグワーツ特急のトイレの鑑賞ばっかしていたベスは友達のひとりも作ることは出来なかった。 

 仕方ないので唯一会話できそうなハリーを探す。

 

 するとハリーの隣には見覚えの全くない赤毛の少年が居た。

 

「ハァイ、ハリー、ダイアゴン振りね! そっちのうだつの上がら無さそうな赤毛は一体誰かしら?」

「僕ロン、ロン・ウィーズリー」

「あら! 確か『ウィーズリー』って有名だわ! 知ってるわよ!」

「変なウワサじゃないと良いけどね」

 

 ロンと名乗った赤毛少年は年に似合わない皮肉気な口調で言った。

 

「え、そうなの? ロン」

「言っただろ? 僕の家は兄弟がいっぱいだからさ……上の兄さんたちが多すぎてホグワーツでも有名になっちゃってるんだよ……最近は大方あのフレッドとジョージのせいでね」

「確か凄い純血のお家でしょう? 素晴らしいじゃない! ご家族を誇っていいと思うわ! それにお兄さんが沢山いるっていうのもとっても素敵。純血が多いことは喜ばしいことだものね」

「うっわーおったまげー。ハリー、コイツ相当なクズだぜ、純血主義の匂いがプンプンしやがる。こんな絵に描いた様なレイシストなんかてっきりビートル物語にしか居ないと思ってたよ! ホグワーツってやっぱりすごいや!!」

「何言ってるんだよロン。僕はベスは良い子だと思うよ。相当変わってるけどね」

「ハリー……君、友達は選んだ方がいいよ」

「はい失礼なクソ赤毛発見。血を裏切る者認定しました今すぐ腹切って死ね」

「君のようなカビの生えたレイシストに変なカス認定されても別に僕は嫌な気持ちしないからいいよ」

 

 

 

「そうさ、この『血を裏切るもの共』――魔法界の恥さらし一家。これで純血とはね、全く情けないよ」

 

 

 

 突如として列が割れ、呼んでも居ないのに嫌味な金髪の少年が現れた。

 いかにも『おぼっちゃん』風な少々居丈高で生意気そうなガキだった。

 

 

「僕はマルフォイ、ドラコ・マルフォイだ。そこの赤毛の言う通りさ。魔法界にも家柄の良いのと悪いのが居る――僕がソレを教えてあげよう、ハリー・ポッター」

「名乗りもしないのにイキナリ本名を当てられたッター」

「見れば分かる!! 君の額その傷だ!!」

「ほら見ろよ、ハリー。君のネームバリューに乗せられてアホが庭小人ホイホイの如くフォイフォイっと釣れる釣れる」

「これは良くなかッター。序盤から小物ですとカミングアウトするのは良くなかッター」

「これは突沸型雑魚臭不回避ね」

「うるさいな君たち……! というか君は一体誰だよ!!??」

「ベス・ラドフォードよ」

「聞いたこともない名だな。どうせマグル出の『穢れた血』だろ。ひっこんでろよ暫定『穢れた血』!」

「まぁ失礼ね! 私のパパはれっきとした死喰い人だったのよ! ついでにママはコンビニ強盗で今アズカバンに居るわ! そんな私が純血じゃない訳がないでしょうこのアンポンタン!!」

「(え……死喰い人……? ……いや……でも父上から聞いたことないな……うん……)そうか、わかったさようなら、できれば同じ寮には入りたくないねキミたちとは!!」

「おったまげだよ。ベス、君ってば確かに純血だろうな、いろんな意味でな」

「分かったならいいのよ、ロンは他の馬鹿とは違って物わかりがいいわね」

「当然だよ。君は間違えなく純血筋の魔女さ、じゃなきゃここまでのちょっと人間としてどうかと思うレベルの逸材は中々生まれないさ、間違いない」

「ロン、人の親を悪く言う人って……僕は嫌いだな」

「ごめんなさい」

 

 と、言う具合に各自和やかにおしゃべりを楽しんでいると、階段の上から髷を結ったエメラルド色のマントを着た婆が現れる。

 実に気高そうであり、荘厳かつ厳粛な空気をまとうババアだった。

 

 

「皆さん、ホグワーツにようこそ。副校長のマクゴナガルです。

 突然ですがあなた達は今から寮に配属されます。拒否権はありません」

 

 

 

 

「マジか」

「強制イベント入りました」

「フレッド曰く、地獄の苦しみを味わい、シクった奴は肉塊となって死ぬらしいよ」

「いい加減にしなさいよあなた達」

「ふぉい……」

 

 

 

「勇気名物グリフィンドール、ガリ勉はレイブンクロー、見るからにセコそうなヤツはスリザリン、残ったのがハッフルパフです。配属されたら得点とか減点とか色々あるので死ぬ気で頑張りなさい。あとクィディッチです。親兄弟親類にクィディッチの選手が居るというものは今すぐここで私に申し出なさい。強制グリフィンドー……冗談です」

 

 

「クィ……え? 何?」

「そうね、うまく言えないけど……ホウキにマタがって金の玉を追いかけるマグルにはできないスポーツよ」

「テメェそれ以上クソみてぇな説明するとぶっ殺すぞゴミ女、クィディッチを馬鹿にするなよ」

「……魔法界って……大丈夫……なのかしら……?」

 

 

 そんな訳で宇宙が見えるトチ狂った天井を通り過ぎながら組分けの儀式が始まった。

 

「名前を読んだら前に出なさい――ハンナ・アボット!!」

「ひっ……」

「アボット、出なさい」

 

 可哀想に、金髪の少女は怯えていた。

 Aから始まるが故の不運。

 名前の暴力からは逃れられないのだった。

 

「ふぅ~む…………うん。うん。よろしい。……ハッフルパフ!!」

 

「スーザン・ボーンズ」

「ハッフル」

 

 こんな感じでさくさく進んだ。

 

 

 

「ドラコ・マルフォイ!!」

「スリザリン!!」

 

 

「悪の道に走った魔法使いは皆スリザリンだ」

「スリザリンの風評被害?」

「まぁ、君も多分スリザリンだと思うけどね」

「だといいわね」

 

 

「ハリー・ポッター!!」

 

 

 ハリーが呼ばれ、壇上に上がり椅子に座る。

 帽子は悩んでいた。

 勇気もある、頭も良い、優しさも十分、何より自分の力を発揮したいと強く願っている。

 何処に行っても才能を発揮できるであろう人物を前に、悩んでいた。

 緑か赤の2択、というところまで絞れたところで、帽子はその小さなささやきを逃すことはなかった。

 

 スリザリンは嫌だ。

 

 

「いやかね? スリザリンは嫌かね? ならば仕方ない――グリフィンドォオオオオオオル!!」

 

 

 

「おっしゃぁあああああああああ!!」

「フゥウウウウウウイ!!」

「ポッターを取ったどーーーー!」

 

 

 

 

「エリザベス・ラドフォード!」

 

 

 ついにベスの番が来た。

 

 他の生徒と同じく椅子に腰かけ帽子をかぶる。

 即答で「スリザリン!」と呼ばれるかと期待していたにもかかわらず、帽子は黙していた。

 

 1分、2分、3分……カップラーメンだったらもうひとつ完成している。

 業を煮やしたベスが帽子をつつく。

 

 

 

(ちょっと帽子さん……帽子さん……聞こえますか……? 私です……今組分けしている私です……頭上のあなたに向かって話しかけています……)

 

「コイツ直接脳内に……!」

 

(スリザリンがいいスリザリンがいいスリザリンがいいスリザリンがいいスリザリンがいい)

 

「さっきのポッター君とは真逆のようだねキミは」

 

(野心には溢れかえっています。自慢じゃないけど目的の為なら規則スルーの、手段はあんまり取らない性格です……! というか将来の夢死喰い人なので絶対スリザリンに入れて下さいじゃなきゃ困るわ)

 

「……えー……エェー……。うーん……どうしよっかなー……」

 

(スリザリンがいいなースリザリンがいいなー)

 

「……よろしい。では。

 

 

 

 

 

 

 ハッフルp----」

 

 

 

「ストォオオオオオオオオオップ!!!!」

 

 

 

 帽子が穴熊寮を宣言しようとしたその時――ベスは前代未聞。

 帽子の顔(みたいな部分)に腕を突っ込んで宣言を防ぐという空前絶後の絶技をやってのけた。

 結果は成功。おそらくはホグワーツ始まって以来の暴挙だったかもしれない。

 

 

(なんでよ! なんでよりによって穴熊なのよ!! こんなん絶対アウトじゃない)

 

 

「るーっせーなヌッコロスぞ」

 

 

(申し訳ありませんでした)

 

 

「耳の穴かっぽじってよく聞けクソガキ。どーせテメェらさんのことだから両親揃ってスリザリン入れスリザリン入れって洗脳されてんだろ? 違う? スリザリンじゃなきゃウチの子じゃない位に言われてんだろ。ん? ん?? どーよ? 結構居るんだよなそうゆうの」

 

( )

 

 

「だからつっって、毎年毎年それっぽい奴それっぽい所にぶち込んどくのもつまんねーじゃん? 帽子がおもしろくねーじゃん? 血筋とか性格とか全くスルーして真逆の所にブッ込むのも楽しいじゃん? ここ最近じゃブラックとかプリンスとかペテグリューとか最高だったわーークッソ笑ったわーーいい仕事したわーー」

 

 

(……)

 

 

「それにしてもいやはや、11歳の子供の親の期待に応えたいという純真無垢な願いを踏みにじるのは楽しいですなぁ。毎年そうやって泣き崩れ、絶望に歪む子供たちの顔を見る事だけが楽しみなのだよ帽子はね! だって一年の大半を校長室の飾りに徹してるんだもん! こうゆう時だけ輝いたっていいじゃない、帽子だもの」

 

(…………)

 

「ねぇどんな気持ち? ねぇねぇ今どんな気持ち?? 悔しい? 悲しい? 絶望した? ねぇ今絶望してる? 帽子は今この瞬間の為に生きてるよ!!」

 

(…………………)

 

 

 

 

 

 ものも言えなくなったベスは。

 

 

 黙ってポケットにあったガリオン金貨×5枚をこっそりスカートからローブの袖にくぐらせ、つっこんだままの手から帽子に向かって投函した。

 

 つまり

 

 

 

 

 

 賄賂だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スリザリィイイイイイイイイイン!!!!」

 

「物わかりのいい帽子さんで良かったわ! ありがとうっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベスはぴょん、と軽やかに組分け帽子を投げ捨てると、スリザリンのテーブルへと向かった。

 そこそこ可愛いのが来たのでスリザリンテーブル(主に男子生徒)はソコソコ賑わった。

 テーブルには沢山の食事が乗っている。

 フィッシュ・アンド・チップス。スコットランド地方の伝統料理ハギス。

 見るモノを混沌とした狂気の渦へと落としこむ冒涜的な造形のスター・ゲイザー・パイ。

 

 

 

 

 極めつけは――ウナギのゼリー寄せだった。

 

 

 

 

 

 

「むっしゃむっしゃむっしゃ」

「食える。おいしくないけど食える」

「飯というのは腹に詰め込むものだ」

「大丈夫、問題ない」

 

 

 

 イギリス人にとって食事とは単なる栄養補給でしかなかったからあまり問題はなかった。そもそもホグワーツの入学条件はイギリス(領)出身であることっぽいので、DNAレベルでケルトってる舌の持ち主たちは多少正常な味覚というものをその食生活に合わせて変化させ、淘汰し、磨かれてきた感性を民族として完成させていたのだった。

 

 

 

 その後自称校長っぽい白鬚の爺が何か喋った。

 半分の月っぽい眼鏡かけている爺だった。多分老眼鏡だろう。

 内容は

 

 

 ・森に入るな

 ・廊下で勝手に魔法使うな

 ・四階の廊下には近づくな

 

 という実に要点をかいつまんだ素晴らしい説明だった。

 当然ベスは長い話と歌を聞くのが苦手だった。

 

 

 

「zzz……」

 

「おいこの1年寝てんぞ」

「かわいい」

「天使の寝顔だ」

「so sweet ...」

 

 

 ダンブルドア校長の話が終わり、テキトーな校歌が終わった瞬間目を覚ましたベスはスリザリン寮に入る。

 

 あどけない子供たちが地下牢にいきなり入っていくというマニアックなプレイを行った後に入るという謎の仕様は創設者サラザール・スリザリンの性癖がうかがわせるものだった。

 エメラルド色を基調としたカーテンや壁紙。天井が低く、そこには鎖でランプが吊るされていた。

 何より少年少女らの目を引いたのは、そのデカい窓だった。

 

 

 

 

「「「「イカぁああああああああああ!!」」」」

 

 

 

 

 それは――形容しがたい恐怖を称えた巨大な生き物だった。

 およそ生者のものとは到底おもえない肌の色。

 不自然に複数ある長い足は曲がりくねり湾曲し、おのずから絡まり合い無限の収束を試みているかの様。

 水槽の先には底知れない何かを称えた巨大な目。奥底に広がる虚無的な目は光すら届かぬ深淵を映し出しており、それは人間が本来持つであろう原始的な恐怖を喚起させ、呼び覚まし、挑発し、混沌へと誘うかのごとき闇を称えていた。

 

 

 という形容しがたい恐怖に一年生は捕らわれる。

 

 

 

 

 

 うろたえる1年生たちを高みから見下すのは、知的な雰囲気の上級生美人。

 

 

 

「おめでとう!私は監督生のジェマ・ファーレイ、スリザリン寮に心から歓迎するわ」

 

 

「やった美人監督生だーー」

「乳でかいー」

「ウホっいい女」

「……超タイプ……」

 

 そこから長い話が始まった。

 

 スリザリンは何か誤解されてるけど別にそこまで純血に拘ってる訳じゃねーよ、とか闇の魔法使いも多いかもだけど昔にはマーリンとかいうスゲエ奴も居たよとかグリフィンドールはウザいけど気にすんなとかスリザリンは皆兄弟姉妹だから上級生を頼っていいんだよ、とかそんな感じだった。

 

 

「zzz……」

「フォい……こいつどうしようもないフォい……。おい、起きろよ!!」

「zzz……パパぁ……むにゃむにゃ……ハッ! なんだ夢か」

「……人の話位まともに聞けないのか君は……一体どうゆう教育をうけてきたんだ」

「要約オナシャス」

 

「あと、皆知ってると思うけどスリザリンのゴーストは『血みどろ男爵』よ。気に入られれば強い味方になってくれるかもね。そうじゃなくても彼はスリザリンの生徒には手出ししないから大丈夫。

 あぁ、でもなんで血みどろなのかは聞かない方がいいわ。……ソレを聞いて、二度と戻ってこなかった友達もいるの……」

 

「ヒエッ」

「狂気じみた何かを感じた」

「マジスか怖いッスね」

「…………ゴーストぶっ殺す方法ってねーかなぁー……」

 

「じゃそうゆう訳だから寝ろ。明日から授業だからね。寮監のスネイプはスリザリン贔屓ガンガンしてくれるから魔法薬の授業は分からなくても間違ってても手を上げるといいわよ。当たれば得点、外れても残念賞の点数くれるから。

 

 そして最後に!

 

 皆聞いて……スリザリンはここ6年間、ずっと『優勝カップ』を取ってきたわ。だから今年で7冠よ。

 これはホグワーツ史上でも中々ない偉業だわ。だから皆で頑張りましょう。スリザリンに勝利を!!」

 

 

 

「お姉様の言う通りに致します」

「強気な女はマジいいわ。母さんみたいだわ」

「…………健気美人最高……」

 

「zz……はっ! 寝てない!」

「……もう突っ込むのも疲れたんだが?」

 

 ベスは隣の金髪オールバックを見た。

 確かマルフォイとかいうガキだった。

 何か呆れかえっていた。

 やがて、歓迎会に疲れた生徒たちは各々散っていく。

 

 出来たばかりの友人とお喋りをする女生徒。

 元々仲間同士だったのか、気の合う友との再会を喜ぶ男子生徒。

 あるいは不安げにきょろきょろと周りを見渡していた子を、兄らしき上級生が手招きする――という、光景が見られた。

 

 未だポツン、と残っているのは金髪の少年と黒髪の少女――マルフォイとベスだけになる。

 

 何とも言えない数秒の沈黙――の末に。

 

 マルフォイがやっと言葉を見つける。

 

 

 

「…………純血っていうのは、本当だったんだな」

「だから言ったでしょ」

「あんまりにも怪しかったからつい……だから、その……。き、君もそこそこいい家柄なんだな!」

「さぁ? 叔母さんはあんまり言ってくれないから分かんないけど……でもしもべ妖精のティニーはいつも『ベスお嬢様は代々続く純血のお家柄でございますのに』って言ってるからそうだと思うわ」

「あぁ、しもべ妖精が居る家なのか……じゃあそれなりに名家だったんだな」

「知らね、どーでもいいわそんなん」

「フォ……?」

「私は純血だものそれでいいじゃないの。家なんか関係ないでしょ。パパは死んじゃったけどきっと立派な死喰い人で闇の帝王と共に戦っていたんだから。そんな凄いパパを育てた私の家が名門じゃないわけないでしょ」

「……」

 

 マルフォイは唖然とした。

 

 最早理論もクソもない超絶暴論。根拠も証拠もなければ願望しか存在しない妄想。

 

 だけど、ドラコ・マルフォイは。

 

 その考え方は嫌いじゃなかった。

 

 

「…………」

「何?」

「…………あぁ、もう鈍いな君は!! 握手だよ!!」

「分かり辛」

「るせぇそこのランタンみたくされたくなかったら大人しく握手しろボケ」

「吊るされたくないので全力で手を握ります。あくしゅーあくしゅー」

「…………」

「じゃあな寝るわ、おやすみ」

 

 

 ベスはさっさと握手すると女子側の寝室にダッシュしていった。

 取り残されるマルフォイ。

 

 

 

「ドラコ。遅い。何してる」

「ドラコ。夜。僕タチ……モウ寝ル……時間……」

 

 筋肉腰ぎんちゃくが現れてマルフォイを回収しに来た。

 だがマルフォイは動じない。

 

 握手したばっかの姿勢のままで。

 

 

 

 

 

「……け、結局僕は言いたいことの半分も言えてないじゃないか……!!」

 

 

 僕の父上も死喰い人だったとか、僕の家も名門だとか、母上は『あの』ブラック家出身だとか、僕の家にもしもべ妖精がいるとか……。

 言いたいことは山ほどあったのに。

 真っ赤になってうなだれるマルフォイに、クラッブとゴイルは語りかける

 

 

「ドラコ、あいつ、同じ寮」

「ドラコ、コレカラ……ズット一緒……話ス機会……幾ラデモ……アル」

「だから」

「ソンナニ落チ込ムナ」

 

 

 

 

 

「……べつに……落ち込んでない」

 

 

 

 

「本当に、そうか?」

「……嘘発見! 嘘発見!」

 

 

 

 

「うるさいぞお前ら! さっさと寝るぞ!! ついてこい!」

 

 

 

「ドラコ……待つ……」

「シャットダウンコマンド……」

 

 

 

 

 

 そして、スリザリンの談話室に人影はなくなった。

 

 

 

 






どんどん長くなってる希ガス…

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