第一クトゥルフ神話『殺人犯だらけの毒入りスープ』 作:カロライナ
「・・・・・・・。・・・・大丈夫・・・? 驚異は・・・・・去った・・・よ。・・・・・・怖かったね・・・・もう大丈夫・・・・。」
床に倒れ込み動かなくなったジルドレをロジーナは冷たい視線で見降ろしながら、また動き出さないかどうか確認する為、拳銃を構えたまま足の指のつま先で3回ほど小突く。しかしジルドレは起き上がらない。
一息つくと、拳銃を降ろし床の上でうずくまっている少女に駆け寄った。少女は殴り合いに銃撃音と非常に誰が見ても分かるような怯えた様子を見せていたが ロジーナが拳銃を持っていない手で少女を優しく抱き寄せるとの頭を2度3度撫でた。すると少女は中央の部屋でガンと合流した時のような落ち着きを取り戻した。
しかし一息つくのも つかの間。『調理室』の扉がまたもや荒々しく開かれる。少女はビクッと身を震わせ、ロジーナは扉の方に向き直ると 少女に攻撃が及ばないように身体で遮り いつでも撃てるように拳銃の銃口を音のする方角へ向けた。
「やめろ! オレは敵じゃねェ!! 撃つな! 撃つなッ!! 敵はマチェーテだ!!!」
現れたのは酷く青い顔をしたガンの姿だった。拳銃を向けられていることに気付くと両手を両耳のわきに持ち上げ、出入り口である扉をチラチラ様子を伺いながらロジーナ達へ近づく その異常な怯え方にロジーナもガンに対して拳銃を突きつけるのを止め 念のため扉へと銃口を向けた。
「・・・・・マチェーテが・・・敵って・・・・・・どういう事・・・?」
「あいつ、アイツ、調理室で見つけた鍋の中に得物を隠してやがった!! オレとアイツが2人きりになった瞬間 不気味にニヤついて....嫌な予感がするからロジーナの方に向かったら 鍋の中からデカい包丁のような物を取り出して 俺を追いかけようとして鍋に足を取られて すっ転んで...――」
「・・・・・落ち着いて・・・・おちついて・・・・深呼吸・・・。」
「深呼吸?! 深呼吸なんかしてる場合じゃねぇって!! もしかしたらすぐそこまで来てるかもしれねェ!!!」
ガンは上げていた両手を腕組みするような位置に持ってくると自らの震えを止めるかのように包み込みガクガクと震えだす。その異常な怯えが連鎖するかのように少女もロジーナの背後で小刻みに震え始めていた。
「・・・とにかく・・・・・・深呼吸・・・・しよう・・・。その扉から・・・・離れて・・・・・こっちに・・・来ていいから・・・深呼吸・・・。」
「お、恩に着るぜ...ええと、深呼吸.....ひっひっふー。ひっひっふぅー....。」
「・・・・・それ・・・ラマーズ法。」
拳銃を片手で構え、酷く錯乱しているガンを『調理室』の奥へと誘導する。ガンは錯乱しているせいか明らかに誤った呼吸法で息を整え ロジーナや少女の元までやってくると息を撫でおろした。両目には涙目になり、声は震えているのが分かる。そんな様子のガンに少女は寄り添いロジーナにされたことをそのまま、ガンにもする。
「励ましてくれているのか...? ははっ....ありがとな。......。」
少女が全裸なことに対して若干の疑問を抱きつつも、ガンは撫でられることに対して特に手を振り払うことも無く素直に抱き締められ撫でられるのを体感していた。
マチェーテは扉の前で悩んでいた。殺す目標に何かを感づかれた上に、大事な予備のスープを自らの手で引っ繰り返したのだ。残るスープは中央の部屋にある元のスープだけ。
もし本当に出口がない場合、メモの通りに血液のスープを飲むしかない。ガンが調理室に逃げ込んだのち、マチェーテは中央の部屋に戻り銀のスプーンでこの黒い液体が毒であるかどうか検査を行った。結果は非常に強い毒物ということが分かった。いつでも毒物奇襲攻撃ができるように肉切り包丁には本についていた謎の黒い液体を塗り付けたが・・・流石に拳銃3発の鉛玉を身体に喰らい ロジーナとガン、少女の喉を掻っ捌くのは不可能に近いと考察していた。
ここでマチェーテは3通りのルートを考えていた。
1つ目は、何事もなかったように『調理室』に入り込みロジーナ達の誤解を解いて 隙を探しだし殺傷するか。
2つ目は、このまま時間切れまで中央の部屋側『調理室』扉の影で奇襲ができるように息を潜め殺傷するか。
3つ目は、自分が得た毒入りスープを自分だけが飲み欲し、他はぶちまけて他人を帰還させなくするか。
今、確実かつマチェーテが安全に夢から覚めるには3つ目の方法が適当だった。しかし、ガンやロジーナ、少女をこの手でバラバラにしたいという狂気の概念がその思いを阻害する。そして何よりもシリアルキラーである自分が目の前にして得物を取り逃がすことに対して自らのプライドが許さなかった。
『書物庫』にあった蝋燭が消え去り、明かりは中央の部屋の豆電球となる。かなりの時間あの蝋燭は燃えていた。つまり、あとわずかな時間で『お迎え』とやらが来るのだろう。
マチェーテは決心し、肉切り包丁に付いた毒を丁寧にスープの中に入れる。そして苦虫を奥歯で磨り潰した顔を『調理室』に居る対象の3人に向けると、血のスープを飲めるだけ飲み干した。ドロリとした気味の悪い感覚と味が仄かな甘い香りに交って喉を通る。
【血液と知っている状態で毒入りスープを飲んだSANチェック1/1D6】
マチェーテ79→66【成功】
喉に入り切らなかったスープはそのまま地面に投げ捨て無に帰す。
そして狂気の笑みを再び浮かべ
「次、生きて会えたら確実にぶっ殺してやるから覚悟するにゃ。ガン=スリンガー。」
と肉切り包丁を『調理室』へと続く扉に向けた
POT25と対抗ロール
マチェーテ自動失敗。
マチェーテは幻覚をみる。それは自分と同じ姿、同じ顔、同じ得物を持った人間が不気味に ニヤつき手に持っている得物でマチェーテ自信を引き裂くような幻覚を。幻覚であるはずなのに得物で抉られた心臓部が酷く痛む。そして視界は真っ白に染め上がり・・・