第一クトゥルフ神話『殺人犯だらけの毒入りスープ』 作:カロライナ
一番初めに中央の部屋に戻ってきたのは、右手に22口径ショート・オートマチック、左手に少女の手を握った無表情のロジーナと、少女の左手に自分自身の右手を添えた満面の笑みのガンの姿であった。アルビノの少女は二人に手を繋いでもらい、2人の間でそわそわ落ち着きのない様子で顔の様子を伺っていた。ロジーナの方を見つめれば、チラリと視線を落とした後『・・・・・どうした・・・?』と無表情ではあるが 気遣うような声色で反応が返ってくる。一方でガンの方を見つめると、ロジーナ以上に素早い反応で『名前を教えてくれる気になったか!?』と食いつき気味で反応が返ってきた。それに対し、少女も言語コミュニケーションで反応しない代わりに2人に対し笑顔で反応を示した。
『調理室』でマチェーテが3人の殺害計画を練り、鍋の中の不純物を取り除いている時、適当な部屋の隅に腰を掛けロジーナとガンは少女に様々な質問を問いかけた。『この部屋の何処かに外に通じる扉はあるか』『オレ達をこの場に閉じ込めたクソ・・・フテェヤロウはどこにいるか』『ここは夢か現実か。現実なら首を縦に、夢なら首を横に』『名前をそろそろ教えてくれ。頼む』等々。しかし、少女は分からないと言った様子で首を傾げるか、知らないという様子で首を横に振るだけで真相に迫るような答えは得られなかった。
「うにゃ? 私達以外にも閉じ込められた人間がいたのかにゃ?」
聞きたい事をある程度、聞き出そうとするものの殆どの回答に対し、知らない、分からないと答えられロジーナ、ガンからの質問が尽きかけた頃『調理室』から大きな鍋とスプーン3本を手に持ったマチェーテが扉から出てきた。
「あぁ。おかえり。ロジーナが見つけたんだけどさ 下僕の部屋に居たみたいなんだよ。いつから居たのかや、オレ達をこんな場所に閉じ込めたクソヤロウの所在地についても尋ねたんだけど分からないみたいで 何も解決しちゃいねェんだけどさ。そっちは? 色々持ってきたようだが 何か役立ちそうなものはあったか?」
ガンは膝を立て大きく股を開くような様子で、特に股の中が見える状態になっても特に気にする様子はなく右腕を鳩尾のあたりに沿わせ、左腕の肘で右手の甲を固定、左手の前腕をマチェーテに向けて突出し半ば諦めたかのような吐息を漏らし、マチェーテに微笑みかけた。
「こっちは予備のスープと銀のスプーンを見つけたから持って来たにゃ。毒は調理室では見つからなかったし、恐らく別の部屋にあるにゃ。ちなみに銀は硫化ヒ素に反応して黒ずむから毒が混じってないかどうかチェックができるにゃ。えっと・・・この皿の中はただの・・・トマトスープにゃ。」
その様子を確認したマチェーテは中央にある机まで鍋を運んでいくと、持っていた鍋を床荷下ろし机上の地図の掛かれた紙切れを手に取って、床に置いた既存のスープを再度元の正しい位置に戻した。スプーンは一本取り出すと皿の中に入れ、毒が入っていないかどうか確認するために掻き混ぜるものの、銀のスプーンは黒ずむことなく銀の輝きを保ったままだ。
「にゃー毒はなしっと♪ それにしても、ロジーナが見つけた女の子。私達には負けるけど、平々凡々のガンよりは可愛い女の子にゃー。私はマチェーテっていうにゃ。ここから出るまでの間だけどよろしくにゃー。」
軽やかなステップでマチェーテはロジーナ、少女、ガンが座っていた隅っこに近づき ロジーナに部屋の地図を返しながらも、少女に無警戒な優しい笑顔で両手を手に取り 包み込みながら握手を交わした。少女もその様子に対して警戒することも無く笑顔で応じる。腹黒い思惑に気付くことなど無く。
「平々凡々オレよりって....おぉい!! オレだって好きでこの平々凡々な顔になった訳じゃねェよ! てかさ、マチェーテお前こそ『にゃ』ってなんだよ。猫の鳴きまねしてぶりっ子ぶってんじゃねぇぞ! 歳考えろよ歳! ...というより、今何歳だ? 手の甲とか見ていると...俺よりは年上、なのか?」
「18・・・20歳にゃ。」
「分かりやすい嘘をつくなぁ!! お前のような20歳が居てたまるか!!! ロジーナ! ロジーナは!? 今何歳なんだよ!!」
平々凡々と言われ、身振り手振りを加えさらに熱くなるガンを おちょくるようにケラケラと笑い飛ばしながら実年齢を明かさないマチェーテ。その様子に少女もつられる様に口に手を当てくすくすと笑う。
「・・・・・53・・・・。」
「」(゜Д゜ )
あまりの衝撃かつ、外見からは想像もできない年齢にガンは言葉を詰まらせ、ぽかんと開いた口がふさがらなくなる。マチェーテに至ってはケラケラ笑うのを止め、ロジーナの年齢暴露とガンの凄まじい衝撃の顔のダブルパンチにやられ、倒れ込み足をバタつかせながら大爆笑する。少女はロジーナの年齢に驚きつつも、マチェーテの笑い声につられ、口元だけを覆い隠していた片手は両手に代わり、ついには顔面を覆った。
「53って...53って...オレの2倍以上は長生きしているじゃねぇかぁぁぁぁ....!! 貫録と落ち着きからてっきり40代前半だと思っていたのに....50代...50代!? 50代でその美貌ってどういうことだよ、チクショウ!!!」
悔しさのあまり、俯きながら左手で地面をガンガン殴りつけるガン。作りではない 本心からの爆笑が止まらないマチェーテ。ついに肩まで震えだした顔面を両手で覆った少女。キョトンとした無表情で何が面白いのかイマイチ理解できていないロジーナ。異空間で現実ではない恐怖を体感している筈なのだが、この部屋の隅の空間だけ何気ない日常風景を取り戻したかのように輝いて見えた。
「きゃーーーーー!!!!」
しかし、そんな僅かな日常風景も長くは続かない。唐突に『書物庫』の扉の先からジルドレの悲鳴が中央の扉まで
真っ先に立ち上がったのは、拳銃を所持したロジーナだった。
目星
マチェーテ80→72【成功】
「・・・・わたしが・・・・・行く・・・・。武器・・・・拾った・・・・なんとかなる・・・・はず。ガンとマチェーテは・・・・・少女・・・・頼んだ・・・。」
ロジーナの発言に少女は不安げな表情を浮かべ、ガンは真面目な顔をして頷く。一方マチェーテは、ロジーナが所持している拳銃を視認し、焦りを感じていた。ロジーナと正面からやりあっても勝ち目はない。だからといって、分かれた今のチャンスを使ってガンや少女を襲ったとしてもどの道 自分が消されるのは確実であると。
ロジーナはガンの頷きを確認すると、そのまま走って『書物庫』へと向かって行った。