人間の生きる意味とはなにかを突き詰めていくとなにもない。
人間が生きる理由がないように、俺も痛みを受ける理由もない。
俺が痛みを受ける理由も、苦しむ理由も、足掻く理由もなにもない。無意味な日々を、淡々と過ごしているうちに、なにも求めなくなった。
そんな俺には昔からある過負荷(マイナス)があった。
|五体不満足(プロトタイプ)と呼んでおこうか。
僕の|五体不満足(プロトタイプ)は、なにもさせなくする能力だ。なにも考えない俺にとって、最高の過負荷(マイナス)だった。
そんな中俺は球磨川さんに会った。
今でも球磨川さんとの出会いは鮮明に覚えている。
『人間は無意味に生まれて、無関係に生きて、無価値に死ぬに決まってるのにさ』
まったくその通りだと思った。その時、俺は球磨川さんについていこうと初めて考えた。
とはいえ、高校は別になった。
球磨川さんは水槽学園へ、俺は箱庭学園へと進学した。
そして、俺は人吉善吉という男と出会った。
「そーいや、お前名前なんていうんだ?俺は人吉善吉。消しゴム落としなら負けねえぜ!」
「俺?俺の名前かあ。考えたこともなかった」
「考えたことないって……自分の名前だろ?」
「自分の名前も考えていなかったぜ」
適当にエンマと名乗っておこうか。
「俺のことはエンマと呼べ。わかったか?」
「エンマか。デビルかっけえな!」
「ふっ。そうかい」
人吉善吉という男はどうやら俺たち過負荷(マイナス)とは逆にいる。仲良くできそうにないな。
特にこいつの幼なじみ、黒神めだかには注意しておこう。
あいつは生徒会長をしている。なんでもできるやつらしい。おっぱいがデカイがその分性格が残念と聞いた。
考えさせないように考えるか、いや、俺に考えることを求めるな。
「ところでエンマよ、不知火どこいったか知らね?」
「知らん」
どこいったか、なんて考えるだけ無駄だ。
俺はなにもしたくないし、させたくもない。
俺の過負荷(マイナス)を、こいつにも……。
いや、そ!をしたら化け物生徒会長にやられる。
負けることなら球磨川さんの二の次だ。俺は負けることには長けている。
本気で勝ちたくなるのはせいぜい生徒会長くらいだろうか。
「善吉よ、そこで何を駄弁っておる。生徒会の仕事が残っておろう」
噂をしたら来たようだ。
「め、めだかちゃん!い、いや、その、忘れてたわけではなくてだな」
言い訳を言うな。
言い訳を言うだけ無駄。何もしないほうがもっとマシ。
決して言い訳を言うのは悪いことじゃない。言い訳を考えるのが悪いことなんだ。
言い訳を考えず、何もかも放棄して、全てを辞めたら楽でいい。
「こ、こいつと話していたんだ!」
「ふむ、炎真同級生か」
「こいつマジでエンマっつうのか!?」
「俺の名前って炎真だったのか」
初めて……いや、|始めて(・・・)知ったよ。俺の名前なんて。
「まあいい善吉よ、いくぞ」
「うがあああ……」
俺は連れ去られていく人吉を尻目に嘲笑いながらカバンを背負う。
と、そこで呼び出しのチャイムが。
《炎真 打王(だおう)くん炎真 打王くん。理事長がお呼びです。至急理事長室に向かうように》
…………面倒くさいな。