真・恋姫†無双 とある裏方さんの暗躍   作:きんぐまいまいこ

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第一話

男 「ついに完成したな…」

 

  男は満足げに成果を噛み締めていた。

  あとは能力を底上げしていければ…と思案している最中、突然周囲が白い光に包まれる。

 

 

  男はその場から忽然と姿を消した。

 

 

  己の身に何事がおきたのかと慌てて周囲を警戒する男。

  しかしそこは、自身の見知った部屋ではなく、真っ白な、なにもない空間。

  男は警戒しつつ、周囲を見渡すと一人の女性がこちらに歩いてくる様子が目に入る。

 

女性「こちらに強制召喚された方は久方ぶりですね。お待ちしておりました。

   質問は後ほど伺いますので、とりあえずは私の話を聞いてくださいね」

 

  柔らかい笑みを浮かべ女性は続ける。

 

女性「まず、見てわかるかとは思いますけど、ここは貴方のいた場所では…明確に言えば貴方のい

   た世界ではありません」

 

  いきなりぶっ飛んだ話に男は驚くが、女性は構わず続ける。

 

女性「貴方がこちらに強制召喚された理由は、貴方が体得した能力ゆえに。

   またこの後、貴方が取れる選択肢はおおむね二つ。

   一つは体得した能力を消去し、代わりの能力を得て元の世界へ戻る。

   一つは元の世界での生活を捨て、体得した能力をこちらの世界で振るう。

   貴方にはどちらかを選択して貰いますが、ここまでで何かご質問は?」

 

  男は質問を始め、女性はそれに答えていく。

  曰く、ここは正史と外史の狭間である。正史とは男のいう現実世界で、外史というのは正史よ

  り生まれた可能性を具現化した様な世界だそうだ。

  なんとまぁと思いながら質問を続けていく。

 

男 「強制召喚だなんて、随分一方的な事するんですね」

 

女性「申し訳ないとは思います。ですが、貴方の体得した能力がこのまま研鑽されていきますと、

   貴方個人が正史に与える影響がとんでもないことになってしまいますから…

   ですから元の世界に戻すにはその能力を消去しないといけない訳です」

 

男 「将来的には無くもないだろうけどもね。能力の消去か…今までの苦労を考えると勿体無い

   な。

   代替の能力ってのも正直な…本当の意味で体得したもんじゃないと信用できんと言うか、

   そっちの都合で突然使えなくなるなんて事も可能性としてゼロではないだろうし…

   ん~元の世界か~」

 

  この男は身内や親しい友人、恋人など元の世界に後ろ髪を引かれる様なものが一切ない。

  その半生をある能力の体得にのみ(若干お仕事に)費やしていた為、周囲からは奇人変人の

  レッテルを貼られていた。

  人付き合いが嫌いな訳ではないが積極的にしようとは思わず、また一人でいる事が苦ではな

  い性格も相まって、元の世界での男は本当の意味で天涯孤独だったのである。

  男が後者の選択肢について思考しようとした時ふとある事を思いつく。

 

男 「過去に何人がここに連れてこられたのか知らないけども、特異な能力を持ったまま元に戻

   せって暴れたりした奴はいないの?特異な能力を持っているなら暴れられたらえらい事に

   なるのでない?」

 

女性「私が選択肢が『おおむね』二つと説明した事に繋がりますが、その様な事をなさる方は肉

   体言語で黙らせて能力消去の後、そのまま元の世界へ戻しますね」

 

  過激だこと…

 

女性「そもそも、こちらに召喚される能力の基準として、害の無い能力…例えば許容できる範囲で

   の医療行為に関した特殊能力などは召喚対象外になります。これが死者を黄泉返らせる等に

   なると影響がでますので召喚対象となりますね。

   つまり、こちらに召喚された時点で、その能力は正史に対して多大な影響を与え得る可能性

   があるのです。

   ですので、こちらと致しましては問答無用で能力を消去して元の世界へ戻しても良いのです

   が、そうしない理由があるのです。

   それが二つの選択肢の後者に当たるのですが他にも…」

 

  女性の話は続く

 

女性「こちらへ召喚される様な方で『偶然能力に目覚めました』などという都合のいい方はおりま

   せん。貴方の様に、明確な意思を持ち、研鑽を積んだ対価として能力を得た方ばかりです。

   消去の代替として与える能力は、その努力に対する私達なりの敬意でもあるのです。

   ですが、明確な意思を持ち、研鑽を積んだ対価ですので、先ほどの貴方の様に能力の消去に

   関して皆さん不満を口にします。

   と同時に、大半の方は元の世界へ戻りたいと思われる様で、何某か代わりの、正史に影響を

   及ぼさない能力で納得してもらっています。

   どうしても納得いかないという方が暴れたりもしますが、そちらは先に述べた通り強制退場

   となります。

   ですが中には純粋な想いや情などから、能力の消去を拒む方も、稀にいらっしゃいます。

   非常に心苦しく思いますが、能力の消去無しに正史へ戻す訳にもいきませんので、妥協点を

   模索するのも中々に大変ですよ。

   『ごねる・即・殴る』とはいきませんからね」

 

  さらに続ける

 

女性「とは言いましても、最後までごねる方達は『気に入らない奴皆殺し!』や『新世界の神にな

   る!』とか『世界を革命する力を!』などなど、戯けた考えの方が大半でしたけど。

   その様な不埒な輩は、強制退場させるのも気楽でいいですね。そもそも強制召喚された時点

   での被召喚者の力量は、能力を開花させたばかりの状態です。私達から見たらひよこもいい

   とこですから力量差では話になりませんよ。私達が返り討ちに合う要素は絶無です。

   仮に殺されそうになっても、そのまま正史に戻す事はしませんけどね。

   ですので、貴方にもぜひ穏便に、納得のいく形を模索して欲しいのです」

 

男 「そうですか…まぁ元の世界の事は正直どうでもいいですし、折角体得した能力ですからね。

   こちらの世界で云々って選択肢の方が良さそうだ」

 

女性「正直、そちらを選択してもらえるのは非常にありがたいのですが…本当に宜しいのですか?

   元の世界へは基本的に戻れなくなりますよ?」

 

男 「いいですよ。俺にとって今一番重要な事は、この能力を自分の納得できる領域まで昇華させ

   る事ですから。こちらの世界でも能力の研鑽は続けられるのでしょ?」

 

女性「もちろん可能です。では今一度確認しますが、こちらの世界で能力を生かすという事で宜し

   いのですね?」

 

男 「よろしいですよ」

 

女性「それでは場所を移します。私の手を握ってください」

  

  女性が手を出し、男はその手を握る。

  女性がなにやら呟いた瞬間、周囲の様相が変わる。真っ白な空間から真っ暗な空間へ。

  そこでは数多の星々が輝きを放っている。

  地上から眺める星空が、手の届く範囲にある様な感覚。

 

男 「おぉ~これはすばらしく美しいな!すげぇ!この光ってるの何だ!?」

 

  かなりテンションが上がる。

 

女性「ここは管理者の領域と呼ばれる場所で、私に与えられた仕事場みたいなものです。

   この光っているのは、それぞれが外史となります。

   後者の選択肢を選んだ方には基本的に、私達の様な管理者と呼ばれるお仕事をしてもらう事

   になるのですが、貴方にはそれとは別の、ある役割を担ってもらいたいとも思うのです」

 

男 「とりあえず…管理者ってなんですかね?」

 

女性「外史を管理する者です。先ほど簡単に説明致しましたけど、正史は大樹、外史は枝葉の様な

   もの。その外史の物語が終焉を迎える事で実となり、その実を養分としてさらに正史が成長

   するのです」

 

  ふむふむ

 

女性「しかし、外史も綺麗に終焉を迎えるものばかりではない訳です。望まれた方向に進まず、停

   滞したり、逆に望まれない方向へ進んでしまったりなど。その際、管理者と呼ばれる我々が

   介入し、望まれた方向へ修正したり、あるいは外史そのものを強制的に閉じたりなどする訳

   です。進め方に関しては、管理者それぞれの能力や好みで違いはありますけどね。

   そして、正史より際限なく生まれる外史ですが、終焉を迎えない外史が無闇矢鱈と増えてし

   まうと困るのです。正史が抱えられる外史の容量にも限度がありますので…容量を超えてし

   まうと外史の正史に対する侵食が始まり、修復するには上の方々のお力が必要となります。

   ついでにめっさ怒られます。

   と、この様にして大樹である正史を健やかに成長させるのが私達のお仕事です。

   閉じた外史は正史の養分足りえませんので出来得る限り終焉を向かえさせたいのですが、こ

   ればかりは…といった感じですね」

 

  なるほどなるほど

 

女性「とりあえず管理者の説明やその役割、権限、その他の詳細については、これから講習を受け

   て理解してもらう事になります。

   そして本来であればその後、修了証書が発行され、修了証書と交換で免許が交付され、晴れ

   て管理者として外史への介入が可能となる訳です。

   ですが、先にも述べましたが、貴方にはある役割を担ってもらいたいので免許の交付は少し

   待って欲しいのです。もちろん強制するつもりはありません。

   詳細は講習が終わりましたら説明しますので、まずは講習を受けてきてください」

 

男 「この年になってそんな講習受けるとは思わなんだな…」

 

女性「それほど時間は掛かりませんから。講習は第三講義室で行います。付いて来てくださいね」

 

 




序章部分があと数話続きます。
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