真・恋姫†無双 とある裏方さんの暗躍   作:きんぐまいまいこ

15 / 15
第十五話

  現在、定軍山事件現場の森の中。曹操領寄りの入り口付近の木の上で潜んでいる。

  劉備側の三将は森の外に布陣するはずなんだし、夏侯淵が森の中で一般兵にやられるなんてこ

  た無いだろ。森を出た後に気を配っておけば大丈夫でしょ。

 

  つーても、突然だと、何かあったとしても間に合わせるの正直辛いんだよな~

  色々小道具も用意してるけど…何事もなく合流して欲しいもんだな。

 

  劉備兵が潜んでいるあたりを双眼鏡で確認する。動き出したようだな。

  騎馬兵と歩兵が数人、移動を始めた。

  ん~お、いたいた。

  馬超、馬岱、黄忠が纏まっている。よしよし、予定通りになってるな。

 

  今度は北方向を探る。夏侯淵がこちらに向かって来ているのが確認できる。ぼちぼちか…

 

 

 

 

-未亡人視点-

 

 

  魏より出立する敵偵察の動向を見張らせていた斥候が戻った。

  来たわね…

  敵偵察に夏侯淵がいる事が報告される。大物が出てきたわ…

 

  数は…80!?…想定よりかなり多いわね…

  まさか情報が漏れていた…?いえ、それにしては数が少なすぎるかしら。それに…

  朱里ちゃんの情報工作は完璧だった。

  少なくとも私にはそう思えた。あれを掻い潜るなど…

 

  単純にこちらを警戒しているという事なのかしら…少し予定を変えなければいけないわね。

  何やら嫌な流れだわ。気を引き締めていかなければ…

 

未亡人「翠ちゃん、蒲公英ちゃん、敵が近づいてきているわよ。少々数が多いけれど…

    こちらも所定の位置に移動を開始しましょう」

 

失禁 「多いってどれくらいなんだ?」

 

未亡人「80よ」

 

失禁 「確かに多いけど、その程度なら問題ないだろ。

    大丈夫、大丈夫。そんで、誰が出てきたんだ?」

 

未亡人「……夏侯淵よ。中々に難敵だわ」

 

小悪魔「えぇ~!随分すごい人が出て来たね、翠姉さま」

 

失禁 「そうだな。でも、それなら尚更、ここで夏侯淵を討てれば、曹操の奴には大きな痛手とな

    るだろう。気合を入れていくぞ!蒲公英!」

 

 

  少数とはいえ、率いるは魏の重鎮。しかも想定よりも兵が多いとなると…

 

  私が連れて行く歩兵の数を最小限に抑えて、少しでも森内部の戦力を上げておきましょう。

  当初の予定では森の内部で半包囲を敷き、疲弊を強いるつもりだったけれど…

  中途半端に兵を分散させては、下手をしたら食い破られてしまうかもしれない。

  仕方ないわね…

 

  歩兵部隊の指揮を執る中隊長に出来る限り詳細に指示を出し、こちらも移動を開始する。

 

未亡人「慌てないで行きましょうね、二人とも。

    ここまで大筋では朱里ちゃんの予定通りに進んでるといっても、想定より数がかなり多い

    わ。慎重にあたらないと…」

 

失禁 「大丈夫だって!紫苑は心配性だなー

    任せておけって!絶対に夏侯淵を討ってみせるぜ!な?蒲公英」

 

小悪魔「うん!おば様の弔い合戦だよね!」

 

  本来ならば、歩兵部隊の指揮は私が執りたいところではあるのだけれど…

  正直なところ、翠ちゃんに現場の判断を任せるのは些か憚られる。

  対五胡の国境戦では指揮も執っていたようだし、曹操の涼州侵攻の際には前線指揮官として軍

  を率いていた実績もあるのだけど…

 

  翠ちゃんは確かに優れた武人…けれど武将としてはまだ成長途上と謂わざるを得ない。

  武力は凄まじいものがある。統率も申し分ない。だけど思慮が足りていない。

  些か夏侯淵を注視し過ぎているわ。目的は確かに敵将の討伐ではあるけれど…

  只でさえ敵兵数が想定より多いのだもの。不測の事態も考えられるわ。

  考えたくはないけど、情報が漏れているという事も有り得る。

  もっと周囲にも気を張らないと…

 

  敵偵察隊が森に踏み込んだ。

  撤退経路を塞ぐ位置に部隊を展開する。

  さて、正念場ね……

 

  森の出口を視界に捕らえつつ、視野を広げる。

 

  突然、視界の端に妙なものが現れる。なに!?

  左手後方に赤い煙が昇っている。あれはなに!?

 

  皆、森の出口を注視している為、誰も認識していない。

  極少数ではあるが兵が弓をこちらに向けているのが見える。

 

  矢がこちらに向かってきている。不味い!

  咄嗟に叫ぶ。

 

未亡人「伏兵よ!左手後方!矢が来るわよ!」

 

 

 

 

-常識人視点-

 

 

  森に入りやや進んだ段階で、周囲に敵がいない事を確認した後、数名を煙矢の見張りに置く。

  煙矢を確認後、こちらに合流するよう指示をだす。

 

  煙矢を見逃す訳にはいかんからな。保険はかけておくに越した事はなかろう。

  私とて絶対見落とさないという確証はないのだから。

 

  さらに歩を進める。気配がある…近いな…皆に簡易の木盾を準備させる。

  前面より矢が飛来する。来たか!

 

常識人「前面!矢がくるぞ!その場で迎撃にあたれ!

    迎撃の後は三人一組で守衛に専念しろ!

    死角を無くせ!周囲への警戒は最大限だ!討たれるなよ!」

 

  皆には、今回の作戦の詳細を説明してある。

  それでも参加を表明してくれた我が部隊の最精鋭だ。死なせたりはせん!

 

  敵兵が姿を現す。

  ほぼ前面に兵力の大半を置いたか。初撃で数の違いを見せ付け、圧力をかけようという腹か。

  だが、側面からの襲撃が少ないのは助かる。これならば迎撃もいくらかは楽だな。

 

  敵兵を射抜く。

  件の三将は見当たらない。情報を得ていたとはいえ、大した予測だ。

  我が軍の軍師の先見に舌を巻く。

  しかしやはり数が多いな…ならば…

 

常識人「総員、迎撃しつつ撤退準備!

    こちらとは数が違う!負傷者を守りつつ引くぞ!急げよ!」

 

半尻 「迎撃しつつ撤退です!総員急いでください!」

 

  優れた指揮官がいない為か、こちらが撤退を謳うと明らかに敵の圧力が落ちる。

  敵歩兵隊の行動目的はこちらを森の外に押し上げる事なのであろうからな。さもあろう。

  作戦に忠実といえば聞こえはいいが…命は惜しいと見える。接近する足が鈍くなっている。

  こちらの狙い通りだ。後は矢の迎撃に注力させればよい。

  この森の中だ、飛んでくる矢など高が知れている。障害物も多い。

  この程度の迎撃であれば、我が精兵であれば問題は無い。

 

  緩やかに後退しつつ、合図を待つ。

 

  まだか…

  合図の上がる方角を視野に入れつつ、敵を射抜く。

  多少視界は悪いが、赤い煙ならばそう見落とす事もないと思うのだが…

 

  流琉も殿に付き、敵を吹き飛ばしている。

  あれを見せられたら、近づく気も失せるというものか…頼もしい限りだ。

 

 

  視界の端が、赤いものを捕らえる。きたな!

 

常識人「流琉!周囲を蹴散らせ!退くぞ!」

 

  流琉の周囲に位置する敵兵、悉くを射抜く。

 

半尻 「はい!総員、撤退です!」

 

 

 

 

 

  ………ちょっとちょっと、夏侯淵マジすげーんだけど…典韋も半端ねーな…

  負傷者はいるけど、死者無しで撤退してみせるなんてとんでもねー。

  敵に将を張れるだけの指揮官がいないとしてもね…これが統率力ってやつなのかね。

  将が率いるってここまで違うもんなんだなー。二人もいるんだから尚更ってか。

  他の恋姫さん達もこれと同クラスなんだろか?すごい連中だな~

 

  劉備兵も距離を取りつつ追撃に向かおうとしている。

  気の毒に…森を出たら張遼の騎馬隊に薙ぎ倒されてしまうのか。

  などと眺めていると、劉備兵の後方から青髪の女性が率いる20名程の団体さんが現れた。

  お、こっちも着てくれたな。うまく乗り切ってくれればいいけど…

 

  夏侯淵を死なせず、北郷君に負担を掛けない為に情報をリークするとなると、基本的にはこの

  逆包囲の展開になるであろうからな。

  これを劉備陣営に切り抜けてもらわないと、計画を練り直さなければいけないかもしれない。

 

  ここで劉備陣営の誰かが死んでしまうとなると、流れが大きく変わってしまう可能性がある。

  未来視が利かなくなっては計画が頓挫してしまう。

  なんとか頑張って、切り抜けて欲しいとこだわな。運任せってのが悲しいとこだが…

 

  夏侯淵があれだけスゲーんだから、劉備側の恋姫さんもスゲーんだろう。

  その手腕に期待するしかないわな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。