ただいま受講中…
男 「頭いてー…」
女性「お疲れ様でした。」
男 「講習なんて平和な感じじゃないよ、これ…必要な情報を、無理矢理頭の中に突っ込むなん
て、人体実験させられた気分だ…」
女性「そうでもしませんと、時間がかかり過ぎますから。時間短縮できて良かったでしょう?
それで、修了証書は貰いましたか?」
男 「このペラい紙切れかな?」
女性「ちゃんと貰ってきましたね。それでは講習前に話した詳細を説明しましょうか」
男 「その前にちょっと頭使いすぎて腹減ったんですけども。何か食う物とかないのかな?ここ
って」
女性「あら、それでは食堂でお食事でもしながらお話しましょうか。
いや、他の連中が煩いか……ん~私の部屋に出前して貰いましょうか」
女性の部屋へと連れ立って向かう。
案内された部屋は純和風な装いで、押入れ、箪笥、ちゃぶ台くらいしか目につかない。
質素なもんだ。
女性「なににします?日替わり定食でいいですかね?」
採譜らしきものを片手に女性が伺いを立てる。
男 「…それでいいですよ」
女性「そうですか?では私も軽く摘まみながら…」
なにやら一人呟きながら採譜らしきものを眺めている。
頼むものが決まったようで、徐に携帯電話(のようなもの)を懐から取り出す。
女性「1205室です。出前お願いします。えーと、日替わり一つと、ポテトのL、振り塩いらな
いのでケチャップいっぱいつけてください。あとは、あ、飲み物いりませんか?」
男 「…緑茶で」
女性「ではあと、緑茶とひゃくぱーグレープフルーツジュースの炭酸水割り、9対1で。氷は入れ
ないでください。それではお願いします」
話が終わり、女性が携帯電話(のようなもの)を懐へと仕舞う。
女性「すぐ届きますからね」
男 「…普通というかなんというか。世界が変わった気がしないな…さっき注文話してたそれなん
ですか?さっきの講習知識にはありませんけど?」
女性「管理者に配給される便利小道具の1つです。貴方も免許を交付されれば配給されますよ。こ
のへんの些細な事は、免許交付と同時配布される虎の巻に記載されています」
男 「じゃ俺、今のとこもらえないじゃん…」
女性「その辺りの事も踏まえてきちんと説明しますよ。結果から言えばこれは貰える様に手配しま
すから問題ないです」
そんなこんなで食事が届く。あまりに普通の見た目と味でがっかりした。密かにちょっとは違
うものを期待していたが。
ホント世界が変わった気がしないな。
女性がケチャップまみれのポテトをうまそうに齧りながら話を始める。
女性「貴方には名目上、私の補佐をして欲しいのです。と言いましても身分的に私より低いという
事ではありません。
今はまだ実験段階ですが、将来的には管理者とは別の、独立した機関として立ち上げる予定
ですが『修正者』これは暫定的な名称ですけど、その 第一号を担って欲しいのです。
今、私が進めている企画で、きちんと上から許可も下りてます」
男 「どういう事?」
女性「講習を受けてもらいましたのでご存知だと思いますが、管理者としてでは外史の修正を行う
に対し、制限が強すぎるのです。
その為、最近では皆さんめんどくさがって外史に介入せず、終焉を迎えられないと判断した
外史は管理者権限で閉じてしまうんです。一部、特定人物に執着して積極的に介入している
脳筋がいますけど…それは置いておいて、お陰で、正史の成長が滞りがちなんです。
そこで、管理者よりも制限を緩くした、外史に積極的に介入できる存在を作り、修正を易く
しよう!という訳です。もちろん、制限を緩くするのですからその分外史に対する権限は抑
えないといけません。その辺りの線引きの検証などもしないといけませんね。
その場合、確固とした管理者という立場にある方に対してだと、制限や権限の改変を行う事
が困難なんです。
少なくとも、私には他の管理者へその様な事をできる権限はありませんし、そこまでの能力
もありません。
そこで貴方の登場です。今この時に限れば、貴方は管理者の資格を得ることが可能な存在で
しかない訳ですね。言い方を変えると『管理者としての制限が無く、管理者としての権限が
無い、それでいて管理者となれる能力を有している存在』となる訳です」
俺に軽く手を加えれば『修正者』っぽくなるって事かな?
女性「貴方に対して私がなんらかの制限を付けることはできません。ですが私の権限の一部を一時
的に貴方に与える事はできます。
そこで、私の権限を使用して、制限に関しては、しないでくださいとお願いする他ありませ
んので極力遵守するという形で外史に介入して欲しいのです」
男 「具体的に遵守する制限と使用できる権限というのは?」
女性「制限としては、物語の主人公に対する直接介入を禁ずるという点です。ただ一点『貴方の手
で直に殺す事を禁ずる』というものです。気に入らないからと言って殺したりしないでくだ
さいね。
ご存知でしょうけど、基本的に物語の主人公が本道以外で死んだ場合、外史は停滞し、閉じ
るより他に手が無くなりますので、貴方が介入した意味が無くなります」
それだけなら別段、制限って程でもなさそうだな
女性「与える権限としては、外史の通行パスです。私が発行しますので、私が許可した、私の管理
下にある外史へは自由に行き来できます。
最低限の制限と権限でもって外史へ、主に『記憶された外史』へ介入して、修正を行っても
らいたいのです。
なんとかご協力をお願いできませんか?」
『記憶された外史』というのは、既に終焉を迎えた外史の事である。外史が終焉を迎えた段階
で、自動でバックアップが取られ、後々の研究資料として保管される。
この『記憶された外史』を使用して新しい外史を作る事はできるが、介入しなければまったく
同じ終焉を迎える為、正史の養分足りえない。
しかし、『記憶された外史』を使用して作った新たな外史へ介入し、より完成度の高い終焉を
迎える事ができれば、新たな外史の終焉と見なされ、余剰分を正史に与えることができるので
ある。
男 「一つ聞きたいのだけども、修了証書と免許の交換って期限はないんですよね?一週間以内に
交換しないと無効です、みたいな。説明が無かったけど」
女性「それはないので安心してください。百年経っても大丈夫です」
男 「そっか、ならいいですよ。協力します」
女性「ありがとうございます!
結果が出せれば、正式なプロジェクトとして動かせますし、上の方の助力も得られるように
なるので、がんばりましょうね!」
うれしそうな女性を見ると良い事した気分になるあたり、俺も随分お手軽に出来てるもんだ。
女性「ではこれからは相棒という事で、自己紹介をば…私の名前は管輅といいます。今後とも宜し
くお願いしますね」
男 「あ~俺は本名はちゃんとあるんですけども、能力の誓約上名乗れないんです…」
管輅「大丈夫ですよ。貴方の名前は存じてます。被召喚者の個人情報はある程度把握していますの
で。○○○○さん」
男 「ありゃ、そうなんですか。でも今後もその名前を名乗ることはありませんから、ハンドルネ
ームである『エマノン』と呼んでください」
管輅「分かりました。宜しくお願いします、エマノンさん。それではこれから会議をしましょう!
暖めていた計画もありますからね」