真・恋姫†無双 とある裏方さんの暗躍   作:きんぐまいまいこ

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定軍山に入ります。
ここから若干ではありますがオリジナル要素が含まれてきます。
なんとかうまく話をつなげられる様に頑張りたいと思います。


第九話

-猫耳視点-

 

 

 

猫耳「ちょっと小腹が空いたわね…」

 

  本日の業務が終わり、部屋に戻る途中、厨房へと顔を出す。

  なにやら良い匂いが漂っているわね。流琉が居るのかしら。

 

半尻「あ、桂花様、どうかなさったんですか?」

 

猫耳「少し小腹が空いてしまってね。なにか簡単につまめる物とかあるかしら?」

 

半尻「それでしたら、こちらをどうぞ。ちょうど出来上がったばかりなんです。お一つ食べてみて

   ください」

 

猫耳「…以前のものより甘みがあるかしら?とてもおいしいわね」

 

半尻「季衣がもっと甘い方が良いって言いまして…色々と試しているところなんです。これでよか

   ったらいくつか包みましょうか?」

 

猫耳「ええ、お願いするわ。済まないわね」

 

  流琉からクッキーをいくつか包んでもらう。

  このクッキーなるもの、精液孕ませ無責任男の世界の菓子の一つで、あいつが作らせた物だ。

  精液孕ませ無責任男の世界の菓子にしてはとてもいいものだ。真に遺憾ではあるが。

 

  部屋へ戻る道すがら、最近の情勢へと思考を向ける。

  南の孫策は、自治領を制圧したばかり。江東周辺にいる袁家筋の豪族どもを平定するまで、ま

  ともに動けないだろう。

  劉備の下には、涼州から逃亡した馬超、馬岱の二名が身を寄せている。将の厚みが増してしま

  ったわね。

  でも、この先劉備は益州の取り込みに奔走するはず。それが一段落するまでは、この勢力も身

  動きは取れまい。

 

  荊州の大半はこちらで抑えている。一部ではあるが益州も手に入れた。さて、どう動こうかし

  ら…

  現状では、二国同時に相手をするには些か足りない。国力の差から言って、戦を先に延ばせば

  延ばすほど、こちらが有利にはなるであろうが…

  個人的感情としては、劉備を一刻も早く叩いてしまいたいところではあるのだけど…

 

  気づくと部屋を通り過ぎていた。おっといけない。

  部屋へ入る。立案中の内政計画書の草案が散らかっている。さすがに少し片そうかしら。

  と、机の上にこれ見よがしに置かれている書簡が目に入る。

  我が目を疑い、絶句する。

 

  きれいな花の形の封がされた書簡。

  急いで過去の二通を確認する。二つとも保管場所にきちんと置かれていた。

  自然と解答が導かれる。

 

猫耳「直接ここへ侵入してきたというの!?」

 

  舌打ちを打つのも忘れるほどの戦慄が、私を包む。

  我が国の対間諜対策は、自信を持って最優であると自負できる。

  間諜の能力では、孫策のところに及ばない事は認めている。

  だが、間諜を防ぐという点で言うのなら、孫策自慢の間諜部隊であろうが防ぎきれる自負があ

  り、事実幾度と無く防いでいる。

 

  尋常ではない。

  情報収集能力が尋常では無い事は分かっていた。いや、分かっているつもりだった…

  我が国を相手取った間諜能力を、ただの一個人が所持しているというの!?

 

  この書簡の主の情報収集の根幹は『時勢を捕らえた結果の、未来視』だと考えていた。

 

  張三姉妹の時の情報にしてもそうだ。

  書簡の主にして、三姉妹に出会ったのは偶然であった筈だ。そうでなければ説明が付かない。

  あの規模の時点で三姉妹が首魁であると断定できたのがその証左だ。

  当時は三姉妹も首魁という自覚はなく、芸人として旅をしていたに過ぎない。

  賊共にしても、明確に三姉妹を首魁に祭り上げていた訳ではない。ただ歌を聴き、騒いでいた

  に過ぎないのだ。そもあの時点では『明確な首魁』は存在していなかったのだ。

  であるにも関わらず、書簡の主は三姉妹が首魁であると断定してみせた。

  そんな事は、最初期から三姉妹の動向を注視し、周囲の動きを捉えていなければできない筈。

  ならば何故、それ程前から三姉妹を注視していたのか?無名の旅芸人であった筈なのだ。

  おそらく、三姉妹の人を惹きつける才覚を偶然目の当たりにしたのだろう。

  そして、乱の基点に成り得ると考え、目を光らせていたのだ。

 

  この書簡の主は、あの時点の世の流れから、将来的な民衆による大規模な乱を予見していただ

  けに過ぎないのだ。そして民達の動向に注目していたに違いない。

  張三姉妹の発覚は偶然の産物に過ぎないはずなのだ。些か言い過ぎではあるが…

 

  劉備侵攻の時の情報にしても、卓越した間諜能力は必要ない。

  実際、あの時点ではこちらの内情が安定していなかった事も原因だ(言い訳ではあるが)

  自治領の平定に忙しく、他国へ目を向けている余裕はあまりなかった。

  しかし、いやだからであろう…この書簡の主は考えたのだ。

  こちらが安定していない状態であれば攻めて来る可能性が高いのは誰であるか、と。

  自己弁護する訳ではないが、私がきちんと指示を出し、劉備や呂布に対して間諜を放っていれ

  ば、書簡が送られてきたのと同時期に、同様の情報は得られていたはずだ。

 

  要は、時勢を的確に読み解き、この先どの様に推移するかを正確に見抜く能力が卓越している

  のだと思っていた。

  正味、それだけでも感嘆を禁じえないのだが…

 

  しかしそうではなかった。いや、それだけではなかったといった方がいいのか…

  この書簡の主自身なのか、その部下なのかは不明だが、我が国の中枢に至るまでの間諜能力ま

  で備えているとは…

  

  書簡は、侘びから始まっていた。

  急を要するとはいえ、無断で部屋へ入った無礼を許して欲しいという事

  そこから先には、またしても私が知り得ていない情報が書かれていた。それも今回はかなり詳

  細に…

  益州の中でも主要な将である黄忠、厳顔、魏延などが劉備に下ったという事。

  また、涼州を追い遣られた馬超、馬岱の両名が華琳様へ一矢報いるべく、画策しているという

  事。

  その画策には諸葛亮が知恵を貸しており、黄忠、馬超、馬岱の三名が秘密裏に行動する事。

  そして、決行となる地は定軍山となる事。

 

  以上を踏まえて以下をお願いしたいと書かれている。

 

  諸葛亮の情報工作は生半なものではない為、無理に掻い潜ろうとせずに黄忠、馬超、馬岱の三

  名に絞って間諜を放った方が効果的である事。

  その為、件の三名に先立って、定軍山周辺へ間諜を放っておいて監視して欲しいとの事。

 

  私の部屋に侵入するだけあって、大した情報収集能力だ…などと驚愕と同時に呆れ果ててしま

  う。

  しかし、その後に書かれている内容は驚愕のみを与えるものだった。

 

  今回の件は、最悪の可能性も考えられる事。

  その為、出来る限り迅速に情報を集めて裏付けを取って欲しいという事。

  そして仮に最悪の事態になりそうな場合は、直接手を貸すべくこの書簡の主も動くという事。

  だが、動くと言っても補助的な事しかできないであろうから、出来うる限りこちらで対処でき

  るよう画策して欲しい事。

  そして最後にいつもの印が刻まれ締められていた。

 

  最悪の可能性…いや、それもだが…

  書簡の主が直接動く、と言っている。

  今まで姿も名もまともに出さなかった存在が直接動くと…

  存在を確かめる絶好の機会である。その欲求に駆られる。

  しかし、この欲求に負ける事は、この書簡の主に対して礼を失しているのではないか…

  今まで、只管に存在を秘匿しては来たが、我が国に益となる情報を与えてきた存在。

  その存在が、万が一の場合はその秘匿性を捨て、動くと言っているのだ。

  それ程までにさせる最悪の可能性というのは、一体なんであろうか?それは我が国にどれ程の

  影響を与えるのか…

  それを食い止めるべく動く、という存在。    

  であるならば、こちらもその為にこそ動かなければ、この書簡の主の信を裏切る形になるので

  はないか…

  最悪の場合、こちらを見限る事もあるかもしれない。それは避けなければならない。

  これ程の事ができる存在が敵に回るなど考えたくもない。それに…

 

  過去の二通を思い返す。そして三通目の今回…

  共通している事は、情報は正しいから信じてくれというものではなく、情報の真偽をこちらで

  も確認した後に精査してくれという態度を一貫している点。急を要するとまで言っている今回

  にしてもそれは変わらない。

  つまり私の情報収集能力を認めているという事の現われでもある。

  そして、三通目にのみ書かれた、『最悪の可能性』というもの。

  具体的には書かれていないが、過去の二件では起こりえない『何か』が起こる可能性があるの

  だろう。

  私的に言えば、最悪の可能性という意味合いでは最大級のものが、二通目の劉備侵攻の際にあ

  った。

  華琳様を失う一歩手前まで敵の侵攻を許してしまった。私の失態だ…救出したのが精液孕ませ

  無責任男だった事が余計に腹が立つ!

  しかし、その時の書簡には最悪の可能性などには言及されていなかった。

  これは、『華琳様を失うという事が最悪ではない』という事ではない。

  必要な情報を得た上でならば、そのような事態にはなるまいと思っての事であろう。

  ある意味では私もこの書簡の主に信用されていると言っても過言ではないのだ。

  つまりは私の失態。あの時は些か劉備に囚われすぎていた。熱くなり過ぎていたわ…

  呂布の存在を確認しておきながら、華琳様をお諌めする事もできなかった…

 

  …今回の件は、必要な情報を得た上、最良を選択してもなお、回避できない『何か』が起こる

  可能性があるという事だ。

  前回の様な失態は演じられない。

  書簡の主の存在を探ろうなどという不純物を混ぜている余裕はない。

 

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