黒子のバスケ ―黒子テツヤの逆襲―   作:希亜

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第10話

「テッちゃん…そりゃ、これまでのテッちゃんがされたこと考えれば分かるけど…俺は参加する気無いぜ?俺だって許せねぇ奴居るけど、高校決まったんだ…」

 

暫くの沈黙の後珍しく彼は視線を逸らしながら呟いた。全てを話さずとも内容が分かる彼はやはりハイスペックという部類なのだろう。その彼に理解されなかったことにも驚きは隠せなかったが"許せない"と発した事を恐らく、僕は初めて見た。

 

「…そう、ですか」

 

二つの驚きに戸惑いを隠せないまま言うことが出来たのは一言だけだった。お互い暗い表情になり今日何度目かの沈黙が舞い降りる。しかし、彼は彼だった。いつも僕を導いてくれたその笑顔がその沈黙を破ったのだ。

 

「…まぁ、話はまた聞くし!こんな顔してたけど嬉しいんだぜ?テッちゃんが自分のしようとしてた事話してくれたのが。」

 

ふざけて実際以上の悲しげな顔をし冗談を言う彼の表情は話をする前と変わらぬ笑顔に戻っていた。

 

涙で赤く腫れた瞳以外は。

 

「お邪魔しました。受験頑張って下さい。和成君」

「それはテッちゃんもだろ!」

 

それから少し話をして怖いくらいにいつも通りの挨拶を交わし鋭いツッコミも衰える事なくお互い変わらない関係のまま手を振り別れた。

彼がいないのはとても残念だがそれも一つの道なのだろう。

彼の言葉が、表情が僕に力を与えてくれるのだから。" また来よう " 気付けばそう呟き家路に着いた

 

 

 

- 数日後 -

 

いつも通り泥沼の様に眠っていた両親は仕事に出掛け自分1人の家で起床し何度も和成君に少ないと注意された朝食を無理矢理頬張る。

今日は大事な約束がある。

約束は午後からだが朝の今から自然と笑みが零れる 最低限の家事をやり終えると少し早めの昼ご飯をとり、ジャージに着替える。

 

それ程時間は経っていないのに随分と懐かしく感じるバスケットボールを部屋の片隅から拾い上げ靴をしっかりと履き家を出た。

少し感傷に浸り過ぎて家を出る時間が遅れてしまった。きっとあの人は少し馬鹿にしたような表情でこう言うのだろう。

 

「ばぁか、時間厳守つったろうが」

 

急いで向かった為その言葉を向けられたのは僕では無かった。レギュラーメンバーの1人、原先輩である。

 

「ごめんって〜ガム忘れてたんだ」

 

寧ろ開き直っている様子で花宮さんの暴言と暴力をかわしヘラヘラと笑いながら今も尚遅れた原因となるガムを噛み続けている。彼らとバスケの練習をする様になり数日が経つがこれが恒例の様で他のメンバーは特にフォローすることもなく準備運動に励んでいる。

 

帝光の時には気づけなかったが花宮さんはメンバー全員にそれなりに甘く、メンバーの皆さんは花宮さんに忠実であった。本当はラフプレーをしなくても勝てるのだろう。実力も十分なのがこの数日でよく分かった。

念入りな体操も花宮さんからの命令とあればしっかりとこなす様だ。

( …原先輩は少し雑だった様な気もするが )

 

「よし、始めるぞ。黒子は感覚取り戻し次第俺達と混ざれ。お前らは軽くアップ。」

 

元々少ない体力な上に二,三ヶ月 バスケットをしていなかった僕の身体は思っていた以上に訛っていた様で数日経って漸く皆さんについていけるようになった。

しかし心配症な花宮さんはまだ練習に加えてくれる気は無いようで、自身のアップも兼ねて僕の相手をしてくれる。

 

「そろそろ3on3してもいいんじゃないか?黒子も慣れてきただろ。」

 

アップが終わりベンチにもたれかかっていれば花宮さんと山崎先輩が話しているのが耳に入る。返答を待てば少し悩んでいるようで チラリと視線を寄越した花宮さんと目が合い呼吸を整えれば頷く。

 

「…仕方ねぇ、やるか。黒子!」

 

あいつらを倒す為なら無理も承知だ。

負ける事を教えなくては。

靴紐を結び直せば暖かく迎えてくれる優しい空間へと僕は駆け出した。

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